リンパ浮腫の症状を放置するとどうなるの?デメリットは見た目だけにあらず
夕方になると足がむくんできて、シューズや靴下がきつくなったという経験をした方もいらっしゃるのではないでしょうか。
むくみを気にしている人は意外と多いといわれています。
しかし、むくみが起きている際の体の中はどのようになっていて、どんな症状がむくみと関係しているのでしょうか。
中には、命に関わるようなむくみを起こす病気もあります。
また、むくむことで体に負担がかかり起こる病気もあるのです。
そこで今回はむくみの仕組み、危ないむくみの見分け方と、むくんだときの対処法についてご紹介します。
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Contents
むくみの症状でそこまで困ることはある?
むくみは、細胞の隙間に必要以上に水分が溜まった状態のことをいいます。
病気とまではいかなくても日常的にみられる症状のひとつです。
2015年12月に行われた20~50代の男女約800名に対するインターネット調査の「むくみ」に関する意識調査において、約半数が足のむくみが原因で靴選びに困ったことがあることがわかりました。
多くの人が日常的に足のむくみを気にしており、男性よりは女性に多く、また年齢を重ねるほどむくみで悩んでいる人は多くなります。
では、どのようにして「むくみ」は起きるのでしょうか。
部分的なむくみは枝分かれした血管の細い部分でのリンパ液の移動がうまくいかなかったり、リンパ液を戻す働きをしているリンパ管がうまく働かなかったりすることで起こります。
手足の末梢血管へ血液を送るときには心臓のポンプ機能で圧をかけて送っているのです。
しかし、足の末梢血管から心臓へ血液やリンパ液を戻す際には、足の筋肉が縮むときに筋肉の間を流れる静脈が圧迫されることが必要となります。
静脈には逆流を防ぐ弁があるので、筋肉に圧迫されると足に溜まった静脈血が心臓側に汲み上げられるようにできているのです。
つまり、むくみ自体は病気というよりも同じ姿勢を続けたり、冷えたりすることで起きる身体の循環の「滞り」だと考えてよいでしょう。
ただし、心臓や腎臓、内分泌機能異常から起きるむくみは全身にわたり、早急に専門的な治療を要しますのですぐに医療機関を受診する必要があります。
2人に1人が足のむくみを感じているとはいっても、むくみは辛いものです。
「朝ちょうどよい靴が夕方になるときつくなるので、靴選びに困る」「夕方になると足がパンパンになり、痛くて辛い」「靴や服を着用したとき、きつさや痛みを感じたりする」などという困りごとは多く聞かれます。
また、「むくんだ部分が太く見える」「足に靴下の跡がつく」などの見た目のデメリットも多いです。
そのため、むくみ対策の商品は数も種類も多く出回っています。
むくみ対策のための商品には2つのタイプがあるのが特徴です。
ひとつは、足の末梢血管や静脈を適度に締め付けて静脈に刺激を与えて血流をよくするための機械やストッキング、タイツです。
これは下肢静脈瘤がある場合などに医療機関でも処方されることがある「弾性タイツ」と呼ばれているものの類似品となります。
足先から膝、太ももに向かうにつれてタイツの締め付けが弱くなっているため、自然に血液やリンパ液が心臓に向かって移動するようになっているのが特徴です。
もうひとつは、足裏を刺激して血流をよくするタイプのもので足の裏に張り付けるものと足で踏んで刺激を与えるものがあります。
むくみを解消するためにはこのようなグッズを使うのも効果的ですが、足を下から上に向けてマッサージしたり、足を軽く動かす運動、少し足を高くして眠ったりすることでも効果が期待できるでしょう。
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むくみの状態が続くと冷えと脂肪蓄積の悪循環にはまる
「むくみ」の状態は血液やリンパ液の循環がうまくいかずに滞っている状態です。
そして、血液やリンパ液の循環が悪いということは古いものを集めて処分し、新しいものを送り込む機能「新陳代謝」が低下しているということになります。
新陳代謝とは、体の中に酸素や栄養、水分といったものを取り入れて、それをもとに細胞を新しく作り直し不要なものを汗や尿便、呼気などにして排出するということの繰り返しです。
この新陳代謝があってこそ体の中の組織は80年間も機能し続けることができます。
では、新陳代謝で出た老廃物はどのように処理されているのでしょうか。
新鮮な酸素や栄養を抱えた血液は、心臓から送り出されると血管を通り枝分かれした細い血管「毛細血管」を流れる血液と、毛細血管から浸み出したリンパ液が細胞を浸すようにして酸素や栄養分を届けているのです。
細胞はその酸素や栄養分を使ってその臓器の役目を果たし、かつ新陳代謝も行います。
そして今度は、細胞を浸しているリンパ液や毛細血管の血液が二酸化炭素や老廃物を受け取るのです。
血液やリンパ液はそこからまた静脈やリンパ管を通って心臓に戻っていきます。
さらに血液やリンパ液は心臓からもう一度、肺に向かって送り出され、二酸化炭素を酸素に取り変えて戻ってくる仕組みです。
そして、腎臓や肝臓にも送り出されそこで老廃物を濾したり分解したりして、きれいな血液になって、また全身を巡ります。
随分と複雑な循環ですがこのようにして人間の体の細胞は養われているのです。
静脈やリンパ管には自分で血液やリンパ液を運ぶ力がほとんどありません。
そのため、下半身から心臓に戻るときには足の筋肉がポンプの役割をして、回収した余分な水分や老廃物を上半身へと押し上げるのです。
しかし、同じ姿勢が続いたり筋肉が衰えていたりして筋肉の動きが少ないとポンプ作用がうまく働きません。
こうなると血液やリンパ液を押し上げることができず、余分な水分や老廃物が下半身に滞ってしまいます。
これがむくみであり、このむくみを放置することで陥る悪循環のサイクルには2パターンあるのです。
まずは、「むくみと冷えのサイクル」があります。
循環が悪くなるとむくんでしまいますが、むくむと体の水分量が多くなってしまうので冷えやすくなるのです。
さらに、冷えると血液やリンパ液は粘性が高まるので流れにくくなることも。
そしてまた、循環が悪くなると、むくんでしまうという悪循環です。
もうひとつの悪循環のサイクルは「むくみと肥満のサイクル」であり、こちらも循環が悪くなるとむくみます。
むくむと新陳代謝がうまくいかないので基礎代謝も下がってしまいますが、この基礎代謝が下がると太りやすくなり脂肪が蓄積されるのです。
太ると筋肉が循環に刺激を与えにくくなり、循環が悪くなってしまいます。
このようなメカニズムで蓄積された脂肪を美容業界では「セルライト」と呼ぶこともありますが、通常の脂肪と同じものです。
リンパ浮腫は病気の合図かもしれません
夕方になると足がむくむという人は少なくありません。
しかし、これらのむくみの多くは足をマッサージしたり、軽いストレッチをしたり、足を高くして一晩寝て起きれば朝には引いているものです。
しかし、一晩寝ても取れないむくみもあります。
このような場合には、なんらかの病気が原因でむくんでいる可能性ありますので注意が必要です。
この際、むくみが片側の足だけに起こっているのか、両方の足に起こっているかによって疑われる病気が異なります。
むくんでいるのが片側の脚の場合には、下肢静脈瘤や深部静脈血栓症などが疑われるでしょう。
下肢静脈瘤は、静脈の逆流を防ぐ弁が機能しなくなり、足に静脈瘤というボコボコとしたふくらみが数珠状にできる病気です。
これは同じ姿勢をとり続けたときに起こる静脈血栓塞栓症、いわゆる「エコノミークラス症候群」の状況と似ています。
表層の静脈で起こると小さな静脈瘤でも目で見て分かりますが、エコノミークラス症候群のように深部の静脈に静脈瘤ができている場合には超音波検査などをしなければわからないのです。
また、表層と深部の両方の血管に静脈瘤ができている場合も少なくありません。
この静脈瘤でできた血液の塊が血流にのって流れていくと、足の深部の静脈がつまってしまいます。
さらに足が腫れる「深部静脈血栓症」、心臓に酸素や栄養を送る血管に血の塊がつまる「心筋梗塞」、脳の血管に血の塊がつまる「脳梗塞」、肺の血管につまる「肺塞栓症」などの病気を引き起こしてしまうのです。
いずれも命の危険がある重い病気ですから、一晩寝て起きてもむくみが引かないときには早めに受診したほうがよいでしょう。
静脈血栓塞栓症が疑われる方で普段とは違う胸の痛みや黄疸、半身のしびれ、息苦しさがあった場合は、これらの病気を発症している恐れがありますので、ためらわず救急車を呼んでください。
むくみが両足の場合はリンパ浮腫や心臓、腎臓、肝臓、そして栄養障害が疑われます。
リンパ浮腫は、がん治療した部位の近くの腕や脚などに、リンパ管に回収されなかったリンパ液がたまってむくんだ状態のことです。
むくんだところが重くなったり、関節が曲げづらくなったりすると大変つらくなってしまいます。
また、日常生活への影響も大きいので、リンパ浮腫は予防すること早く見つけて治療を受けることが大切です。
がんでなくとも、心臓の働きが悪くなると当然身体中の循環が悪くなりますのでむくみが起こりますし、老廃物を処理する腎臓や肝臓がうまく働かなくてもむくみが出ます。
また、タンパク質が極端に不足したりしてもむくみができることも。
いずれにしても、放っておくと心臓や腎臓に大きな負担がかかります。
慢性的なむくみは高血圧や腎不全などの病気につながりやすく、命に関わりますので早めに受診しましょう。
リンパ浮腫を放置すると起こりうること
このリンパ浮腫のように病的なむくみを放置すると重篤な症状になります。
放置されたむくみは、足だけでなく、顔や手、体幹部にまで広がってしまうのです。
さらに、むくみがひどくなってくると体の内部にまで水分が溜まり始めます。
行き場を失った水分が、体の中の本来何もないはずの部分にしみだし始めるのです。
体の中で空間がある部分は「腔」と呼ばれ、外につながっていない腔には胸腔、腹腔、心外膜腔(心のう)などがあります。
そこにむくみで生じた水分が溜まっていく状態を胸水、腹水、心のう水というのです。
胸腔内に水分が溜まると、溜まった水分が肺を圧迫して肺の空気が抜いてしまいます。
胸水で肺が押しつぶされて空気が抜けた状態を「圧排性無気肺」といい、肺での酸素と二酸化炭素の交換がうまくできなくなるのです。
心臓の周囲の空間である心のうに水分がたまると、心臓のポンプとしての働きがうまくできなくなります。
その上、無気肺もあれば血液をいくら送っても酸素が十分にないので全身から「もっと血液を送って」というサインが出ますので、心臓は疲労してしまうのです。
そして、ポンプ機能が破たんしてしまい心不全に陥ってしまいます。
一晩寝て起きても治らないむくみは放置せず受診することになりますが、何科にかかればよいのでしょうか。
両方の足が同じようにむくんでいる場合は心臓、腎臓、肝臓、内分泌臓器の異常が多いので、まず内科を受診するのがおすすめです。
尿検査で蛋白尿出ている場合や高血圧がある場合は腎臓の異常が多く、持病が原因になっている場合もありますので、主治医がいる場合にはまずは主治医に相談してください。
主治医がいない場合、片足だけのむくみであれば、まずは血管外科にかかるとよいでしょう。
むくみがひどい場合は、激しい運動などせずに過ごしてください。
同じ姿勢を続けていると、圧迫されている場所の循環がさらに悪くなりますのでときどき姿勢を変え、正座や足を組むような姿勢は避けます。
また、衣類、寝具などの圧迫にも気をつけましょう。
横になっているときは、むくみのある腕や足の下にタオルや枕などを敷いて、少しだけ高くしてあげるのがおすすめです。
むくみで腫れた腕や脚も無理のない程度に動かし、優しくマッサージをするとよいでしょう。
この際、手足の先から体の中心に向かって揉んだり、さすったりすると効果的です。
むくんでいる肌は乾燥しやすく傷つきやすいので、ローションなどを使うのもよいかもしれません。
また、むくんでいる皮膚は血行が悪いため、冷えやすい傾向にあります。
電気毛布や湯たんぼ、使い捨てカイロ、温タオルなどで温めると楽になりますが、皮膚の感覚も鈍くなっているので低温やけどに注意してください。
温め過ぎるとかゆみも出やすくなりますので、保湿剤などを塗布してかきむしらないようにしましょう。
むくみの治療は原因によって異なります。
特に病気が原因の場合はその病気の治療が優先されますので、まずは医療機関で相談してください。
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まとめ
足のむくみに悩んでいる人は大勢います。
むくみは血液やリンパ液の循環がうまくいかないため身体の水分が心臓に戻ることができずに滞っている状態です。
むくみがあると冷えやすくなり新陳代謝も悪くなるため太りやすくなります。
マッサージをしたり、軽いストレッチをしたりして、むくんでいる場所を高くして一晩眠れば治ることが多いものです。
一晩寝て起きてもむくみが取れないときは病気が原因になっている可能性がありますので、早めに医療機関を受診しましょう。
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