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糖尿病を克服した例!「罹ったら終わり」の時代は終わった?

糖尿病は一度罹患してしまうと完治させるのが難しく、「罹ったら終わり」という考え方がされていた時代もありました。

そのため既に糖尿病と診断されている、あるいは血糖値が高く糖尿病予備軍だと医者に告げられた方などはその進行を抑えるような生活を心がけているかもしれません。

そんな中、現在では糖尿病治療における選択肢は多くなっており、症状を大幅に改善することが期待できる画期的な治療法も誕生しています。

今回はそのような新しい治療法も含めた糖尿病の克服例を紹介します。

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肥満を解消して克服した例

最初に紹介するのは、糖尿病発症の原因にもなる「肥満」を解消することで糖尿病を克服した例です。

・ニューカッスル大学のロイ・テイラー教授による報告

この克服例はニューカッスル大学のロイ・テイラー教授によって報告されました。

その内容は糖尿病発症後10年以内の糖尿病であれば、肥満を解消し肝臓や膵臓の脂肪を減らすだけで糖尿病が治っているのと同じ状態にできるというものでした。

また、この治療法による糖尿病の症状の緩和は一時的なものではなく、肥満を解消した状態を維持できれば糖尿病が治っているのと同じ状態も維持することもできると報告されました。

・2型糖尿病とは?

このような肥満を主な原因として生活習慣の乱れとともに発症すると言われる糖尿病を「2型糖尿病」と呼びます。

2型糖尿病は過剰な糖質摂取により肝臓に脂肪が溜まった結果、血糖を下げるインスリンに対する肝臓の反応が鈍くなる「インスリン抵抗性」の症状が生じることで血糖値が上昇し、それが常態化することで発症するケースが多いようです。

また、インスリン抵抗性の症状が現れても初期は膵臓のインスリン分泌が活性化することで血糖値が維持されますが、この状態が長く続くとやがて膵臓は疲弊し、インスリンの分泌も鈍くなることで血糖値は正常値を維持できなくなります。

このことから、2型糖尿病の患者は発症した時点で肝臓だけでなく膵臓の働きも鈍化してしまっていることが少なくありません。

・肥満の解消が鈍化した膵臓の働きを回復させる

かつては、一度インスリンを分泌する働きが鈍ってしまった膵臓の能力を回復させることは困難であるとの見方も少なくありませんでした。

しかし、ロイ・テイラー教授の報告では食事をコントロールすることで脂肪の蓄積が減ると膵臓のインスリン分泌能力が回復することが指摘されました。

この研究成果からロイ・テイラー教授は2型糖尿病の患者は発症後10年以内であれば、肥満を解消し肝臓と膵臓に蓄積した脂肪を減らすだけで糖尿病をほぼ治すことが可能だと結論づけており、この研究成果をもとに糖尿病治療への応用が期待されています。

・肥満を解消すると「負の連鎖」から脱却できる

2型糖尿病の患者で特に多いのが、「脂肪の蓄積→膵臓の機能の低下→さらなる脂肪の蓄積」という「負の連鎖」にはまってしまっているタイプです。

一度この状態に陥ると糖尿病は悪化の一途を辿ることも多く、この負の連鎖から脱却することは2型糖尿病治療における大きなテーマのひとつと言われています。

ロイ・テイラー教授が提唱した新たな治療法はこの負の連鎖から患者を脱却させるための手段として有効であることから、特に2型糖尿病治療においてはその克服へ繋げられる可能性を大いに秘めていると言えるでしょう。

 

胃を小さくする手術を受けて克服した例

続いては一般的な糖尿病治療ではあまり見ることのない、手術によって糖尿病を克服した例です。

・手術で糖尿病を治すという考え方は一般的ではなかった

従来の糖尿病治療では食事療法やインスリン注射の接種などが一般的でした。

しかし、これらの治療法には限界があり、この事実が糖尿病治療は困難とされる原因でもありました。

特に食事療法は、糖尿病そのものを治すというより病状の進行を遅らせる、あるいは症状を和らげるといった意味合いが強く、糖尿病を治す方法としては十分ではないと見られることが一般的でした。

そのため、かつての糖尿病治療で手術という選択肢はほぼないと言っても過言ではありませんでしたが、近年ではこのような考え方も変わりつつあり、その中でも特に注目を集めているのが「胃バイパス手術」です。

・胃バイパス手術で糖尿病の症状が緩和

胃バイパス手術とは胃や腸の一部を切除する手術で、これまでは肥満を解消するための手術として行われることも多くありました。

そもそも、この手術による影響を受ける小腸の末端には特殊な細胞があり、ここに食べたものが届くことで膵臓のインスリンを分泌する働きを促すホルモンが多く分泌されるようになることが分かっています。

そして、胃バイパス手術を行うと、この特殊な細胞に食べたものが届きやすくなり膵臓のインスリン分泌が活性化されることから糖尿病治療効果も期待できるとされています。

実際にこの手術を行うことで糖尿病を克服できた例は存在し、特にインスリンの分泌機能が保たれていて、なおかつ糖尿病歴が短く若くて太っている患者にはこの手術による治療が適していると言われています。

・手術を受けた人の8割に効果が

糖尿病治療の目的で胃バイパス手術を受けた患者のうち約8割には血糖値が正常値に戻るという効果が現れ、糖尿病そのものの症状が大幅に改善された例も報告されています。

この要因としては、上述した小腸の末端にある特殊な細胞が関係する消化管ホルモンの分泌量の変化や胆汁酸の増加、腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう・腸内に生息する細菌の生態系)の変化がバイパス手術によって促されることが指摘されており、手術そのものに人の体質を大きく変える効果があることが考えられます。

・将来的には代表的な糖尿病の治療法となる可能性も

現時点で、胃バイパス手術はあくまでも糖尿病治療における選択肢のひとつということができます。

また、上述したとおり現時点でこの手術による効果が期待できる患者の特徴は限定的であるため、医師によってはこの治療自体を推奨しないこともあるかも知れません。

しかしながら、今後この手術に関する研究がさらに進めば、より多くの患者にとって胃バイパス手術が最も適した治療法となることも考えられます。

実際、5年以内に胃バイパス手術が最も代表的な糖尿病の治療法になるとの見方をする医師もおり、今後もこの治療法に関する研究の推移には注目する価値がありそうです。

 

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早い段階でインスリン注射をして克服した例

3つ目に紹介する糖尿病の克服事例は、早い段階からインスリンの投与を行うというものです。

・インスリン注射は「最後の手段」だった

インスリン注射は代表的な糖尿病の治療法として知られています。

しかし、この治療法は膵臓の細胞が死んでしまいインスリンが分泌されなくなってしまった患者に対して行われるもので、主に糖尿病が深刻な状態か、それに極めて近い状態にまで進行してしまった患者に対して行われていました。

このことから、インスリン注射は糖尿病治療における「最後の手段」と考えられることが多く、治療の初期段階から行うという概念はそもそも存在しないといっても過言ではありませんでした。

・早い段階でインスリン注射を打つことで症状が改善

しかしながら、弱まってはいても膵臓からインスリンが分泌されている状態でインスリンを注射することが糖尿病治療において避けるべきことであるとの合理的な根拠はありません。

そのため、これまでの概念を覆し早い段階でインスリン注射を行うという治療法を提唱する医師も現れ始めました。

そして、実際にこの治療を行ってみたところ膵臓のインスリン分泌機能は大幅に改善し、飲み薬と食事療法のみに切り替えることができたという事例が報告されたのです。

・インスリン注射は膵臓への負荷を減らせる

この治療法により糖尿病を大きく改善できた理由としては、膵臓が弱りインスリンの分泌機能が鈍化している状態でインスリン注射を行うと膵臓にかかる負荷を軽減できる点でしょう。

その結果、膵臓の自然治癒を促すことができると考えられています。

つまり、注射によって体内に入ったインスリンには血中の糖分をエネルギーに変え血糖値を下げるという働きだけでなく、本来インスリンを分泌している膵臓を休ませその機能が回復するのを促す効果も期待できるといえるのです。

・空腹時血糖値が2週間で正常値に戻ったケースも

この治療を受けたとある男性は300以上あった空腹時血糖値が2週間で130台にまで減少しました。

加えて、それ以降は飲み薬と食事療法だけで血糖値を正常な状態に保てるようになり、インスリン注射も必要なくなったという事例が報告されています。

どの程度の効果が現れるかは個人差があることも考えられるため、効果が期待できる患者の特徴を明確にするためにはさらなる研究が必要です。

しかし、このような大幅な症状改善事例が報告されたことから考えると、インスリン注射を早い段階から行うという治療法も今後は広く行われるようになることが期待できるでしょう。

・インスリン注射は必ずしも最後の手段ではない

以上のことからは、今やインスリン注射は必ずしも最後の手段ではなくなったということができます。

また、糖尿病治療を必要とする患者や治療を行う医師にとっては選択肢が多くなるという点や、重症化する前の克服が可能になるという点でメリットがあるといえるでしょう。

 

日頃から糖尿病にならないための暮らしを心がけることが重要

さまざまな新しい治療法が誕生しているとはいえ、糖尿病の治療に多くの時間や手間を費やさざるを得ないことに変わりはありません。

そのため、糖尿病に対しては「患ってしまっても治せばよい」と考えるのではなく「患わないよう普段から気を付ける」ことが大事です。

糖尿病を予防するために日ごろからできることとして運動がおすすめです。

特に全身を動かす有酸素運動は糖尿病予防においても有効であることが分かっているため、以下のような運動を継続して行うのがよいでしょう。

・ウォーキング

ウォーキングは自分のペースでできるため体力に自信のない方にもおすすめです。

目安としては1日30分程度、通常の速さのウォーキングと速足のウォーキングを交互に行いそれを繰り返すのがよいとされており、慣れてきたら徐々にスピードを上げるのもよいでしょう。

糖尿病を患っている方は運動不足気味・肥満気味ということが多いため、ウォーキングをする際には足腰への負担を考える必要もあります。

特に膝や腰を痛めたことがあるという方は靴底にクッション素材が入ったウォーキング専用のシューズを使用すると継続しやすくなるでしょう。

・水泳

水泳は足腰への負担が少ないため肥満気味の方や体力的にウォーキングやジョギングを続ける自信がないという方にぴったりです。

近隣に屋内のプールがあれば天候を気にする必要もなく、継続するためのモチベーションも維持しやすくなるでしょう。

また、水泳で全身の筋肉をくまなく動かすためにはひとつの泳ぎ方だけでなく、クロール、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライといった基本的な泳ぎ方を組み合わせるのがおすすめです。

一日で泳ぐ距離の目標を徐々に長くし、記録更新を目指すようにすると楽しみながら継続できるでしょう。

・ジョギング

ジョギングはある程度体力に自信がありウォーキングでは物足りないという方におすすめです。

ただし、ウォーキングに比べるとジョギングを継続して行うことによる足腰への負担は大きいため様子を見ながら徐々に距離を長くしていくのがよいでしょう。

ジョギングに関しても自分のペースで行ったほうがよい点はウォーキングと変わりなく、長い距離を完走することよりも長期的に継続することを目標にしたほうが糖尿病予防としては有効です。

・サイクリング

サイクリングは主に下半身の筋肉を使いウォーキングやジョギングに比べると足腰への負担が少ないため継続しやすいというメリットがあります。

あまり運動をしないため足腰に自信がなく、まずは負担の少ない運動から始めたいという方には特におすすめです。

また、サイクリングはウォーキングやジョギングに比べて長距離の移動にも向いているという側面があり、通勤や休暇を楽しむための趣味として始めると継続もしやすくなるでしょう。

 

まとめ

かつては「罹ったら終わり」といわれていた糖尿病も現在ではさまざまな治療法が考案されたことにより「克服できる病」になったといえます。

そのため仮に糖尿病を患ってしまったとしても必ずしも悲観的になる必要はなく、医師と相談した上で最適な治療法を模索していくとよいでしょう。

一方で、糖尿病になってしまうのを未然に防ぐことが重要なのはいうまでもなく、そのためには日ごろからウォーキングや水泳といった運動を継続して行うことも大切です。

 

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ライター紹介 ライター一覧

木村 哲也

木村 哲也

株式会社イコールヒューマン代表取締役。生活習慣病の権威者である崇高クリニックの荒木裕院長と提携し、主に生活習慣病に関わる様々な情報を広く分かり易く提供中。

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