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統合失調症の薬を服用した患者さんの感覚は「幻覚や妄想に無関心になる」

 2017/01/18 生活習慣病
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精神疾患の一つとして知られている統合失調症ですが、その内容や治療法などについて詳しく理解しているという人は少ないでしょう。

耳慣れない病名ではありますが、実は厚生労働省の調査によると、日本の人口における100人に1人が罹患しているとされており、決して他人事とは言い切れない病気なのです。

症状や経過などはもちろん、罹患した場合に処方される治療薬がどのような効果を与えてくれるのかなど、様々な面から知識を持っておきましょう。

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治癒率が高まってきた統合失調症

統合失調症は精神疾患の一種であり、主に幻覚や妄想などの精神面に影響する症状が現れるという特徴があります。

このような症状は時や場所を選ばずに現れてしまうため、周囲の人々や家族と関わりを持ちながら日常生活を送ることが困難になるだけでなく、病気によって思考や行動などが一般的な人々とは異なっているということにも自分で気づきにくいため、孤立を深めやすいという特徴も併せて持っています。

他の多くの精神疾患と同じく、基本的には緩やかに慢性的な経過を辿りますが、一時的に幻覚や妄想といった症状が強現れる急性期というものが見られます。

ひと昔前は「精神分裂症」と呼ばれて心における不治の病として恐れられていましたが、近年では効果の高い新薬の研究開発や社会的な支援制度なども充実するようになったため、初めて統合失調症を発症した患者のうち約50%は長期的な回復が確認できるようになってきました。

中には完全回復を認められた患者も珍しくなく、治療できる病気として再評価されつつあります。

 

統合失調症のかかりやすい年齢、性別とは?

統計を取っている厚生労働省によると、統合失調症やそれに準じる疾患として医療機関を受診している患者の数は1日当たり25.3万人とされており、そのうちの約18万人もが入院治療を余儀なくされています。

これを鑑みた上で全体的な患者数を推計すると2008年時点で約79.5万人とされており、受診をしていない潜在的な患者数や予備軍まで含めると膨大な数の患者が存在していると考えられています。

日本ではいまだに統合失調症や患者数についての調査が十分でないため明確には判明していませんが、世界的にみると統合失調症を発症しやすい年齢にはある程度特徴があります。

主に思春期から青年期に当たる10代後半から30代にかけて発症する患者が多く、一方で中学生以下の発症数は非常に少なくなります。

40歳を超えると新たに発症する患者は減少するため、発症のピークは10代後半から20代となっています。

これまで発症のしやすさに性別の差はないとされてきましたが、最新の診断基準を用いて診断された医療機関の報告をまとめると、男女比は1.4:1となっており若干男性に発症しやすいことが分かっています。

これに加えて女性の場合は初めて統合失調症を発症する年齢も遅めであることが知られており、男性で10代後半の若い世代ほど発症しやすいという傾向が見て取れます。

 

統合失調症は遺伝するのか?

精神的な症状の多い統合失調症は、現代医学を用いてもその原因は明らかになっていません。

10代後半以降に多く発症するという特徴から、進学や就職といった「人生の大きな転機」がきっかけとなっていることが考えられていますが、これはあくまでもきっかけであって原因は異なると見られています。

統合失調症を発症しない多くの人も同じように人生の転機を何度も迎えることがありますが、大部分が統合失調症に罹患するわけではないことからも直接的な原因は他にあると考えられているのです。

統合失調症の原因については様々な説がありますが、双子や養子など特殊な関係にある人々を調査してみると、発症の原因に素因や環境が影響していることが分かります。

具体的に言うと、一卵性双生児であれば遺伝子的にはほぼ同じ要素を持っているはずですが、2人が同じように統合失調症の症状を現す確率は50%とされています。

このことから、遺伝の影響はゼロではないものの、それだけで発症するか否かが決まるものではないと言えます。

近年の研究によると、統合失調症を発症する原因は素因と環境がどちらもある程度影響を与えており、素因は約3分の2で、環境は残りの約3分の1程度、発症に関わっていると見られています。

人間の遺伝子は親から子供へと受け継がれ、子供はさらに生活環境などの影響を受けますが、統合失調症に罹患している母親を持つ子供が同じ用に発症する確率は約10%に過ぎず、遺伝的な要素はごくわずかだと考えられています。

 

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統合失調症の代表的な症状とは?

統合失調症の症状は多岐にわたるため、症状を全て把握し理解するのは難しくなりますが、最も多く見られる症状としては「幻覚や妄想」、それに伴う「生活の障害」や統合失調症という病気に罹患していることそのものを理解できない「病識の障害」の3つが挙げられます。

幻覚と妄想

1つ目の「幻覚と妄想」については、統合失調症を代表する症状と言うことができます。

これらは統合失調症に限らず他の様々な精神疾患でも確認することができますが、特に統合失調症ならではの特徴というものがあります。

「幻覚」はその名の通り、実際にはその場所に存在しないものが見えるような感覚を覚えることです。

統合失調症の場合、「目から幻覚を感じる」というよりも「聴覚からその感覚を得る」患者が多く、誰もいないのに人や動物の声が聞こえてくるといった症状が一般的です。

具体的に言うと、自分をバカだと嘲笑したり批判してくるような言葉や行動を命令してくる言葉、現在の自分の行動を監視しているかのような言葉などが耳に入ってくるような感覚に陥ります。

普通の会話の時のように耳に入ってくるような症状の他、頭の中に直接響いてくるような症状もあります。

こういった症状のある患者は、幻覚や幻聴に集中して思わず笑ってしまったり、それらと会話して一人でブツブツと独り言を続けたりするので、周囲から奇妙な人だと誤解されてしまいがちです。

本人にとっては紛れもなく実際に聞こえたり見えている症状なので、なかなか周囲に理解してもらえない苦しさを抱え込む患者が多いです。

「妄想」は、真実は明らかに違っているのにそれを信じず、誤った内容の方を信じ込んで周囲の言葉や訂正を聞き入れなくなってしまう症状のことを言います。

集団ストーカーに監視されていたり後を付けられている、周囲の人が皆自分のことを見ているといった被害妄想が主な症状となります。

こういった症状のうち、統合失調症ならではの特徴としては自分が他者から悪い行いを受けているといった人間関係に関わるものが大部分を占めていることが挙げられます。

症状の内容は、患者がもともと持ち合わせていた考えやコンプレックスなどと繋がっていることが多く、無意識下の患者の意識が感覚として表れていると考えられます。

また、周囲の人にとっては患者の幻覚や妄想だったとしても、患者本人にとっては現実で真実だと感じられているため、非常に大きな不安や恐怖を引き起こしてしまいます。

本人が実際に感じてしまっている以上これを無視することはできず、症状が酷くなれば幻覚や妄想の世界に従って異常行動を行ってしまうこともあります。

周囲がどれだけ幻覚や妄想だと説明したとしても、患者はそれすらも自分を陥れる陰謀だと感じてしまうため説得は非常に困難になります。

生活の障害

2つ目の「生活の障害」については、前述した幻覚や妄想によって生活に支障が及んでしまう症状です。

日常生活をスムーズに送るためには他者とのコミュニケーションや行動が必要不可欠ですが、症状によってこれらがうまく行えなくなってしまいます。

すると周囲からは協調性がない、気が利かない、仕事をしないなど単に性格の問題だと誤解されてしまうことが多く、はっきりとした症状が現れる幻覚や妄想と比べて統合失調症が原因になっていると分かり難いのが特徴です。

患者本人も自分が統合失調症であると判断できないため、うまく周囲と理解を深めることができず会社を辞めたり引きこもるようになってしまいます。

病識の障害

3つ目の「病識の障害」とは、患者本人が統合失調症に罹患していることが理解できず、幻覚や妄想を現実として認識しているような状態を指します。

患者の多くは、それまでの順調だった日々と比べて調子が何か違うこと、神経過敏に陥っていることなどは薄々気づいています。

しかし幻覚や妄想症状が激しく現れている時期になると、それが統合失調症による影響なのだと説明されてもなかなか理解することができません。

病気そのものが理解できないことも多く、治療を行って症状が軽減すると統合失調症や症状について自分でも理解できる範囲が広がっていきます。

自分自身の症状については認められなくても、自分以外の患者の症状や統合失調症という病気については認識することができるため、本人の判断能力そのものが衰えているといった問題ではないのです。

自分の状態を客観的に把握したり、誤りのある部分を認識して直していこうとする機能が障害を受けていると考えられます。

 

統合失調症の治療薬が感覚に及ぼす効果、副作用とは?

統合失調症だと診断された場合、治療としては主に治療薬を内服する方法が採用されます。

一般的に使用されるのは「抗精神病薬」と呼ばれるもので、「定型抗精神病薬」と「非定型抗精神病薬」という2つのタイプに分けることができます。

「定型タイプ」は昔から使用されてきたもので、「非定型タイプ」は近年普及してきた種類になります。

この2つは脳で分泌される神経伝達物質へ及ぼす効果に違いがあり、非定型タイプは定型タイプでよく見られた副作用を軽減することを目標として開発された経緯があります。

副作用のリスクを少しでも抑えたい場合は非定型タイプを用いることが多く、しかもこちらには認知機能に作用することで症状を緩和し、生活の質を高める効果が高いとして注目を集めています。

「定型タイプ」は、統合失調症の中でも特に幻覚や妄想などの症状に効果があるとされており、神経伝達物質である「ドーパミン」の働きを抑制することができます。

もともとドーパミンは私たちが正常に活動するために必要不可欠なものであり、分泌が減ってしまうと脳から身体の各部への命令がうまく行われなくなるため、手の震えや身体の硬直などの副作用が現れることがあります。

ただ、ドーパミンの働きが抑えられるということは感覚が鈍くなるということであり、幻覚や妄想症状が現れても興味や関心が湧かず、無関心になります。

それによって幻覚や妄想に対する行動を起こすことが無くなり、症状を改善させることができるのです。

もちろん薬が効きすぎれば意欲低下や認知機能の低下に繋がってしまうため、必ず医師の指導に従って服用し、患者が自己判断で量を増やしたり中止したりしないよう注意が必要です。

一方、「非定型タイプ」の治療薬は症状の中でも特に感情が鈍くなったり無気力になったりする症状の他、集中力の欠如や記憶力低下などの症状に対して定型タイプのものより高い効果を発揮してくれます。

「非定型タイプ」の治療薬は、定型タイプで見られる手の震えなどの副作用も抑えられており、安全性の高い治療薬として認められています。

定型タイプも非定型タイプも、服用に当たっては眠気や口の渇き、排尿障害や性機能の低下など様々な種類の副作用が見られることがあります。

副作用の発生頻度や症状が重い場合は、それらに対して効果のある治療薬をさらに服用することになります。

治療として用いられる薬はこれだけではなく、患者の症状によっては他にも抗鬱剤や抗不安薬、睡眠導入剤など目的に応じたものをサポートとして治療に取り入れることもあります。

 

統合失調症の治療薬の副作用について

他の医薬品と同じく、全く同じものを用いている場合でも副作用の発生には個人差があります。

服用するたびに副作用が出てしまう人もいれば、どれだけ使用しても全く問題ない人もいます。

通常、副作用症状が現れた場合には服用する量を少なくしたり、その副作用を抑える効果のある新たな薬を用いることになります。

もしくは副作用が少ないとされるタイプの治療薬に変更するといった対応が考えられますが、いずれにしても判断は患者の主治医が主導して行うことになります。

副作用が嫌だからと言って患者が自分で服用を止めてしまったりすると、統合失調症が再発したり症状が悪化してしまうこともあるので非常に危険です。

服用は必ず医師の指示に従い、不安を感じた場合はすぐに医師に相談するようにしましょう。

 

まとめ

統合失調症は症状も辛く、改善していくのが難しい病気ですが、決して不治の病ではありません。

信頼できる医師を見つけ、根気よく治療を続けていけば効果を得られる可能性は十分にあるのです。

 

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木村 哲也

木村 哲也

株式会社イコールヒューマン代表取締役。生活習慣病の権威者である崇高クリニックの荒木裕院長と提携し、主に生活習慣病に関わる様々な情報を広く分かり易く提供中。

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