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どんな関係がある?甲状腺がんとヨウ素の放射性同位体

生活習慣病
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2011年の福島県における原発事故の際、広く懸念されるようになった甲状腺がん。

その予防方法や症状の詳細については、事故発生当時に福島県やその周辺に居住していなかった方でも気になることでしょう。

胃がんや肺がんなどのような一般的ながんは、がん細胞が発生する部位も分かりやすいことから広く認知されていますが、「甲状腺」というと具体的にどの辺にあるのか分からないという方も少なくなく、そのことは甲状腺がんについて詳しくは知らないという方の多さに大きく関係しているといえます。

今回はそんな甲状腺がんと、その発症メカニズムや予防において重要となるヨード(ヨウ素)について解説したいと思います。

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喉仏付近にできる「甲状腺がん」

まずは甲状腺がんの特徴について見ていきましょう。

・喉にできるがん

そもそも甲状腺とは喉仏付近にある10~20g程度の非常に小さな臓器のことを指します。

この臓器には甲状腺ホルモンを分泌する働きがあり、具体的には基礎代謝や、脳や骨の成長をつかさどっています。

甲状腺がんとはこの喉仏付近にある臓器にできるがんのことであり、「乳頭がん」「濾胞(ろほう)がん」「低分化がん」「髄様(ずいよう)がん」「未分化がん」「悪性リンパ腫」の6種類に分類されます。

甲状腺がんのうち約9割は乳頭がんに該当し、このタイプのがんはリンパ節への転移がしやすいという特徴があります。

しかし、がんそのものの進行は比較的ゆっくりとしており、命にかかわるレベルまで重症化してしまうことは稀です。

・女性の方が患者数が多い

がんの発症率は男女間で差があるものも少なくありません。

甲状腺がんの場合、その発症率は女性のほうが高いという傾向があり、70歳以上の女性は特に罹患率が高いことも分かっています。

ちなみに、1年間で甲状腺がんと新たに診断される人の数は男性が6.8人、女性が17.4人となっており、このことからも甲状腺がんが女性に多いがんであることが分かります。

一方、比較的年齢の高い人が発症するがんというイメージを持たれやすい甲状腺がんですが、20~30代の女性の患者数が他のがんに比べて多いことも分かっており、若い方でも注意しなければならないがんのひとつといえるでしょう。

・腫れ以外の症状が出づらい

甲状腺は非常に小さい臓器であることから、この箇所にがんが生じても目立った変化はなかなか起こりません。

そのため、目立った症状としては喉の周辺の腫れ程度しか生じず患者自身が自覚しづらいという傾向があります。

また、腫れ以外の症状としては呼吸や食べ物の飲み込みづらさ、声のかすれ、のどの圧迫感、痛み、血痰などが生じることもありますが、腫れに比べるとこれらの症状が生じることは稀であり、特に初期の段階でこれらの症状が現れることは極めて少なくなっています。

・発生する要因

甲状腺がんの発生要因として広く知られているのが放射線による被爆です。

そのため、上述の原発事故が発生した際には周辺に住む方々を中心に放射線を浴びてしまうことによる甲状腺がんの発症が懸念されるようになり、早期発見するための検査なども行われるようになりました。

また、放射線を浴びることによる甲状腺がんに関しては特に若年期に放射線を浴びることが将来的な発症要因になりやすいことも分かっており、小さいころに何らかの原因で放射線を浴びることがあった方は大人になってからもより注意が必要といえます。

一方、放射線によって発症するというイメージが強い甲状腺がんですが、近年では遺伝によって発症する確率が上がることも分かっています。

このことは甲状腺がんの中でも特に髄様がんでその傾向が強く、家族や親戚に甲状腺がんになったことがある方が多い場合もまた注意が必要といえるでしょう。

 

大切なミネラル「ヨード(ヨウ素)」

甲状腺がんだけでなく、甲状腺ホルモンの分泌やその働きにも大きく関係するのがヨウ素です。

続いては、そんなヨウ素について見ていきましょう。

・そもそもヨウ素とは?

人間の体はさまざまなミネラルを必要としており、それらは食事から摂取する必要があります。

ヨウ素もまたそんな人間の体にとって欠かすことのできないミネラルの一種であり、人は自覚をしていなくても日々の食事からヨウ素を摂取しています。

ヨウ素は海水に多く含まれていることが分かっており、特に海藻類は海水から取り込んだヨウ素を多く含んでいることで知られています。

例えば昆布の場合、40~60mgだけで人が一日に必要とする量の0.095~0.15mgのヨウ素を含んでいます。

ちなみにヨウ素が不足してしまうと人間の体内では甲状腺ホルモンの分泌が十分に行われなくなることによるさまざまな不調が生じることが分かっていますが、日本人の場合、昆布やわかめをはじめとした海藻類は日常的に多く食べていることから特に意識をしなくても十分な量のヨウ素を摂取できているとされています。

・ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料になる

人の体内におけるヨウ素の主な働きのひとつが甲状腺ホルモンの生成です。

これはヨウ素そのものが甲状腺ホルモンの材料になるためであり、ヨウ素の摂取量が十分でないと甲状腺ホルモンも十分な量が生成されなくなってしまい、甲状腺ホルモンが担っているさまざまな体内の働きに影響が出てしまいます。

一方、ヨウ素の摂取量は多ければよいという訳ではなく、基準値を大幅に上回る量を日常的に摂取していると逆に体調不良を引き起こしてしまう恐れがあります。

例えば甲状腺の働きが弱まる「甲状腺機能低下症」や、甲状腺が腫れてしまう「橋本病」といった疾患はヨウ素を多く摂取しすぎることで引き起こされることが分かっており、日常的に昆布などの海藻類を多く食べすぎるといったことは避けなければなりません。

また、ヨウ素が材料となる甲状腺ホルモンは「バセドウ病」の発症にも大きく関係していることが分かっており、この病気を発症した方もまたヨウ素の摂取量にはより注意しなければなりません。

・甲状腺ホルモンは成長の促進、基礎代謝の維持・増進をサポートする

ヨウ素を材料として作られ甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンは骨や脳の成長を促進したり、基礎代謝の維持・増進をサポートしたりする働きがあることも分かっています。

よって、人間の体の働きを正常化するためには、甲状腺ホルモンの材料となるヨウ素を適量摂取することが不可欠であるといえます。

 

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甲状腺がんの原因の一つとされている放射能汚染

上述した原発事故に伴って人体への影響が懸念されるようになったのは、放射能汚染によって被爆した人が甲状腺がんを発症する危険性が高いことが分かっているためです。

続いては放射線と甲状腺がんの関係について見ていきましょう。

・被爆と甲状腺がんの関係

そもそも何らかの要因によって人が被爆をすると、甲状腺がんになる可能性が高くなるという研究結果は以前より報告されており、先の原発事故に限らず放射線を浴びる可能性のある環境に長期間いた人は必然的に甲状腺がんになる確率が高くなるといえます。

このような被爆と甲状腺がんの関係には、甲状腺ホルモンを生成し分泌する甲状腺の働きと、被爆することによって体内に入り込むヨウ素の放射線同位体が大きな影響を及ぼしています。

ちなみにかつてのソ連で発生したチェルノブイリ原発事故では、事故から数年が経過してから周辺住民の間で甲状腺がんの発症率が上昇したことが分かっており、このこともまた日本における原発事故に伴って甲状腺がんへの懸念が強くなった原因といえるでしょう。

・ヨウ素の放射性同位体とは?

上述のとおりヨウ素は甲状腺内で甲状腺ホルモンを生成する際の材料となります。

この場合に材料となる海藻類などから摂取できるヨウ素は、それ自体に害はなく直接人体を傷つけることはありません。

その一方でヨウ素の放射性同位体とは、基本的な構造は人体へ悪影響を与えないヨウ素と同じであるものの「放射線を発する」という独自の特徴があるため、人体に取り込まれると通常の要素とは異なる働きをすることとなります。

以上のことから、ヨウ素の放射性同位体とは甲状腺がんを引き起こすこととなる大きな原因のひとつとして認識する必要があります。

・甲状腺に入り込むヨウ素の放射性同位体が大きな要因

ヨウ素の放射性同位体は被爆をすることで体内に取り込まれます。

体内に取り込まれたヨウ素の放射性同位体は、甲状腺ホルモンを生成・分泌する甲状腺にたまり通常のヨウ素と同様に甲状腺ホルモンに変えられるのを待つ形となります。

しかし、ヨウ素の放射線同位体は通常のヨウ素とは異なり「放射線を発する」という特徴があることから、甲状腺内ではヨウ素の放射線同位体がある限り周辺組織を含めて放射線を浴びる形となってしまいます。

これにより甲状腺ではがんが生じ、場合によってはその周辺組織にまで放射線による影響が及ぶこととなります。

甲状腺がんによって呼吸や食べ物の飲み込みづらさを感じることがあるのは、この放射線によって喉や気管にも影響が及ぶためです。

 

放射性同位体対策としてのヨウ素剤

何らかの理由から被爆をしてしまう可能性が高まった場合、甲状腺がんの原因となるヨウ素の放射線同位体対策をしっかりと行えば、甲状腺がんの発症リスクを軽減することが可能とされています。

続いては、その具体的な方法について解説します。

・ヨウ素の放射性同位体対策としてはヨウ素剤が有効

ヨウ素の放射性同位体が甲状腺がんを引き起こすのは、甲状腺内に放射線を放つヨウ素の放射性同位体がとどまってしまうためです。

よって、ヨウ素の放射性同位体が甲状腺内にとどまらないようにできれば甲状腺がんの発症リスクは抑えることができます。

一般的なヨウ素と同様に甲状腺内にとどまり甲状腺ホルモンの材料となる「ヨウ素剤」は、体内にあらかじめ取り込んでおくことで後から体内に入ってくるヨウ素の放射性同位体が甲状腺内にとどまるのを防ぐことができます。

これによって甲状腺内にとどまることができなかったヨウ素の放射性同位体は尿などと共に体外に排出されるため、甲状腺がんの発症リスクは大幅に抑えることが可能となります。

また、ヨウ素剤は薬として飲むことができるため簡単に摂取ができ、実際にチェルノブイリ原発事故が起こった際には周辺住民にヨウ素剤が配布されました。

・ヨウ素やヨウ素剤の取り入れすぎには注意が必要

ヨウ素や薬として飲むことができるヨウ素剤は多く摂取すればよいということはなく、逆に多く摂取しすぎてしまうと甲状腺の本来のホルモン分泌機能などに悪影響が生じてしまうこともあります。

特に日本人の場合、ヨウ素を多く含む海藻類を日常的に摂取していることから、そもそもヨウ素剤が必要ないという方も多く、実際に2011年の原発事故が発生した際にはヨウ素剤を配布する必要はないとの見方が多くされました。

また、そもそも体内のヨウ素量が十分に足りている人がヨウ素剤を飲むことによってさらに多くのヨウ素を摂取してしまうと、ヨウ素を体外に排出しようとする体の働きが活発になり、逆に本来必要な量のヨウ素も排出してしまうことがあります。

このような状態になってしまうと甲状腺内にヨウ素の放射性同位体がとどまる余地ができてしまうため、甲状腺がんの発症リスクはより高くなってしまいます。

・イソジンとヨウ素剤の違い

2011年の原発事故が発生した際には「イソジン」を飲むと甲状腺がんを防ぐことができるという情報が流れ、一部ではイソジンをはじめとしたうがい薬の買い占めが発生しました。

しかし、イソジンのようなうがい薬はそもそもが殺菌目的で服用されるものであることから、大量に服用すると細胞までも傷つけてしまう恐れがあります。

また、イソジンをはじめとしたうがい薬はヨウ素剤とはそもそも構造が異なり、多少のヨウ素の摂取源としての役割は担えるものの、その効果はヨウ素剤と比較すると極めて少なく、甲状腺がんを防ぐほどの働きはないと考えるのが一般的です。

 

まとめ

甲状腺がんはその他のがんとは異なり、放射線の影響がその発症に大きく関係するという特徴があります。

また、その発症を防ぐためにはヨウ素剤を利用し、ヨウ素の放射性同位体が体内にとどまらないようにする必要があります。

一方でヨウ素の摂取は適量を心掛ける必要があり、多く摂取しすぎると逆効果となってしまう場合もあります。

特に海藻類などから日常的に要素を多く摂取している日本人は、そもそもヨウ素剤などからより多くのヨウ素を摂取する必要がないケースもあるため、そのような点も考慮し、対策を練る必要があるでしょう。

 

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薮内直純

薮内直純

株式会社イコールヒューマン。生活習慣病専門ライター。医療や医薬品に関する誤解を解き明かしながら、真実を追求した記事を提供中。

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