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こんな症状には要注意!食道がんの初期症状

 2017/06/19 生活習慣病
この記事は約 11 分で読めます。 11,172 Views

がんは恐ろしい病気です。

しかし治療技術が進歩した現在では10年後の生存率は6割近くになると言われます。

その中で、10年後の生存率が約3割と低いのが「食道がん」です。

なぜ食道がんは10年生存率が低いのか、どうすれば早期発見できるのか、どうすれば予防できるのか。

食道がんについて詳しく解説します。

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食道がんは症状が現れにくい!

昔は、がんは「不治の病」とも言われるほど恐ろしい病気で、がんの告知は死の宣告のような重いものでしたが、治療技術が進歩した現在ではがん発症者の10年後の生存率は6割近くになる、というデータもあります。

治療を受けながら仕事を続けている人も多く、以前ほど深刻な病気ではなくなっています。

また、がんは日本人の2人に1人がかかる国民病だとも言われています。

そのため身近な病気でもあるのです。

先ほど、がんの10年生存率は6割近い、というお話をしましたが、これは部位によっても異なります。

がんには、胃がんや大腸がん、肺がんなどがありますが、部位によって10年生存率は大きく異なるのです。

2016年1月に発表された部位ごとの10年生存率を見てみると、大腸がんが69.8%、胃がんが69.0%と高い数値になっていますが、食道がんの10年生存率は29.7%となっています。

「食道がん」になってしまうと、7割以上の人が10年以内に亡くなってしまうのです。

これは、食道がんの症状が現れにくいため、早期発見が難しい事が原因となっています。

どんどん進行していく病気ですから、がんで命を落とさないために大切な事は、早いうちに発見、治療を行う事だという事は今では常識となっています。

食道がんについても、最も早い段階であるステージⅠで発見された場合の10年生存率は59.2%あるのです。

ですが、ステージⅡで発見された場合は44.4%、ステージⅢで発見された場合は27.6%、ステージⅣまで進行していると10年生存率は11.4%にまで下がってしまいます。

食道がん全体の10年生存率が29.7%という事は、いかに早期発見が難しいか、という事を物語っています。

症例を見ても、ステージⅠで発見されるのは全体の2割程度に過ぎません。

胃がんの場合は6割近くがステージⅠで発見されていますから、いかに食道がんの早期発見が難しいかがお分かりいただけるかと思います。

食道がんの初期段階では、自覚症状がほとんど現れないため、早期発見が困難になっているのです。

 

こんな症状はそのままにしないで!

食道がんは、早期発見が難しい部位の一つです。

それは、初期の段階では自覚症状が分かりにくいからです。

食道がんの初期症状として挙げられるものとして、「食べ物を飲み込んだ時に喉に違和感がある」、「胸の奥がチクチク痛む」、「熱いものや酸っぱいものを飲み込んだ時にしみる」、などがあります。

ですが、このような症状があった時に、がんを疑う人がどれぐらいおられるでしょうか。

大きな痛みもありませんし、日常生活に支障を来す事もほとんどありません。

ましてや、これらの症状は頻繁に現れるものでもありませんし、しばらくするとこれらの症状がなくなってしまう事もあるのです。

そのため、多くの人が食道がんの初期症状を見逃してしまいます。

年を取ると食べたものをうまく飲み込みにくくなる人も多いですし、ちょっとした胸の痛みも珍しい症状ではありません。

熱いものを飲み込んだ時にしみる、という感覚も、それほど深刻には思えないでしょう。

ですが、これらの症状が食道がんの初期症状である場合もあり得るのです。

特に、「中高年でタバコを吸う人」や「お酒を習慣的に飲む人」、「熱いものや辛いものが好きな人」は食道がんになってしまうリスクが高いので、こういった症状があった場合はそのままにしない方が良いでしょう。

しかし、これぐらいの症状では見逃してしまう場合も多いかと思います。

食道がんが進行した場合、食べ物を飲み込む時に喉につっかえるような感覚を持つようになっていきます。

特に固いものを飲み込む時は、喉のつっかえが大きくなります。

食道がんになりやすい中高年では、こういった症状も年齢のせいだと思ってしまいがちですが、手遅れにならないうちに速やかに検査を受けるようにしてください。

 

放置しておくと大きくなってしまう

がん細胞は、誰の体にもできるものです。

そして、それがあったとしても、そのまま大きくならずにその場所に留まっているのなら、そんなに怖い病気ではありません。

がんが怖いのは、他の細胞よりも成長速度が速く、しかも無限に増殖していくからです。

がん細胞は、発生した時にはおよそ0.01㎜程度の小さな細胞に過ぎません。

この状態では見つける事も出来ませんし、体に影響もありません。

ですが、このがん細胞は新しい血管を作り、正常な細胞に行くはずの栄養を奪い取りながら成長をしていきます。

がん細胞は、他の細胞と同じように細胞分裂によって倍々に増えていくのです。

そして、約1cm以上の大きさになると、検査で見つけることが可能になります。

がん細胞がそこまで大きくなるには、10~15年の時間がかかると言われています。

1cmの大きさの状態でがん細胞を発見する事が出来れば早期発見だと言えますが、その時点でもがん細胞が発生してから10年以上が経過しているのです。

増殖しているがん細胞をそのまま放置しておくと、さらにどんどん大きくなってしまいます。

大きくなるという事は、がん細胞の数が増えるという事です。

その細胞の一つ一つが細胞分裂を行いますから、がんは瞬く間に大きくなってしまうのです。

日本人がかかる食道がんの90%は「扁平上皮がん」というものです。

これは、食道の内側の表層部(粘膜上皮)に出来るがんで、口から入ってきた刺激物や異物に常にさらされていますから、細胞分裂が激しい部位であり、そのために細胞の異変も起こりやすいのです。

そうすると、体の自然修復機能も追いつかなくなり、異変が積み重なることでがん細胞が出来てしまいます。

身体が健康な状態であれば、私たちの体が元から持っている免疫力でそのがん細胞を排除する事が出来るのですが、免疫力が衰えて排除が追い付かなくなると、がん細胞は活発に細胞分裂を始め、大きくなってしまいます。

また、食道がんにはもう一つの種類があります。

それは、「腺がん」と呼ばれるものです。

腺がんは、食道の内側の壁にある、粘液を分泌する食道腺を形成している腺細胞ががん細胞になったもので、「逆流性食道炎」の人がなりやすくなっています。

これらは、放置していると周囲の組織を破壊しながら増殖し、周囲に広がっていきます。

これを「浸潤(しんじゅん)」と言い、大きくなっていく状態です。

このがん細胞が粘膜の中に留まっているうちは「早期食道がん」と言われ、この状態ですとがん細胞を切除する事で完全に治すことが可能です。

ですが、このがん細胞が粘膜下層にまで進むと「表在食道がん」と呼ばれるものになり、この状態になるとがんがリンパ節などへ転移しやすくなってしまいます。

さらに固有筋層まで進んでしまうと、「進行がん」と呼ばれるものになるのです。

食道壁にはリンパ管や血管がたくさん張り巡らされていますし、食道周辺にもリンパ管が多くあるので、それらを流れているリンパ管や血液によってがん細胞は体の他の部位に運ばれて転移していきます。

食道がんを放置していると、食道で大きくなるだけでなく、他の部位にも転移してしまいます。

 

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食道がんが末期に入ると…

がんは、その進行具合によって「ステージ0」~「ステージⅣ」にまで分けられています。

食道がんのステージ0は、早期食道がんの状態で、がん細胞がまだ粘膜内に留まっています。

ステージⅠでは腫瘍が少し広がっていますが、まだ筋肉層には届いていない表在食道がんの状態です。

筋肉層を超えて浸潤する進行がんは、ステージⅡの状態です。

さらにがんが大きくなると、筋肉の層を超えて深く浸潤し、リンパ節への転移も見られるステージⅢ、がんが周りの主要な血管にまで浸潤したり、離れた他の臓器にまで転移したりしているステージⅣへと進行していきます。

このステージⅣが末期と呼ばれる状態です。

食道がんは、初期の段階ではほとんど自覚症状がありませんが、進行していくと食道の中のがん細胞が大きくなり、食事が通る幅が狭くなるため、食べ物を飲み込む時に引っかかるようになり、さらに食道付近にチクチクした痛みを感じるようになります。

そうすると、食事を摂りにくくなりますから自然に食事の量が減り、体重も減少していきます。

その他、血痰や咳が出たり、声がかすれたり、水分や唾液を飲み込むのも難しくなることもあります。

また、背中や胸に痛みを感じるようにもなります。

これが、ステージⅢまでの症状です。

食道がんが末期になると、呼吸困難や激しい痛みといった症状と共に、がん細胞が食道以外のところにまで転移するようになります。

そうすると、転移先の臓器にまで症状が出てくるようになるのです。

もちろん、出てくる症状は転移した先の臓器によって異なります。

骨に転移した場合は骨の痛みや、ほんの少しの刺激で骨折してしまう「病的骨折」を起こしやすくなります。

脳に転移した場合は頭痛や吐き気、運動障害、言語障害、味覚障害など、様々な症状が起こります。

肝臓に転移した場合は、背中やお腹の痛み、黄疸などの症状が代表的ですが、肝臓も「沈黙の臓器」と呼ばれるほど症状が出にくいところですから、こちらもかなり肝機能が破壊されないと自覚症状がない場合も多いのです。

このように、転移先の臓器にまで症状が出る状態が、食道がんの末期症状です。

食道がんが末期にまで進んでしまうと、5年生存率は1割程度に下がってしまいます。

ここまで進むと、他の臓器にまで浸潤、転移しているがん細胞を手術によって完全摘出する事はとても困難です。

そのため、末期の食道がんでは抗がん剤治療や放射線治療が主な治療法になります。

これらの治療は、患者の体力を著しく消耗させますから、治療に耐えられる体力が患者になければ抗がん剤の利用は出来ません。

 

食道がんを予防する為に

早期発見が難しいために、10年生存率はおろか5年生存率も低い食道がんは、医療技術が進歩した現代でも恐ろしい病気の一つです。

この食道がんにならないために、普段から予防を心がけましょう。

食道がんの主な原因となるものに、飲酒と喫煙があります。

食道は、口から摂取したものの通り道になりますから、タバコの発がん性物質やアルコールもその粘膜に触れることになります。

それが、食道がんの発症リスクを高めると考えられているのです。

一日40本のタバコを25年間吸い続け、さらに一日4合のお酒を25年間飲み続けた人は、お酒もたばこもやらない人に比べると50倍も食道がんにかかりやすい、という報告もあります。

「酒は百薬の長」という言葉があるように、適度のお酒は心身をリラックスさせて体に良い影響を与える事もあります。

その適量は、ビールなら一日中瓶1本、ワインなら4分の1本、日本酒なら1合程度です。

それを超えて飲んでしまうと、食道がんになるリスクが高まってしまうのです。

また、タバコは百害あって一利なしです。

1日の喫煙本数×喫煙年数で示される喫煙指数が400以上の人は、食道がん以外のがんのリスクも高まりますから、早めに禁煙する事をお勧めします。

他に、刺激の強い食べ物や飲み物も食道がんのリスクを高める事が分かっています。

熱い飲み物や食べ物、辛い物などは、食道壁を傷付けてがん細胞を作りやすくするのです。

南ブラジルやウルグアイなどの、熱いマテ茶を飲む習慣のある地域では食道がんが多く見られますし、日本をはじめとする東南アジア諸国でも熱いお茶を飲む習慣がありますから、食道がんのリスクは高まります。

こういった物を避ける事も食道がんの予防には効果的です。

「焦げのある物を食べるとがんになりやすい」、という話を聞いたことがある人もおられるでしょう。

肉や魚などの焦げにはニトロソアミンという物質が含まれており、これが食道がんの発症リスクを高めると考えられているのです。

しかし、実際にがんになるほどの焦げは相当の量になりますので、日常生活では過敏になる必要はないかもしれません。

ベーコンやソーセージなどの燻製食品には亜硝酸塩という成分が含まれていますが、これもニトロソアミンを生成するので、これらの食べ物も出来るだけ控えた方がいいでしょう。

さらに、普段の食生活でも食道がんを予防することが可能です。

通常は健康のために野菜を多く摂る事が推奨されていますが、食道がんの予防のためには、野菜は摂らない方が良いとも言われています。

野菜や果物は、がん細胞を活発にしてしまう事が分かっています。

また、肉や脂質をしっかり摂る事もがん対策には有効です。

食道がんの予防のためには、肉や脂質もしっかり摂りましょう。

 

まとめ

どのような種類のがんであっても、大切なことは早期発見・早期治療です。

5年生存率・10年生存率が低い食道がんですが、早期発見・早期治療により生存率はグンと高まります。

お伝えした症状がみられる場合、その症状が続く場合は、速やかに検査を受けることをお勧めします。

そして、がんにならないように、生活習慣や食習慣を今一度チェックしてみましょう。

 

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木村 哲也

木村 哲也

株式会社イコールヒューマン代表取締役。生活習慣病の権威者である崇高クリニックの荒木裕院長と提携し、主に生活習慣病に関わる様々な情報を広く分かり易く提供中。

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