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脳腫瘍とがんは違う?特徴と治療の流れ

 2019/05/27 生活習慣病
この記事は約 11 分で読めます。 4,128 Views

「脳腫瘍」とは誰もが一度は聞いたことのある病名であり、脳神経外科の臨床の現場においてとても頻度の多い疾患です。

しかし、脳腫瘍患者は多いものの、脳腫瘍について正しい知識を持つ人はどのくらいいるのでしょうか?

脳腫瘍は脳にできるガンだとは分かっているかと思いますが、体のほかの臓器にできるガンと何が違うのでしょうか?

脳腫瘍によって生じるさまざまな特徴的な症状やそれに対する治療法を今回は詳細にご紹介します。

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脳にできた腫瘍は良性・悪性問わず「脳腫瘍」

脳腫瘍は脳の中にできるがんですが「脳ガン」とは言いません。

さらに、脳の場合は頭蓋骨の中にできた腫瘍は良性であっても悪性であってもすべて脳腫瘍とよばれます。

ちなみに脳腫瘍の3分の2は良性腫瘍といわれています。

脳腫瘍の種類は実に150種類以上といわれています。

その種類の多さが特徴でもあり、脳腫瘍は「原発性脳腫瘍」と「転移性脳腫瘍」に分けられます。

原発性脳腫瘍とは

原発性脳腫瘍とは、脳の細胞や脳を包む膜、脳神経などから発生した腫瘍のことをいいます。

さらに脳実質(神経細胞と神経膠細胞)と脳実質以外から生じる腫瘍に分けられます。

比較的良性で、かつ正常な組織との境界もはっきりとしていて増殖速度も遅いのが主に脳実質以外の組織に生じる脳腫瘍です。

これは髄膜腫や下垂体腺腫、神経鞘腫などがあたります。

一方で脳実質に生じる腫瘍は周辺組織に染み込むように広がり、その増殖速度も速いことが特徴です。

正常組織との境目が不明瞭な腫瘍は悪性の可能性が高くなります。

脳実質の神経膠細胞(グリア細胞)が腫瘍化したものを神経膠腫(グリオーマ)と呼び、このうち星細胞腫と呼ばれる腫瘍が最も悪性度の高い腫瘍の一つとされています。

以下に主な原発性脳腫瘍を挙げます。

・神経膠腫(しんけいこうしゅ)(グリオーマ)
・中枢神経系原発悪性リンパ腫
・髄膜腫(ずいまくしゅ)
・下垂体腺腫
・神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)
・頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)

転移性脳腫瘍

ほかの臓器で生じたがん(肺がんや乳がん、大腸がん)が血液の流れによって脳に転移したものを指します。

・それぞれの腫瘍の悪性度とは?

脳腫瘍はそれぞれ1〜4までのグレード(WHO)を用いて、治療しない場合の腫瘍増大・進行・予後の目安を指します。

グレード1とは良性腫瘍で、仮に手術で腫瘍が摘出できれば再発の危険は減ります。

このグレード1の代表的な脳腫瘍には髄膜腫や下垂体腺腫、神経鞘腫があります。

悪性腫瘍に該当するグレード2〜4はグレードが上がるにつれ腫瘍の増殖速度が速くなり、悪性度が増すことを意味します。

基本的にグレードが2〜4のものは悪性脳腫瘍で放射線治療や化学療法を行っていきます。

以下、グレード2からの脳腫瘍をご紹介しましょう。

・グレード2

ゆるやかに成長していく脳腫瘍のタイプで、星細胞種と乏突起神経膠腫があり、成人男性の大脳半球に多く発生します。

症状としては頭痛や痙攣があり、それらが進行すると片麻痺などが見られます。主な治療方法として外科治療が選択されます。

・グレード3

腫瘍の成長が比較的早く、近くの組織内にも広がる可能性が十分にある腫瘍を指します。

退形成性細胞腫(たいけいせいせいさいぼうしゅ)、退形成性乏突起膠腫(たいけいせいせいぼうとっきこうしゅ)、退形成性乏突起星細部腫(たいけいせいせいぼうとっきせいさいぼうしゅ)がこれに当たります。

いずれの腫瘍にも痙攣症状がみられ、手術と化学療法、放射線療法が併用されます。

・グレード4

このグレード4の悪性腫瘍は悪性度がとても高く、病変の広がりが速いのが特徴です。

膠芽腫がこれに該当し多形性膠芽腫とも呼ばれます。

一次性膠芽腫と二次性膠芽腫があり、前頭葉に多く見られ、症状は1週間単位で悪化し頭痛、痙攣や性格変化、認知症、運動麻痺などが生じます。

 

脳が圧迫される頭蓋内圧亢進症状

それでは、どのような症状が脳腫瘍にみられるのでしょうか。

脳腫瘍の症状は腫瘍により頭蓋骨内部の圧力が高まることで起こる「頭蓋内圧亢進症状」と、腫瘍が発生した場所の脳が障害されて起こる「局所症状」に分けられます。

脳腫瘍の症状として最も多いのは頭痛とてんかん発作ですが、成人になってはじめててんかん発作になった場合は脳腫瘍の初期症状である可能性もあります。

また腫瘍が周囲の神経細胞を圧迫することによる「けいれん発作」が見られることもあります。

神経膠腫や移転性脳腫瘍のような悪性腫瘍の場合は発作が起こりやすいことが特徴です。

発作にも大発作や小発作、精神運動発作があります。

次に「頭蓋内圧亢進症状」について説明をしましょう。

・頭蓋内圧亢進症状とは

脳腫瘍の特徴的な症状としては慢性の頭蓋内圧亢進症状があります。

腫瘍が大きくなり頭蓋内の圧力が上がることで、頭蓋内圧亢進という症状が出てきます。

脳は周囲が頭蓋骨に囲まれた閉鎖空間のため、その中に腫瘍ができると逃げ場がなくなり、その結果頭蓋内の圧力が高くなります。

これらによって、頭痛や吐き気、まひ、歩行障害、痺れ、ふらつきなどの症状が出てくるのです。

上記の症状が出たらすぐに医療機関を受診することが重要です。

さらに、腫瘍が大きくなると髄液の流れが悪くなり、脳室(脳の中の空洞)が拡大する水頭症を起こすことがあり、緊急に治療が必要になります。

・頭蓋内圧亢進の原因

頭蓋内圧は脳(80%)、血液(10%)、髄液(10%)が存在し、これらによって生じる圧を「頭蓋内圧」といいます。

普段はこの3つの量はほとんど一定に保たれているため、頭蓋内圧も一定に保たれています。

しかし、これらいずれかの要素が増大することにより頭蓋内圧亢進につながります。

頭蓋内圧亢進の主な原因をまとめると以下のようになります。

脳容積の増加(脳腫瘍、脳出血、脳浮腫などによる)

血液量の増加(高CO2血症などによる脳血管拡張、うっ血性心不全や頸静脈の圧迫などによる脳静脈灌流障害)

髄液量の増加(髄液量の産生過剰、脳室内出血などの髄液の流れの障害など)

・頭蓋内圧亢進症状の代表的症状

頭蓋内圧が20mmHgを超えると頭蓋内圧亢進症状として以下のような代表的な症状が現れる可能性が高くなります。

この頭痛や嘔吐、うっ血乳頭は頭蓋内圧亢進の3徴ともいわれます。

①頭痛:早朝頭痛:早朝に強めの頭痛がよく起こります。
②嘔気、嘔吐:噴射のように嘔吐します。朝方に起こることが多いです。
③うっ血乳頭:視神経に浮腫が生じることで起こり、眼底検査でわかります。

左右両目とも耳側の視野が欠け網膜にある「盲点」の範囲が拡大します。

 

これらの頭蓋内圧亢進症状に対しては症状の悪化を防ぐため、頭部挙上などの内科的治療や外科的治療が行われます。

 

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腫瘍の場所によって変わる局所症状

脳腫瘍のもう一つの症状である「局所症状」とは、脳腫瘍ができる脳の部位によりあらわれる症状のことをさします。

脳は神経の中枢であり、運動や感覚などのさまざまな機能が脳の中でそれぞれ担当する部位が決まっています。

脳の中に腫瘍ができると、そこの部分の機能に障害がでます。

その機能障害は局所症状となって出現するので、脳の各部位がどのような機能を担っているのか把握していることが必要です。

とくに腫瘍が優位大脳半球(右利きの人は左側)にあるかどうかや言語中枢や運動中枢など、とくに身体にとって重要な場所にあるかどうかが局所症状を捉える際にとても重要になります。

次に、それぞれの脳の局部部位における局所的神経症状を大まかに挙げていきましょう。

・前頭葉

腫瘍とは反対側の運動(片)麻痺や言葉を理解できるがうまく話せなくなる(運動性失語:言葉を発する機能を担う部分が障害された場合)といった症状が出ます。

さらに、性格変化、自発性変化、認知症症状、集中力・記憶力低下、てんかん発作、尿失禁などもあらわれます。

・側頭葉

相手の言葉を聞いて内容を理解することが困難になります。

流暢に発話できるものの言葉を言い間違えたりすることが多くみられるようになります。

また、腫瘍とは反対側の視野障害(半盲)や、幻臭(実際にはないにおいを感じる)や、てんかん発作もみられます。

・頭頂葉

主に腫瘍とは反対側の感覚障害が起こり、読み書きができなくなったり、失算といった計算ができなくなったりする症状があらわれます。

さらに、左右を判断できなくなる、指の名前を言えなくなる、左右片方の刺激を認識できなくなる(半側空間失認)などもみられます。

・後頭葉

同名半盲という、腫瘍とは反対側の視野が欠ける症状が出ます。

・視交叉(しこうさ)・視床下部(ししょうかぶ)

視力・視野障害、尿の濃度がうまく調節されなくなる(尿崩症)、肥満、体温調節の異常、意識障害などがあらわれます。

・視床

意識の障害や運動(片)麻痺、手足のしびれや感覚の異常がみられます。

・脳幹

運動(顔・四肢)麻痺や感覚障害、物が二重に見える(複視)、顔面神経麻痺、顔面や手足の障害、嚥下障害、聴力障害などがあります。

・小脳

細かな動きができない協調運動障害(失調症)、ふらつきやめまい、歩行障害などがおきます。

・脳神経

目の動きが悪くなりものが二重に見える(動眼神経や外転神経の障害)、顔のしびれや感覚低下(三叉神経の障害)、聴力低下・耳鳴り・めまい(聴神経に腫瘍ができた場合)があります。

このように腫瘍が発生する部位により身体的な問題とは異なる身体の機能的な問題も出てくることが脳腫瘍の特徴の一つといえます。

さらに、これらの症状の進み具合は、通常は月単位で進行性に増悪していくということも大きな特徴といえるでしょう。

 

脳腫瘍の治療方法

次に脳腫瘍の検査や治療についてそれぞれ説明をしていきましょう。

・検査

脳腫瘍疑われるとき、症状の詳しい経過を問診し腫瘍の位置や大きさを確かめるためCTやMRIなどで頭の中の画像検査を行います。

脳に栄養を供給している血管と腫瘍の関係を見るために脳血管造影検査を行うこともありますが、最終的には生検または手術を行い病理組織検査を行い詳細な診断を確定していきます。

・治療

脳腫瘍の治療方法としては切除、抗がん剤治療、放射線治療が主な手段として挙げられますが、脳腫瘍が脳の中のどこにできたかにより治療は大きく異なってくるともいえます。

手術で最も重要なことは、腫瘍の病理診断を行うこと、手術の場合は言語機能を守るために患者と医師が対話しながら手術を行う(覚醒下手術)場合があります。

悪性脳腫瘍は、正常な脳組織との境界が判別しにくいこともあり、ナビゲーション、術中MRI、電気生理学的モニタリング検査、蛍光診断などを使って手術を行います。

そこで、病理診断が確定すると、それにあわせて放射線治療や化学療法を行うという流れです。

・外科的手術

脳腫瘍治療の根幹はこの外科的治療や手術であるといえます。

手術により病変をすべて摘出できればそれが最も有効な治療法ですが、特にグレード1の良性脳腫瘍は手術で完全に摘出できればほとんどの場合再発しません。

悪性腫瘍でも手術位よる生検で中枢神経性悪性リンパ腫や胚細胞腫と診断がつけば、その後の薬物療法や放射線治療の効果が高いと考えられ無理に摘出する必要がない場合もあります。

右前頭葉では比較的重要な機能を有していないため、腫瘍ができても肉眼的に全摘出することもあります。

しかし、一方で運動野や言語野に発生している場合は、腫瘍摘出の結果が症状悪化を及ぼすこともあります。

その場合は無理な完全除去は行わず、部分摘出による病理診断を行い、放射線や薬物療法での治療が主になります。

・薬物療法

悪性腫瘍には腫瘍の種類などを踏まえ細胞障害性抗がん剤や分子標的薬などが用いられることがあります。

良性腫瘍に対して薬物療法は原則として行いませんが、下垂体腫瘍の一部では薬物療法を使うこともあります。

薬物療法だけで腫瘍が縮小する場合もあるのです。

さらに薬物療法により副作用が生じることがあるため、体の状態やがんの状態を考慮した上で適切な治療が選択されます。

・放射線治療

放射線を照射すると、腫瘍細胞の核酸に作用し細胞を破壊または損傷させます。

髄芽腫や胚細胞腫などは放射線治療に感受性が高いものと知られています。

これら以外にも、ガンマナイフなどの定位的放射線手術や免疫療法といった治療もあります。

いずれの治療法を試みるにしても、意識障害や運動障害、言語障害など最もケアすべき症状をみながら治療法を選択していくことが重要といえるでしょう。

 

まとめ

脳腫瘍にはほかの身体の臓器における腫瘍とは違い、頭蓋内圧亢進や局所的症状などさまざまな特徴がみられます。

それらの症状によって治療法が選択され、医療技術の進歩から治療の成績も向上したとはいえ、ほかの臓器のがんと比べると脳腫瘍は予後の悪いがんとしても知られています。

今回の記事をきっかけに、脳腫瘍について考え知識を増やす機会にしていただければと思います。

 

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ライター紹介 ライター一覧

木村 哲也

木村 哲也

株式会社イコールヒューマン代表取締役。生活習慣病の権威者である崇高クリニックの荒木裕院長と提携し、主に生活習慣病に関わる様々な情報を広く分かり易く提供中。

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