小腸の働きと構造、そして意外な仕組みとは?
日本人の小腸は欧米人の小腸よりも長いなどと言われるようなことがありますが、実際の小腸の長さや太さ、そしてその構造はどうなっているのでしょうか?
また、さまざまな栄養を取り込む役目のある小腸は、実は同時にさまざまな細菌と接触するリスクも高いのです。あまり知られていない、小腸の意外な仕組みについても詳しくみていきましょう。
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小腸の働きと粘膜免疫とは?
消化管は、口腔から咽頭、食道、胃、小腸、大腸を経て肛門につながる一本の管ともいえます。しかし、消化管の各部位には口腔に摂り込まれた食物を処理するそれぞれの役割があります。
特に小腸は食物が最終的に消化されたうえ、さまざまな栄養素が体内に吸収される場としても重要であります。また、細菌・ウイルスなどの有害な微生物や異物の体内への侵入を防ぐ最前線としても重要であります。このため、腸管の内側は粘膜で覆われており、ここには粘膜免疫とよぶ特殊な仕組みがあります。
しかし、出生直後には消化吸収機能が十分ではなく、粘膜構造も未発達なためにさまざまな微生物に侵され易い状態であります。また、成人でも生理状態によって腸管の粘膜免疫は常に完全とは限らず、加齢とともに免疫能が低下することも知られています。
小腸の長さ・太さと構造について
小腸は、胃側から大腸側に向かって十二指腸、空腸および回腸の順で三つの部位に分かれて います。小腸の長さは成人では4. 5~6mであり、胃に近いほうの太さは3~5 cmですが、大腸に近くなると2~3 cmと細くなります。
管腔内の粘膜表面にはしわとひだがあり、これを徽襲(シュウヘキ)とよんでいます。この表面には無数の小突起があり、これは毛羽立った絨毯のようにみえるので絨毛といい、その高さは成人で約1mmであります。一本の絨毛は多数の上皮細胞で覆われています。
小腸粘膜の表面積は?
上皮細胞の大部分は、体内へ栄養素を積極的に取り込む円柱状の吸収細胞であります。
管腔側の上皮細胞表面には、さらに微絨毛とよぶ約600個の微細な小突起が存在しています。このため、小腸粘膜の表面積は、緻袈のために単純な平滑面よりも3倍に広がり、さらに絨毛や微絨毛のためにそれぞれ30倍および600倍にも広がりをもつことになります。
小腸は腹腔の狭い容積の中に折り重なって収納されていますが、粘膜面の広さはテニスコート1 面以上にもなります。このために、腸管内の栄養素が吸収細胞から体内へ迅速かつ効率よく 取り込まれます。
腸管内での細菌の増殖を防ぐ工夫
その反面、粘膜表面が広くなると、それだけさまざまな異物に接触する機会も増えます。胃内では、分秘する酸によって酸性度が増し、しかも内容物の滞留時間も短いので、細菌など の増殖はあまり起こりません。
これとは対照的に、小腸内は中性であり、しかも栄養素も豊富であり、微生物の増殖には最適の条件が揃っています。このため、腸管内では細菌などの増殖を防ぐためにさまざまな工夫がなされています。
その一つとして、高分子のタンパク質は、腸管腔での消化酵素による分解がある程度の大きさに留まり、細菌などに利用され難い形になっています。これらの分解物は、吸収細胞近くに移動し、あるいは細胞膜上で最終的に低分子化されると、初めて積極的に体内へ取り込まれます。
小腸粘膜上皮細胞の新陳代謝について
体細胞は常に分裂増殖と細胞死を繰り返して、新陳代謝しています。小腸粘膜上皮細胞の寿命は休組織細胞の中でもっとも短く、わずか6日ほどで新しい細胞に置き換わります。粘膜表面上には腸腺がありますが、これは粘膜が窪んでできたものであり、腸腺窯(またはク リプト)とよんでいます。
腸腺腐の根元にある幹細胞は常に増殖、分化し、先端に向けて押し上げられ、5~7 日間で管腔内に脱落します。粘膜細胞はさまざまなものに曝されるので、ストレスや疲労で傷みやすく、消耗が激しいからです。
たんぱく質の摂取が重要な理由
ヒトの小腸では、1日に約250gの粘膜細胞が剥離しており、細胞数として約170億個に相当します。このため、粘膜細胞の新生には、常にタンパク質の補給が必要になります。
成人では、1日に約70gのタンパク質が腸管から失われます。このタンパク質は、大部分が食物のタンパク質と一緒に消化され、吸収されて再利用されていますが、タンパク質の不足が長く続くと消化管機能にも影響が及びます。
まとめ
このように小腸にはさまざまな働きや仕組みがあります。私たちが何気なく摂取している食べ物から、細菌と闘いながら栄養素を吸収し、新陳代謝をくり返しながら消化機能を保ってくれています。
いつも私たちの体の為に働いてくれている小腸の為にも、しっかりとタンパク質を摂取して、小腸が栄養不足にならないように食生活に十分に注意する必要があります。
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