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抗ガン剤治療の副作用による食欲不振と味覚障害…その症状と対処法は?

 2018/05/07 生活習慣病
この記事は約 11 分で読めます。 1,331 Views

抗ガン剤の副作用については多くの方が知っていて、大変なものだという認識も広まっています。

しかし食欲不振や味覚障害という副作用があることは、まだあまり知られていないのではないでしょうか。

抗ガン剤の影響によって起きるこれらの副作用は、他の症状の影で見過ごされてしまいがちですが、食べられないという悩みはがん患者にとっては深刻なものです。

なぜ食欲不振や味覚障害が起きるのか、どんな症状でどんな対応策があるのかを見ていきましょう。

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食欲不振・味覚障害は見過ごされやすい副作用

抗ガン剤治療を始めると、多くの患者さんが悩まされるのが強い副作用です。

がんの三大治療の中でも、抗ガン剤は特に副作用の影響が大きな治療法となります。

その理由は他の2つの治療と違って、抗ガン剤の作用は広く全身に及ぶからです。

使用する抗ガン剤の種類や量、使用する期間によって、どんな副作用がどの程度でるかは異なりますが、吐き気や嘔吐、全身倦怠感、脱毛、貧血、しびれ感、アレルギー症状など、さまざまな症状が患者さんを襲うようになります。

そんな中でつい見過ごされてしまいやすいのが、食欲不振や味覚障害です。

映画やテレビドラマなどの影響もあってか、多くの人ががんの副作用と聞くと吐いたり、髪の毛が抜けたり、抵抗力が落ちて痩せたり、ということを思い浮かべると思います。

これらは本人以外の人にも、目に見えてわかりやすい症状だからでしょうか。

ところが食欲不振や味覚障害は、患者さん本人やその治療を支える家族の人以外には、なかなか伝わりにくいものです。

食べられないということがどんなに辛いかは、自分が病気になってみて初めてわかることかもしれません。

がん患者さんにとっては、食べられるということはとても大切な意味を持ちます。

食べることで栄養をつけ、体力や抵抗力を維持し、治療を続けられるだけの力を心にも身体にも蓄えていくのです。

それが治療の副作用によって失われてしまったら、本人は相当なショックやストレスを抱えることになります。

患者さんの性格にもよりますが、食べられないことを気にする人、がんなんだから仕方がないと諦めてしまう人、がんと闘う気力が萎えてしまう人、食べないと死んでしまうと心配する人など、食べられなくなることが患者さんに与えるストレスは相当なものがあります。

食欲不振や味覚障害は、深刻な副作用のひとつです。

もしも副作用がつらすぎると感じたら、医師や医療スタッフに相談してみましょう。

副作用を軽減する措置を考えてくれるかもしれませんし、抗ガン剤の投与量や投与間隔などを工夫してくれるかもしれません。

また食の問題には管理栄養士が相談にのってくれる場合もあります。

食べ方の工夫を色々な面からアドバイスしてくれますので、医師にはわからないことも管理栄養士が関わることで解決できることもあります。

 

食欲不振・味覚障害の症状

食欲不振や味覚障害は、がん患者さんにどんな症状となって表れるのでしょうか。

まずは食欲不振ですが、患者さんを悩ませるのは「食べなければと思うのに食べられない」「食欲がわかない」ということです。

病気を治すためにしっかり食べなければ、という気持ちはあるものの、実際の食欲はそれについていけません。

「食事がおいしく感じられない」「食べる気分になれない」など、気持ちとは反対に抗ガン剤治療の影響で食事がとれない状態になってしまいます。

また頑張って食べよう、という気持ちが強くなるあまり、逆に食べることがつらくなってしまうこともあります。

何がなんでも食べなければ、と頑張るのではなく、食べられるときに食べられるものを少しずつ食べる、というラクな気持ちで辛い時期をやり過ごすのも一つの方法です。

次に味覚障害です。

舌や軟口蓋に分布している味蕾(みらい)という小さな器官があり、食べ物の味は味蕾が感知してその信号が神経を介して脳へと送り、脳が味として認識するというのが、私たちが食べものの味を感じる仕組みです。

味蕾は味細胞という細胞の集まりです。

ところが抗ガン剤の影響で、味細胞そのものや味細胞から中枢に向かう神経が障害されることで、味覚が変化するなどの症状が出ることがあります。

抗ガン剤の治療中には、患者さんの約60%がなんらかの味覚の変化を覚えると言われています。

何を食べても味がしない、砂を噛んでいるような気がする、金属のような味がする、などという訴えが多く、苦味や甘味を強く感じるということも多くあります。

食べても味が分からない、変な味がすると感じるのでは、何も食べたくなってしまうのも当然です。

また入院せずに外来で抗ガン剤治療を受けている人の場合、自分で食事の支度をしなければならなかったり、主婦や母親であれば家族の食事も作らなければならなかったりする場合があります。

夫や子どものお弁当作りが日課ということもあるでしょう。

何を作っても味がわからなくて、本当に困ったという経験を話す人もいます。

しかし味覚障害は抗ガン剤治療が終わると自然に治ることが多く、数ヶ月で味覚も元に戻りますので、一時的なものと割り切って上手に乗り切るしか、今のところは対応策がありません。

 

食欲不振・味覚障害の原因

それではなぜ、抗ガン剤治療中にこうした状態が起きてしまうのでしょう。

患者さんが食べられなくなってしまうのは、抗ガン剤の副作用が食べることに関する器官に影響を及ぼしやすいからということがあります。

たとえば消化管が損傷を受けると、吐き気や嘔吐が起きやすくなります。

また胃腸障害を引き起こし下痢になりやすくなります。

口の中には口内炎ができ、新しい粘膜細胞が生まれる力が弱くなるとなかなか治りません。

脳に影響すると食欲中枢や嘔吐中枢に作用して食欲不振や吐き気を起こします。

分裂が盛んな細胞をターゲットとする抗ガン剤は、味覚を感じる味細胞も攻撃します。

また味の成分を味蕾へと運ぶ唾液の分泌を減らし、体内で代謝されたあとに唾液に含まれて排泄される種類の抗ガン剤もあります。

さらに亜鉛を不足させて味覚障害の症状をさらに悪化させることもあります。

こうしたさまざまな原因の他に、患者さんの精神的な影響も食欲不振に大きく影響します。

身体の痛みで苦しんでいるとき、人は食べたいという気持ちになるでしょうか。

また自分ががんになってしまったというショック、このまま治療を続けても良くなるのだろうかという不安、さらには将来を悲観する気持ちや死に対する恐怖など、がん闘病中の患者さんは計り知れないほどの大きな心理的ストレスで押しつぶされそうになっているということもあります。

さらには抗ガン剤で経験した強烈な副作用の症状が、脳と心に染み付いて身体が反応してしまうということもあります。

例えば赤い色がついた抗ガン剤で苦しい思いをしたという経験と持つ人が、赤い色を見ただけで吐き気がしてしまうという症状があります。

こうした場合、食事の中に赤い色があっただけで、食べられなくなってしまうことがあるのです。

このように抗ガン剤の影響は身体面の機能だけでなく、脳や心にも及んでいます。

食欲不振や味覚障害は、抗ガン剤治療を受ける人すべてに現れるわけではなく、その症状の表れ方や程度は人それぞれ違います。

もしどうしても食べられないというときは、担当医に相談して対応策を考えてもらうことが大切です。

現在は抗ガン剤治療もその副作用対策もどんどん進化していますので、何かしらの方法で解決策を見つけられる可能性は高いでしょう。

 

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先手を打って食欲不振・味覚障害を軽くする方法

抗ガン剤の副作用で食欲不振や味覚障害の症状が表れることを、先に知って対応策を考えておけば、実際に症状が出たときにも落ち着いて対応できる確率が高くなるのではないでしょうか。

副作用は表れるものだと考えて、あらかじめ準備をしておくことも、症状をうまく乗り切るコツになります。

食欲不振や味覚障害を予防することは難しいというのが現状ですが、これらを悪化させる原因を予防することで、軽くすませるようにはできます。

最初に覚えておきたいのは、食欲不振や味覚障害はいつまでも続くわけではないということです。

副作用が強く表れる時期を過ぎると、楽になってまた食べられるようになることが多いので、あまり心配しすぎることはありません。

しかし、本当に辛い時期には、無理して食べる必要もありません。

気分がよく、食べたいと思ったときに、食べられるものを少量ずつ食べればそれで大丈夫です。

その上で食欲不振になっている原因を見つけて、できるだけ改善する工夫をしてみたり、気分転換をして気持ちよく食事の時間を迎えられるようにしたり、自宅であれば食欲がそそられるような盛り付けや雰囲気を作るということもポイントになります。

味覚障害を軽くするには、うがいや口の中のブラッシング、舌苔の除去などが障害の緩和に効果があります。

口の中が汚れていると、味の感じ方が変わることもあります。

また舌苔は味覚を感じにくくする原因になりますから、適度に除去することで味覚障害を軽くすることができます。

歯磨きやうがいで口の中を清潔に保ち、口内炎や感染症を予防することも、食欲不振を防ぐ対策になります。

うがいは口の中を潤して乾燥を防ぎ、唾液不足をカバーするという点でも大切です。

食事の前にレモン水やレモンの味をつけた炭酸水でうがいすると、口の中がさっぱりして味覚低下を予防し味覚の回復を促し、唾液の分泌にも役立ちます。

またレモン水や緑茶を飲んだり、飴玉をなめたりするのも唾液の分泌の促進に役立ちます。

唾液には口の中を湿らせて食べ物を砕きやすくし、飲み込みを容易にする働きがあります。

また食べ物の味を味蕾に伝えるのも、唾液の大切な役割です。

その他味覚障害の予防には亜鉛製剤の服用で効果がある場合もあるので、医師に相談してみると良いでしょう。

 

副作用が出た時でも食べやすいメニュー

吐き気があるときは、刺激や匂いの強いものや味の濃いものは食べられません。

あっさりとした口当たりの良いもの、冷たいものや飲み込みやすいものを少しずつなら、食べられることがあります。

それでも食べられないときは、脱水症状にならないようにスポーツドリンクなどを利用するのもひとつの方法です。

味覚障害で食べ物の味や匂いが変化して感じられるときは、できるだけそれをカバーするような調理法を工夫します。

何を食べても味を感じないという場合は、味付けを濃いめにして香辛料を使ったり、旨みや香りの強いメニューにしたりしましょう。

味噌汁はだしを濃く取って、具材も貝類のように風味や旨みが出やすいものを利用します。

反対に味が強く感じすぎる場合には、調味料を変えてメニューを考えてみます。

魚は塩や酒で臭みを消し、塩や味噌などの味付けをしないでそのまま焼き魚にします。

醤油をかけるのではなく、レモンやかぼすなどの酸味をアクセントにすると食べやすくなります。

味噌汁やスープ類は、だしを主役にして味噌や塩を薄めにします。

この他にも、しょうゆや塩が苦く感じるときは変わりに酢やレモンなどの酸味を利用するなどの工夫もできます。

味覚障害があるときのメニューは、苦手と感じる味を避けて食べられるもので代用することがポイントです。

また料理の温度によって、味の変化を強く感じやすくなることもありますので、食べやすく感じる温度で食べることも大切です。

金属製の食器で苦味が増すこともあります。

そんなときは陶器や木製、プラスチック製の食器を使ってみるのも良いでしょう。

管理栄養士に相談すると、食べやすいレシピを提供してもらえることもありますので、そうしたものやインターネット状の情報などを利用して、メニューを考えてみて下さい。

 

まとめ

食欲不振や味覚障害はとても辛い副作用ですが、抗ガン剤治療の影響が強く出ている期間がすぎれば自然と回復していきます。

これといった予防策や、症状が出ないようにする方法がないというのが辛いところですが、ずっと続くわけではないと希望を持って、知恵や工夫で少しでも症状を抑えて乗り越える手立てを考えましょう。

ひとりで抱え込むのではなく、家族や周囲の人たち、医師や医療スタッフ、管理栄養士などの力を借りながら、心の負担を軽くしていくことも、症状を軽減させる大切なポイントです。

 

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木村 哲也

木村 哲也

株式会社イコールヒューマン代表取締役。生活習慣病の権威者である崇高クリニックの荒木裕院長と提携し、主に生活習慣病に関わる様々な情報を広く分かり易く提供中。

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