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風邪の症状と勘違いしやすい「咽頭がん」

鼻づまり、咳が続く、喉の痛み、声のかすれ、扁桃腺の腫れ、食物が呑み込みにくい…

これらのように鼻や喉に何らかの症状や違和感を感じたとき、私たちがまず最初に疑うのは風邪ではないでしょうか?

あるいは時期によっては花粉症を疑うかもしれません。

ですが、ちょっと待ってください。

これらの症状が出る「がん」があるのです。

風邪の症状と勘違いしやすい「咽頭がん」について詳しく解説します。

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咽頭がんになる原因

咽頭がんは上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がんと種類が分かれていますが、上咽頭がんはEBウイルス、中咽頭がんや下咽頭がんはアルコール・タバコ・食べ物・環境などが大きく影響しているとされています。

また近年ではパピローマウイルスが関与しているのではないかということもいわれています。

「上咽頭がん」の原因とされている「EBウイルス」というのは「エプスタイン・バーウイルス」のことをいいます。

このウイルス自体はヘルペスウイルスの一種なのですが、一般的に唾液を介して感染します。

しかし乳幼児の頃は無自覚なことが多く、症状らしいものが出るのは思春期以降のお子さんです。

通常のヘルペスと同じように自然に治りますが、このウイルスに感染していると肝臓と脾臓が大きくなって肋骨の下にまで出てしまっているため、おなかを打たないように気をつけなければいけません。

また「咽頭がん」の原因ではといわれる「パピローマウイルス」というのは聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。

人間に感染するものはヒトパピローマウイルスといいますが、ほとんどの場合は無害で症状を起こすことなく、自然消滅する種類が多いのです。

しかし性交渉の経験のある女性の50%以上が、生涯で一度はこのヒトパピローマウイルスの一部の種類に感染するといわれています。

もしこのウイルスが子宮頚部に感染してしまうと「子宮頚がん」へと進行する原因になってしまいます。

子宮頚がん以外にも肛門がんや膣がん、尖圭コンジローマなどいろんな病気に関わっていることがわかっており、咽頭がんにもこのパピローマウイルスの感染が関わっている可能性もあるとされているのです。

ちなみに、「咽頭がん」になる原因で最も多いのはやはり喫煙です。

しかもヘビースモーカーが多く、喫煙者と非喫煙者の咽頭がんになる確率を比較すると男性は約30倍、女性は約5倍も上がってしまうといわれています。

同じように飲酒が原因でもこのがんになる人は少なくありません。

また高齢になると咽頭がんになりやすく、60歳以上の人が症状を感じやすくなっています。

これは高齢になると喫煙する時間を長く持てるようになるため、それが咽頭がんを発症する確率を上げているのだといえます。

タバコもお酒ものどに負担をかけて傷めてしまいますので、それが咽頭がんになる大きなきっかけになってしまうのです。

特に喫煙は1日10本以上吸っている場合、発症する確率が高いので注意が必要です。

 

咽頭がんの症状の現れ方

「咽頭がん」の初期症状はほとんどなく、多くの方がかなり進行してから咽頭がんに気づくというケースです。

咽頭がんはのどのどの位置なのかということによって、その症状の出方も違います。

全体的に咽頭がんの症状としてあげられるのは食べ物がのみこみにくい、のどが痛んだり、しびれたような感覚がある、まるで首をしめつけられてるような感覚がある、難聴や耳鳴り、視力の低下、扁桃腺の腫れ、口が開けにくい、首のしこり、声枯れ、呼吸がしにくいなどです。

部位別に症状を分けてみますと、上咽頭がんの場合は難聴、耳鳴り、視力の低下、神経痛、頭痛などがあらわれます。

中咽頭がんは症状が最も出にくい場所で、進行すると食べ物が飲み込みにくくなり、痛みが強く出てしまいます。

そして下咽頭がんは呼吸がしにくく、声枯れの症状が出てきます。

さらに首のリンパ節に転移していると首にしこりが出ます。

それでは初期症状としてはどんなことがあるのでしょうか。

「上咽頭がん」は首のリンパ節の腫れ、「中咽頭がん」は食べ物を飲み込む時に少ししみるような気がするといった違和感をおぼえます。

進行すればするほど飲み込みにくさは悪化し、痛みも強くなっていきます。

個人にもよりますが、がんの症状が全く出ない人もおり、そういう場合は首のリンパ節に転移した時に腫れるだけということもあります。

そして「下咽頭がん」は中咽頭がんと同じく、わかりやすい初期症状というものはありません。

そのため、下咽頭がんであるとわかった時点ですでに進行しており、他の部位に転移がみられたりということが多いです。

下咽頭がんは進行してくると、食べ物を飲み込む時に焼け付くような痛みや何かひっかかるような感覚を感じることがあります。

そして食べ物を飲み込む時には耳の奥にするどい痛みを感じ、声がかすれたり、息苦しくなったりします。

咽頭がんは基本的に初期症状がないと考えておいたほうが良いので、定期的に検査を必ず行なうようにしてマメにチェックをしておくことが大事です。

どんな病気でもそうですが、咽頭がんに関してももちろん超初期、初期段階で見つけることができれば治療して完治できる可能性もより高くなるのです。

声枯れなどが起きると会話も困難になり、ストレスも多大なものとなります。

ストレスは自律神経の乱れを起こし、免疫力を落としてしまう原因になりますので病気などが治りにくくなってしまいます。

そうならないためにも定期的な検査をしておくことは重要です。

 

間違えやすい「咽頭がん」と「喉頭がん」

咽頭がんと喉頭がん、一瞬見ただけでは同じものだと感じてしまう方が多いです。
実際に間違えられやすいのですが、この2つは全く別のものです。

のどは咽頭そして喉頭で成り立っているわけですが、喉頭というのはいわゆる喉仏の周囲の部分のことをいいます。

咽頭は舌の付け根部分から食道まで続くおよそ13cmの管のことです。

また、この2つのがんは症状が違います。

喉頭がんは声門がん、声門上がん、声門下がんの3つがあります。

「声門がん」は声帯にできるタイプで、初期症状として声のかすれや声枯れなどがあります。

喉頭がんの中で最も患者が多いがんとなります。

「声門上がん」は、喉頭蓋といって食べ物を飲み込む時に気管に蓋をする器官の周辺にできるものです。

位置的には声帯の上の方なので、声門がんのような声のかすれや声枯れといった症状はほとんどなく、喉の違和感や異物感、痛み、かゆみなどを感じるようになります。

人によっては血痰が出る場合もあります。

「声門下がん」は声帯の下か気管の上部にできるがんで、位置的には喉の奥なので初期症状がほとんどなく、進行と共に呼吸が苦しくなってきます。

咽頭がんでも下に近ければ近いほど症状は喉頭がんと似たようなものになってきます。

つまり、下咽頭がんであれば症状的には喉頭がんとほとんど同じだと考えても良いくらいです。

下咽頭は喉頭の後ろ側に位置しているからです。

声帯というのはその名の通り、声を出すための器官で、男性と女性で声の高さに違いがあるのはこの声帯の形や長さに違いがあるためです。

男性の声が女性のものより低く太いのは男性の声帯の長さが女性の16ミリから17ミリという長さと比べて20ミリと長く、幅も広いからです。

「喉頭がん」の治療の場合は、基本的には声帯の温存が第一選択となります。

声を出すのに必要なものなので切除するのは進行してしまっているがんであったり、初期治療である放射線治療後に再発してしまった場合などに限ります。

手術は全摘と部分摘出があり、全摘になると自然な発声ができなくなってしまいます。

この2つのがんに罹患する患者の数は年間およそ3400人となっており、患者数に関しては同じくらいです。

たばこを吸う性別が男性のほうが多いため、患者は多くが男性となっていますが、近年ではストレス過多などからタバコを吸う女性の数も増えてきており、女性の患者も増加傾向にあります。

ただし咽頭がんでは部位によって女性の患者のほうが多いという場合もあります。

 

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咽頭がんの治療法

咽頭がんの治療法としては主なものは3つあります。

放射線療法、化学療法、外科療法です。

咽頭がんの場合、患部は食べ物を飲み込んだり、声を出したり、呼吸をする部位ですので外科療法は、最後の手段になることが多いです。

そのため、まずは「放射線療法」や「化学療法」を行ないます。

特に咽頭がんの場合、放射線や抗がん剤がとても効果をあらわしやすいという特徴がありますので、放射線でガン細胞を死滅させながら抗がん剤の投与を行なっていくということもあります。

ガン細胞がごく小さな状態で発見された場合はレーザー療法あるいは凍結療法を用いることもあります。

これらの方法であれば正常な細胞をそのまま残すことが可能であり、「治療後も咽頭の機能をそのままに」しておけます。

そして、放射線療法や化学療法でも改善がみられなかった場合は外科療法へと移行します。

ただし「上咽頭」にがんができている場合、ここには聴覚や視覚に非常に影響を及ぼす神経が多いので基本的には外科手術を行いません。

がんが残ってしまった場合もしくは首のリンパ節に転移した場合などは、首のリンパ節周囲だけ切除することがあります。

「中咽頭がんの治療法」は扁桃腺や舌の一部、顎の骨など周辺にある組織を切除する場合がありますが、手術をしたとしても本来の機能がなるべく残るように再建術が行なわれるなど工夫がされます。

「下咽頭がんの治療法」は自覚症状がほとんどないことから発見された時にはすでに進行していることも多く、下咽頭に加えて喉頭や食道、リンパ節など周辺の臓器や組織も同時に切除する場合が多いです。

しかし食べ物を飲み込んだり、声を出したりできなくなることがあるので、そういう時には小腸の一部を利用し、食道の代わりにするなど再建術が行なわれます。

下咽頭がんで一番行なわれている手術は喉頭と下咽頭全て、頸部食道の一部または全てを切除するものです。

食道を再建するので食事をすることはできますが、咽頭を全切除するために声が出せなくなってしまいます。

もし食道を小腸から再建できない場合や食道自体にガンが影響していた場合は食道も完全切除して、胃を持ち上げ、咽頭に縫合して食べ物が通ることができるようにします。

しかし咽頭を全て切除するのでのどに気管孔という呼吸用の孔をあけます。

下咽頭がんが喉頭に影響を及ぼしていない場合や及ぼしていても軽度であれば喉頭の一部もしくは全て、咽頭の一部を切除するだけで良いということもありますので、その場合は呼吸用の孔をあける必要はありません。

 

ステージと生存率、転移、再発について

まずは「上咽頭がん」についてですが、0期から1期の5年生存率は90%以上、放射線治療と化学療法の併用が効果的ですが、再発の確率も高いのが咽頭がんです。

2a期から3期にかけての5年生存率は60%から80%、放射線治療後に合併症や後遺症が出やすく、慢性中耳炎になりやすいです。

4a期から4c期は5年生存率が40%から50%です。

「中咽頭がん」の場合、治療後の0期から2期までは80%から90%、この時期に治療を行なえば比較的完治しやすい病気です。

3期の生存率は60%、4a期から4c期にかけては40%の5年生存率となっています。

「下咽頭がん」の治療後の5年生存率はステージ0期から1期の場合、100%、早期発見と治療を行なえばほぼ完治できる病気です。

ステージ2期では75%、ステージ3期では67%、ステージ4a期から4c期の5年生存率はおよそ32%となっています。

「転移」に関しては上咽頭がんはリンパ組織が多いので症状が出始めて、診断を行なった時点ですでに70%から80%がリンパ節に転移しています。

中咽頭がんと下咽頭がんも50%から60%ほどリンパ節に転移しています。

咽頭がんになっている場合、そばにある食道などに転移し、食道がんや口腔がんなども併発していることがあります。

上咽頭がんになっていると中耳炎を併発していることもあります。

咽頭がんの末期では下咽頭がんがステージ3期から4期の場合、骨、軟骨、筋肉などに浸潤し、リンパ節・肺・骨などに転移、飲み込む際の異物感、声がれ、息苦しさなどが症状としてあらわれることが多いです。

中耳炎による頭の膨張感や頭痛、難聴などの症状が出ていることがあります。

また景色が二重に見えてしまったり、遠隔転移をしていると、その箇所にも痛みがあります。

最も予後が悪いのは「下咽頭がん」で、直接目で見ることができない場所であり、がんがかなり大きくならないと症状が出ませんので発見が遅れがちです。

また首のリンパ節にも転移しやすいです。

 

まとめ

鼻づまり、咳が続く、喉の痛み、声のかすれ、扁桃腺の腫れ、食物が呑み込みにくい…

「咽頭がん」は風邪の症状と似ているため、そこに大きな病気が隠れていたり、がんが密かに進行していることを見逃してしまうかもしれません。

ですが、ここでご紹介した内容を参考に、飲み物や食べ物を飲み込む時に少しでものどに違和感を感じたり、リンパ節が腫れているような気がした場合には、念のために早めに「耳鼻咽喉科」を受診しておくほうが良いです。

それで何もなければ安心ですし、もし咽頭がんになっていた場合でも早期発見であればすぐにでも治療開始できますので、比較的軽度の症状の段階で完治をすることができる可能性が高くなります。

とにかく早めに受診しましょう。

 

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薮内直純

薮内直純

株式会社イコールヒューマン。生活習慣病専門ライター。医療や医薬品に関する誤解を解き明かしながら、真実を追求した記事を提供中。

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