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健康診断のヘモグロビンA1cの基準値を確認して糖尿病のリスクを減らそう

生活習慣病
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年齢を重ねてきて生活習慣病が気になるという方は少なくありません。

なかでも糖尿病が悪くならないように食事制限をしている人や、すでに合併症を患っている人が身近にいることもあるでしょう。

「私も糖尿病になったらどうしよう」など心配になっている方もいるかもしれません。

糖尿病の検査といえば20年ほど前は「血糖値」によるものでしたが、最近では「ヘモグロビンA1c」という検査が浸透してきました。

ここでは、ヘモグロビンA1cと糖尿病について解説いたします。

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今すぐ確認!健康診断のヘモグロビンA1cの数値

健康診断の結果がきたら、まずヘモグロビンA1cをみるという方もいるのではないでしょうか。

ヘモグロビンA1cは、血糖値と並んで糖尿病の兆しがあるかどうかを見る検査です。

このヘモグロビンA1cとはどのようなものなのでしょう。

<ヘモグロビンA1cとは>

糖尿病の検査項目にあるHbA1cは「ヘモグロビン エーワンシー」と読みます。

ヘモグロビンは血色素のことであり、全身の細胞に酸素を運ぶことのできる赤血球内のタンパク質の一種です。

このヘモグロビンに血液中のブドウ糖が付着して結合した「糖化ヘモグロビン」をヘモグロビンA1cと呼びます。

血液中の糖分の指標である血糖値が高ければ高いほど、ヘモグロビンと結合するブドウ糖の量が増えるのです。

一度ヘモグロビンに結合したブドウ糖はヘモグロビンを含む赤血球が壊れるまで分離することはありません。

赤血球が骨髄で作られてから肝臓や脾臓で処分されるまでの期間は120日程度であり、常に新陳代謝が繰り返されています。

検査時点ですべてのヘモグロビンのなかの何%が糖化しているか、つまりヘモグロビンA1cの割合を見ることで過去1~2ヶ月間の平均血糖値を知ることができるのです。

ヘモグロビンA1cは血糖値に比べて揺れ幅が少なく、糖尿病の経過観察や治療の指標にしやすく目標が立てやすい便利な検査になります。

とくに糖尿病の患者さんは血糖値を安定させるために規則的に食事を摂ることが必要です。

ヘモグロビンA1cは採血前の食事による影響を受けないので検査をするために食事を抜く必要はありません。

また、血糖コントロールがうまくいっていない人の体や糖代謝への負担が少ないこともメリットのひとつです。

<健康診断で測定しているヘモグロビンA1c>

健診の結果にはヘモグロビン(Hb)という項目が2つあります。

糖代謝の検査にあるヘモグロビンA1cと貧血の項目にあるヘモグロビンです。

ヘモグロビンは鉄の成分「ヘム」とタンパク質の「グロビン」を合わせた名前であり、この鉄の部分が酸素と結合して全身に酸素を運ぶ働きをしてくれています。

糖尿病の指標となるのはヘモグロビンA1cの検査です。

ヘモグロビンA1cは世界でも糖尿病の早期発見や血糖コントロールの共通の指標として用いられています。

2012年まで、日本は世界の指標に比べ0.4%ほど小さく示す「JDS」と呼ばれている独自の数値を用いていました。

しかし現在では「NGSP」と示される世界で多く使われている数値を使っています。

健診結果から過去のヘモグロビンA1cの値と現在の値を比べる場合には、「JDS」と「NGSP」のどちらの値なのかを確認することが必要です。

多くの健診機関では、経年の検査結果を示す場合は項目欄をずらして「HbA1c(JDS)」と「HbA1c(NGSP)」として、単純に比較しないよう気を使っています。

NGSPに0.98を乗じて0.245を引けば、簡単にJDSに換算することが可能です。

ヘモグロビンA1c(JDS)=ヘモグロビンA1c(NGSP)×0.98-0.245

食事の影響を受けにくく揺れ幅が少ないヘモグロビンA1cは、健康診断でも糖尿病の早期発見のための重要な指標として活用されています。

<ヘモグロビンA1cの基準値や目標値>

健康診断ではヘモグロビンA1c(NGSP)が5.6%未満で正常型、5.6~5.9%が要注意、6.0~6.4%で糖尿病が否定できない(境界型)、6.5%以上で糖尿病型とされる基準値になっています。

つまり健診ではHbA1c(NGSP)が6.0%以上の方は詳しい検査が必要になりますし、5.6%を超えていれば生活習慣の見直しを求められるのです。

一方、すでに糖尿病と診断された患者さんの場合、ヘモグロビンA1c(NGSP)の目標値は年齢や糖尿病になってからの期間、糖尿病以外の病気、低血糖のリスク、周囲のサポート状況を勘案して設定されます。

適切な食事と運動療法のみか低血糖のリスクが少ない薬を使用している場合には、血糖値を正常化するためにヘモグロビンA1c(NGSP)6.0%を目指すのです。

合併症予防に重点を置く場合にはヘモグロビンA1c(NGSP)7.0%、低血糖の副作用やそのほかの疾患、年齢などにより糖尿病の治療強化がむずかしい場合には8.0%未満を目指します。

高齢者は低血糖のリスクが高くなりますので、初めからヘモグロビンA1cを下げるのは7.0%程度までとする場合も多くあるでしょう。

健康診断と糖尿病の治療では、改善を求められるヘモグロビンA1cの値が異なるのです。

そのため、健康診断でヘモグロビンA1cを気にしている人と糖尿病の治療中の人で話をしていると、かみ合わないこともあり得ます。

糖尿病治療中の人はヘモグロビンA1c(NGSP)5.7%は「血糖コントロール良好」とされます。

しかし健康診断では減量を求められたり、生活習慣を振り返って血糖値が上がりすぎない生活をするように指導されたりするもあるのです。

 

ヘモグロビンA1cの数値が高くなる原因と糖尿病のリスク

糖尿病の合併症を引き起こさないためには、ヘモグロビンA1cの数値が高くなってしまった際に原因を見つけて改善しなければなりません。

それでは、気づかないうちに血糖値を上げてしまう原因とはどのようなものでしょうか。

また日本ではどのくらいの人が糖尿病であり、合併症にはどのようなものがあるのでしょう。

<ヘモグロビンA1cの数値が高くなる原因>

ヘモグロビンA1cが高くなってしまった際には生活スタイルや心身の状況を振り返り、原因を突き止める必要があります。

よくある原因としては、炭水化物(糖質)中心のメニューであったり、食事の全体量が増えていたりといったことが挙げられます。

朝食に菓子パンやエナジードリンクを摂ったり、通勤途中の喫茶店でモーニングを食べたりしている人は要注意です。

朝食を食べないという方は、その分夜食を摂っていたり、昼食のボリュームが多くなっていたりする場合も少なくありません。

甘いお菓子を我慢する代わりに果物やせんべいで我慢しているという方もいるかもしれませんが、いずれも糖質ですのでヘモグロビンA1cの数値を上げてしまいます。

また体のために始めた野菜ジュースや甘酒、健康ドリンクが原因になっていることもあるでしょう。

意外かもしれませんが、いずれも糖質の多い飲み物です。

暑い時期にはスイカやアイスなどの食べすぎや甘い飲み物での水分補給が原因となっている場合があります。

家族が増えたり減ったりすることや住まいなどに変化があった場合、転勤転職や配属替えで夜勤の仕事になった場合には食事や生活スタイルが大きく変わるので注意が必要です。

さらに一時的なヘモグロビンA1cの上昇には旅行や結婚式、葬式、法事などのイベントが原因となっている場合も少なくありません。

ほかにも内服している薬や感染症、肝臓・すい臓の病気、メンタルの不調も原因としてあげられます。

<日本人と生活習慣病「糖尿病」>

「国民健康調査・国民生活基礎調査」における糖尿病だと疑われる患者数は1970年代に10万人単位だったものが、1995年時点で200万~300万人となりました。

しかし1997年時点で当時の厚生省がおこなった「糖尿病実態調査」では、すでに糖尿病が強く疑われる「糖尿病有病者」は690万人と推測されているのです。

さらに、可能性を否定できない「糖尿病予備軍」の人を含めると1,370万人と推計されています。

そして2016年の国民健康調査・国民生活基礎調査では、糖尿病が強く疑われる人と可能性を否定できない人はそれぞれ約1,000万人、合わせて約2,000万人に糖尿病の疑いがあると推計されているのです。

糖尿病が強く疑われる人の割合は男性が16.3%、女性が9.3%となっており、男性の方が多い傾向が見られています。

また、年齢が高くなるにつれ糖尿病有病者の割合もまた高まるとされています。

糖尿病を含む生活習慣病が日本人の死亡原因の6割を占めています。

そのため、2008年から国民健康保険や健康保険組合などの公的医療保険の加入者のうち40~74歳の人に対して「特定健康診査・特定保健指導」を実施するようになりました。

特定検診の受診率は会社に勤めている被雇用者の集団では5~9割程度であるのに対して、自営業や女性では実施率が2~4割程度と低くなっています。

また40歳未満の若年層の健診受診率は低く、ほかの病気で受診した際に糖尿病を発見されることも少なくありません。

糖尿病を発見した後は治療や経過観察を継続することが大切ですが、2016年の調査では糖尿病患者のうち4人に1人は治療を受けていないことがわかっています。

<糖尿病による合併症の恐怖>

糖尿病による高血糖の影響は全身におよび合併症を引き起こすのです。

糖尿病による合併症には急性合併症と慢性合併症があります。

慢性合併症には末端のごく細い血管がダメージを受けて起きる「細小血管障害」、心臓や脳の大きな血管が詰まって起きる「大血管障害」があります。

最小血管障害は糖尿病の特徴的な合併症です。

手足に痛みやしびれを感じるなどの神経の障害や網膜症を引き起こす目の障害、腎臓の細い血管が詰まり尿を作ることができなくなる腎臓の障害があります。

神経の障害では痛みが慢性化し感覚が鈍くなったことにより足が壊疽して切断を余儀なくされることもあるのです。

糖尿病性網膜症など目のダメージが進行すると失明に至りますが、現在、中途失明の原因は緑内障に次いで糖尿病性網膜症が多くなっています。

また腎臓の障害が進み尿を作ることができなくなると、身体中の血液を一度体の外に出してきれいにして戻す「人工透析」を受けなければなりません。

この人工透析の原因となった疾患の第1位が糖尿病なのです。

糖尿病は合併症が現れるまではほとんど自覚症状がありませんが、静かに体の中に悪影響を与えています。

一方、大血管障害には動脈硬化による脳梗塞や心筋梗塞などがあり、ある日突然発症するのです。

糖尿病で肥満している患者さんに多く、高血圧や脂質異常、喫煙の習慣があるとさらにリスクが高まります。

急性の合併症には著しい高血糖による意識障害があり、死に至ることもあるでしょう。

また高血糖の状態は傷が治りにくく免疫反応も低下させるので、適切な血糖値に安定するまで手術などの処置ができないこともあります。

 

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ヘモグロビンA1cの数値を下げる方法

糖尿病の検査の結果は「糖尿病型」「境界型」「正常型」に分けられます。

ヘモグロビンA1c(NGSP)6.0~6.4%の境界型は糖尿病予備軍です。

しかし予備軍とはいえこの時点からしっかり血糖をコントロールしていく必要があります。

それでは境界型糖尿病の人が気を付けたいポイントにはどのようなものがあるのでしょうか。

<ヘモグロビンA1cの数値を下げる食事>

食事の内容としては血糖値を上げてしまう炭水化物や糖質の多い食品を摂らないことはもちろん、それ以上に必要な栄養素をしっかり摂ることが大切になります。

魚やイカ、タコ、カニ、貝などの魚介類や肉類、卵などは積極的に摂るようにしてください。

その次に豆腐、納豆、油揚げなどの大豆加工製品などもお勧めです。

また、ゆっくりよくかんで楽しんで食べることも大切です。

サプリメントや健康食品はあくまで補助的なものであり、糖尿病の薬の代わりにはなりません。

主治医に相談したうえで摂取しても構いませんが、あまりにも多くの健康食品やサプリメントを摂っていると相互作用や悪化した際に原因の特定ができにくくなりますのでほどほどにしましょう。

また食事ではありませんが、喫煙は糖尿病合併症の大血管障害にリスクを著しく高めますので禁煙し、受動喫煙も避けるようにしてください。

<ヘモグロビンA1cの数値を下げる運動>

ヘモグロビンA1cの数値を下げるための運動には、掃除や庭仕事などの日常的な活動も含まれます。

日常生活のなかで、こまめに動くことと定期的な運動を行うことが効果的です。

日常的な動きでは、ずっと座りっぱなしになっていないかということを意識してみてください。

座った状態から立ち上がると血圧を維持するために自律神経が働きます。

立った状態から座る際も同様に自律神経が働きますので、立ったり座ったりを繰り返すだけでも自律神経が活性化し、血糖や体重コントロールにも効果が期待できるのです。

さらに余裕があれば、エレベーターでなく階段を使ったり、バスや電車のなかや待ち時間にかかとの上げ下げをしたりするちょっとした運動を加えてみましょう。

定期的な運動としては、週2回程度のウォーキングなどの有酸素運動の前に軽い筋トレをおこない、さらに毎日のストレッチを組み合わせると効果的です。

時間がなくて運動はむずかしいという方も、こまめに動くことから糖尿病予防を始めてみるとよいでしょう。

 

まとめ

血糖値が高い期間にヘモグロビンと結合するブドウ糖の割合が上がり、ヘモグロビンに血液中のブドウ糖が結合したヘモグロビンA1cが増えます。

そのため、ヘモグロビンA1cは過去1~2ヶ月間の平均血糖値の指標となるのです。

ヘモグロビンA1cは血糖値の適切なコントロールや糖尿病合併症の予防などの治療の指標として使います。

健診でヘモグロビンA1cが「要注意」や「境界型」となった人も食事や運動など、生活習慣病全般の予防を意識して生活することで改善が期待できるでしょう。

 

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薮内直純

薮内直純

株式会社イコールヒューマン。生活習慣病専門ライター。医療や医薬品に関する誤解を解き明かしながら、真実を追求した記事を提供中。

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