「肥満」は癌の原因と深い関係がある発生原因の一つ
2017年に新たに癌であると診断された人は約98万人(男性約56万人、女性約42万人)で、男女の総計で最も罹患数が多いのは大腸癌、次に胃癌、肺癌、乳癌、前立腺癌となっています。
生涯のうち癌で亡くなる確率は男性24%(4人に1人)、女性15%(7人に1人)となり、癌にかかるということは決して他人事ではありません。
誰もが癌にかかりたくないと思うのは当然のことで、癌にならないための生活習慣の見直しに取り組む人もいるでしょう。
しかし、肥満も癌の原因になることがあるのです。
実は肥満も癌の発生原因と深い関係があるといわれています。
今回は、なぜ肥満が癌と関係するのか見ていきましょう。
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Contents
癌と肥満の関係
肥満は人間の体にとって決してよくない状態であることは誰もが理解できるでしょう。
肥満になると生活習慣病と呼ばれる糖尿病や高血圧などになり、それが悪化すると動脈硬化につながって心筋梗塞や脳卒中といった病気になるような怖い連鎖が続く原因のひとつです。
イギリスで行われた国民524万人の追跡調査では、22種類の癌のうち実に17種類の癌が肥満が原因で増加し、とくに大腸癌や肝臓癌、子宮癌などは肥満の影響を受けやすいということがわかっています。
そして最近になり肥満は喫煙習慣と同じくらいに癌の原因のひとつになるともいわれているのです。
まずは、なぜ肥満が癌の原因になるのかを説明します。
癌の原因に繋がる細胞老化
肥満が癌の原因に繋がる理由としては「細胞老化」が体内で起こることが関係していると指摘されています。
細胞老化とは、毎日分裂を繰り返して増えてきた細胞が分裂を繰り返していくうちに細胞自体が傷ついてしまい分裂を止めてしまうため、増加させることができなくなった状態のことです。
傷ついた細胞は癌化していくため、細胞老化をして細胞分裂をストップさせることで癌になるのを防ぐ防御作用が働くとされています。
これまではこの細胞老化は人間の体にとってよい状態と考えられてきました。
しかし、最近ではよい面ばかりでないこともわかってきたのです。
細胞の成長をストップさせ、老化した細胞が体の中に増えると「SASP」という現象が起きます。
このSASPの現象ではIL-6(インターロイキン-6)やPAI-1(プラスミノゲンアクチベータインヒビター1)というタンパク質が生成され、これが発癌を促進する作用があるといわれているのです。
また、SASPの現象で生じる IL-6やPAI-1といったタンパク質は肥満になることで体内に分泌されることがわかっています。
このように細胞老化は癌を防ぐ作用にもなる反面、癌の発生を促進することにもつながる2つの側面を持っていると言えるでしょう。
内臓脂肪も癌の原因となる
内臓脂肪とは、食事から摂取した糖や脂質などの栄養が消費できずに体内に余ってしまい脂肪となって内臓についたものです。
日本人は食事から摂取したエネルギーを内臓脂肪として体内に溜めやすいことが知られています。
この内臓脂肪も実は癌と関連していると言われているのです。
内臓脂肪にある脂肪細胞は「アディポネクチン」という物質を分泌します。
アディポネクチンは生理活性物質(アディポサイトカイン)のひとつです。
動脈硬化や糖尿病を防ぐ役割がありますますが、アディポネクチンが増えると分泌量が低下して血液の中に流れる量も減ります。
すると癌細胞が増えて癌発症の確率が高くなるのが特徴です。
女性は女性ホルモンの分泌が減ってくると体に内臓脂肪を溜めやすくなります。
特に女性の場合、閉経をしてから起こる乳癌に関しては肥満と確実に関連しているとされ、さらに閉経前に起こる乳癌と子宮内膜癌も肥満と関連している可能性があるとも言われているのです。
このように内臓脂肪と癌の関係性を考えると、内臓脂肪の蓄積は早急に対処しなければならない問題であるとも言えます。
肥満の現状
肥満と癌が関連することがわかると気になるのが現代の肥満状況なのではないでしょうか。
基本的に肥満は身長(m)と体重(kg)を用いて計算されたBMI(Body Mass Index)において算出されます。
WHOの基準によると、30を超えると肥満、25を超えると過体重と判断されるのです。
世界の肥満人口は6億4100万人であり、実に男性の10人に1人以上、女性の7人に1人以上が肥満だといわれています。
世界の肥満人口は1975年からどんどん増えており、肥満となる割合はこの20年で男性は3倍、女性は2倍以上に増えているのです。
特に肥満が目立っているのはアメリカやイギリス、カナダ、アイルランド、オーストラリア、ニュージーランドなどで、中でもアメリカは男女ともBMIが際立って高いことが判明しています。
一方、日本では比較的抑えられているためそれほど増えてはいません。
続いては、人類にとっても大きな問題になっている肥満が人体に与える影響について見ていきましょう。
<肥満は寿命を縮める>
アメリカのハーバード公衆衛生大学とイギリスのケンブリッジ大学が中心となった研究チームのデータによると、重度の肥満の場合、寿命が約10年短くなることがわかっています。
これは世界32ヵ国1,060万人のデータを分析した研究によって明らかになりました。
この1,060万人から喫煙者・慢性的な疾患にかかっている人、調査から5年以内に死亡した人を除いた合計395万1,454人のデータが詳しく解析されています。
これらの人を約13.7年間追跡して調査を進めていった結果、肥満の程度が重度な人は寿命が約10年短くなること、2人にひとりという確率で70歳を迎える前に亡くなってしまう可能性があることが指摘されているのです。
また、喫煙者は非喫煙者と比べてBMIが低い傾向があるものの、喫煙習慣があるだけで死亡リスクが大幅に上昇することがわかっています。
そして、高齢者より若者、女性より男性のほうが、肥満の死亡リスクへの影響は強いという傾向がみられているのも特徴です。
<中性脂肪と健康への悪影響>
中性脂肪は体に必要なエネルギー源ですが、使われなかった中性脂肪は皮下組織や内臓周辺に蓄積されます。
この中性脂肪が増えると肥満を引き起こして、肥満になると癌の発生に繋がるだけでなく、動脈硬化から心筋梗塞、脳梗塞を引き起こす原因にもなりかねません。
癌の原因ともいわれる中性脂肪を下げるためには、炭水化物の摂取を減らし、青魚などの良質な脂質をとること、αリノレン酸を含むアマニ油などの油に変えること、運動や禁煙をすることが大切です。
中性脂肪は摂取しすぎてしまうと生活習慣病など健康を害するだけでなく、癌の原因になる肥満を生じさせます。
それを避けるために生活習慣を変えていくことが必要と言えるでしょう。
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肥満の基準
肥満は基本的には体についている脂肪の量が多い状態のことです。
上述のBMIでは日本肥満学会の基準でBMI22が標準の値となります。
その他、以下ように肥満度が分けられているのが特徴です。
・BMI25以上:肥満
・BMI25以上30未満:肥満度1
・BMI30以上35未満:肥満度2
・BMI35以上40未満:肥満度3
・BMI40以上:肥満度4
BMIで肥満の程度が分かりますが、体重が多い人全員が肥満に当てはまるわけではありません。
筋肉量が多く、体脂肪が少ない人にはBMIの基準は該当しない場合があります。
医学的な見地から見ると、明らかに肥満であることが健康へのデメリットになっており、体重の減量が必要と思われる状態が「肥満」と呼ばれているのです。
<女性の肥満>
肥満とは体脂肪の割合が多すぎる状態のことですが、日本肥満学会の基準ではBMI22を標準としています。
そして、25以上で肥満度1、30以上で肥満度2、35以上で肥満度3、40以上で肥満度4という基準があります。
一般的にはBMI25以上で、腹囲が90cm以上ある女性が「肥満症の疑いあり」とされています。(※2010年現在)
身体についている脂肪は「皮下脂肪」と「内臓脂肪」がありますが、特に内臓脂肪の肥満の場合は病気になりやすいことが判明しているので、健康障害がなかったとしても基準を超えてしまう場合には治療が必要です。
さらにCTスキャンを用いた診断で内臓脂肪の面積が100㎠以上ある場合には「内臓脂肪型肥満」、腹囲90cm以上でかつ血圧・血糖・血液中の脂質のうち2つの項目以上が基準値を上回ることで「内臓脂肪症候群」と診断されます。
女性の場合は、血圧や血糖のうち2つ以上の項目で基準を上回ってしまうといわゆるメタボリックシンドロームが疑われるのです。
<男性の肥満>
男性の場合にはBMI25以上・腹囲が85cm以上で肥満症が疑われます。
腹囲85cm以上の成人男性は約4割にも達するといわれ、とくに40・50代の男性の間で腹囲85cm以上の人の割合が多いのが特徴です。
女性に比べて男性の肥満者の数は最近30年間で大きく増えてきました。
驚くことに、なんと30歳〜60歳代の中高年男性「3人に1人」は肥満と言われているのです。
もちろん日本人は欧米の人たちと比べれば圧倒的に肥満は少ないです。
しかし、日本人の体質は肥満に弱いともいわれているため、たとえ肥満度が軽度であっても血圧が高くなるなど生活習慣病に結びつきやすい体質が多いと言われています。
日本人は年齢と共に肥満になりやすい傾向にあるので、自分の肥満状況を把握するためにもBMIや腹囲など肥満を測る基準を使って一度自身の肥満度を測ってみるのが良いでしょう。
BMIの計算方法は「体重(kg)」÷「身長(m)の2乗」で算出することができます。
肥満は見た目だけの問題ではなく、生活習慣病のもとであるということを理解しておくようにしましょう。
加齢と肥満
次に年齢と肥満の関係を見ていきましょう。
歳を重ねるごとに「体重が落ちにくくなった」と感じる人も多いのではないでしょうか。
実際には年齢と共に基礎代謝量が減っていくために若い年齢のころに比べて脂肪がつきやすい体へと変化していきます。
基礎代謝量が落ちることで、これまでと同じ食事量や運動量があっても体でエネルギーを消費する量が減っていくため、体内に脂肪が溜まりやすくなってしまうのです。
基礎代謝量のピークは男性で18歳、女性は15歳くらいといわれており、それ以降には基礎代謝量は減る一方となります。
基礎代謝量が減る理由としては、体の成長時期を過ぎてしまうと体をキープする以外にはエネルギーは必要なくなるからです。
そして、細胞再生のサイクルも遅くゆっくりとなるため、若いときにエネルギーをたくさん使ってきた筋肉が減ってしまうことなどが挙げられます。
体内で増える脂肪は多くが体幹部である腹部に集中して溜まっていきます。
男性では50歳以上になると全身の脂肪の約6割以上が主に腹部につき、女性も30歳以上になると脂肪の約5割が腹部についていくのです。
腹部についた脂肪は「内臓脂肪」とも呼ばれ、内臓脂肪が多くなるほど血圧が上昇し、血中に含まれる脂質の量が多くなり、メタボリックシンドロームとなる可能性も高くなります。
よって男女ともに30代以上の人はたとえ体脂肪率が低くても、お腹についている脂肪が気になるのなら注意が必要と言えるでしょう。
更年期で太る人と痩せる人の違い
女性なら更年期を迎えると、より痩せにくくなると感じている人も多いのではないでしょうか。
しかし、逆に更年期で痩せる人もいるので、どこに違いがあるのか疑問に思うこともあるでしょう。
更年期に入り体重が減る原因は自律神経の働きが乱れ消化器系の機能や働きが落ちてしまった結果、食欲不振が生じることが考えられます。
他にもストレスなどで胃酸が多く分泌されて胃炎になってしまう、胃の粘膜を作るエストロゲンの分泌が更年期になって減ってしまうことも考えられる原因です。
このように更年期に入って痩せる人というのは自律神経の働きの乱れが原因として考えられますが、一般的には更年期になると太りやすくなる傾向が強くなります。
基礎代謝量が減ってしまうのは上述しましたが、他に女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が少なくなることが体重増加に関連しているといえるでしょう。
エストロゲンは脂肪の代謝を促進する働きがあるため、更年期になりエストロゲンの分泌量が減ると脂肪の代謝が悪くなって内臓脂肪が溜まりやすい状態になってしまうというわけです。
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肥満を予防する食事法
最後に肥満を予防する食事法についてご紹介します。
肥満を予防する食事のポイントは糖質を摂取しない食事内容にすることです。
糖質の多い食事を摂取すると血糖値が上がり、体内を流れる血液量が増えると血圧も高くなります。
さらに肥満傾向がある人は血圧を高くするホルモンも分泌されやすくなるともいわれているのです。
つまり糖質制限を意識した食事を摂ることで血糖値や安定し血流も改善し、血糖を下げようと分泌されるインスリンの量も減るため体重の減少が期待できます。
インスリンの分泌が減ると体重が減るのは、インスリン自体が脂肪を肥大化させる原因にもなっているからです。
インスリンが減れば脂肪の肥大化を防ぐことが期待できます。
肥満を予防する食事法として、具体的には糖質制限食をおすすめします。
ただし糖質制限食とはただ闇雲に糖質を摂らないというものではありません。
・必要な栄養素をしっかりと摂取する
・糖質(炭水化物)の摂取を徹底的に控える
この2つのポイントを押さえて取り組むことが大切です。
そして、1日3食きちんと食べて体にとって必要な栄養素が不足しないようにします。
具体的には糖質を含まない食品は食べても良いので、肉・魚・卵・乳製品などを摂取しても問題ありません。
野菜に関しては含まれる糖質が多いものもあるため見極めが大切です。
糖質が多い野菜はジャガイモやニンジンなどの根菜類が挙げられます。
果物も糖質が多いので注意しましょう。
調味料では砂糖・みりん・ソース・ケチャップなどは糖質が多いので摂取は控えてください。
そして、白米やパンなども基本的に控えます。
まとめ
肥満は喫煙習慣と同じくらい癌を発生させるひとつの原因です。
年齢を重ねるにつれ肥満になりやすくなり、かつ肥満以外の要因も影響して癌の罹患率も高まってしまう可能性があります。
健康寿命を延ばすためには癌にならない生活習慣を見直すことはもちろん、癌の原因にもなる肥満を避けることが重要です。
肥満を避けるためにも食生活は十分に注意するようにしましょう。
肥満を予防するための食事のポイントは糖質を摂取しない食事内容にすることです。
少しでも自分は肥満になりやすい体質だと感じた場合は実践してみることをおすすめします。
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