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女性のがんのトップである「乳がん」

日本では乳がん患者が増えてきています。

年間約68,000人が罹患しており、日本人女性は生涯で12人に1人が乳がんにかかるとも言われています。

これは欧米に比べるとまだ少ない数ですが、1970年代に比べると圧倒的に患者数が多くなり、現状はシビアです。

乳がんについて、原因や症状、検査方法や治療方法、また生存率や予後を詳しくご紹介します。

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女性に増え続ける乳がん

そもそも乳がんとは、乳房の乳腺組織にできるがんの事を言います。

男性でも乳がんにかかる人はいますが、圧倒的に女性患者が多く、女性特有のがんというイメージがついています。

ちなみに日本で乳がんにかかる人が多いのは、40~50代の女性なのですが、最もリスクが高いのは50歳前後と言われています。

ただ最近は20代や30代の若い世代でも、若年性乳がんの発症が増えてきており、閉経後に発症する人もいます。

これだけ乳がん患者が増えてきたのには、いくつかの理由が挙げられます。

1つは食生活の乱れです。

1日の献立をみても、例えば朝からパン食となると、食パンとお茶だけで済ます人はまずいません。

マーガリンやジャムなど脂質や糖分の多いものも一緒に食べる事になります。

また健康のためにサラダを食べる人も多いですが、ここにマヨネーズやドレッシングをかけては余計な油を摂取する事にもなります。

このように栄養の偏りや甘い物の過剰摂取により、成長が早期化し、初潮が早くなったり身長が早く高くなるようになったのです。

一生涯の月経数は550回ほどにもなるのですが、月経の回数が多いと乳がんのリスクも高まってしまうのです。

また女性が積極的に社会に進出するようになり、アルコールを摂取する機会も多くなりました。

飲酒習慣によってがんリスクが高まる事はよく知られていますが、乳がんも例外ではありません。

アルコール摂取量が、日にエタノール換算で10g増すごとに、乳がんリスクが10%高くなるとも考えられています。

そしてもう一つ、女性の社会進出が増えた事によって生涯独身であったり、高齢出産が増えてきました。

出産回数が少ないと乳がんリスクを高めてしまうのですが、このように食生活の乱れ、ライフスタイルの変化により、昔よりも乳がんになる人が増えてきてしまったのです。

 

乳がんの原因と症状

乳がんを招く要因として大きく関与しているのが、女性ホルモンの一種である「エストロゲン」です。

このホルモンは乳管の発達や女性生殖器の発達を促すホルモンであり、月経リズムによって量も変化します。

実はこのホルモンが過剰に分泌されたり、長い間エストロゲンにさらされることで乳がんの発症リスクが上昇してしまいます。

食生活の乱れにより、女子の初潮も早くなってきました。

最近は11歳以下で初潮になる女子も増えてきており、計算すると一生涯の月経数は550回ほどにもなります。

月経の期間はエストロゲンがたくさん作られ、体内のエストロゲン濃度が高くなり、乳腺もそれだけエストロゲンにさらされます。

また同じような要因として出産経験の有無も関わってきます。

出産経験が無いと、妊娠中に多量に分泌される「プロゲステロン」という黄体ホルモンが相対的に減少し、エストロゲンにさらされる期間が長くなってしまいます。

そして初産年齢が低いほど乳がんのリスクは低くなるのですが、高齢出産になると乳がんのリスクが高くなるとも言われています。

また授乳経験のない女性は、授乳経験のある女性と比較すると、乳がんのリスクは増加します。

逆に言えば、授乳期間が長くなるほど乳がんのリスクが低下するのです。

また乳がんの原因として、肥満も挙げられます。

皮下脂肪はエネルギーだけでなく、エストロゲンなどの女性ホルモンを蓄えています。

つまり肥満の人はエストロゲンレベルが高くなってしまうため、リスクが高くなるのです。

さらにがんと言えば、遺伝が関係してくる事が多いですが、乳がんも遺伝によって発症してしまう事が多いと言われます。

3親等以内に乳がんに罹患した人がいると、乳がんになる可能性は高くなります。

例えば母親が乳がんの場合約2倍、そして姉妹が乳がんの場合も約2倍に上昇します。

さらに母親・姉妹の両方が乳がんの場合、約13倍に跳ねあがるというデータもあります。

他にも昼夜逆転の不規則な生活、ストレスなどによってもリスクが高まります。

そしてもし乳がんになってしまった時の症状ですが、最も一般的なのがしこりです。

良性腫瘍の可能性もあるのでわかりにくいですが、「石のように硬い」とか「指で触っても動かない」といったタイプのしこりは悪性の可能性が高くなります。

また乳頭を絞ると血のような分泌液が出てきたり、手を挙げた時に乳腺にひきつれるような症状がある場合も、乳がんの可能性も考えられます。

 

乳がんの検査

乳がんの検査にはいくつかの方法があります。

まずは問診や視触診で、これは職場の健康診断などでも多く実施されています。

ただしある程度の大きさでないと判別しにくく、早期発見は難しいと言われています。

そして最近主流なのが、「マンモグラフィ」です。

乳房専用のレントゲン検査で、少ない放射線の量で安全に乳がんの検出が出来ます。

検査方法は、透明の圧迫板で乳房をはさみ、薄く伸ばして撮影していきます。

痛みが強いと表現される事が多いですが、いつまでも痛みが残る事はありません。

また、もしがんが発覚したとしても、マンモグラフィによって潰れる事はありません。

マンモグラフィ検査が優れている点としては、触っても判らないような早期の小さな乳がんはもちろんのこと、しこりを作らない乳がんを白い影、または非常に細かい石灰砂の影として見つける事も可能です。

ただし現在、マンモグラフィを使った検診の対象は40歳以上とされています。

40歳未満は乳がんになる人が少ないため検診の効率が低い事、そして40歳未満では乳腺が発達しているため、マンモグラフィーで
は乳腺の異常が分かりにくいため
とされています。

では40歳未満の人はどういった検診を受けるのか?という点ですが、「超音波検査」が採用される事が多いです。

超音波検査は乳房に超音波をあて、はね返ってくる反射波を画像化した検査です。

乳房表面にゼリーを塗る時は少し冷たい感じを受けますが、マンモグラフィのように乳房を挟まれて痛い思いをする事はありません。

またX線を使わないため、妊娠中に検査を受ける事も出来ます。

超音波検査の場合は、マンモグラフィのように微細なしこりや石灰化を発見する事は難しいですが、乳房の内部の構造を観察しながら、触診では検出できない小さな病変を見つけることができます。

一方で乳がんだけでなく、治療の必要のない良性の病変も拾い上げるため、その区別に注意をする必要はあります。

このようにそれぞれの検査方法にメリット・デメリットはあります。

何も異常がない状態で受ける検診なら、定められた検査を受けるのみですが、自己検診でしこりを発見した場合は、まず専門医の診察を受けることが大切です。

基本的には問診、視診、触診、マンモグラフィ・超音波検査と進んでいきます。

また乳頭から分泌液が出る症状がある場合は、分泌物がでている乳管口に細い管を入れて造影剤を注入して、マンモグラフィを撮る「乳管造影検査」、分泌物のある乳口にファイバースコープを入れて乳管の内部を直接観察する「乳管内視鏡検査」によって診断します。

 

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乳がんの治療法

乳がんの治療法には手術、放射線療法、化学療法があります。

ただ基本となるのは、乳房内にできたがんを取り除く手術で、ステージⅠ期~Ⅲ期の乳がんの場合は必ず手術が必要となります。

以前は乳房を大きく切除すれば、再発を防ぎ生存率も高めると考えられていましたが、現在は可能な限り小さい範囲でがんを取り除く手術が行われています。

もちろんがんの種類や大きさ、進行度によって手術の種類も違っており、患者の要望も聞きつつ、最適な方法を選択していきます。

手術方法を大きく分けると、まず「全摘手術」と「部分切除術」に分かれます。

全摘手術には、乳腺全部に乳頭、皮膚、腋の下のリンパ節を切除し、胸筋は残す「胸筋温存乳房切除術」、腫瘍を含んだ乳腺全部を取り除き、乳頭と乳輪は残す「皮下全乳腺切除術」があります。

全摘手術の対象となるのは腫瘍が大きい、広範囲に広がっている、乳房内で多発している、患者本人が全摘を望んでいる場合などです。

一方の部分切除術は、しこりを含む乳腺の一部を切除して、乳頭と乳輪は残す手術が行われます。

しこりを切除した後には残した乳房に放射線をかけるのですが、これは残した乳房内に残った、または目に見えない微小がんを破壊するためです。

この乳房温存手術と放射線治療をあわせて行う治療法を「乳房温存療法」と呼びます。

放射線と聞くと怖いイメージがありますが、実はがんの治療の放射線は、他の治療と比べても、大きく体を傷つけることなく、機能も損なわれないのが特徴です。

特に乳がんには放射線が効きやすいと言われており、乳房温存手術が増加した事で放射線治療が併用される機会も増えてきています。

乳房温存療法のみならず、全摘手術を受けた患者にも、リンパ節転移が多い場合には、放射線治療が行われます。

再発を減らし、領域のリンパ節転移や遠隔転移を抑える目的があります。

もし全身に微少がん細胞が散らばっていた場合や、転移や再発を繰り返し、延命や症状緩和を目的とする治療法には化学療法、いわゆる抗がん剤が使われます。

投与方法には、直接血管内に抗がん剤を投与する静脈注射と錠剤の飲み薬がありますが、どちらの薬品も血液とともに全身の細胞に運ばれ、目に見えない大きさのがん細胞を治療することができます。

抗がん剤には脱毛や吐き気などの副作用がありますが、基本的には通院による外来治療で行われます。

入院治療とは違い、副作用などの症状は自分で申告する必要があります。

申告した症状によって、吐き気止めや抗生剤の処方、または投与の休止や入院を勧められる事もあります。

 

乳がんの生存率と予後について

乳がんは他のがんに比べても早期発見しやすいがんと言われています。

つまり自己検診でしこりを見つけた場合、すぐに病院を受診して適切な治療を受ければ完治も望めます。

進行はゆっくり進む人もいますが、中には早い時点で全身へがん細胞が広がっていく事もあります。

まず乳がんという診断がついた場合、がんが乳腺の中でどの程度広がっているか、遠隔臓器に転移しているか等の検査が行われます。

乳がんの広がりや乳腺の領域にあるリンパ節転移の有無、遠隔転移の有無によって大きく5段階のステージに分類され、この臨床病期に応じて治療法が変わってきます。

具体的には、「0期」が乳がんが発生した乳腺の中にとどまっているもので、極めて早期の乳がんです。

「I期」はしこりの大きさが2cm以下で、わきの下のリンパ節には転移していない段階です。

「II期」になるとIIa期とIIb期に分かれます。

「IIa期」はしこりの大きさが2cm以下で、わきの下のリンパ節への転移がある場合、またはしこりの大きさが2~5cmでわきの下のリンパ節への転移がない場合です。

そして「IIb期」はしこりの大きさが2~5cmで、わきの下のリンパ節への転移がある場合です。

III期は局所進行乳がんと呼ばれ、「IIIa期」・「IIIb期」・「IIIc期」に分かれます。

「IIIa期」はしこりの大きさが2cm以下で、わきの下のリンパ節に転移があり、しかもリンパ節が癒着していたり周辺の組織に固定している状態、またはわきの下のリンパ節転移がなく胸骨の内側のリンパ節が腫れている場合、あるいはしこりの大きさが5cm以上でわきの下あるいは胸骨の内側のリンパ節への転移がある状態です。

「IIIb期」はしこりの大きさやわきの下のリンパ節への転移の有無にかかわらず、しこりが胸壁に固定しているか、皮膚にしこりが顔を出したり皮膚が崩れたりしている状態です。

「IIIc期」は、しこりの大きさにかかわらず、わきの下のリンパ節と胸骨の内側のリンパ節の両方に転移のある場合、あるいは鎖骨の上下にあるリンパ節に転移がある状態です。

そしてIV期は骨や肺、肝臓、脳など別の臓器へ転移している場合です。

ステージによって治療後の生存率は変わってきます。5年実測生存率となると、Ⅰ期が96.8%、Ⅱ期が92.4%、Ⅲ期が77.0%、Ⅳ期が31.6%となります。

ステージⅠ・Ⅱ期に関しては5年生存率が90%以上と予後が良く、早期に乳がんを発見して適切な治療を受ける事が大切だとわかります。

ただし初期で発覚したとしても、再発や転移の可能性もあることを考慮して、定期的な経過観察は必要です。

またⅣ期になると辛いイメージがありますが、他のがんに比べると生存率は高く予後は良いがんと言えます。

 

まとめ

日本人女性は生涯で12人に1人が発症すると言われるほど増えてきているのが乳がんです。

ただ、乳がんは他のがんに比べても早期発見しやすく、早めに病院を受診して適切な治療を受ければ完治も望めます。

ステージⅠ・Ⅱ期の場合、5年生存率が90%以上と予後も良いです。

自分で観察するセルフチェック、また定期検診を受け、もしもの場合に早期発見・早期治療できるよう心がけることが大切です。

 

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ライター紹介 ライター一覧

木村 哲也

木村 哲也

株式会社イコールヒューマン代表取締役。生活習慣病の権威者である崇高クリニックの荒木裕院長と提携し、主に生活習慣病に関わる様々な情報を広く分かり易く提供中。

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