運動で高血圧を改善したい!「治療のための運動」にまつわるデータはどんな指標で測定される?
運動で高血圧を改善させたいとお考えの方もいるでしょう。
しかし、高血圧改善にはどの程度の運動が望ましいのか悩みますよね。
ひとことで運動といってもランニングや歩行、水中運動などさまざまな種類があります。
運動は血圧を下げる効果があるといわれていますが、実は体を動かしている最中には一時的に血圧は上昇してしまうのです。
もともと高血圧の人が運動中にさらに血圧が上昇することは、血圧が正常値の人に比べるとさまざまなリスクを伴うことがあります。
例えば、代表的なものが急性心筋梗塞やクモ膜下出血などです。
実際に運動中に突然死を起こすケースが起こっており、この突然死を予防する対策が求められています。
運動はただやみくもに行えばよいというものではありません。
運動強度やどのくらいの期間でどの程度行うのかといったポイントを踏まえた「運動処方」の考え方を取り入れることによって、より効果的に安全を考慮しながら実施することが可能です。
ここでは運動することで血圧が下がるメカニズムを踏まえ、運動処方の考え方や治療のための運動に関連するデータの測定方法についてご紹介します。
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なぜ運動すると血圧が下がるのか
運動すると血圧が下がることは知っていても、その理由やメカニズムについてあまり知らないという人も多いのではないでしょうか。
ここでは運動で血圧が下がる仕組みを3つの観点からみていきましょう。
<交感神経への作用>
人間の体は交感神経と副交感神経という2つの自律神経系から成り立っており、血管や臓器などの活動や働きはこの自律神経の影響を受けているのです。
結論から述べると運動によって交感神経の働きが低下し、血管が広がって血圧が下がることが分かっています。
血管が収縮したり広がったりすることによって、心臓から出発した血液が全身を巡っていくのが特徴です。
血管の収縮や広がりは、心臓から血液を押し出す力といってもよいでしょう。
例えば、勢いよく心臓から送り出された血液は血管を押す力も強いです。
この血管の収縮、拡張運動を支配しているのが自律神経のひとつである交感神経となります。
交感神経は緊張しているときや興奮しているときに活発になり、リラックスしているときや寝ているときには働きが低下するのです。
運動をすると興奮して血圧は上がるのでは?と思うかもしれません。
確かに一時的に血圧は上昇します。
しかし、適度な運動の継続によって、筋肉へより多くの酸素や栄養分を運搬するために血管は広がるように作用するのです。
つまり結果として交感神経の働きが低下し、血管が広がり血圧が下がるという仕組みとなっています。
<血糖降下ホルモンであるインスリンへの作用>
血糖を下げる作用で知られるインスリンですが、実は運動によって血圧が下がるメカニズムにインスリンが関係していることがわかっているのです。
「インスリン抵抗性」という言葉がありますが、これは細胞のインスリンに対する反応が鈍っている状態を指します。
そのため、インスリンが分泌されても十分な効果が得られないと、体はより多くのインスリンを分泌しようと働き、高インスリン血症という状態になるのです。
この高インスリン血症では、交感神経が緊張状態になったり腎臓で塩分(ナトリウム)が十分に排泄されなくなったりなどの要因が重なり、血管が縮まることで血圧が上昇します。
運動はこのインスリン抵抗性を抑える働きがあるため、血圧コントロールに効果的なのです。
<利尿作用の活性化>
適度な運動をすると、ドーパミンという物質が脳から分泌されます。
ドーパミンの働きによって利尿作用が促進されるため血しょう量が減りますが、この血しょう量が減ると心拍数が減少するため血圧が低下するのです。
このように運動はさまざまなアプローチによって血圧を下げるのに効果があるといわれています。
運動処方の際に参考にされる「FITT」の原則
運動の目的は人それぞれですが、ここでは健康づくりを目的とした運動処方の考え方をご紹介します。
度が過ぎた運動、個人の体や基礎疾患を考慮した運動でない場合は、体とくに筋肉や心臓などに負担がかかりますし、最初に触れたように突然死の原因にもなってしまいます。
健康づくりのための運動については、運動処方でも用いられる「FITT」という4つの要素を基本に考えていきます。
そしてその人の生活習慣や運動習慣、既往歴やメディカルチェックでの数値などを総合的に判断して決定していくのです。
では、FITTの原則について詳しくみていきましょう。
◆Frequencyー運動の頻度
生活習慣やこれまでの運動習慣、既往歴などを考慮し一週間に何回運動を行うのかなどの運動の頻度を決めていきます。
自分のライフスタイルに合わせ、無理なく続けられる頻度を決めることが大切です。
◆Intensityー運動の強度
運動をする際に、どのくらいの強度の運動に体が耐えることができるかを心拍数や脈拍数などの体のサインや呼吸困難感などの自覚症状を表す指標を参考に決定していきます。
各施設や病院など運動処方を行うところによって、参照にする指標はさまざまです。
一般的には、「修正ボルグスケール」や「VANS」、「METs」などの指標を用います。
ちなみに「METs」では強度が中等度の運動は、「少し息はあがるが会話できる程度」の運動を指しており、該当するのは早歩きや筋トレ、水中ウォーキングや軽いラケットスポーツなどです。
普段の生活において運動をする習慣のない人の場合は、強度が中等度の運動でけがをする可能性があります。
そのため、様子をみながら徐々に強度をアップしていくことが大切です。
◆Time-運動の持続時間
これは一日に行う運動はどれくらいの時間続けて行うのが望ましいかを示したものです。
一般的に軽めの歩行やジョギングなどの有酸素運動を20~30分持続して行うのがよいとされています。
もし、20~30分持続で運動ができない場合には、10分間の運動を2、3回繰り返してトータルして20~30分になるようにしていきましょう。
◆Type of exercise-運動の種類
短距離走などに代表される無酸素運動よりも歩行やジョギング、水中歩行、自転車エルゴメーターなどの有酸素運動のほうが時間をかけて運動できます。
そのため、体への負担に配慮しながら続けることが可能です。
このほかにも体の筋肉をほぐす体操や自重を利用した補助運動、マシン、フリーウエイトなどの筋肉トレーニングなどといった種類の運動もあります。
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運動の強度の指標
ここでは運動強度の指標として使われるデータについてご紹介します。
<心拍数>
心拍数とは、心臓が全身に血液を送り出す拍動数のことです。
何もしていない安静時のときと比べて、運動するとエネルギーを作り出すための酸素をより多く必要とするために心拍数が上昇します。
運動強度を考える指標として、運動時の目標脈拍数を設定する「カルボーネン法」が取り入れられているのです。
ここで「心拍数」と「脈拍数」という言葉が出てきますが、不整脈がない人では心拍数と脈拍数は同じ数です。
具体的な計算式についてみていきましょう。
目標脈拍数=(220-年齢-安静時脈拍数)×○○%(運動強度)+安静時脈拍数
安静時脈拍数を測定し、目標脈拍数を設定すれば、あとは年齢を当てはめるだけで運動強度を計算することが可能です。
安静時の脈拍数の測定では、手首の親指側を流れる橈骨動脈という脈に触れて、人差し指と中指、薬指を並べて添えます。
できれば1分間測定することが望ましいですが、30秒の測定を2回繰り返すという方法も可能です。
この心拍数による運動強度の算出方法は運動が初めてという方でも運動強度を簡単に設定できたり、参考にしたりすることができます。
ただ心拍数は、その日の体調やストレスの有無・程度、天候、睡眠状況などによって左右されてしまうのが特徴です。
心拍数が容易に上がってしまう状況であれば、数字だけは目標に達しているにもかかわらず、運動強度が不足することが起こりえるため、数値だけで判断しないということも大切です。
<METs(Metabolic EquivalenTs)>
運動強度の単位を表すものとして代表的な指標が「METs」です。
ダイエットをする際に取り入れる人も多いため、一度は耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
METsとは安静時つまり体を横にしているあるいは座ってリラックスしている状態を1とし、運動時に何倍のエネルギーを消費しているかで運動強度を図る指標です。
・3~3.5 METs程度・・・軽めの筋肉トレーニング、歩く、掃除機をかける、洗車を行う、子供と遊ぶ
・4~4.3 METs程度・・・階段をゆっくりと上がる、自転車走行、ゴルフ(ラウンド)、やや早歩き
・6 METs程度・・・ゆっくりめのジョギング
・7.3 METs・・・エアロビクス
・8~8.3 METs・・・ランニング、クロール泳ぎ、重い荷物の運搬動作
この考え方に準ずると、3 METsは安静時に3倍のエネルギー消費が必要な運動ということになります。
エネルギー消費の大きい運動であるほど、つまり運動強度が高いほどMETsの数値は高くなるのが特徴です。
中等度強度の運動は3~6 METsの運動となり、高強度運動は7 METs以上の運動となります。
安静時のエネルギー消費量を1とすることで、運動時のエネルギー消費量を簡単に把握することができ、普段の生活で意識しながら運動を継続できるのがメリットです。
<RPE(自覚的運動強度)>
RPE(rate of perceived exertion)とは自覚的運動強度といって、運動をする際の主観的負担度を数字にした指標で、代表的な指標が「Borg Scale」です。
6~20までの段階があり、数字を10倍にすると脈拍数になります。
例えば「6」は安静時の強度になりますが、6×10倍=60回/分と脈拍数として表されているので、この脈拍数を目安としながら運動強度を選択することが可能です。
自覚的運動強度について段階別にみていきましょう。
・6・・・安静
・9・・・かなり楽
・11・・・楽である
・13・・・ややきつい
・15・・・きつい
・17・・・かなりきつい
・19・・・非常にきつい
・20・・・最大運動
自分が行う運動強度を把握するためには自己検脈を行い、一分間当たりの脈拍数を図りながら運動することでどのくらい脈拍が上がるのかを確認します。
心拍数だけだと、他の要因で数値が変動してしまう可能性も。
そのため、自覚するきつさを数値化したRPEと合わせて判断すると目指す運動強度により近づけることが可能です。
エネルギー消費量にまつわる指標
肥満な人は正常な体重の人と比較し、高血圧にかかる割合は2~3倍というデータが存在します。
肥満が原因で高血圧を発症している人は、体重コントロールのために運動することが効果的です。
運動でどれくらいのエネルギーを消費するのかは気になるポイントでしょう。
ここでは簡単に誰でもエネルギー消費量を知ることができる計算方法についてご紹介します。
エネルギー消費量(kcal) = 1.2×(運動の強度(METs)-1)×運動した時間(60分を1とする)×体重(kg)
この計算方式には、「METs」を使用します。
例えば、やや早歩きをしたときのMETsは4METsほど。
体重50kgの人がやや早歩きを1時間実施したとすると、
〈1.2×(4METs-1)×1×50=180kcal〉
約180kcalのエネルギーを消費できるという計算になります。
運動強度の高い運動であるほど1時間当たりの消費カロリーはアップしますが、適度な有酸素運動を長い時間行うほうが続けやすく、トータルしたエネルギー消費量は増えやすいのが特徴です。
例えば、6METsの運動を1時間行うより、4METsの運動を2時間行った方がエネルギー消費量は多くなります。
〈50kgの人の場合〉
6METsの運動を1時間行った場合1.2×(6METs-1)×1×50=300kcal
4METsの運動を2時間行った場合1.2×(4METs-1)×2×50=360kcal
高血圧の方にとっては適度な有酸素運動を一定時間、定期的に継続することが有効です。
治療を行っておらず血圧が180/100mmHg以上の方の場合は、運動中に血圧がさらに上昇することによって急性心筋梗塞、クモ膜下出血などを発症する危険性もあります。
高血圧の方は運動してよいかどうか、どの程度の運動ならよいのかについて確認し、安全に実施することが大切です。
まとめ
高血圧の方が運動を行う際には冒頭でも触れましたが、激しい運動による急激な血圧上昇は避けなければなりません。
運動処方は年齢や性別に関係なく誰にでも有効に用いることができ、急激な血圧上昇によるリスクの低下にもつながります。
薬を処方する際には、その人の症状や基礎疾患、体格などさまざまな要素を考慮しなければなりません。
運動処方も同じで、FITTの考え方に基づき、もともと持っている基礎疾患や高血圧症の段階、各症状に応じてその人に最適な条件のもとで行うことが大切です。
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