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糖尿病予備群は要注意!耐糖能異常・境界型糖尿病ってなんのこと?

 2016/03/19 生活習慣病
この記事は約 9 分で読めます。 6,045 Views

糖尿病と言えば、一度症状が出れば一生治ることの無いたいへんな病気ですが、実は現在の日本には糖尿病一歩手前の境界型糖尿病や耐糖能異常と診断される人が増えてきています。境界型糖尿病や耐糖能異常は別名糖尿病予備軍とも呼ばれています。糖尿病予備軍という名前なら耳にした経験のある人も多いのではないでしょうか?

境界型糖尿病・耐糖能異常とは、血糖値が基準値を越えてはいるが糖尿病とまでは言えない、いわばグレーゾーンの状態のことを指します。

糖尿病は生活習慣病のひとつで、悪化すると高血圧や高脂血症などの合併症を引き起こします。

合併症が進行すると、脳梗塞や心筋梗塞、腎不全、失明など命にかかわる重篤な疾患になる可能性もあります。

耐糖能異常・境界型糖尿病は、糖尿病という名前は付いていますが、厳密に言えばそこまで症状が深刻なわけではありません。日本で便宜上分かりやすいので使用されている名前であり、世界的には耐糖能異常という名で呼ばれています。

糖尿病ではないから問題ない、と安心してはいけません。もし境界型糖尿病をそのまま長期間放置すれば症状が確実に悪化し、本格的な糖尿病へと進んでしまうでしょう

逆に言えば、耐糖能異常の段階で治療を開始することができれば、本格的な糖尿病まで進行する前に症状を改善することができるのです。つまり、耐糖能異常に留まっているうちに早期発見し、治療を開始することが大切です。

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境界型糖尿病とはどんな病気か

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いわゆる糖尿病予備軍である境界型糖尿病や耐糖能異常は、糖尿病になる一歩手前の状態です。では、境界型糖尿病や耐糖能異常は、具体的にはどのような症状を指すのでしょうか。

耐糖能というのは、人間の身体が糖に耐える能力という意味です。簡単に言えば、血液中に存在するブドウ糖を正常値に戻す能力になります。

血液中のブドウ糖濃度のことを血糖値と言います。

摂取された食べ物は消化吸収されることで、血液中にブドウ糖として溶けだしてきます。その後糖は、分泌されたインスリンによって栄養として細胞へ届けられます。この流れが耐糖能で、時間とともに糖の量が血液中から減っていくことになります。

耐糖能異常になるとこの流れがスムーズにいかなくなり、インスリン不足や細胞がうまく糖を吸収できなくなり、血糖値が高い状態がずっと続いてしまうのです。

境界型だと、一時的に高血糖となっても空腹時になると正常値に戻っていることもあります。この状態だと深刻な合併症などは起こりませんが、油断は禁物です。

 

どのような検査で診断されるのか

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境界型糖尿病や耐糖能異常かどうかを調べるには、血液検査ではなく経口によるブドウ糖負荷試験というものを行います。

特に難しい検査ではなく、お腹が空いている時に75gのブドウ糖入り飲料を飲み、血液中の血糖値やインスリン濃度を約2時間調査します。

正常な人であれば、空腹で甘い飲み物を飲んだ場合、ブドウ糖によって血糖値が上がっても、すぐにインスリンが分泌されて徐々に減少していきます。

耐糖能異常の場合はこの流れが正常に働かないので、時間が経過しても血糖値が高いままだったり、不規則な変動をする症状が出ます。

インスリンが正常に働いていないという事が、糖尿病の診断基準のひとつになります。

空腹時の血糖値が126mg以上か、検査後の血糖値が200mg以上であれば完全に糖尿病と診断されます。

これに対して、空腹時110mg以上126mg未満かつ検査後の血糖値が140mg以上200mg未満の場合は、耐糖能異常や境界型糖尿病に該当します。

 

境界型糖尿病・耐糖能異常になってしまったら

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耐糖能異常や境界型糖尿病は、基本的に糖尿病とは見なされません。そのことで安心してしまう人も多いのですが、当然ながら症状を放置すればそのまま糖尿病へ進行してしまうこともあるのです。

つまり、耐糖能異常や境界型糖尿病は、糖尿病にはなっていないものの、健康な人に比べたら糖尿病になりやすい状態ということです。

実際、耐糖能異常と診断された人のうち、30%がその後糖尿病にかかり、30%がそのまま境界型糖尿病、残りの30%は徐々に正常値に戻ると言われています。

怖いのは、耐糖能異常の状態であっても、長い間放置すれば合併症にかかるという点です。

まず動脈硬化が発症し、それに伴って心筋梗塞や脳卒中などにかかることもあり得ます。更に悪化すれば、失明したり手足の切断にまでなってしまう合併症もあるので、予備軍だからと言って決して安心して良い状態ではないのです。

一方で糖尿病予備軍のうち30%が正常に戻るという事は、しっかりと血糖値コントロールを行えば、状態が改善する可能性は十分にあるという事です。

耐糖能異常と診断されたら、早期に食事や運動療法を開始し、血糖値を下げる努力が必要になります。場合によっては薬による治療も必要なので、注意しましょう。

 

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境界型糖尿病になりやすい人がいる

通常の糖尿病と同じく、境界型糖尿病の症状にかかりやすい人というものが存在します。

糖尿病には遺伝子など体質による1型糖尿病と、生活習慣などを原因とした2型糖尿病があります。

1型糖尿病

1型の遺伝子とは、あくまで本人が持つ遺伝子の異常によるもので、親からの遺伝という意味ではありません。

もともと持って生まれた遺伝子なので、発症を予防するのが難しいという特徴があります。

2型糖尿病

むしろ2型の方で、家族や近しい親族に糖尿病患者がいる場合は発症リスクが跳ね上がるとされています。場合によっては、家族に患者がいない人の2、3倍も罹患しやすいという研究結果も報告されています。

また、日本人は民族的にインスリンの分泌量が少なく、2型糖尿病にかかりやすい体質だと言われています。

これに加えて、日ごろから高糖質の食べ物を好んで暴飲暴食したり、運動を全くしない人、体重が標準よりも重く体脂肪率が高い肥満気味な人なども血糖値が下がりにくい状態が続くため、糖尿病はもちろん耐糖能異常、境界型糖尿病のリスクも高まります。

このように生活習慣が、2型糖尿病の発症率に大きく関わっています。

 

喫煙している場合は要注意

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喫煙はガンや脳卒中など様々な病気の原因として知られていますが、境界型糖尿病の発症にも大きく影響しています。本人が喫煙しなくても、受動喫煙していただけでも耐糖能異常を発症するのです。

たばこを吸うと交感神経が刺激されて、血糖値が上昇します。

また、喫煙は上昇した血糖値を下げる働きをするインスリンの作用を阻害します。

ある日本の大学の研究報告によると、喫煙している人の糖尿病の発症率は、男女合わせて非喫煙者の約2.6倍にも上りました。耐糖能異常の場合だと、同じく約1.3倍の増加となっています。

さらに詳しく研究された結果、原因ははっきりしていませんが、男性よりも女性の方が喫煙によって境界型糖尿病や耐糖能異常を発症するリスクがより高いことが分かったのです。女性とその夫がともに喫煙する場合、そうでない女性と比べてなんと約3倍も発症リスクが上がりました。

このことから、特に女性は喫煙によるリスクを重視し、血糖値が高めの人はできれば夫婦一緒に禁煙することをおすすめします。

また、タバコに含まれるニコチンは血圧を急上昇させるので、高血圧になる恐れもあります。

喫煙を含めたインスリンの働きに悪影響を及ぼす生活習慣を続けていると、糖尿病予備軍が糖尿病へと進行する可能性が高くなります。

 

境界型糖尿病を改善させるには

耐糖能異常や境界型糖尿病と診断されたら、基本的には糖尿病の治療と同じような対処をしていきます。

耐糖能異常の治療では、第一に糖尿病に進展させないことや合併症を引き起こさないことを目的とします。糖尿病とまではいかないので、血糖値も投薬が必要なことはほとんどありません。このため、基本的には食事による改善と運動が必要になります。食事療法と運動療法を進めながら定期的に血糖値をチェックして、正常値に戻るよう調整していきます。

食生活の改善と運動習慣によって生活習慣を改善できれば、糖尿病だけでなく肥満の予防にもなります。

食事について

食事については、糖質の摂取を控え、タンパク質や脂質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素をバランスの良く摂ります。調味料にも気を付けて、できる限り糖質の含まれていない物を使用しましょう。

運動について

運動については、自分の判断で激しいものをやってしまうと危険なこともあるので、事前に主治医に相談されることをおすすめします。食後しばらく経過してから、1時間程度の有酸素運動をできれば毎日行いましょう。

適度な有酸素運動を行うことで、インスリンの働きが活発になり、血糖値の上昇を抑えることができます。

続けることで効果が現れるものなので、三日坊主にならず継続して行える程度の運動を選びましょう。

 

まとめ

このように耐糖能異常・境界型糖尿病は、一歩間違えれば本格的な糖尿病にもなりかねない危険な状態です。ただ、耐糖能異常・境界型糖尿病の段階で発見できていれば、その後正しい対処をすることで深刻な事態を防ぐこともできます。

このため、普段から定期的に健康診断や血液検査などを受け、少しでも身体がおかしいと感じることや不安な症状が出れば、経口負荷検査を受けてみることが大切です。

特に糖尿病は、重篤な状態になるまでなかなか自覚症状が出ない疾患でもあります。

糖尿病予備軍である耐糖能異常や境界型糖尿病は、生活習慣の改善と血糖値コントロールが上手くいけば糖尿病になる前に健康な体に戻ることも可能です。

もし耐糖能異常や境界型糖尿病を放置してしまえば、さまざまな症状や合併症を引き起こしてしまう可能性もあります。日本人はもともと体質的に糖尿病になりやすいということもあるので、放置することなくできるだけ早期に治療を開始してください。

耐糖能異常・境界型糖尿病は、早めに食事療法や運動療法を始めれば症状を改善させることができることも多いので、医師の指導の下で正しい治療を行っていくようにしましょう。継続は力なりで、続けていけばきっと健康を取り戻すことができますよ。

 

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薮内直純

薮内直純

株式会社イコールヒューマン。生活習慣病専門ライター。医療や医薬品に関する誤解を解き明かしながら、真実を追求した記事を提供中。

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