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糖尿病網膜症は50~60代の失明原因 第1位!検査方法と治し方

 2018/11/19 生活習慣病
この記事は約 11 分で読めます。 1,749 Views

糖尿病網膜症は糖尿病により発生する合併症のひとつです。

糖尿病を発症するとそのうち約15%が糖尿病網膜症になっていると予想されています。

1年間の中でこの糖尿病網膜症によって約3000人の失明につながっているとされています。

また成人が失明する原因の2位であるという調査結果もあり、50~60代の失明原因では第1位です。

糖尿病という名前から視力を失うとは思わない方も多いかもしれませんが、糖尿病の三大合併症のひとつなので糖尿病が疑われる人は注意をしなければいけない病気のひとつです。

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糖尿病の3大合併症のひとつ「糖尿病網膜症」

糖尿病網膜症は目に影響のある糖尿病の合併症で網膜という目にある薄い神経に影響のある病気で、影響のある部分として網膜と硝子体(しょうしたい)という部分に影響がでてきます。

硝子体は目の中心にあるゼリー状の部分の名前で、目の形を保つことと光を屈折させて網膜に伝えるという役割をもっています。

この硝子体の周囲は膜でおおわれており、その膜が網膜という名前で硝子体から受け取った光を映像として受け取る役割をもっています。

硝子体は0.5mm以下とかなり薄く、その薄さのなかに視力に関する細胞や血管が数多く存在します。

網膜には毛細血管がいくつもあります。

糖尿病により網膜の毛細血管に影響があると網膜に十分な酸素がいかなかったり、むくみが発生したり、進行することで硝子体に血液が流れてしまいます。

こうした「見る」という感覚に必要な網膜や硝子体に悪影響があることで視力の低下につながるのが糖尿病網膜症です。

重症になると最悪の場合には目が全く見えなくなる失明につながってしまうというのが糖尿病網膜症の怖いところです。

そのため糖尿病の合併症の中でも一番危険な病気といえます。

失明しないようにするためには早期の発見が必要となりますが、ほかの糖尿病の合併症状と同様で自覚症状を感じにくいという部分があり、特に視力に問題がないことから目に影響はでてないと思ってしまい検査や発見が遅れてしまいがちです。

糖尿病網膜症はその進行状況によって単純、前増殖、増殖と3種類にわけられます。

① 単純糖尿病網膜症

初期の段階でこの段階で血液内の糖のコントロールをおこなえば手術などをせずに改善する可能性があります。

しかし症状がでていないので、予防や検査として眼科にいかないと発見は難しい段階でもあります。

②前増殖糖尿病網膜症

少し進行した状態です。

網膜の酸素が不足すると目に送る酸素をおぎなうために新しい血管をつくりはじめるようになっています。

その新しい血管をつくりはじめている段階です。

既に糖のコントロールだけでは改善は見込むことができず、網膜光凝固術というレーザー治療が必要となることが多いです。

③増殖糖尿病網膜症

かなり進行してしまっている重症の状態です。

前増殖糖尿病網膜症の状態で発生した新しい血管が網膜や硝子体に伸びていってしまい、硝子体のなかで出血してしまいます。

この段階までいくと硝子体手術という治療が必要となるのがほとんどです。

しかし手術をしても日常的に必要とされる視力まで回復しないこともあります。

 

糖尿病網膜症の主な症状と進行

3つの段階ではそれぞれ症状は異なりますが、いずれも痛みや急に視力が下がるわけではないので自分で症状から発見するというのは難しいです。

①単純糖尿病網膜症

網膜の毛細血管が盛り上がってしまい瘤が発生したり小さな出血が発生し、目をよくみるとシミがみられますが痛みなどの症状はありません。

②前増殖糖尿病網膜症

目に酸素が不足するので目のかすみなどが発生します。

しかし、糖尿病が原因であるとは思わずに日々の疲れによるものと判断して自覚せずに発見が遅れることがあります。

③増殖糖尿病網膜症

硝子体のなかで出血がおこることで見ている視界に黒い影であったり虫やゴミのようなモヤモヤとしたものが見え、視線を動かしてもついてくるという症状があります。

これを飛蚊症(ひぶんしょう)と呼び、目を閉じてもそれは消えません。

普段はあまり気が付かずに白い壁や空などを見たときに発見しやすいです。

・牽引性網膜剥離

上記の増殖糖尿病網膜症の段階で発生する可能性があるのが牽引性網膜剥離という状況です。

硝子体のなかで出血することで新たに膜がつくられることがあり、その膜が網膜を引き寄せてしまい硝子体から網膜が剥がれてしまうという症状です。

・糖尿病黄斑浮腫

いずれの進行状況でも発症する可能性があるのが黄斑浮腫です。

網膜の一番うしろ側にあたるのが黄斑という部分になり、その中心にくぼみがあります。

この付近に血管の瘤が発生したり出血した血液が流れ出ることにより、むくんでしまったりするのが黄斑浮腫という症状です。

発症すると視力が低下します。

臨床試験の統計では糖尿病網膜症が発症しているとされている人の糖尿病黄斑症の発症率は5人に1人以上の割合となっています。

 

糖尿病網膜症の検査方法

糖尿病網膜症の症状が出ているかなど進行状況を調べるには目の検査が必要で、眼科での検査方法としては下記のようなものがあります。

・眼底検査

「眼底カメラ」と言って目の中の状況を撮影することができるカメラを使用しての検査です。

目に光を当て、直接目のなかにカメラを入れるものではありません。

これにより出血の状況や網膜浮腫が発生しているかを確認することができます。

・網膜断層検査

赤外線を目に当てて網膜の状況を撮影する検査方法です。

こちらでも黄斑服などを発見することが可能です。

内科の病院で糖尿病と診断されても目の検査に対応していないこともあります。

そのため内科で治療をしっかりと続けていても目の部分で知らず知らずのうちに症状が進んでいたということもあるのが糖尿病網膜症の怖いところです。

失明につながる危険性をもちながら、糖尿病と診断された病院ではみつけられないこともあるという側面もあるのです。

糖尿病と診断された場合には合わせて眼科で問題がないかも診てもらうことで早期発見につながります。

過去に糖尿病として診断されたことがある方は治療を受けて改善されていても早めに眼科で検査をしてもらうことが必要です。

糖尿病の期間が長いほど網膜症が発症している可能性は高いので、視界が見えづらくなり視力が下がってから眼科で相談をするというのではなく、早めに眼科で検査をしてもらうのがタイミングとしてはベストです。

また、その後も発症の可能性はあるので半年や1年ごとに検査をするのが予防につながります。

 

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糖尿病から糖尿病網膜症につながる原因

糖尿病からなぜ視力に関係する部分に影響がでるのかというと、体のなかの「血管」が影響しています。

糖尿病は膵臓からつくられるインスリンという物質が不足してしまう病気です。

このインスリンは食事からつくられた糖をエネルギーに変換する役割をもっています。

そのためインスリンが不足することで糖をエネルギーに変えられず糖のままの状態で血液に残ってしまい、糖の量が増えてしまいます。

糖の量が増えてしまうことで血管にダメージを与えてしまうのですが、大きな血管よりも細い血管の方がダメージを受けやすいため体のさまざまな毛細血管の部分に影響が出てきてしまいます。

糖尿病の三大合併症はいずれも体の中の「毛細血管」が多くある部分に発症する病気で、毛細血管が集まっている目の周辺も同様です。

直接目の臓器に影響があるのではなく、血管をとおして目の臓器に悪影響があり発生する症状です。

また糖尿病網膜症は糖尿病発症後10年以上経過してから発症するともいわれています。

そのため過去に糖尿病の治療が完了していても忘れたころに発症する可能性があるのです。

糖尿病になったけれど視力は問題がないから大丈夫というのではなく、糖尿病になったことがあるので網膜症もいずれ発症する可能性があるという考え方をしなければいけません。

自覚症状としては、視界のなかで煙のすすがあるように黒く見えたり、鮮やかな色のカーテンが霞んで見えたりといったものがあります。

このような症状がでたときには既にかなり進行が進んでいる状態で、その状態から失明へと進んでしまうことも珍しくありません。

糖尿病がきっかけで網膜症が発生し視覚障がい者となってしまうというケースがあるのです。

 

糖尿病網膜症の主な治療法

糖尿病網膜症の治療方法としては初期の段階であれば血糖値のコントロールなどで改善されますが進行している状態だと手術が必要です。

①網膜光凝固術

網膜に起きている酸素不足の状態を改善したり、網膜が剥がれたりすることを予防することを目的とした手術方法です。

おもに光のレーザーで網膜部分を熱で固めたり、発生してしまった新しい血管を減らしてそれ以上は増えることがないように治療をおこなったり、網膜にシリコン素材のものを縫い付けて接着させるという方法です。

手術後から治療の効果が出るまでに一週間以上かかります。

この方法で失明しない確率は治療の時期によって異なります。

早期の段階で行えば8割、進行してからだと5-6割に下がってしまいます。

また現状より悪化しないための予防方法なので、視力が回復するということはありません。

②硝子体手術

光凝固術で対応しきれなかった場合や、既に進行してしまっている状態の時におこなう手術で基本的には局所麻酔で実施し、目に3箇所の穴をあけてそこから細い器具を入れて治療します。

治療時間は1、2時間程度ですが、手術後に数日間うつむきの姿勢をとることが必要なので数日の入院となることもあります。

目の硝子体を切るという手術方法で、切り取った部分だけ専用の液やガスを注入します。

網膜光凝固術と同様で、あくまで現状より悪化をしないように予防をする方法です。

進行状況によって失明しない割合も異なってきます。

初期段階で治療ができれば9割で失明を防ぐことができますが、重症になると失明しない確率は6割にもさがります。

とくに重症になってしまうと治療後、失明せずとも視力が0.1以下になってしまうことが多いです。

③抗VEGF薬治療

糖尿病による黄斑浮腫の場合ある程度は薬で対応ができるというケースもあります。

VEGF(血管内皮細胞増殖因子)というものが黄斑浮腫を進める原因とされていることから、VEGFの活動に影響を与える薬を目の中に入れることで黄斑浮腫の予防効果が期待できます。

約9割の黄斑浮腫が減るとされていますが、1回で完全に治療されるということはほとんどなく再度発症することもあり、何度か繰り返し治療をおこなう必要があります。

またあくまで黄斑浮腫に対す治療方法のため、既に網膜が傷ついていると視力の改善は望めません。

④ステロイド治療

こちらも黄斑浮腫の治療で、血管から液体が滲み出てしまうという状況を減らす効果があるとされている副腎皮質ホルモンであるステロイドを黄斑の治療として使う方法です。

しかしこのステロイドはもともとの原因である糖尿病を悪化させるという成分です。

そのため黄斑だけに効果があるよう、体全体にいきわたってしまう血管への注射ではなく目に注射をおこないます。

目薬の麻酔の後注射針を白目の部分にさして注入します。

注射一回だけでは効果が数ヶ月しか続きませんので、再度黄斑浮腫が発生したのであればその都度注射をしなければいけません。

また副作用としていくつかの可能性があります。

・飛蚊症:注射液に含まれている成分が目に映ることで飛蚊症が発生することがあります。ただそれが原因で視力がさがるというものではありません。

・眼圧上昇:ステロイドは眼圧を上昇させる副作用もあります。ステロイド治療を受けた約5%の眼圧が上昇してしまう副作用が発生し、さらに0.5%は眼圧をさげる手術が必要となります。この副作用は目薬タイプでの治療が必要となってしまいます。

・白内障が進行:約4%が発症する可能性があります。

・感染症:細菌に感染する可能性が0.5%以下となっています。

おもにこのような手術や薬での治療方法はありますが、いずれも現状悪化を防ぐもので下がった視力を戻せるものではなく、2018年現在では糖尿病網膜症が原因で失った視力を治療する方法はありません。

 

まとめ

糖尿病網膜症は糖尿病の3大合併症のひとつですが、その進行した際の症状としては失明につながるという危険性をもっている症状です。

ほかの合併症と同様で自覚症状も感じることがなく進行していくので、視力障がいが発生する原因の上位に糖尿病があるのです。

治療方法の多くは手術となりますが手術をおこなっても視力を戻す治療方法はなく、糖尿病と診断された場合や過去に糖尿病と診断された人は定期的に眼科で診断を受けなければ早期発見することが難しいです。

 

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薮内直純

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株式会社イコールヒューマン。生活習慣病専門ライター。医療や医薬品に関する誤解を解き明かしながら、真実を追求した記事を提供中。

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