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コレステロールはなぜ「生活習慣病の原因」とされているのか

 2018/02/03 生活習慣病
この記事は約 10 分で読めます。 1,668 Views

コレステロールと聞くと、たいてい悪いイメージが先行し「生活習慣病」の要因ともいわれています。

卵を食べ過ぎるとコレステロールが増えるとか、油っぽいものは禁物だとかいろいろいわれていますが、動脈硬化や心筋梗塞という生活習慣病の原因だともいわれる一方で、善玉コレステロールというものもあることは知られています。

コレステロールとは危険なものなのでしょうか?

コレステロールと生活習慣病の関係は?

そんなに心配しなくてもいいものなのか、あらためて詳しく見てみましょう。

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コレステロールの役割

実はコレステロールは人体とって必要不可欠な脂質であり、身体の中でいろいろな役割を担っていますので、食物からの摂取だけでなく、体内でも合成しています。

脂質には中性脂肪、リン脂質、脂肪酸などがありますが、それぞれ中性脂肪は脂肪・トリグリセライド、リン脂質はレシチンなど、脂肪酸はリノール酸、EPAなどがあります。

食事で摂取されるコレステロールはすべて体内に吸収されるわけではなく、20~30%が食事からのもので、70~80%は体内で合成されたものです。

ですから、実はわたしたちが考えるよりも食事の影響というのはそれほど大きくありません。

人体の細胞は毎日古い細胞が死んで、新しい細胞と入れ替わっていますが、その際コレステロールが活躍し、リン脂質と共に細胞膜の材料になります。

コレステロールは、1日に3000個以上発生するがん細胞を退治する免疫細胞の材料も生成します。

さらには男性ホルモン、女性ホルモンの材料でもあります。

糖、タンパク質、脂質の代謝に関わる生命維持に欠かせないホルモンであるコルチゾールという副腎皮質ホルモンの材料にもなっています。

消化液の一種である胆汁酸の材料、また紫外線を浴びると体内でビタミンDが合成されるための材料も対象になっています。

このように、コレステロールとはわたしたちの身体に必要不可欠なものの材料になっているのです。

では、生活習慣病とコレステロールとはどのような関係があるのでしょうか。

一般的に生活習慣病が続くと動脈硬化などを引き起こすことは知られていますが、動脈硬化の原因についてみてみます。

 

動脈硬化の原因は悪玉コレステロール

コレステロールの悪名を高くしているのは、主に動脈硬化への影響ではないでしょうか。

悪玉が血管に悪影響を及ぼしているということは有名ですがその仕組みはどうなっているのでしょう。

脂質であるコレステロールは、主に水分でできている血液の中をスムーズに移動できないため、水と親和するタンパク質のリポタンパク質と結合し、血液中を移動しています。

カプセルのようなものに入って、体内を移動していると考えてください。

肝臓でできたコレステロールは中性脂肪と共に血液を移動し、全身の細胞の材料となります。

その際、エネルギーの元である中性脂肪が先に使われ、エネルギーにはならないコレステロールが多く残り、それは「残りかす」のようなもので密度が低くLDL(低密度リポタンパク。LDはLow Density)と呼ばれています。

全身をめぐっているLDLですが、細胞に取り込まれないと余ったものは血液中を循環したままになります。

血中内コレステロールが減らないと肝臓での生成が減り、値は正常範囲に保たれるという仕組みになっています。

それがなにかの原因で血液壁に蓄積されると動脈硬化を進行させるとされ、そのことからLDLは悪玉とよばれています。

近年の研究では、体内の活性酸素とLDLが結びつくと酸化され、血液壁に吸収しやすくなるとされています。

動脈硬化を進行させるのは、LDLが酸化した「酸化LDL」なのです。

さらに超悪玉も動脈硬化を進行させるものとして懸念されています。

小型LDLというものですが、血液内皮細胞の1000分の1ほどという小ささです。

中性脂肪が多いと小型化されやすく、小型なので酸化されやすいことも指摘されています。

血管に入り込みやすいサイズでもあるため、動脈硬化をより進行させるといわれています。

健康な人は、肝臓でLDLが作られ、それが小腸で吸収、身体全体で利用され、余ったものは排出されるため、体内でその量のバランスがとれており、血液中の濃度を一定にするため、女性ホルモン、甲状腺ホルモンなど、いろいろな仕組みも関わっています。

それが肝臓での合成が増える、食事での脂質摂取が増える、ホルモンのバランスが崩れる、また細胞のLDLの取り込みが減るなどすると、血液中のLDLコレステロールが増えるのです。

このように脂質摂取が増えたりするのは生活習慣病からくることが多く、生活習慣病の改善、普段の食生活や運動で防ぐことができます。

 

一方の善玉コレステロールはどんなもの?

一方善玉といわれるものですが、HDLコレステロールと呼ばれています。

高密度のリポタンパクという意味です(High Density)。

たんぱく成分が多く密度が高いのでこの名がついています。

HDLは全身の細胞をめぐって余ったコレステロールを回収し、肝臓に戻す働きをし、回収されたものは肝臓によってリサイクルされ、一部は胆汁酸の材料になります。

HDLは脂質が蓄積し動脈硬化を起こした血管からコレステロールを引き抜くこともできます。

日本動脈硬化学会は、LDLコレステロール値が140mg/dL以上で、HDLコレステロール値が40mg/dL未満の場合は脂質異常症を疑えるとしています。

HDLが低くなる原因としては喫煙や運動不足とされています。

メタボリックシンドロームになると中性脂肪であるトリグリセライド値が高くなってHDL値が下がります。

糖尿病とその予備群などの生活習慣病でも同様に下がり、栄養不足、消耗が激しい状態でも低下します。

逆にHDLを増やす方法として、生活習慣病に対する予防と同様に、日常での運動が推奨されています。

運動でトリグリセライド値が下がり、HDLコレステロール値が上がるのです。

特にメタボリックシンドロームと糖尿病でこの効果があるとされていますので、ここでも大いに生活習慣病を防ぐことが大切だということになります。

逆にいうとコレステロールのコントロールは生活習慣病への対策にもなるということになります。

 

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コレステロール値は食べ物が原因で高くなる?

卵や貝類、甲殻類を食べすぎるとコレステロールが高くなる、というのは今まで常識になっているところがありましたが、上記で説明したように食事で摂取しすぎると、肝臓で合成されるものは減少し、また食事からの摂取が減ると、肝臓での合成が増えるといったように、体内の値はいつもある程度一定を保つのが人体の仕組みなのです。

また、食事からのコレステロールは全体の20~30%ほどですから、食事からの摂取だけで異常に高くなるということは考えづらいのです。

厚生労働省は「コレステロール摂取の上限値を算定するのに、十分な化学的根拠が得られなかった」として、2015年に日本人の食事摂取基準のコレステロール摂取の上限値を撤廃しました。

ですから、卵や貝類、食肉を原因として目の敵にする必要はないのです。

逆にバターや肉の脂肪には飽和脂肪酸が多く含まれていていますが、近年食肉に含まれる飽和脂肪酸の中のステアリン酸にはコレステロール低下作用があることがわかりました。

また、肉の飽和脂肪酸の「バルチミン酸」は余分なものを肝臓に運ぶHDLを上昇させることもわかっています。

牛肉・豚肉の主要な脂肪酸の、一価不飽和脂肪酸の「オレイン酸」はLDLを下げる優れた作用があることも判明しました。

以上のことから、食肉を原因とする異常値説は根拠がなく、一般的にも食事からの摂取はそれほど恐れなくていいということは理解していただけたと思います。

ただし、「脂質異常症」には注意が必要で、生活習慣病を考えると対策が必要です。

血液中のLDLコレステロールや中性脂肪が多くなりすぎたり、HDLコレステロールが少なすぎてしまっても脂質異常症と診断されてしまいます。

脂質異常症はほとんど症状が現れないため、気づかれにくい点も恐ろしいところです。

知らない間に長期間、全身の血管が傷つけられ、それらが原因で動脈硬化が進行するのです。

動脈硬化の進行は身体の隅々まで影響があり、心臓や脳の血管の流れが悪くなったり、抹消血管への血流が滞ったりすることで、脳卒中や心筋梗塞といった恐ろしい疾患になりかねません。

動脈硬化が継続していくことで慢性化となり、生活習慣病へと悪化していくこともあるのです。

生活習慣病としての動脈硬化につながる脂質異常を防ぐためには、LDL酸化を抑制することが重要です。

次にHDLコレステロールを増やしてLDLコレステロールと中性脂肪を減らして脂質を正常化できます。

中性脂肪を減らすことはLDL小型化も抑制でき、生活習慣病を予防する結果にもなります。

活性酸素によるLDLコレステロールの酸化を防ぐには、喫煙、飲酒、酸化した食用油などを避けることです。

紫外線、激しい運動も活性酸素を生じさせます。

普通の呼吸でも取り込んだ酸素の一部が活性酸素になります。

そもそも活性酸素は体内に侵入したウィルスや細菌を殺す役目もあるので、身体には必要なものなのですが、それが増えすぎることが問題なのです。

喫煙、飲酒、酸化した食用油をあまり摂取しないことで活性酸素を発生させないことを心がけてください。

それが同時に複合的な生活習慣病を予防することにも繋がります。

 

コレステロール値は低い方が健康的?

では生活習慣病を予防するためにはコレステロールの値が低ければ低いほどよいのでしょうか。

実は、現在では多くても少なくても健康に良くないということが、調査の結果わかっています。

日本人の標準値は130~220mg/qといわれていますが、日本の中でも長寿者が多い東京都小金井市在住の高齢者を東京都老人総合研究所が調べたところ、70歳の平均値は女性220.8mg/q、男性200mg/qとずいぶん高い値でした。

同じ調査での値を70歳時点で4分類し10年間の死亡率で調べてみると、男性では190~219mg/qで、女性では220~249mg/qの群での生存率が高いという結果になりました。

以上のことで長寿という面では、値は低くない方が長生きであると考えてもいいでしょう。

日本人の場合、コレステロール値が低いと脳卒中が増える傾向にあり、むしろそれに注意した方がいいくらいです。

アメリカの食生活指針はそのまま、日本人に当は当てはまらないことも問題です。

例えば値が同じでも、日本人よりアメリカ人のほうが心筋梗塞を起こしやすい傾向にあるとされています。

コレステロール値だけが生活習慣病の危険因子ではないということです。

日本人の食生活と、アメリカ人の食生活だと、摂取エネルギーや脂肪酸の摂取割合や抗酸化物質などの摂取量に差があるのは当然といえます。

世界の各地で虚血性心疾患と低コレステロール値の関係を調べた研究を近年実施しましたが、その結果、虚血性心疾患は減っても、自殺、ガン、事故死が増えて、死亡者総数が増加したと報告されています。

また、コレステロール値が低いと、うつの発生率が高まって、年齢と共にその傾向が強まるそうです。

これらのことからもコレステロール値はある程度のレベルを保つのが健康的だといえるでしょう。

 

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まとめ

コレストロールと生活習慣病について見てきましたがいかがだったでしょうか?

コレステロールは体内で調整され一定のバランスを自然に保っています。

また最新の情報を調べると、ひと昔前の考え方とずいぶん違うことに驚かされます。

医療・医学の進歩はますます進んでいるので、今までの常識が変わっていることもあります。

今後も健康的な生活を送るためにも最新の医療の情報には常に目を配ることが大切です。

 

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木村 哲也

木村 哲也

株式会社イコールヒューマン代表取締役。生活習慣病の権威者である崇高クリニックの荒木裕院長と提携し、主に生活習慣病に関わる様々な情報を広く分かり易く提供中。

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