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妊娠中の妊娠糖尿病の経験者は産後の糖尿病リスクに注意

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不安なことが多い妊娠中に「妊娠糖尿病」と言われると、「私、糖尿病になっちゃったのかな」とさらに心配になってしまうかもしれません。

妊娠中の女性の体は常におなかの赤ちゃんの分まで頑張っているので臓器への負担も大きいです。

そのため妊娠中に一時的に糖代謝異常が生じることがあり、これを妊娠糖尿病と呼ぶのです。

胎児が育つ環境を整えるため必要に応じて血糖をコントローするための治療を行いますが、妊婦糖尿病の多くは産後に改善します。

ここでは妊婦糖尿病とはどんな病気で、どんなことに気をつければ良いのかについて解説します。

本当の糖尿病になってしまう心配はないのかについても合わせてご紹介するので参考にしてください。

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産後も注意が必要な妊娠糖尿病

ほとんどの妊娠糖尿病は産後改善しますが、なかにはそのまま糖尿病になってしまう人もいます。

早期に対応するためにも、気になる場合は産後6~12週間の間に「ブドウ糖負荷試験」を受けて、妊娠糖尿病が治っているかどうか確認することが必要です。

「妊娠糖尿病」になった場合は、食後の血糖上昇と極端な空腹をさけて血糖値を管理することになります。

なお、妊娠糖尿病の既往がある方はない人に比べて約7倍糖尿病になりやすいとされていますので、毎年の健診を必ず受けるようにしましょう。

<女性のストレスと血糖値コントロールについて>

出産の前後に女性の生活は大きな変化が起こりやすくなります。

生活環境や生活様式自体を丸ごと変えなければならないことも少なくありません。

特に初めての妊娠・出産では、マタニティーブルーなど自分自身の体のホルモンバランスが急変し戸惑う方もいらっしゃいます。

出産後に始まる育児では、自分のことは二の次になりやすいためゆっくり座って食事をする時間もなかなかとれず、家事や片付けをすることもままならないでしょう。

そうすると気がつかないうちに疲労が蓄積しストレスがピークに達してしまうのです。

このような時期には肩が凝ったり腰が痛くなったりしやすいだけでなく、体は疲れているけれど活動量は少ないということが同時に起きます。

また、食生活と活動の乱れが血糖コントロールにも悪い影響を与えるのです。

夜中に何度も授乳や夜泣きで目覚めるので睡眠の質が下がりやすくなり睡眠不足による肥満も招きやすいので、これもまた血糖値にも影響する要因となります。

女性のストレスの原因となりやすいのは妊娠、出産、育児だけではありません。

更年期に入るころには再びホルモンのバランスが乱れます。

また、年齢的に親の介護で大きなストレスがかかる、あるいは子どもが自立していわゆる「空の巣症候群」と呼ばれるような抑うつ傾向が出るといったケースもあります。

<糖尿病になりやすい女性の特徴>

専業主婦やパートタイマーなどでは職場健診が義務付けられていない場合もあり、何年も健診を受けていないという女性も珍しくありません。

また、健診を受けていたとしても女性ホルモンのエストロゲンには血糖値を安定させるなど血管を柔らかく保つ働きがあるので、男性に比べると女性は健診での異常値が出にくい傾向になっています。

このエストロゲンの分泌量は40代から徐々に減り閉経すると一気に落ち込むので、「これまで何ともなかったから」と思っていても気がついたら糖尿病になっていたということもあるのです。

「妊娠糖尿病の疑いがある」と言われたことがある方はもちろんですが、肥満のある方、運動をほとんどしない方、甘いものや炭水化物が大好きな方、家族に糖尿病の人がいる方は若いうちから健診を受ける習慣をつけましょう。

健康に自信がある方でも40歳を超えたら毎年1回は健診を受けることをおすすめします。

 

妊娠糖尿病とは

糖尿病と妊娠糖尿病との違いは何なのか不思議に思う方もいるかもしれません。

妊娠中の検査で糖代謝異常がある場合、3つの状態に分けて考えます。

まず、妊娠前から糖尿病がある人の状態は「糖尿病合併妊娠」と呼ばれ、より厳密に血糖を管理します。

妊娠中に初めて分かった糖代謝異常は程度によって「明らかな糖尿病」「妊娠糖尿病」に分けられ、「明らかな糖尿病」の場合には産後も治療を継続することが必要になります。

「妊娠糖尿病」は妊娠という負荷が体にかかっていることで一時的に生じている軽い糖代謝異常なので、多くの場合は産後改善しますが確認のための検査が行なわれます。

ではなぜ妊娠糖尿病になるのでしょうか。

また、どのような基準で診断するのかについて次項で詳しく解説します。

<妊娠糖尿病になる理由>

なぜ妊娠すると糖代謝異常が生じやすくなるのでしょうか。

血糖値が高くなると膵臓から「インスリン」というホルモンが分泌されて血糖値を下げます。

しかし、赤ちゃんとお母さんをつなぐ「胎盤」からはこのインスリンの働きを抑えるホルモンが分泌され、胎盤ではインスリンを分解してしまう酵素が作られているのです。

妊娠後期になるほどこの胎盤の作用は活発化しますので、妊娠中は血糖値が高くなり妊娠糖尿病になりやすいと言えるでしょう。

妊娠中に血糖値が高い状態が続くと妊娠高血圧症候群や羊水量の異常などが起こりやすくなります。

また、胎児にも高血糖の影響が及んで大きく育ちすぎる、あるいは心臓の肥大化などが起こって流産のリスクを高める原因にもなるのです。

<妊娠糖尿病の診断方法>

妊娠糖尿病が疑われた場合どのように検査をして診断するのでしょうか。

妊娠糖尿病と診断される前には2段階の検査が行われます。

まずは妊娠糖尿病の有無を調べる検査です。

妊婦健診では23週までの初期と24~35週の中期にそれぞれ1回ずつ血糖の検査を受けることが決まっています。

妊娠初期には「随時血糖」と呼ばれる通常の血糖検査、中期には甘い水を飲んで1時間後の血糖値を測定する「50gグルコースチャレンジテスト」を行います。

妊娠初期の随時血糖が95mg/dl以上、または妊娠中期50gグルコースチャレンジテストが140mg/dl以上だった場合に、さらに詳しい診断のための検査が行われます。

ただし、肥満や高齢妊娠、羊水過多、妊娠高血圧症候群の既往などの状況から医師が「糖尿病になりやすい体質」と判断した場合には、すぐに診断のための検査をすることもあります。

2段階目は妊娠糖尿病を診断するための「75gブドウ糖負荷試験」です。

空腹時と甘い水を飲んでから1時間後、さらに2時間後の3回で血糖値を測ります。

空腹時が92mg/dl以上、1時間値が180mg/dl以上、2時間値が153mg/dl以上のいずれかに該当すると「妊娠糖尿病」と診断されます。

 

妊娠糖尿病と2型糖尿病の発症リスク

なぜ同じような生活をしていても糖尿病になる人とならない人がいるのでしょうか。

後天的な糖尿病、いわゆる「2型糖尿病」の発症リスクを高める原因には「遺伝的因子」と「環境的因子」があります。

もともとインスリンを分泌しにくい体質の場合は「遺伝的因子」と見られ、遺伝子の影響が糖尿病の原因と考えられています。

これに対して「環境的因子」が原因の場合は、生活習慣などの影響でインスリンがうまく働かなくなるのです。

環境的因子には肥満や高血圧、喫煙、飲酒などが挙げられます。

遺伝的因子や年齢は変えることができませんが環境的因子は変えることができます。

妊娠糖尿病になったことのある人は2型糖尿病を発症するリスクが高くなりますが、生活習慣を改善することで予防が可能なのです。

<2型糖尿病を未然に防ぐには>

2型糖尿病にならないようにするためにどんなことに気をつければよいのでしょうか。

まずは肥満を防ぐことが重要です。

必要な栄養をしっかり摂りつつ食べ過ぎないように気をつけ、生活の中でなるべく身体を動かし定期的に運動するとより効果的です。

また、喫煙は糖尿病のリスクも高めてしまいますので禁煙することも大切です。

このように生活習慣を改善することは糖尿病だけでなく、脳梗塞や心筋梗塞などの予防にも役立ちます。

なお、体重を身長の2乗で割った値が25を超えていると肥満と分類され、肥満の方は5~10%体重を減らすことからはじめます。

また、糖尿病予備軍であるかどうかを早く見つけて生活習慣を改善して2型糖尿病になることを防ぐことができますので、定期的に健診で確認することも大切です。

<2型糖尿病の発症予防の研究>

2型糖尿病は世界でも患者が多く各国でさまざまな研究が進んでいます。

「食事療法と運動療法で減量した人」を「しなかった人」と比べた研究がフィンランド、アメリカ、中国、インド、日本でおこなわれており、いずれも食事内容の改善や運動による減量が糖尿病の発症リスクを下げるという結果が出ています。

なお、発症リスクの下げ率は研究によって29~67%と幅があるようです。

最近では「ボグリボース(αグルコシダーゼ阻害薬糖)」という糖の吸収を緩やかにする薬が保険適用になりました。

しかし糖尿病を予防する効果は40.5%であり、食事や運動での減量と効果はあまり変わりません。

そのため、この糖の吸収を緩やかにする薬を飲んでも、糖尿病の発症を予防するには生活習慣の改善を同時に行わなければ効果は限定的とされています。

<身体活動量と糖尿病発症の研究>

身体的活動度と糖尿病の発症に関する主な大規模研究は国内外で行われており、毎日の活動量や休日などの運動で糖尿病の発症リスクが低下することが示されています。

ペンシルバニア大学同窓生研究では、週に500Kcalの運動をするごとに糖尿病発症は6%低下すると報告されました。

週に500Kcal、つまり1日に72Kcal分の運動量は歩行に換算すると1,000歩(歩く時間で10分、歩行距離で600~700m程度)に相当します。

なお厚生労働省では糖尿病を回避するために1日に歩く距離は600~700mほどを目安としており、歩数では男性9,200 歩、女性8,300 歩を目標としています。

 

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糖尿病予備軍として気をつけたいこと

日本人は遺伝的にインスリン分泌能力が高くありません。

太ったことがないのに糖尿病になってしまうこともあります。

そのため、今は大丈夫でも「自分は糖尿病予備軍かもしれない」と意識して定期的に健診を受けましょう。

特に親や親戚に糖尿病の人がいる場合は男性で2.0倍、女性で2.7倍も糖尿病の発症リスクが上がるので注意が必要です。

他の病気と関連して糖尿病が発症する恐れがあります。

高血圧があると糖尿病の発症リスクが上昇し男性で1.3倍、女性で1.8倍に、また肥満指数BMI(体重を身長の2乗で割った値)が1増えるごとに17%糖尿病の発症リスクが上昇します。

年齢によっても糖尿病の発症リスクは上昇し、1歳年を取るごとに2%上昇すると言われています。

糖質の取りすぎや運動不足といった生活習慣の乱れも糖尿病になる原因となります。

特に糖質は食べるとすぐに消化されてブドウ糖になって血糖値を大きく上昇させてしまうため、甘いものはもちろん炭水化物や果物などの摂りすぎには注意が必要です。

食べ物だけでなく、ビールや日本酒、ワインといったアルコールにも糖質が含まれます。

どうしても飲みたいときにはウイスキーや焼酎など蒸留酒を選ぶと良いでしょう。

ただし、毎日純アルコール20g(ビール500ml、日本酒1合、焼酎0.6合)以上飲むと、糖尿病の発症リスクは1.3倍上昇しますので注意が必要です。

酒と同じく嗜好品であるタバコも糖尿病の発症リスクを上昇させます。

1日20本以上タバコを吸う方と吸わない方を比べると、男性で1.4倍、女性で3.0倍も糖尿病になりやすいので禁煙したほうが良いでしょう。

その他、睡眠不足や過度のストレスも血糖値を上げて何とか乗り切ろうと体が反応するため、糖尿病の発症リスクの大きな要因になります。

<糖尿病は自覚症状がない>

血糖値が高くなるとどんな症状が出るのでしょうか。

糖尿病の初期の状態では極端な高血糖にでもならない限り自覚できる症状はほとんどありません。

しかし、自覚症状がなくても糖尿病は神経や目、腎臓などの細かい血管をむしばんでいきます。

健診を受けなかったり受診を中断していたりすると、気づいた時には足が壊疽を起こしたり糖尿病性の網膜症で失明したり糖尿病性腎症で透析をしなければならなくなったりするケースも少なくありません。

ほかにも糖尿病は血管を傷めるので動脈硬化が進行している恐れもあります。

<健康ブームにも要注意>

「健康のために」と思ってブームになっている食品やダイエットを取り入れたことが裏目に出て、血糖コントロールを悪化させてしまうこともあります。

ひとつの食品だけを取り続けるダイエットや極端な食事制限をすると、必要な栄養素を十分に取れなくなりインスリンがうまく働かなくなることがあるのです。

特に亜鉛やビタミンB群が不足するとインスリン不足に陥りやすくなります。

また、スムージーやフルーツのみを食べるダイエットでは、果糖の摂りすぎになります。

果糖も糖質であるため摂りすぎると血糖コントロールを悪化させます。

糖質を徹底的に避けて必要な栄養素をしっかりと摂り、適度に身体を動かすことが糖尿病予防の基本です。

 

妊娠糖尿病の昔といまの診断基準

妊娠中の血糖値が高くなるほど、これまで考えられていたよりも高い頻度で新生児に異常が増えることが判明しました。

例えば、お腹の中で赤ちゃんが大きく育ちすぎる「巨大児」や、生まれた赤ちゃんが低血糖を起こすなどの異常が挙げられます。

また、母体は「妊娠高血圧腎症」にかかりやすくなります。

そうなると帝王切開せざるを得なくなったり、難産になったりする可能性もあるのです。

そのため2011年に妊娠糖尿病の基準はより厳しくなりました。

以前は、妊娠糖尿病と診断される空腹時血糖値の基準は100mg/dl超でしたが、変更後は92mg/ dl 超に変更されたのです。

さらに75g糖負荷試験の基準値でも空腹時で100mg/dlが92mg/dlに変わりました。

1時間値は180mg/dlで変わりませんが、2時間値は150mg/dlが153mg/dlに変更されました。

いずれかひとつでも基準を超えると妊娠糖尿病と診断されます。

なお、空腹時血糖126mg/dl、HbA1c6.5%を超えると「妊娠糖尿病」ではなく「妊娠中に発見された明らかな糖尿病」と診断されることに変わりはありません。

診断基準が変わった結果、妊娠糖尿病の診断を受ける人が3~4倍に増加しました。

早い段階で糖代謝異常を発見することは胎児の健康を守ってお産を順調に行うために必要なだけでなく、女性の生涯の健康管理にも役立っています。

 

まとめ

妊娠中の女性の体はおなかの赤ちゃんの分まで栄養を吸収し、必要な栄養素や酸素を届け、不必要な物質を処理しています。

一方で、赤ちゃんと妊婦さんをつなぐ胎盤では血糖値を下げるインスリンが分泌するのを抑えるホルモンやインスリンを分解してしまう酵素が作られています。

そのため妊娠中は血糖値が上昇しやすい状態になるのです。

妊娠中に血糖値が高い状態が続くとおなかの赤ちゃんにも妊婦さんにも悪影響があるので、早期発見するための検査の実施や検査基準の見直しがなされています。

妊娠糖尿病になったことのある人は年齢を重ねてから2型糖尿病になりやすいので、糖尿病を予防する生活習慣を心がけましょう。

 

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薮内直純

薮内直純

株式会社イコールヒューマン。生活習慣病専門ライター。医療や医薬品に関する誤解を解き明かしながら、真実を追求した記事を提供中。

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