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「リンパ浮腫」の症状はどのような段階を踏んで進んでいくの?

 2018/03/05 生活習慣病
この記事は約 11 分で読めます。 4,441 Views

リンパ浮腫というむくみの病気をご存知でしょうか。

近年ではリンパ浮腫への関心が高まり、発症を予防するための指導や、弾性着衣の費用が健康保険適用にもなりました。

リンパ浮腫はどのようなもの症状なのか、またその進行の流れを含めて詳しくご紹介します。

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リンパ浮腫はがん手術後に発症しやすい

私たちの体に動脈と静脈という血管が存在していることは、みなさんご存知だと思います。

ですが、その他にリンパ管という管があることをご存知でしょうか。

このリンパ管は、全身の皮膚のすぐ下に網目状に存在していて、その中にはリンパ液が流れています。

リンパ液には、タンパクや白血球などを運ぶ役割があります。

また、腋の下や首の付け根、脚のつけ根、耳の後ろなどにリンパ節という豆の形をした組織があり、そこに存在するリンパ球が体の免疫機能を司って体内にウイルスや細菌が侵入するのを防いでいるのです。

リンパ浮腫は、乳がんや子宮がん、卵巣がん、前立腺がん、皮膚がんなどの治療において手術によってリンパ節を取り除いたり、放射線治療でリンパの流れが滞ってしまったりすることで腕や足がむくんでしまうというがん治療の後遺症のひとつです。

また、抗がん剤の副作用で起こることも多く、特に乳がんの治療によく使われるタキソテールという薬は、毛細血管の透過性を高める働きがあることで、溢れた血液が溜まってしまうため、全身がむくんでしまいます。

抗がん剤の副作用による場合は、手足のむくみと同時に爪の色が変色してしまうという特徴があります。

発症時期は人によってまちまちで、手術のすぐ後に発症することもありますし、10年以上経ってからその症状が起こる場合もあるのです。

リンパ浮腫は、がん治療を受けた人すべてが発症する病気というものではありませんが、一度発症してしまうとなかなか治りません。

軽いむくみ程度なら自己管理をしながら通常の生活を送ることも可能ですが、重症化してしまうと生活に支障を来してしまいます。

ですから、発症したらすぐに治療を開始し、悪化しないようにすることが大切なのです。

しかし、早期の段階ではあまり自覚症状もありませんから、気付かないことも少なくありません。

早期の症状としては、皮膚の厚みが増してそれまで見えていた静脈が見えなくなったり、皮膚をつまんだときにしわが寄りにくくなったりする、などがあります。

もっとリンパ腫の症状段階が進んで行くと、腕や脚が太くなってきます。

さらに、腕や脚にだるさを感じたり、腕や脚が重く感じたり、疲れやすくなったりといった症状が出てくるのです。

むくんだところを指で押すと、跡が残る場合もあります。

さらにリンパ浮腫が進んで重症化すると、皮膚が乾燥しやすくなって硬くなったり、毛深くなったり、関節が曲がりにくくなったり、関節を動かしたときに違和感を持ったりするようになります。

リンパ浮腫では痛みを感じない場合が多いのですが、むくみの進行が早いときには痛みを感じることもあるのです。

リンパ浮腫が起こりやすいのは、乳がんの治療後は肘の上下、婦人科系のがんや泌尿器科系のがんでは、下腹部や陰部、脚の付け根です。

 

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原因不明の一次性浮腫と、原因が明確な二次性浮腫

リンパ浮腫には一次性浮腫と二次性浮腫があります。

このうち、「二次性浮腫」が先ほど述べたがんの治療後に起こるリンパ浮腫のことです。

こちらは、がんの術後になる分、年齢の高い方に発症することが多くなっています。

この場合のリンパ浮腫は、がん治療によってリンパの流れが正常ではなくなっているという明確な原因が認められます。

ただ、二次性浮腫が起こるかどうかは、肥満であるかどうかや糖尿病などの基礎疾患の有無、術後すぐに上肢や下肢に負担をかけたかどうかなどによって異なります。

しかし、一次性浮腫の場合はそうはいきません。

一次性浮腫は2~3歳ぐらいまでに発症する先天性のものと、35歳前後に発症する遅発性のものがありますが、この原因は生まれつきリンパ管とリンパ節の発育が悪い場合と、原因不明の場合があるのです。

一次性浮腫は、リンパ浮腫全体の約6%程度で、その多くが女性であるといわれています。

がんの治療後のリンパ浮腫についてはある程度認知度がありますから、自分でも早く気が付く人が多く、早期の受診をされる方が増えています。

ですが、一次性浮腫の人の場合はあまり情報を得る機会もないので、むくんでいてもリンパ浮腫だとは気付かず、病院での診察を受けるまでに時間がかかってしまうという問題があるのです。

二次性浮腫の場合は、原因である疾患をはっきりと特定することが出来ます。

しかし、一次性浮腫は基本的な既往症や問診をしっかり確認しなくてはなりません。

同じようにむくんでいても、静脈系の疾患の場合もあるのです。

リンパ浮腫には、左右差があって片方だけがむくむという特徴があります。

原因が分からないむくみだからリンパ浮腫だ、と安易に考えてはいけません。

同じような症状に低たんぱく性浮腫がありますが、それとリンパ浮腫では治療法が全く異なるからです。

一次性浮腫の場合は、脚からむくんできて徐々にそれが上に上がっていき、最終的には脚の付け根辺りまでむくんでいきます。

 

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押せば凹むステージ1

がんには、進行度合いによってステージというものがあります。

もっとも早期のステージ0から、ステージ4まであり、ステージ4が一番進行している危険な状態です。

それと同じように、リンパ浮腫も国際リンパ学会によって、その症状の重さごとに段階分けされています。

その段階分けの基準となる指標として、皮下組織の腫れや皮膚の状態、皮下組織の変化、形状の変化、炎症や感染の頻度、さらには胸水や乳糜腹水などの内臓の合併症に関連するもの、運動機能などが挙げられます。

「ステージ0」では、リンパ液の輸送にある程度の障害はありますが、浮腫となるには至っていない、潜在している状態、または症状のない状態です。

ステージ0から少し進んだステージ1は、むくみを押すと凹む程度の症状です。

比較的タンパク成分の多い組織間リンパ液(血液とリンパ管内を流れるリンパ液以外の体液)の滞留はみられますが、まだ初期なので四肢を上げるなどすればむくみは治まります。

皮膚や皮下組織の特徴としては、毛細リンパ管が拡張して真皮層に浮腫の変化がみられます。

この段階では、自覚症状はあまりありません。

そのため、むくみに気付かないことさえあります。

せいぜい、夕方になると足が太く感じたり、朝起きたときに顔が腫れたようになっていたり、脚のすねを押さえると凹んで戻ってこない、というぐらいのものです。

リンパ液が溜まって皮膚の厚みが増すため、それまで透けて見えていた静脈が見えにくくなります。

また、リンパ液が溜まってくると皮膚を指でつまんでみたときに、しわが寄りにくくもなるのです。

リンパ浮腫の特徴として、むくみなどの症状が左右で違うことがあげられます。

脚などの左右が同じようなむくみ方をしているときは、リンパ浮腫ではないと考えられるのが一般的ですが、うっ血性心不全や慢性静脈機能不全症、廃用性浮腫・うっ血性浮腫、肝機能障害や腎機能障害を原因とするものは、両側がむくむこともあります。

腕時計やブレスレット、袖口のゴムや、下着や靴下のゴムの跡が残りやすかったりするのが「ステージ1」の症状と言えるでしょう。

リンパ浮腫は、早めに発見して治療を受けておくと重症化するのを食い止めることが出来ます。

ですから、できるだけ早期発見に努めましょう。

そのために、脚の付け根やひざ上、ひざ下、足首、足の太さを一か月に1回程度計測しておきましょう。

むくみは時間帯によっても異なるので、同じときに同じ姿勢で測るといいでしょう。

また、ステージ1の段階ではリンパ浮腫の発症や悪化を引き起こしやすい炎症を予防することも大切です。

皮膚を清潔に保つことができるように、体を洗う石鹸やボディソープは肌に合うものを選び、よく泡立てて優しく皮膚を洗うようにしましょう。

汚れを落とそうとして強めに皮膚をこする人がいますが、そのような洗い方をするとかえって皮膚を傷付けてしまうので、優しく洗うように心がけてください。

皮膚のしわや指の間なども丁寧に洗い、洗浄したところをよくすすいでから水分をふき取るようにしましょう。

下着をこまめに取り換えることも効果的です。

さらに、皮膚の乾燥は皮膚の保護機能を損ね、細菌による感染を引き起こしやすくします。

肌荒れや、さかむけ、指やかかとのひび割れを放置しないようにし、保湿剤を使って皮膚の乾燥を防ぎましょう。

皮膚を傷付けないようにすることも大切です。

擦り傷や切り傷を放置しないようにし、野外で活動するときなどはできるだけ長袖、長ズボンを着用して皮膚を保護することを心がけてください。

ムダ毛の処理もカミソリを使うのは避け、女性用電気シェーバーなどを使って皮膚を傷付けないようにしましょう。

過度の日焼けも軽いやけどのような症状を起こすので、日焼け対策も万全にしてください。

 

凹みにくいステージ2

ステージ2になると、むくみを押しても肌が凹みにくくなります。

この段階では、四肢を上げてもむくみの改善がなされず、皮膚や皮下組織の特徴としては、慢性炎症細胞や組織球の浸潤がみられるようになります。

組織球とは、組織内にみられる血管外細胞で、白血球の一種です。

ステージ1のときには毛細リンパ管が広がって組織間リンパ液が皮膚表面に溜まっている状態だったものが、炎症をきっかけにさらに進行して慢性炎症細胞や組織球などの白血球成分が多くなります。

この白血球成分は、蜂窩織炎(ほうかしきえん)という進展性の化膿性炎症の発症にも関わりがあると考えられています。

リンパ浮腫になってしまうと、リンパ液の流れが悪化するため、虫刺されや小さな傷から細菌が侵入し、その細菌を排除することが出来ずに腕や脚全体に炎症が広がってしまうのです。

これが蜂窩織炎です。

蜂窩織炎になると、むくみのある腕や脚に赤い斑点や広範囲の皮膚の赤み、熱感があり、痛みも伴います。

ときには38℃を超える発熱がみられることもあります。

このような症状がみられたら、可能な限り早く医師の診断を受けてください。

治療には抗生物質や点滴が使われます。

これらのことから、ステージ1のリンパ浮腫がステージ2、ステージ3と進展していく中で、白血球成分の関与が大きいと考えられます。

そのため、ステージ1のときに皮膚の炎症を起こさないように注意することが大切なのです。

 

象皮症のようになるステージ3

ステージ3にまでリンパ浮腫が進展すると押しても凹まない、リンパ液うっ滞性象皮症になってしまいます。

象皮症とは、その名前のとおり体の抹消部分の皮膚や皮下組織の結合組織が激しく増殖して硬くなり、象の皮膚のような状態になってしまうことです。

主としてバンクロフト糸状虫などの人間を宿主とするリンパ管・リンパ節寄生性のフィラリア類が寄生することによる後遺症のひとつでもあります。

その他にもアカント―シス(表皮肥厚)や脂肪沈着といった皮膚の変化もみられるようになります。

皮膚や皮下組織の特徴として、真皮の内部に組織球の浸潤が顕著になるほか、真皮内の線維芽細胞が増えていくことがあるのです。

さらに、リンパ液が皮膚を破って漏れ出して来るリンパ漏が起こる場合もあります。

ここまで症状が進んでしまうと、日常生活に支障を来すばかりか、場合によっては入院による治療が必要になることや、杖無しでは歩けなくなる場合もあります。

治療方法としては、伸びにくい包帯を患部に巻いて圧力をかけることで毛細血管からの漏水や、リンパ液や水分が重力で下に溜まったりするのを防ぐ圧迫療法や、リンパドレナージ(リンパマッサージ)、運動療法などが行われます。

リンパ浮腫は、現在のところ完治することや完全な予防の方法はありません。

かつてはリンパ誘導術や浮腫組織切除術、切除誘導術といった手術も行われていましたが、これらは効果が限定的で、しかも不確実なものだったため、現在ではほとんど行われていません。

そのため、リンパ浮腫になると弾性ストッキングなどの圧迫療法や、安静にしている以外有効な方法がなかったのです。

ただ、最近になって徐々にリンパ菅静脈吻合術という方法が行われるようになり、結果を示しつつあります。

リンパ菅静脈吻合術とは、むくんでいる部分のリンパ管を静脈と縫合して、うっ滞しているリンパ液を中枢方向に流してあげようという方法で、高度な技術が必要となりますが、1カ所につき3㎝ほどの傷で済むため、患者にとっては負担が少ない手術だと言えます。

また、症状の進み具合にもよりますが、通常は1日から数日程度の入院で済むことが多いようです。

ですが、そこまで進展してしまう前にできるだけ早く医師の診察を受け、悪化を食い止めましょう。

 

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まとめ

リンパ浮腫は、早期の段階ではあまり自覚症状もないため気付かないことも少なくありません。

ですが、これまで見てきたようにステージが進むと日常生活に支障を来すばかりか、場合によっては入院による治療が必要になることや、杖無しでは歩けなくなる場合もあります。

何か思い当たることや気になる症状がみられた場合は、医師に相談することが大切です。

 

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ライター紹介 ライター一覧

木村 哲也

木村 哲也

株式会社イコールヒューマン代表取締役。生活習慣病の権威者である崇高クリニックの荒木裕院長と提携し、主に生活習慣病に関わる様々な情報を広く分かり易く提供中。

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