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腸は「第2の脳」-免疫力を半減させる食べ物とは?-

「腸」の役割というと、食べ物を分解し、消化・吸収を行い、不要なものを排泄している器官です。

ですが、それだけでありません。

「腸は第2の脳」と言われるほど、私たちの脳の働きや精神状態に大きく関係しています。

その仕組みを解説し、その働きを阻害する食べ物、働きを良くする食べ物を解説します。

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「腸」と「脳」は密接に関係している

「すべての病気は腸から始まる」とは ギリシャの医聖ヒポクラテスの言葉。

この言葉の通り、腸管壁には1億個の神経細胞が存在しています。

これ等の神経細胞は、互いに連絡を取り合う「腸神経系」を作っていて、さらに腸神経系と頭蓋内にある脳神経は連絡を取り合っています。

だから一旦、消化器系(腸神経系)に影響する様々な事態が起きると、頭蓋内神経にも影響が及び、身体のバランスが元に戻り難くなり健康が取り戻せなくなるのです。

腸神経系は頭蓋神経と同様、色々な刺激のやり取りをしたり、受け取った刺激を記憶したり、感情に反応する働きがあります。

また腸神経も、頭蓋脳神経と同じ神経伝達物質により動いています。

人前でスピーチしなければならない時や試験の前・悲しい出来事があった時など、胃の調子がおかしくなったり便秘したりした経験を多くの人が持っています。

逆に下痢をしたり、ひどい便秘の様な時には気分(脳)が悪くなる事からも、「腸」と「脳」が密接に関係している事がわかります。

 

幸福や安心は「腸」で感じる

最近になりアメリカでは、盛んに腸についての研究が行われ、色々と興味深い事実が解って来ています。

だいぶ以前よりアメリカでは、腸の事を「第2の脳」と呼び、頭蓋骨の中にある脳と区別したり関連づけたりする様になって来ています。

一般的には脳と腸は全く別物だと考えがちですが、そうではないのです。

腸にも「食欲」・「睡眠」・「安心感」を感じるセンサー(セロトニン受容体)や「幸福感」を感じるセンサー(ドーパミン受容体)があります。

また、麻薬のモルヒネ同様の働きをする、「エンケファリン」と云う物質も腸管壁にあります。

特に「食欲」・「睡眠」・「安心感」に関係するセロトニンセンサーは、腸に90~95%あり、脳には5~10%しかないのです。

これらの受容体が発する物質を、神経伝達物質と呼んでいます。

神経伝達物質は60種類以上ありますが、中でも「セロトニン」・「ドーパミン」「ノルアドレナリン」の3種類の伝達物質は、「食欲」・「睡眠」・「安心」や「喜び」・「幸福」・「ストレス対応」などの身体活動に重要な働きをしています。

いずれの神経伝達物質もタンパクに含まれる、「トリプトファン」および「フェニールアラニン」という「必須アミノ酸」を原料にして作られます

頭蓋骨内の脳と腸の脳との連絡は、交感神経や迷走神経と呼ばれる消化器神経系によって緩く結びついています。

私達人類の進化の過程では、脳は二つ在った方が都合が良かったのだろうとロンドン大学のデービット・ウインゲート教授が云っています。

初期の頃は、食物を見つけ子孫を残すだけで良かったのが、次第に独立した「中枢神経」や「脳」を発達させて来たのでしょう。

 

免疫細胞の80%は腸管壁にある

脳の働きや精神機能が健全に機能するためには、腸神経系が根本的に重要です。

しかし、わずかの時間と計画があれば消化器機能の完全な回復は可能で、それにより気分・記憶力・その他身体全体の機能回復に大きな影響を与えることが出来るでしょう。

消化器を健全な状態にする事は、更なる強固な免疫システムを構築し、脳に健康を感じさせる信号を発する「善玉腸内細菌」を増やす事です。

身体を外敵から守る働きをする「免疫細胞」は腸管壁にその80%があり、食べ物に付着したり含まれている有害物質や有害菌などの侵入を防いでいます。

腸管神経系の働きは、頭蓋脳(中枢神経系)の働きを反映していると云う研究成果を、最近になりコロンビア大教授のマイケル・ガーションが発表しています。

健全な消化器は、健全な肉体及び健全な精神にとって極めて重要なものです。

消化機能や免疫機能の重要な働きに関係する善玉腸内細菌は、ビタミンやミネラルの吸収・ホルモンの調整・消化・ビタミン産生・免疫反応や色々な毒素の排除などにも影響を与えます。

科学的にも実証されている「腸管漏洩症候群(リーキーガット症候群)」とよばれる腸管の高度透過性は、非常に多くの人達が悩まされている症候群で、この事は消化器の健全性と脳の健全性が如何に強いかを示すものです。

消化機能・気分・健康や思考は、第2の脳である腸の働きと密接に結びついています。

およそ1億個の腸神経細胞が消化管の全長にわたって分布していて、消化活動の調整をしていますがその他にも、脳神経との間で互いに連絡を取り合い腸の働きだけでなく免疫系の働きも調整しています。

腸管全体に筋神経叢および粘膜下神経叢と呼ばれる神経叢(しんけいそう)があり、その中を少数の指令神経と仲介神経が交互に連絡を取り合っているのです。

これ等の神経は、「糖」・「タンパク」・「酸性度」の化学的因子に対してそれぞれの受容体を持っています。

オハイオ州立大学のジャキー・ウッド博士によると、頭蓋脳からストレス信号によって、胃と食道間の神経の働きが変化し「胸やけ」が起きるのだそうです。

非常に強いストレスが掛かると、肥満細胞は、ヒスタミン・プロスタグランディンやその他炎症を生じる物質を分泌しますが、この反応は腸を守る為に起きるのでしょう。

 

糖質による「一時的な満足感」は悪循環のはじまり

神経伝達物質である「セロトニン」は、満腹感や満足感・くつろぎ感を与える役目をしています。

食欲を調節し、セロトニンが変化したメラトニンは睡眠を促す働きを持っています。

身体的・精神的ストレスが長期間に及ぶ時には、コルチゾールやアドレナリンの様な「ストレスホルモン」が作られ、結果として「セロトニン」の合成が妨げられます。

セロトニンが不足すると、内因性うつや食欲の調節機能が乱れて肥満になったり、食欲不振や神経性過食症・不眠症を引き起こしたりします。

セロトニンは大切な脳内神経伝達物質ですが、90~95%は腸管壁にあります。

セロトニンは食物タンパクのトリプトファンと呼ばれる必須アミノ酸から作られ、ビタミンB6とマグネシウムの助けによりトリプトファンがセロトニンへと作り替えられるのです。

もしナイアシン(ビタミンB3)が不足すると、食物中のトリプトファンをビタミンB3を作る為に使ってしまうので、ますますセロトニン不足が起きうつ等になり易くなります。

砂糖のような炭水化物は、腸管壁にあるセロトニン受容体を刺激し、セロトニン量が「一時的」に増えるので、“うつ”の様な人達は炭水化物=糖質の食べ物を欲しがるのです。

さらには、糖質によるセロトニンの増加は「一過性」である為、いくらでも欲しくなり、糖質の摂り過ぎによって肥満をはじめとする「生活習慣病」に繋がる結果となります。

この様な結果を防いでセロトニンを増やすには、牛肉・鶏肉・卵・魚をしっかり食べる事です。

今では「低炭水化物ダイエット」が大流行りですが、崇高クリニックでは30年前より超超低炭水化物で肉食ダイエットを提唱してきました。

現在一般の医療機関が奨める「低炭水化物ダイエット」では、かえって逆効果になり肥満・高脂血症などを招く事にもなりかねません。

 

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ドーパミンの働きを狂わせる「食べ方」とは?

食欲や睡眠を調整するセロトニンの他に、快感や多幸感、運動調節・学習などに関係する脳内神経伝達物質「ドーパミン」があります。

炭水化物=糖質の食べ物は、脳の側坐核を刺激し多量のドーパミンを放出します。

これ等の食べ物を頻繁に食べていると、ドーパミンに対する感受性が低下し、その受容体=センサーの数も減少します。

その結果、多幸感を得たい為に、食べる事を止められなくなるのです。

これはコカインやニコチン・大麻などの麻薬と同じか、それよりも7倍も強い「習慣性」がある事が研究から判って来ています。

安定剤や睡眠薬に対するGABA受容体は、腸管壁にあり胃腸の動きを抑制し便秘の原因となります。

慢性的なストレスは、消化不良・潰瘍や腸攣縮などの不快感を起こします。

色々なホルモンやセロトニン・ドーパミン・グルタミン・GABA・ノルエピネフリン等の神経伝達物質は、脳にも胃腸にもあり、お互いに影響しあっています。

睡眠や覚醒は、ノルアドレナリン・セロトニン・アセチルコリン・ドーパミン・GABAや松果体ホルモン・メラトニンなどにより調整されています。

ドーパミン受容体の働きを狂わせ色々な精神神経状態を狂わせるのは、「霜降り肉」を砂糖・みりんで味付けし、白ネギ・白菜やご飯と一緒に食べたり、ステーキや焼肉に甘いタレをかけてご飯と食べたりするような事です。

「糖質=炭水化物」と「脂肪(油)」の組み合わせが、最もひどい食べ方です。

私達人類は、本来100%ではないにしても98%肉食であるので、炭水化物=糖質の物を食べれば身体の働きに狂いが生じます。

著書「新断糖宣言」や「肉食健康ダイエット」でも説明しています。

 

免疫力を50%低下させる食べ物とは?

身体を食物に付着している細菌や、汚染された空気・重金属・殺虫剤・ワクチン・食品添加物などから守る役目を果たす、白血球・リンパ球の約70%は消化管にあります。

「American Journal of Clinical Nutrition」に掲載された調査結果から、100グラムの炭水化物(小麦粉製品・イモ類・豆類・果物の様に甘い野菜)や果糖・ブドウ糖・砂糖・オレンジジュース・蜂蜜等を食べると、「白血球の働きが抑制され」「侵入してくる細菌や有害物質を除去する働きが障害される」事が解りました。

免疫機能の障害は、糖の摂取後30分以内に始まり、5時間以上続くと云われています。

免疫力が最低になるのは、糖の摂取約2時間後でほぼ血糖値が最高になる時です。

この時、白血球の働きは50%低下していると云うことです。

糖分が止められない人の脳と、麻薬中毒の人の脳を比べると、その働きは驚くほど似ている事が研究で分かって来ています。

「肥満」・「コカイン中毒」の人達と、いずれでもない人達を、MRIによる脳スキャンで比較した所、「肥満」の人と「コカイン中毒」の人では全く同じような結果が出たと云う事です。

「炭水化物=糖質」は言わば一種の麻薬であり、自分の意志で簡単に止められるものではありません。

だから、そう云う食べ物には近寄らない事です。

 

まとめ

以上のように、「腸は第2の脳」と言われるように、私たちの脳の働きや精神状態に大きく関係しています。

また「すべての病気は腸から始まる」という「医学の父」の言葉は、今でも通用します。

世界中の最新の研究による様々なデータや事実もあります。

心身ともに健康であるために「何を食べ、何を避けるのか」、ぜひ参考にしてください。

 

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ライター紹介 ライター一覧

荒木 裕

荒木 裕

崇高クリニック院長。
1962年 京都大学医学部卒
1967年 京都大学医学部大学院卒
1968年 大阪北野病院勤務
1971年 アメリカハーバード大学付属 小児病院脳神経外科研修医
1973年 アメリカハーバード大学医学部 臨床栄養学部助教授
1976年 アメリカ国立公衆衛生研究所(NIH)客員研究員
1977年 アメリカサウスカロライナ大学 医学部勤務
1983年 崇高クリニック開設

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