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人生の転機が発症のきっかけに…総合失調症の原因とは?

家族の様子が変、恋人の様子がいつもと違う、そう感じたことはありませんか?

その感じ方もちょっと機嫌が悪いとか、体調が悪いという様子ではなく、何となくいつもと違うという印象を持った場合、それは統合失調症になっている可能性があります。

統合失調症というのは、以前は精神分裂病と呼ばれあまり良い印象を持っていない病気かもしれませんが、実は早期発見・早期治療を始めることで過半数以上の人が回復するという病気でもあるのです。

まずは、周囲の人が気付いてあげるということが何よりも大切なことであり、統合失調症への知識を持っておくことが早く気付けるポイントになります。

今回は、統合失調症がどんな病気なのか、さらにはどうして発症するのかなどを詳しく解説していきます。

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統合失調症とは

「幻覚」や「妄想」という症状が出るのが特徴的な精神疾患のことを言います。

感覚や思考、行動が病気によって歪み、家庭や社会生活で色々な弊害を感じるようになり、そのこと自体を自分自身で振り返ることができない状態になっていきます。

他の精神疾患と同様に慢性の経過をたどることが多く、幻覚や妄想が急激に強くなることがあります。

統合失調症は、100人に1人の割合で起こると言われ、以前は精神分裂病と呼ばれ、話も通じない、意思の疎通ができない、治らない病気などと思われていましたが、近年病名を統合失調症とし、治らない病ではなく多くの人が回復していく病気になりました。

思春期から青年期(10代後半~30歳代)に発症することが多く、逆に中学生以下の発症は少ないというデータがあります。
また、40歳代以降からも減少傾向にあるということがわかっています。

男女差はほとんどないとされてきましたが、最近では男性に多いのではないかと言われます。

 

統合失調症の原因とは

この病気に関しては、これが原因と決めるものはわかっていません。

発症年齢が思春期あたりから青年期あたりに集中していることを考えると、進学や就職、親元からの独立、さらには結婚など人生の転機における変化が、発症の原因ではないかと考えられています。

ただし、あくまでも「きっかけ」であって、これが「原因」とは言えません。
同じような転機が訪れる人は他にもたくさんいるからです。

すべての人が何らかの転機を迎えた時、全員が統合失調症になるわけではありません。
そのことを踏まえると、直接的な原因とは言えません。

中二病とよく言われる、妄想などが過大になる時期などは思春期特有であり、これらがすべて統合失調症によるものとは言えませんし、子供から大人へと変化していく時期は心が不安定になることも多い為、見極めが大切です。

遺伝性に関してもよく言われていますが、あくまでも複数ある原因の1つであり、絶対にこれだ、とは言えません。

また、統合失調症の人の多くは、一定の性格傾向があると言われています。

内気で大人しい・控えめ・神経質なところがあるといった一面と、無頓着・傷つきやすいなどの気質を持っている人などが多いと言われています。
また、人と関わるのを苦手とし、一人でいることを好む人も多いようです。

しかし、これらがすべて当てはまるかと言われればそんなことはないのですが、発症と何らかの関係があるのではないかと考えられています。

以前は養育環境が悪く、ストレスがかかることで発症するのではないかと考えられていたこともありますが、最近ではそれとの関係は認められない、とも言われています。

ただし、日常的にストレスを感じている生活が続くことで発症のきっかけになることは考えられます。

統合失調症を発症する原因として、何が関係しているのかはよくわかっていませんが、気質的な物にストレスなどが加わることで発症してしまうということは有り得そうです。

人生の転機にはストレスがかかりやすく、統合失調症だけに限らず精神的な負担は大きいのは事実ですから、原因ではないとも言えないかもしれません。

 

統合失調症の症状とは

統合失調症の症状には、大きく分けて「陽性」と「陰性」の2つのカテゴリーに分けることができます。

<陽性>

幻覚や妄想などの目立った症状のことを言います。

特に妄想が強く出ると、明らかに間違った考えであっても、客観的に見ることができなくなり受け入れられなくなります。
しかもそのことに強い確信を持ってしまう為、周囲から指摘されても気付きません。

典型的な例を挙げると、「周囲が自分を話題にしている」「誰かに監視されている」「人に心が読まれている」などの妄想に取りつかれてしまいます。

また、幻覚症状も強く出てくる為、現実的な感覚として感じてしまうようになります。

側に誰もいないのにかかわらず、「話し声が聞こえる」といった幻聴が最も多く、その幻聴自体も自分を批判しているような内容の言葉ばかりなので、行動にも影響が出てくるようになってしまいます。

実際には存在していない物が見えたり、臭ったり、感じたりする、という症状が出てきます。

さらに、思考が混乱してしまうことによって、考え方に一貫性がなくなります。

その為、周囲との会話にズレが出てしまうことも多く、突然脈絡もないところで話が飛んでしまったり、何を話しているのかわからなくなってしまうような症状が出てきます。

<陰性>

自閉や感情の起伏がなくなるなどの目立たない症状のことを言い、
喜怒哀楽の表現が乏しくなってしまったり、他者への感情に対しても共感性が低くなります。

また、周囲に関心がなくなり、人と関わらなくなってしまいます。

また、会話中に比喩などの抽象的な言葉を使えなくなってしまったり、理解することができなくなることも多いようです。
語彙が極端に減ってしまうことで無口になることもあります。

また、自分から何かをしようという意識が欠如してしまうことや、行動を持続させることが難しくなります。

例えば、日常的に行う入浴や着替えといった行動すらも自ら行おうと思えなくなってしまう為、周囲の人間に促されないと出来なくなってしまうという点もあります。

陰性は簡単に言うと、自分の世界に引きこもってしまい、他者とのコミュニケーションを取らなくなってしまう症状のことを言います。

陰性の場合は、他の精神疾患と似ている部分がある為、見極めるのが難しいでしょう。

統合失調症の症状をまとめましょう。

・幻覚
・妄想
・生活への障害
・会話や行動への障害
・感情の障害
・意欲の障害

この他にも、「病気への認識障害」といったものがあります。

これを「病識」と言うのですが、統合失調症の場合には「自分自身で病気である認識がない」という症状があります。

ただし、普段の状態や神経過敏になっているということは認識することができることも多いようです。

しかし、幻覚や妄想が活発になってしまうと、病気が原因でそうなっているとは思えません。

症状が強く出ている時には、自分が統合失調症であるということすら認識することができなくなってしまうのです。

治療を進めていくと徐々に認識できるようになりますし、自分と同じ統合失調症の患者さんを見てもそれが病気であることはわかる為、「判断能力が損なわれているわけではない」ようです。

ただ、自分自身を客観的に見ることができないという面と、それを正していくという機能に障害が出ている可能性が高い為に病気を認識することができないようです。

 

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統合失調症の治療法

まず外来で治療をしていくか入院で治療するかを決めます。
以前は入院治療が一般的でしたが、今は治療が進歩したことにより外来で対応することができるようになりました。

外来での治療を行うのか、それとも入院して治療を行うのかを決める基準はなく、家族の意思や本人の意思によって決められます。

外来での治療が可能ならばその方が負担は少なく済みますが、入院を必要とする場合も実際には多いです。

例えば、日常生活で苦痛を感じている場合や患者本人が希望している場合、また幻覚や妄想が酷く、日常生活を送ることが困難な場合、また自分が病気である認識ができていない場合や服薬や静養などの指示を守ることができないと判断されると、入院を勧められます。

どのような形で治療をしていくのかは医師と患者、さらには家族などによって判断されます。

治療法としては、「薬物療法」と「心理社会的な治療」を組み合わせて行われます。

心理社会的な治療とは、精神療法やリハビリテーションなどのことを言いますが、統合失調症の場合は薬物療法にプラスして行う必要があります。

心理社会的な治療だけでは効果が薄いので、双方を組み合わせて治療していくことになるでしょう。

薬物療法に用いられる薬は、「抗精神病薬」「神経遮断薬」と呼び、精神に作用する薬物です。

<抗精神病薬の作用>

(1) 幻覚や妄想、自我障害などの陽性症状を改善
(2) 不安や不眠、興奮や衝動性を軽減(鎮静催眠作用)
(3) 感情や意欲の障害などの陰性症状を改善

抗精神病薬にはたくさんの種類があり、それぞれの薬物によって上記の効果のいずれかが強いという特徴があり、患者さんの症状に合わせて適切な薬物を処方されます。

どの薬物を使用するかを決めるまでには時間がかかり、患者さんによって種類も異なれば量も異なることから、個人差が大きいのも抗精神病薬の特徴と言えます。

抗精神病薬には精神症状の改善だけではなく、再発を予防する効果も期待できます。

いったん改善した状態でも、薬物療法を継続しないと数年で再発してしまうことが多いのですが、しっかり継続して治療をしていくことで再発率が下がることが確認されています。

調子が良くなると薬をやめてしまうという人は多いのですが、再発を予防する為にも飲み続けることが大切だと言われています。

もちろん、抗精神病薬をやめてしまったからといってすぐに再発をするというわけではありません。

調子が良くなると、患者も周囲の人間ももう薬は必要がないと判断してしまいがちですが、ストレスなどをきっかけに再発をしてしまうことも多く、継続することの必要性を患者本人も周囲の人間も理解することが必要です。

抗精神病薬に関して副作用が懸念されますが、実際は軽度なものがほとんどで、重篤な症状を起こしてしまうことは稀です。

ただし、症状的に負担を感じるようなことがあった場合には薬が合っていないことも考えられますから、医師と相談をして改善していきましょう。
また、用法・用量は決められた通りに飲むということを忘れないようにしましょう。

 

心理社会的な治療(リハビリテーション)

統合失調症の人は、家庭生活や社会生活に障害を抱えてしまいます。

その為、日常生活への障害も回復していく必要があります。
薬物療法にプラスしてリハビリテーションを受けることにより、社会生活への障害を克服していくことができます。

リハビリテーションでは、再発予防にはどのようなことが必要なのか、人との関わりはどうすれば良いかなどを踏まえて色々な形でアプローチしていきます。

患者本人だけではなく、家族や周囲の人間がどうすれば良いかを学ぶことも希望があればできるようです。

 

まとめ~早期発見・早期治療を~

統合失調症は改善することができる病気ですが、早期発見・早期治療が大切です。

周囲の人間が気付いてあげられることはたくさんありますし、危険な言動や行動に出る前に何らかのアクションを起こしてあげられるようにしてください。

統合失調症は自分で気付きにくいものですし、病識がなくなることもありますので、早い段階で専門家に診てもらうということが大切になってきます。

はた目から見ると、統合失調症の症状によって言動が変な人、おかしな人として見られてしまうことがあるかもしれません。
しかし、それは病気がそうさせているのだと周囲が理解してあげることが大切です。

統合失調症は誰にでも起こる可能性がある病気です。

自分だけではなく大切な人の為にも、統合失調症に対しての正しい知識を身につけ、また早期に見つけてしっかり治療をしていくことが大切です。

特に薬物は途中でやめることなく、継続することで再発を予防することができますので覚えておきましょう。

 

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薮内直純

薮内直純

株式会社イコールヒューマン。生活習慣病専門ライター。医療や医薬品に関する誤解を解き明かしながら、真実を追求した記事を提供中。

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