肝臓がんの症状の一つ「腹水が溜まる」ことの怖さ
肝臓がんを発症した場合、がんが直径5~10cmほどの大きさになると腹痛や腹部の張りなどの症状を起こします。
また、がんの進行に伴い肝臓機能は低下し、腹水や黄疸の増加が現れることがあるのです。
腹水が溜まるとお腹がふくらみ、全身にむくみが出て体の機能が低下し、胃や肺が圧迫されるため食欲不振や息切れを起こします。
今回は肝臓がんの症状の一つである腹水とはどのようなものか、腹水による体への影響、腹水への対処法を見ていきましょう。
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Contents
肝臓がんになると出る症状
肝臓はとても強い臓器であり、少し切り取られても再生が可能なただ一つの臓器です。
しかし再生力が強くても肝臓に大きな負担がかかると肝臓がんを引き起こすこともあります。
2010年の厚生労働省の人口動態統計によると、年間3万人が肝臓がんによって死亡しているのです。
がんで亡くなる方は年間10万人程度なので、その中で肝臓がんの割合は高いといえます。
割合で見ると、肺がん、胃がん、大腸がんに続き、肝臓がんが4位になるのです。
○肝臓がんの発生メカニズム
肝臓がんは、「転移性」と「原発性」の2つに大きく分けることができます。
転移性のがんは、大腸や胃などの他臓器からがん細胞が血行性に転移し肝内で増えていくものです。
肝臓自体から発生する原発性がんの多くは肝細胞癌で、約90%がウイルス感染症によって起こります。
C型肝炎やB型肝炎ウイルスが原因で肝細胞に炎症が起き細胞破壊と再生を繰り返しながら慢性肝炎となり、肝硬変に移行するなかで遺伝子異常が発生し肝細胞癌になるのです。
日本で発生するウイルスが原因の肝炎の中ではC型肝炎が多く、B型肝炎は全体の2割程度になります。
これらは血液を介して感染し、A型やE型は食物を介して発生するのです。
B型やC型肝炎は慢性化しますが、A型やE型は慢性化しません。
B型肝炎は免疫を確立すると感染しても慢性化することはないのですが、免疫がないと慢性化してしまいます。
またC型は成人が感染すると慢性化してしまうのです。
また肝硬変は肝臓の機能低下によって起こる病気であり、肝臓がんを誘発するのです。
肝硬変は飲酒によってなりやすく、肝炎ウイルス感染者が飲酒すると、がん発生率を高めます。
肝炎が持続し、肝硬変に近い状態になるほどがん発生率は高くなります。
また肝炎ウイルスが完治してから、肝臓がんが発生することもあるのです。
○症状の現れ方
肝臓がんは、直径が5cm以上になると、腹部が張る、腹痛を起こすなどの自覚症状があります。
しかし直径5cm以下のがんであれば自覚症状はなく、体の調子が悪いと感じることもほとんどありません。
そのためエコー検査やCT、MRIによってこれらの小さいがんは発見されるのです。
がんが大きくなっていくと肝機能低下が見られるようになり、黄疸や腹水などの症状が現れます。
また、がんが小さくても腹腔が破裂して大出血し、激痛が走り血圧低下が起こることがあります。
このような場合は、生命の危機に関わり早急な対処が必要です。
末期の肝臓がんになると、リンパ節や骨などの他の組織に転移が起こるようになります。
転移先が骨であれば骨に激しい痛みを感じるというように、転移先の組織周辺に症状が現れるようになります。
○肝臓がんと痛みの関係
肝臓は知覚感覚がないため、痛みを感じることはありません。
しかし、がん腫瘍が大きくなるとお腹が圧迫されて痛みを感じることがあるのです。
さらに、がんが突出して大きくなると、腹腔内を押して破裂させ激痛を走らせます。
がんが横隔膜の方へ突き出ていけば、広がるような痛みを感じるのです。
お腹のなかで圧迫感や痛みがあれば、腫瘍が原因かもしれません。
また肝臓がんはみぞおちあたりにある臓器なので、みぞおちを触ると、しこりのようなかたまりに触れることがあります。
体内に溜まっていく腹水
腹水とは、たんぱく質を含む体液が肝臓や腸から漏れ出して腹部に溜まったものです。
急性などの短期間の病気よりも慢性疾患を患う人に溜まりやすくなります。
腹水の原因を大きく分けると、「がん性腹膜炎により、お腹に炎症が起きたこと」「肝硬変などの病気によって血管内の浸透圧が低下、その結果として血管の水分を保持できなくなったこと」の2つがあげられます。
炎症が原因の場合は血管内の成分があふれ出してたんぱく質を多く含む液体がお腹に溜まりますが、炎症以外が原因の腹水ではたんぱく質が少ないのが特徴です。
○腹水の体への影響
健康な人でもお腹のなかには20~50ml程度の腹水があり、腹膜で生産されて一定量に調節しています。
腹水が溜まっていくとお腹の張りが強くなっていき、胃が圧迫されるために食欲不振が起こり食事が思うように取れません。
食事が十分に取れないと栄養状態の低下や体力低下、さらに免疫力が低下し悪循環に陥ります。
さらに肺が圧迫されることで息切れを起こしてしまうのです。
○腹水の増加について
腹水の過剰生産や排出の妨げが起こった場合に腹水がどんどんお腹に溜まっていくことになります。
腹水の増加には「血管内圧力増加」と「アルブミン」が関係します。
血管の圧力とは腕で測定する圧力ではなく、お腹のなかの血管の圧力のことです。
不要になった腹水は血管内に戻されますが、お腹のなかの血管の圧力が高いと腹水を戻すことができません。
さらに圧力が高ければ、逆に漏れて出てしまうのです。
また、たんぱく質の一種のアルブミンも腹水排出を妨げる原因になります。
アルブミンの役割は血管の水分量を調節し余分な体内の水分を血管に取り込むことです。
アルブミンが不足すれば血管内に水分を取り込めなくなり、さらに血管から水分がしみ出てしまいます。
腹水は大量に溜まっていれば触診しただけでもわかるものです。
大量にたまっていると腹部が膨張し、叩くと鈍い音がするので腹水があると判断することができます。
また、へその形が歪んだり、飛び出たような状態になったりすることがあるので腹部を見てわかる場合もあります。
触診や見た目でわからないときはエコー検査やCTスキャンを行います。
腹水が溜まっていることが判明した後はお腹に針を刺して腹水を少量抜き出し、腹水の成分や細菌の有無を調べます。
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腹水への対処法
一般的な治療法は「水分の制限」「塩分の制限」「利尿薬の服用」「アルブミンの投与」「穿刺」があります。
肝硬変の方の場合、横になって安静にしている時間を長くすると血液が肝臓に入り込みやすくなるため、腹水の産生が減っていくのです。
また血液が肝臓に届きやすくなるため、尿として余分な水分を排出しやすくなります。
○塩分や薬剤
利尿剤によって体の水分を出す必要がありますが、体に水分をためやすい塩分は利尿剤の効果を弱めてしまうため塩分制限を同時に行う必要があります。
また症状によっては摂取する水分量も制限します。
原因がアルブミンの不足の場合、血液製剤のアルブミンを投与することがありますが、点滴は使用日数に制限があるため治療期間が延びる可能性があります。
○腹水穿刺
塩分や利尿薬でも症状がおさまらないものは難治性腹水といわれ、お腹に管を通し直接腹水を抜く方法で対処をします。
この方法は腹水穿刺と呼ばれており、即効性のある対処法になるのです。
また4L以上の腹水穿刺時、循環血漿量を保つためアルブミンが投与されることがあります。
このように、腹水を抜く処置や減らす治療を受けることはできます。
しかし腹水を抜いたり減らしたりしても腹水を発生させている病気の根本的に治療をしない限りまたすぐに溜まってしまい、原因の病気もどんどん進行してしまいう恐れがあります。
どのような対処法を使う場合でも、まずは腹水が溜まる原因を究明することが第一になります。
○腹水と健康の関係
腹水が溜まっていくと胃や肺を圧迫します。
食欲がなくなって呼吸が苦しくなり、眠るときも苦しいので座ったまま睡眠をとる人もいるほどです。
お腹に溜まる量は多いと15~20Lにもなり、内臓全体を圧迫するのです。
肺が圧迫されて呼吸がままならない上にさらに心臓まで圧迫されると生命の危機に関わる危険な状態になります。
そのため、管をお腹に刺して腹水を強制的に排出する必要があるのです。
病状が進行するほど腹水が溜まりやすくなり、難治性腹水になると薬での排出が難しくなります。
腹水が溜まってしまったらまずは抜くことを考えると思いますが、アルブミン、電解質、たんぱく質を含む水分である腹水を抜くことで体に必要な栄養まで一緒に出てしまい、症状をますます悪化させる可能性があります。
そのため病院によっては、腹水でどんなに苦しい状態でも抜くのをためらうこともあるのです。
腹水を抜いて栄養を戻す治療「CART」
水分や塩分の制限、薬での対処方法でも改善されない難治性腹水は、お腹に管を刺す腹水穿刺によって腹水を排出します。
しかし腹水穿刺には体に必要な栄養も一緒に体外に排出してしまうという欠点がありました。
そこで、この欠点を取り除いたのがCART(腹水ろ過濃縮再生静注法)という方法が取られるようになったのです。
CART(腹水ろ過濃縮再生静注法)
1981年に保険認可された治療法です。
がんや肝硬変が原因となっている腹水を取り出して濾過濃縮し、細菌や癌細胞を取り除いて有用なタンパク成分であるアルブミンなどを回収します。
回収されたアルブミンを再び体内に戻します。
CARTを行うことによって、腹水の排出によるアルブミンの喪失を防ぐことができるのです。
体内に戻されるアルブミンは人の血液から精製されるものではなく自分自身のものであるため、アレルギー症状やウイルス感染を起こすリスクが低くなります。
また、大量に腹水を排出できるため腹部膨満による苦痛が早期に軽減されるというメリットもあります。
デメリットとしては、体内に濃縮した腹水を戻したあと一時的に発熱する場合があります。
また、がんによる腹水はがん細胞が多く存在するため、濾過するときにフィルターに目詰まりを起こすことがある可能性があります。
KM-CART
従来のCARTは濾過フィルターが内圧式であり濾過能力が低いという欠点がありました。
そこで濾過フィルターを外圧式に変えたKM-CARTが考案され、濾過能力が大幅にアップしすみやかな腹水処理が可能となったのです。
CARTは2Lの腹水まで対応可能でしたが、KM-CARTは15Lまで対応することができます。
KM-CARTでは濾過フィルターを何度も洗浄しながら使用し、大量の腹水に対応することができます。
CARTやKM-CARTは保険適用の治療方法であり、2週間に1回の頻度で治療ができます。
治療を行うとき、ほとんどの場合入院が必要です。
患者さんの病状によっては静脈瘤破裂の危険があるため、患者さんに適応するか十分に検討した上で使用されます。
ただし、2週間に1回のみの治療になるので、腹水の増加スピードが早いと間に合わない可能性があります。
○KM-CARTの特徴
腹水濾過過程で体に必要な成分と不要な成分を分けることができ、必要なたんぱく質を濃縮して体内に戻します。
難治性腹水で大量にお腹に腹水が溜まった患者さんにも対応することができ、1回の治療で抜けるだけの腹水を抜き取ることが可能です。
他にも、KM-CART治療によって栄養状態や免疫状態の改善が見られます。
また腹水内にあるガン細胞やリンパ球を取り出せるので免疫療法や抗ガン剤治療の研究に使用されています。
○KM-CARTの治療の流れ
ベッドに横になりお腹に針を刺して、腹水を貯留バッグに排出していきます。
腹水の回収時間は1~4時間程度で、15L位までの腹水を取り出すことができるのです。
回収した腹水は2つのフィルターで濾過し、体に必要な成分は残し細菌やガン細胞を取り除き余分な水分も取り除きます。
この後腹水を10倍程度に濃縮し、最後に点滴によって患者さんの体に戻すのです。
お腹から取り出した後、不要となった腹水は廃棄されます。
難治性腹水によって大量の腹水でお腹がふくらんでいる状態の患者さんでも、治療後はお腹のなかの腹水がすっかり無くなります。
内臓の圧迫がなくなるので食事を摂ることができ、呼吸がしやすく尿の出が良くなるなどの効果が期待できます。
まとめ
肝臓がんの症状の一つである腹水による腹部の膨満は、食欲低下や呼吸困難だけでなく不眠や全身倦怠などの症状を起こすものです。
腹水の対処法である腹水穿刺は、腹水のなかの栄養まで失い衰弱が進んでしまうという欠点がありました。
しかしKM-CARTによって栄養状態を下げずに腹水をお腹から排出することができるようになったのです。
KM-CARTは腹水の排出に大きな効果がありますが、根本的な治療ではありません。
腹水の原因となる病気を根治しない限り、再び腹水は溜まります。
そのため腹水の原因を究明し、原因となっている病気の治療をすることが重要なのです。
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