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口腔がんの一つ「舌がん」は早期発見が大切!

「舌がん」は口腔がんのひとつで、高齢化に伴い増加傾向にあります。

がん全体でみると発症者の割合は少ないものの、症状を見逃しやすく悪化してから病院を受診するという人も少なくありません。

そのままにしておくと転移などを起こす可能性もあり、予後にも影響するため早期発見が重要となります。

ここでは舌がんの病態や予防法などについて詳しくご紹介します。

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口腔がんの一つ「舌がん」を知ろう

口腔がんは歯以外のさまざまな箇所に発生します。

特に「舌がん」は手術で舌を切除してしまうと「話す」「食べる」といった行為に支障を来すようになり、思うように動かすことが難しくなってしまうこともあるのです。

また発症者の割合はがん全体で見ると少ないものの、がんが進行して転移なども認めると5年生存率が大きく低下することも口腔がんの特徴です。

実際に口腔がんによって死亡する人もおり決して他人ごとではありません。

ここでは口腔がんのひとつである舌がんについて詳しくご紹介します。

<口腔がんの一つ「舌がん」> 

口の中にできるがんを総称して「口腔がん」といい、その中のひとつに「舌がん」があります。

口腔がんにはその他に「歯肉がん」「口腔底がん」「頬粘膜がん」など発生部位によっていくつかのがんが存在し、発生率はがん全体の2~4%とも言われています。

舌がんはさまざまな口腔がんの中で半数以上を占め、口腔がんの中でも代表的な疾患です。

また、舌がんの場合は舌の手前というより、物理的、化学的な刺激を受けやすい舌の横側、つまり舌側縁部にできやすいというのが特徴となっています。

そのため舌縁部になんらかの症状が続いている場合には、注意深く経過を観察していくことが必要です。

また舌は手前の3分の2の「舌可動部」と、奥の3分の1である「舌根」とに分類されます。

舌がんは舌可動部にできるがんであり、物を呑み込む際に重要となる舌根は解剖学的に見て中咽頭に属します。

したがって舌根にがんができてしまった場合には舌がんではなく中咽頭がんに分類されることとなり、口腔がんとは別の扱いとなる点を押さえておく必要があります。

また舌根には「舌扁桃」というリンパ組織があり、がんが進行すると両側頸部リンパ節に転移しやすくなります。

そのため舌がんでは、舌根部にできたがんの進行程度が治療法を左右する重要なカギになると言えるでしょう。

<日本人に増加している口腔がん> 

口腔がんは日本で増加傾向にあり、先進国の中で唯一増加の一途をたどっています。

年間を通して罹患者数は4,000~6,000人ともいわれ、口腔がんががん全体に占める割合は2~4%と少ないものの死亡率が高いことが問題視されているのです。

2016年の国立がん研究センターのデータによると、咽頭がん・口腔がんの死亡率は35.5%で全体25部位の中で12位。

この死亡率はアメリカの19.8%と比較し1.7倍の値になっています。

なぜ日本人に口腔がんが増加しているのでしょうか。

50代以降の罹患者数が大きな割合を占めることを見ても、まずは高齢化が背景にあると考えてよいでしょう。

また死亡率が高いのには病気の発見が遅れやすいことが影響していると考えられます。

全国がんセンター協議会の生存率共同調査による舌がんの病期別の5年生存率を見てみると、ステージⅠでは94%以上であるのに対し、ステージが上がるにつれて生存率は低下し、ステージⅣの場合は49%と5割を下回る値になっています。

口腔内というのは目で見て異常の発見に気づきやすいものの、口腔がんかもしれないと受診する人はなかなかおらず、発見の遅れも死亡率が高いことに影響しているのではとの見方もあります。

舌がんがメディアに取り上げられたことで以前よりも口腔がんの知名度が増してはいますが、病気の早期発見につながる口腔がん検診の定期的な受診が重要だと言えるでしょう。

<口腔がんの進行に伴う症状>

口腔がんは初期の段階では痛みや出血などもないため、症状に気が付きにくいこともあります。

そのため症状を見落としやすく、気づいたときにはがんが進行してしまっているというケースも少なくありません。

がんがだんだんと進行していくと、病変部分に硬いしこりのようなものを触れるようになり、徐々に大きくなっていきます。

食べたり話したりする際に違和感を覚える人もいるでしょう。

硬いしこりは潰瘍となり、痛みや出血を伴うこともあります。

また、がんの種類によっては歯のぐらつきや脱落、顎骨の破壊や構音、摂食嚥下障害、開口障害や知覚・味覚の異常などが見られます。

しかしながら、これらの症状が出ても「口腔がんかもしれない」と受診する人はそう多くはないでしょう。

進行がんとなる前、早期の段階で治療を行うことができるかどうかが重要となります。

口の中の異変を感じたときには早めに専門家に相談することが大切です。

また、口腔は解剖学的に見て咽頭や鼻腔とつながっています。

つまり、咽頭や鼻腔にがんが進展してしまう可能性もあるということです。

そのため治療の際には口腔内にとどまらず、がんが進展してしまっている箇所も切除することとなります。

このように大がかりな切除となる場合、術後の機能回復のために腹直筋皮弁などを移植する欠損部分の再建術も合わせて行い、術後は食事や会話などのリハビリテーション、義歯の作成などで再び日常生活を送ることができるようなケアを受けることとなります。

 

舌がんの早期発見と治療方法

舌がんが進行し、がんの範囲が広いとそれだけ切除しなければならない範囲も拡大します。

舌を切除した場合でも二度と舌を使えなくなるわけではなく、自分の体組織の一部を切り取って切除部分に移植する再建術を行います。

ただ術後に機能障害が残ってしまうこともあり、治療前のように舌を動かすことができなくなる可能性もあります。

舌というのは私たちが生きていく上で必要な体の部分です。

できるだけがんが進行する前に発見できるかどうかが生活の質にも、予後にも大きく関係します。

がんを早期に発見ができるよう、ここでは具体的な症状やどのような治療が実際に行われるかということを整理しておきましょう。

舌がんの気になる症状

舌がんは一般的に初期の段階では痛みや出血がないため、気づきにくいことが多いようです。

ただ舌側縁に硬いしこりのようなものを触れることがあり、話したり食事をしたりする際などに違和感を覚えることもあります。

口内炎が2~3週間以上治らない場合は要注意です。

これは口内炎が短いスパンでできたり治ったりを繰り返すのではなく、一度できた口内炎が治らない場合を指します。

口内炎は誰にでも起こり得るような印象を受けますが、口内炎ができたからといって必ずしも舌がんであるわけではないため、経過を慎重に見ていく必要があるでしょう。

また舌がんでは、赤斑や白斑といって赤や白く変色した部位が見られるのも特徴です。

赤斑はいずれがんになる可能性を示す病変であり、白斑が見られる舌白板症は6~10%の割合でがんになることが分かっており、これらの症状の出現も注意が必要となります。

舌がんは2つのタイプに分かれ、外形的にがんが大きくなる外向型と内側に向かって浸潤していく内向型があります。

舌の表面に症状が出るタイプでは「白板型」と「びらん型」があり、早期がんの場合には舌表面にがんがとどまっている状態です。

内側に浸潤していくと強い痛みや舌、口のしびれといった症状が出現し、舌が動かしにくく、呂律が回らなくなるといった症状も見られるようになります。

また舌は話したり食事をしたりする際など絶えず運動し続けているため、がん細胞を押し出すことでリンパ節転移を起こしやすい病気です。

このため、嚥下部や内部静脈リンパ節群などへ転移を起こしやすいという特徴があります。

これらの部位に転移していると分かった場合、舌がんの大小にかかわらずステージⅢ以上の進行がんと診断されることとなります。

場合によっては舌の大部分を切除したり顎や頬の一部を切除したりすることになるでしょう。

舌を切除するということは話す、食べるといった行動にも影響するため、早期に発見できるかどうかが重要です。

口腔がんの治療方法

口腔がんの治療はがんの進行度や年齢などさまざまな内容を加味し、場合によっては手術や化学療法、放射線療法を組み合わせて実施されます。

<手術>

切除する範囲によって「舌部分切除」「舌可動部半側切除」「舌可動部亜全摘手術」「舌半側切除術」「舌亜全摘術」に分類されます。

部分切除の適応となるのはがんのサイズが比較的小さく、なおかつ頸部へのリンパ節転移がない初期段階のものです。

舌根部のがんが進行してしまうと舌の半分からほとんどの部分を切除する可能性もあります。

舌を切除したままだと、術後の顔の印象が変化したり、会話がうまくできなかったり、食事がうまくいかなかったりというケースも生じます。

これらをできるだけ最小限にとどめ本人の生活の質を維持していくため、もとの形状に戻す再建手術が実施されるのです。

再建の際には、自分の体の組織の一部を切り取り舌に付ける方法が行われます。

舌亜全摘術以上で切除範囲が広い場合には、容積の大きな腹直筋弁を再建に使用していきます。

<放射線療法>

「小線源療法」では病巣部に直接放射線を放出する針を刺し、放射線を出す金粒子を病巣に埋め込むことで体の内から照射を行います。

この方法は効果的で、手術と同様に80~90%の治癒率を誇ります。

メリットは舌を温存できることです。

小線源療法は比較的小さながんの場合に行うのが基本です。

メリットの大きな治療法ですが、口内炎が頻発し入院が必要となるというデメリットもあります。

<化学療法>

進行がんや再発、転移のリスクが高い場合などに実施されます。

最近では分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤などの登場で副作用が少なく済み、受ける人の心身の負担が軽減される治療法です。

また放射線治療の効果を高める目的で、動脈内化学療法という治療法が行われることもあります。

これは舌に栄養を送っている動脈に直接抗がん剤を流し込む方法で放射線単独よりも副作用が多いのが特徴ですが、その後の経過によっては手術をしなくて済む可能性もあります。

 

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口腔がんの原因を理解して予防しよう

食べる、味わう、話す、歌う、表情を作り出す。

口にはさまざまな役割があり、口腔がんによってこれらの役割が果たせなくなることは私たちの生活に大きなダメージを及ぼしかねません。

口腔がんになるリスクをできるだけ減らすためには、具体的にどのような点に注意すればよいのでしょうか。

リスクファクターとなりうる内容や生活の中で実践できる予防法について見ていきましょう。

いつまでも健康なお口を保っていくために、ぜひ参考にしてください。

<さまざまある口腔がんの原因> 

口腔がんの原因には喫煙や飲酒などの化学的刺激によるものや、虫歯や義歯などの物理的刺激によるものなどがあります。

・喫煙、飲酒などの化学的刺激

喫煙者が口腔がんを発症する確率は吸わない人の約7倍とも言われています。

毎日何十本も吸うようなヘビースモーカーの人は特に要注意です。

女性よりも男性に口腔がんが多いのは、喫煙歴が長く本数も多い傾向にあることが関係している可能性もあります。

また飲酒もリスクファクターのひとつです。

お酒を毎日飲む習慣がある人、摂取量が多い人は特に注意が必要でしょう。

・虫歯や義歯などの物理的刺激

虫歯がある、あるいは虫歯を放置している場合に加え、歯周病なども原因として挙げられます。

甘いものをよく食べたり飲んだりする、歯磨きをあまり行わず口腔環境を衛生的に保てないなどといったことも、虫歯や歯周病のリスクを高めるため要注意です。

また入れ歯などの義歯や詰め物、被せ物が合っておらず、局所を刺激し続けている場合なども原因として考えられています。

このほかにも歯並びが悪い、歯が内側に傾いて生えてしまっているという方も注意が必要です。

歯が内側に傾いて生えてしまっている場合には、本来であれば接触しない舌と歯が接触しやすくなってしまい、舌がんのリスクを高めると考えられています。

・ヒトパピローマウイルス感染

子宮頸がんの原因であるHPV(ヒトパピローマウイルス)が口腔へ感染してしまうと、舌がんの発症につながるケースがあります。

HPVが口腔へ感染してしまう経路としては性行為などの濃厚な接触で起こりやすく、高齢者よりは比較的若い年代で発症がみられるのが特徴です。

・粘膜病変の存在

白板症や紅板症などは10%程度の割合でがん化することが分かっています。

これらの病変ががん化しないかどうか、慎重に経過をみていく必要があるでしょう。

<口腔がんの予防は検診と生活習慣の改善>

・喫煙や飲酒の習慣を見直す

喫煙の習慣がある人は禁煙にチャレンジしてみましょう。

口腔がん以外にもさまざまながんのリスクファクターとなり得る喫煙は、禁煙することでがんの発症リスクを下げることが期待できます。

家族など周りの人の協力や、必要であれば禁煙外来を受診するなど専門家の力を借りて確実に禁煙に取り組む方法もおすすめです。

また多量のお酒を飲む習慣がある人はお酒の量や頻度を見直してみましょう。

国立がん研究センターの日本人のためのがん予防法によると、節度ある飲酒として1日あたりの純アルコール量を23g、週に150g程度の量にとどめることなどが明記されています。

純アルコール量23gというのはビール大瓶1本、日本酒なら1合に相当します。

・栄養バランスのよい食事

栄養状態がよくないことも口腔がんのリスクに影響すると考えられています。

糖質を抑えつつもタンパク質や脂質など必要な栄養素をバランスよく摂取していくことが大切です。

・口腔内を清潔に保つ

口腔がんの原因ともなる虫歯や歯周病予防のため、口腔内を常に清潔に保っておくことが大切です。

定期的に歯科でブラッシングケアをしてもらうなど、自分ではなかなか除去できない歯垢や歯石を取ってもらうのもよいでしょう。

・定期的な口腔がん検診を受ける

さまざまな歯科医院やクリニックで口腔がん検診が行われており、定期的に受診することでがんの早期発見や予防につながります。

口内炎がなかなか治らない、口腔内に痛みや出血があるなど気になる症状がある場合には、専門家に相談することをおすすめします。

 

まとめ

舌というのは鏡を見れば自分でチェックすることができ、がんは早期発見しやすいように思えます。

しかし口内炎のほかに痛み、出血などが虫歯や歯周病の症状に似ているため、そのまま放置しやすく受診した時にはがんが進行してしまっているケースも少なくありません。

2週間経っても治らない口内炎や何か気になる症状がある場合には、迷わず専門家を受診し検査を受けることが大切です。

舌を切除することは話す、食べるなどの行動に支障をきたし、人々の生活の質にかかわることとなります。

早期に発見する、予防をすることが非常に重要です。

生活習慣の改善に加え、口腔内を清潔に保つことも大切になるでしょう。

 

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薮内直純

薮内直純

株式会社イコールヒューマン。生活習慣病専門ライター。医療や医薬品に関する誤解を解き明かしながら、真実を追求した記事を提供中。

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