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糖尿病専門医制度の歴史と役割|糖尿病専門医は普通の医師と何が違う?

 2019/02/24 生活習慣病
この記事は約 11 分で読めます。 1,967 Views

糖尿病は生活習慣病のひとつであり、発症すると完治が難しいと言われる病気です。

糖尿病と診断されたら病気とうまく付き合っていくことが大切なのですが、そのためのポイントのひとつに医師選びがあります。

もちろん普通の医師にかかることもできるのですが、糖尿病については「糖尿病専門医制度」もあります。

糖尿病専門医は普通の医師に比べると糖尿病についての知識や経験も多く、受診したら自分の糖尿病についてより詳しく知ることができるでしょう。

ここでは糖尿病専門医について詳しくご紹介していきます。

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「糖尿病専門医」とは

●日本糖尿病学会がおこなう専門医試験に通った医師のみが得られる資格

糖尿病専門医とは、日本糖尿病学会がおこなう専門医試験に通った医師のみが得られる資格です。

専門医試験を受験するためには筆記試験や面接、専門医の資格取得、臨床研修、学会発表などの厳しい条件があります。

●糖尿病認定医制度は1989年に発足

糖尿病認定医制度は1989年に発足し、後の専門医となる日本糖尿病学会の認定医として475名が認定されました。

●正式名称は「日本糖尿病学会認定専門医」

一般的に糖尿病専門医と呼ばれますが、正式名称は「日本糖尿病学会認定専門医」です。

糖尿病専門医は糖尿病についての専門知識をもとに質の高い診療をおこない、患者さんへの指導をおこなっていきます。

そして糖尿病専門医ではないかかりつけ医のために患者さんの治療や診療のサポートをおこなっていき、地域の糖尿病診療に貢献します。

●5年に1度の更新が義務付けられている

糖尿病専門医の資格は一度取得したら終わりではなく取得後も糖尿病について学び続けなければならず、最新の知識や技能を保持していることが求められます。

そのためには、5年に1度、一定の審査を経て資格更新をしなければなりません。

更新するためには糖尿病に関する学会に参加して教育講演を受講し、さらに担当している糖尿病患者についての診療内容や指導歴を報告しなければなりません。

 

糖尿病専門医になるまでの流れ

●糖尿病専門医の試験を受けるための条件

糖尿病専門医になるためには筆記と面接による専門医試験を受験するのですが、試験を受けるためには以下のような厳しい条件があります。

・日本の医師免許証を持っていて、人格に優れ識見の高い人物であること
・日本糖尿病学会に3年連続入会していること
・日本内科学会の認定内科医か、日本小児科学会の専門医の資格を持っていること
・3年以上の糖尿病臨床研修をおこなっていること

研修は内科か小児科の認定医研修を修了したのちに受けることになり、糖尿病学会が認定する教育病院においておこないます。

・糖尿病臨床に関する学会発表があるか、論文が2編以上あること
・入院糖尿病患者の治療経験が40例以上あること

同じ型の糖尿病患者だけではなく1型も2型も含め、さらに合併症のある症例など様々な症例が含まれていなければなりません。

●内科医が糖尿病専門医の認定を受けるまでの流れ

・初期臨床研修を受ける(2年)

・認定内科医研修を受ける(1年以上)

・認定内科医研修の課程を修了する(1年以上)
・認定内科医試験受験資格が派生する

・研修開始同意書を提出する
(糖尿病臨床研修を受けるにあたって教育機関が変るため提出する必要がある)
・研修カリキュラムチェックリストに沿って研修をおこなう
・糖尿病学会入会が推奨される

・糖尿病臨床研修を受ける(3年以上)
・認定内科医を取得する

・糖尿病専門医の試験を受けるための条件を満たす

・糖尿病専門医試験に合格する

・糖尿病専門医の認定を受ける

・認定更新のために生涯教育を受ける(5年ごとの更新)

●小児科医が糖尿病専門医の認定を受けるまでの流れ

・初期臨床研修を受ける(2年)

・小児科専門医研修を受ける(1年以上)

・研修開始同意書を提出する
(糖尿病臨床研修を受けるにあたって教育機関が変るため提出する必要がある)
・研修カリキュラムチェックリストに沿って研修をおこなう
・糖尿病学会入会が推奨される

・小児科専門医研修の課程を修了する(3年以上)
・小児科専門医試験の受験資格が派生する

・糖尿病臨床研修を受ける(3年以上)
・小児科専門医を取得する

・糖尿病専門医の試験を受けるための条件を満たす

・糖尿病専門医試験に合格する

・糖尿病専門医の認定を受ける

・認定更新のために生涯教育を受ける(5年ごとの更新)

●糖尿病専門医の更新に必要なもの

・更新申請書
・単位取得表

糖尿病専門医の更新には5年間に70単位以上の取得が必要となります。

単位を取得するためには関連の機関誌や学会誌などへの論文発表のほかに、学術集会や教育的企画への参加、指定講演の聴講が求められます。

・症例報告20症例(小児は5症例)
・内科学会または小児科学会認定証
・糖尿病患者教育に関する資料

勤務する医療機関でおこなった糖尿病教室の開催や友の会の活動、地域における小児サマーキャンプやウォークラリー、糖尿病デーや糖尿病週間への協力など、糖尿病患者教育に参加したり協力したりしたことを示す参加証やプログラムなどの資料を提出します。

・更新審査料30,000円

 

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糖尿病専門医と普通の医師の違い

●医師であれば内科を標榜することができる

医師であれば内科を主な診療科として選ぶことができます。

厚生労働省の調査(2016年12月現在)によると、日本全国で届出のある医師は319,480人で、そのうち内科を主な診療科としている医師は60,855人です。

このうち、日本内科学会で認定している総合内科専門医は2019年1月現在で34,466人です。

そして、日本糖尿病学会によると2018年10月現在の糖尿病専門医は5,718人です。

つまり、内科を主な診療科としている医師のうち総合内科専門医は約半数、糖尿病専門医は約11人に1人しかいないということになります。

●糖尿病専門医なら正確に糖尿病の状況を把握できる

内科を主な診療科として標榜している内科医の中には、もともと外科や皮膚科、産婦人科など他の診療科だった医師もいます。

検査方法にもばらつきがあり血液検査しかしない医師もいます。

糖尿病専門医なら糖尿病についての検査を詳しくすることができるし、糖尿病についての経験も多いです。

普通の内科医より糖尿病専門医の方がより正確に糖尿病の状況を把握できるといえるのです。

●糖尿病の診療にはチーム医療も大事

糖尿病専門医は診療所やクリニックでは糖尿病についての専門的な外来診療をおこないますが、患者さんの症状によって外来診療の他に入院診療もおこないます。

糖尿病専門医のいる病院には糖尿病専門の看護師や薬剤師、栄養士や理学療法士、検査技師などがいてチームで患者さんの糖尿病診療にあたります。

糖尿病教育入院もおこない、患者さんの糖尿病や合併症の状況を詳しく検査し患者さんは食事療法や運動療法をしながら自分の病気ついて学ぶことができます。

●病状が安定していれば一般のかかりつけ医の診療を受けることも多い

糖尿病の診療では血糖値や、HbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)などの検査をおこなって血糖をコントロールできているかどうか、合併症がないかどうかなどを定期的に確認しなければなりません。

その上で病状が安定しているようなら、一般のかかりつけ医である普通の医師による糖尿病の診療を受けることも多くなります。

 

糖尿病専門医の探し方

●日本糖尿病学会の専門医検索ページから探すことができる

糖尿病専門医は「日本糖尿病学会の専門医検索ページ」「糖尿病情報センターの医療機関検索ページ」から探すことができます。

都道府県別に認定されている糖尿病専門医の人数は以下のようになっています。(2019年1月時点)

○北海道支部

・北海道 182人

○東北支部

・青森県 52人
・岩手県 37人
・宮城県 80人
・秋田県 39人
・山形県 37人
・福島県 51人

○関東甲信越支部

・茨城県 99人
・栃木県 69人
・群馬県 83人
・埼玉県 215人
・千葉県 189人
・東京都 914人
・神奈川県 333人
・山梨県 33人
・新潟県 60人
・長野県 71人

○中部支部

・富山県 62人
・石川県 65人
・福井県 29人
・岐阜県 101人
・静岡県 98人
・愛知県 316人
・三重県 48人

○近畿支部

・滋賀県 63人
・京都府 185人
・大阪府 535人
・兵庫県 303人
・奈良県 41人
・和歌山県 84人

○中国・四国支部

・鳥取県 31人
・島根県 40人
・岡山県 129人
・広島県 93人
・山口県 49人
・徳島県 45人
・香川県 56人
・愛媛県 80人
・高知県 41人

○九州支部

・福岡県 291人
・佐賀県 29人
・長崎県 49人
・熊本県 97人
・大分県 55人
・宮崎県 39人
・鹿児島県 62人
・沖縄県 58人

●自分が通えるかどうかで判断

できるなら糖尿病専門医を受診したいものですが、地域によっては糖尿病専門医の少ないところもあり通える範囲にいないこともあります。

また、平日は仕事で通院できない場合など土日の診療をおこなっていない病院を受診することは難しいでしょう。

もしも、どうしても糖尿病専門医を受診することができないとしても、かかりつけ医と連携して診療してもらうことは可能です。

そして、糖尿病専門医を受診したい場合はまずはかかりつけ医に相談して紹介してもらうこともできます。

●ネットワークをもつ糖尿病専門医を選ぶ

糖尿病専門医の診療では、合併症が起きたときにその合併症について詳しい専門医を紹介してくれるかどうかも大切です。

合併症の起こったのが目なら眼科、心臓なら循環器科などといった、それぞれ適切に紹介できるようなネットワークを持つ糖尿病専門医であるということです。

ただ、これはなかなか判断しづらいので地域で評判がよく通院している患者さんの数が多いというのも判断材料になるでしょう。

可能なら実際に通院している人に話を聞いてみることもおすすめします。

●スタッフが充実しているかどうかも大切

どの医療機関を選ぶかどうか判断する際にはやはりスタッフが充実しているかどうかもポイントとなります。

できれば、日本糖尿病療養指導士(CDE-J)の資格を持った看護師や管理栄養士、薬剤師や理学療法士などが常勤している医療機関を選ぶことをおすすめします。

●糖尿病専門医によるセミナーを受講することもできる

日本全国では糖尿病専門医によるセミナーを無料で受けることができます。

糖尿病に興味のある方は、参加してみることもおすすめします。

・市民公開講座

日本糖尿病学会では、総会や各支部での地方会で患者さんや一般の方の参加できる市民公開講座を開催しているので糖尿病専門医の話を直接聞くことができます。

・世界糖尿病デー・糖尿病週間

毎年11月14日は、国連により定められた世界糖尿病デーです。

これにちなんで各地で糖尿病の啓発活動がおこなわれます。

日本では11月上旬から中旬にかけた時期を糖尿病週間として各地で講演会やイベントなどが開催されています。

・糖尿病教室

糖尿病専門医のいる医療機関では糖尿病についての勉強会などがおこなわれています。

各施設により開催時期や回数は違うので、興味がある方はそれぞれ問い合わせて参加してみることをおすすめします。

●友の会(糖尿病患者の会)について

日本糖尿病協会でもさまざまな活動をおこなっていて、そのひとつに糖尿病患者の会である「友の会」という会があります。

「友の会」は糖尿病の患者さんとその家族、医師や看護師などの医療スタッフにより糖尿病の患者さんは病気に負けずにがんばれることを願って作られた会です。

全国の病院や診療所などにあり、糖尿病に関心のある方なら誰でも入会することができます。

活動内容は勉強会や糖尿病の食事療法に基づいた料理教室、患者さん同士の情報交換会、旅行などさまざまなものがあり、患者さんの暮らしを豊かにするためのさまざまな企画を独自におこなっています。

 

まとめ

糖尿病専門医制度は1989年に始まって制度で、糖尿病についての専門的な知識や経験を持つ医師を認定するための制度です。

糖尿病専門医は糖尿病についての最新の専門知識をもとに糖尿病の診療にあたり、一般のかかりつけ医と連携して地域の糖尿病診療のための大切な役割を担っていきます。

自分の糖尿病の状況をしっかり把握するには糖尿病専門医を受診することをおすすめしますが、自分が通えるかどうかでも判断し受診を希望するときにはかかりつけ医に相談し紹介してもらうとよいでしょう。

糖尿病専門医は日本糖尿病学会のホームページなどで検索することができるので、興味のある方は、地域の糖尿病専門医を探してみることをおすすめします。

 

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木村 哲也

木村 哲也

株式会社イコールヒューマン代表取締役。生活習慣病の権威者である崇高クリニックの荒木裕院長と提携し、主に生活習慣病に関わる様々な情報を広く分かり易く提供中。

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