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下肢静脈瘤とはどんな病気?

「下肢静脈瘤」という名前を聞いたことがあるでしょうか?

足の血管が蛇行して青く浮き出たり、クモの巣状に青く浮き出るため見た目にも気持ち悪い病気で、また血管が破裂してしまうのではないか、足を切断するようなことはないかと不安になるかもしれません。

下肢静脈瘤とはどのような病気なのか、どんな人がなりやすいのか、下肢静脈瘤は治るのか、予防できるのか…

詳しくみていきます。

4つのタイプに別れます

下肢静脈瘤とは文字通り足の静脈にコブができたように見える病気です。

下肢とは難しい言葉ですが「足」を指します。

また、瘤と表記されていますが、実際はコブに見えるだけで本当の瘤とは違います。

ふくらはぎなどひざから下の部分(下肢)の静脈が瘤(こぶ)状に膨らんでいる状態が一般的にみられます。

また、蜘蛛の巣のように四方に血管が青く浮き出るような状態などもあります。

ただ、下肢静脈瘤は悪性のガンのような病気ではなく、これによって命を失うような重篤な病気ではありませんので、下肢静脈瘤を見つけたとしても慌てる必要はありません。

この下肢静脈瘤という病気は大きく別けると4つのタイプになります。

・伏在型の下肢静脈瘤

・側枝型の下肢静脈瘤

・網目状の下肢静脈瘤

・クモの巣状の下肢静脈瘤

それぞれ簡単に説明しますが、タイプによって症状も治療法も予防法なども変わって来ます。

まず、「伏在型の下肢静脈瘤」ですが、これがまさに瘤のような見た目になっています。

静脈が拡張し、蛇行した状態です。

ボコボコに瘤が盛り上がり、ひどいものになると潰瘍を発症する場合があります。

次に「側枝型の下肢静脈瘤」ですが、膝の周りや裏側、太ももの前後の周辺に発症します。

側枝というだけに静脈の本幹に発症する「伏在型の下肢静脈瘤」よりは血管の浮き上がりが小さいです。

「網目状の下肢静脈瘤」は太ももの外側、裏側、膝の裏側などに発症します。

見た目が「網の目」状に青黒く細い血管が浮き上がって見えます。

ただ、一般的には細い浮き上がりですが、なかには拡張して5~6mmまで太くなるものもあります。

最後は「クモの巣状の下肢静脈瘤」です。

下肢静脈瘤の4つのタイプでは一番細い血管の拡張タイプになります。

皮膚内の細い静脈が拡張し、変色して浮き上がっています。

色や形状が多岐に渡り、一概にこれと言えませんが、確かに見た目が「蜘蛛の巣」のように見えます。

また、発症する範囲も様々です。

以上、簡単に説明しましたが、下肢静脈瘤と言っても4つのタイプで見た目もかなり違うことがお分かりになったかと思います。

前記に「生命」に危険の及ぶ病気ではないと説明しましたが、見た目の醜さや恐ろしさから悪病と思われる場合も多い病気です。

例えばこの病気は脳梗塞や心筋梗塞を起こすのではないか、瘤が破裂してしまうのではないか、足を切断するようなことはないのか、などです。

下肢静脈瘤が直接の原因でそのようなことにはなりませんが、まれに湿疹や潰瘍などが出来ることがあります。

また、むくみやだるさなどからQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の低下が考えられます。

治療法など詳細は各章で説明します。

 

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伏在型の下肢静脈瘤

下肢静脈瘤で最も一般的な症状です。

しかも最も大きな瘤が血管に浮かびあがり、それが蛇行している状態になっているのが「伏在型の下肢静脈瘤(伏在静脈瘤)」です。

発症場所は主に「大腿部(太股)の内側」や「ふくらはぎ」で、大きな血管のコブが見られることが多くなります。

悪化するとかなり見た目も悪く、患者にとっても不快な外観になります。

さて、この静脈瘤の症状を改めて整理してみますと、いずれも静脈の色や形状の異常です。

「静脈」の異常なので基本的には青筋が浮き出ているような状態になります。

静脈は体中を巡った血液を再び心臓へ戻す役割を担った血管です。

この心臓へ血液を戻す静脈の機能が一部で異常を起こし、「血液が逆流している」現象を起こします。

この逆流が原因で「むくみ」「足のつり」「足のだるさ」「静脈の張り」などが起こります。

さらに下肢の皮膚が硬化を起こす、変色する、などと悪化して行きます。

足の静脈が逆流を起こしている点は説明した通りですが、ではどのように逆流が起きているのでしょうか。

まず静脈には血液を心臓に戻すための「弁」があります。

重力に逆らってでも血液を心臓に戻す、つまり人間が立った状態でも血液を送るための機能を弁が受け持っています。

ところがこの弁が壊れてしまうことがあります。

例えば日常的に立ったままの姿勢が続く場合、弁に負担がかかりすぎて一部の弁が機能しなくなります。

そのため立ち仕事の多い職業や、妊婦など下肢に負担のかかる方などに多く発症しています。

さて、壊れた弁では心臓に血液を戻すことが出来ず、下流の静脈に血液が逆流してしまいます。

下流では必要以上の血液が滞留し、圧力がかかります。

圧がかかった状態が「コブ」のように静脈を太く浮かびあがらせているのです。

圧が大きければ瘤だけでなく蛇行を始め、「伏在型の下肢静脈瘤」となっていきます。

治療方法は症状によって様々な方法が取られますが、現在、採用例が広がっているのが「レーザー治療」です。

カテーテルを血管内に通し、そこからレーザーファイバーを挿入、レーザー光によって逆流を起こしている血管を焼きつぶします。

治療時間は、片足で10分から30分程度で身体への負担も抑えられます。

また、手術後の瘤を目立たなくするために静脈瘤切除術を同時に行うこともあります。

この場合でも、弾性包帯を巻いて圧迫し、手術後すぐに歩いて帰宅できるようになります。

なお、レーザー治療は平成23年(2011年)から一部保険が適用されています。

その他に良く採用される療法としては、「高位結紮術(こういけっさつじゅつ)」、「ストリッピング手術」などがあります。

高位結紮術は特異な形状になった静脈瘤に行われますが、局所麻酔で患部を麻痺させてから切開術を行います。

基本的に入院は不要です。

ストリッピング手術は原因になっている血管を除去する療法です。

やや入院が必要になります。

いずれにしてもこの病気の症状は形態、または医師の判断方針によって適切な療法を選択します。

 

側枝型の下肢静脈瘤

「側枝型の下肢静脈瘤(側枝静脈瘤)」とは先に説明した「伏在型の下肢静脈瘤」が発生している幹ともいえる本幹の血管の枝部に発生するものです。

「伏在型の下肢静脈瘤」によって逆流した血液が枝の静脈にも逆流します。

そのために「側枝」にも下肢静脈瘤が発生するのです。

ですから「側枝型の下肢静脈瘤」が単独で見られることは比較的少なく、大体は本流の「伏在型の下肢静脈瘤」と併発している場合が多いです。

ただ、本幹とも言える「伏在型の下肢静脈瘤」を起こしている「伏在静脈」は皮膚の下の深部を通っています。

そのため外観からは何も問題がないように見える場合があります。

そうすると一見、「側枝型の下肢静脈瘤」が単独で発症しているかのように見えます。

しかし原因は深部での「下肢静脈瘤」になりますので、「伏在型の下肢静脈瘤」の治療が必要となります。

治療には「レーザー療法」、「高周波カテーテルアブレーション治療」が使用されます。

なお、症状によっては「硬化療法」も効果的な場合があります。

比較的目立たない箇所の症状になりますが、悪化すると生活の質を落としかねないほどひどくなる可能性もあります。

下肢静脈瘤は自然治癒することはありえませんので、悪化するまで放置してはいけません。

気が付いたら医師に相談し、悪化を防ぐ予防方法や適切な治療を施すようにしましょう。

このタイプの治療は「伏在型の下肢静脈瘤」と同様に、「レーザー治療」が主に採用されます。

その他は高位結紮術、ストリッピング手術など、症状に合わせて使い分けされます。

高位結紮術を用いるケースでは他の療法と併用することが多いです。

この療法はやや特殊な形状の静脈瘤に対して行われますが、根治が望めず再発の可能性があります。

そのためこの病気では他の療法も同時に行われます。

 

網目状の下肢静脈瘤

一見アザや内出血のようにも見えることがあります。

しかしあざや内出血は自然に時間の経過とともに消失しますが、下肢静脈瘤は自然に治ることはありません。

「網目状の下肢静脈瘤(網目状静脈瘤)」では皮膚の下に青色の網目状に血管が浮いて見えるものを指します。

一般的にひざ裏などに発症しますが、痛みなどの自覚症状はほとんどありませんので、つい見逃してしまいます。

下肢静脈瘤は一般に重症になることはありません。

青筋と言われる静脈の中でも細い血管が網の目のように枝分かれして浮かび上がっています。

「網目状の下肢静脈瘤」はあざや内出血に間違えるほどですから放置している方も多いかと思います。

そのため基本的には積極的に治療するほどではありません。

しかし外見上気になる方は多く、予防できるに越したことはありません。

治療方法としては「硬化療法」が主に用いられます。

この硬化療法はもっとも古くから使用されている療法です。

硬化剤という薬剤を注射し、皮膚の上から血管・患部を圧迫します。

硬化剤を圧迫することで接着する手法になります。

「伏在型の下肢静脈瘤」や「側枝型の下肢静脈瘤」の症状ほどひどい外観でもなく、比較的許容されがちな「網目状の下肢静脈瘤」ですが、悪化すればQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の低下を招きかねません。

QOLとは「人生や生活の質、社会的な生活の質」を言いますが、近年では単に医学的な病状の良し悪しだけでなく、自分らしい生き方を阻害する病状も積極的な治療対象とする方針を医学側でもとるようになっています。

例えば、乳がんの場合、再発を考えると乳房摘出を選択するのですが、女性の尊厳もあってこそ患者の幸せなりますので安易に摘出だけが選択されるわけではなくなっています。

同様に「下肢静脈瘤」も外観から来る不快感、あるいはむくみやだるさなども悪化すれば生活の質を落とすことになります。

患者自身にしか分からない不快感や焦燥感を解消することも大切なことです。

下肢静脈瘤の予防法としては、まずは適度な運動が効果的です。

体を動かすことで「血流がよくなり」、足の筋力を高め、静脈の停滞や逆流を防ぎます。

特に筋力と共に弁のポンプ機能を強化することにもつながります。

しかし、激しい運動や長距離のジョギングなどは様子を見ながら慎重に行う方が良いでしょう。

無理をすればかえって弁を壊すこともあります。

また、過度な体重も悪影響を与えます。

バランスのとれた食生活、規則正しい生活を送ることで、肥満や体調の悪化を防ぐことで、結果的に静脈負担の軽減を望まれます。

また、妊婦の場合も通常の体重状態ではありませんので、下肢静脈瘤の予防を念頭に生活することが必要です。

立ち仕事の影響が大きいことから、立ち時間の長い販売員などの職業の方、デスクワークの頻度が高い職業、座っている時間が長い人は、定期的に軽い運動をする、足を上げてリラックスさせる、日常のなかで足への負担を軽減することなどが望まれます。

また、女性の場合、血流を阻害することになる、締め付けの強すぎる下着の着用は避けた方がいいでしょう。

また、ハイヒールについても、血液の循環が悪くなる、ふくらはぎの筋肉によるポンプ活動が滞るなどの悪影響があります。

予防や改善のためにヒールの低い靴を履き、ふくらはぎをしっかりと使う歩行時間を確保して下さい。

さらに、医療用の弾性ストッキングの活用も効果があります。

弾性ストッキングは、足首からふくらはぎ、太ももまで段階的に圧迫することで血行を効果的に維持することができるようになります。

下肢に圧力を与えて余分な血液がたまらないようし、深部の静脈の流れを円滑にします。

また、足の「血液の流れ」や「リンパの流れ」を良くする成分を含んだ「むくみ専用のクリーム」もあります。

クリームを塗るだけで手軽にひざ下をケアできますし、入浴後、マッサージやツボ押しと合わせてクリームを塗るとより効果的でしょう。

このようにこの病気では普段の生活から気を付けることが大切です。

 

クモの巣状の下肢静脈瘤

「クモの巣状の下肢静脈瘤(クモの巣状静脈瘤)」は「網目状の下肢静脈瘤」よりも細い血管が浮きあがっています。

英語では「スパイダーベイン」とも言い、まさにクモの巣の静脈と言う意味になります。

発症範囲はふくらはぎの内側、ひざなどに起こることが多いのですが、足全体に発生することもあります。

正確には「毛細血管拡張症」ですが、見た目は青色や赤色に変色し、さらには紫色に見える紫紅色になり、まるでクモの巣のように目立つためこのように呼ばれています。

さらに痛みを伴うこともあります。

時々間違われますが、皮膚の末梢循環障害による「リベドー(網状皮斑)」と症状が似ています。

血流の悪化や酸素の少ない血液が留まることで毛細血管・皮膚に影響が現れて赤紫の網目状になります。

見間違いやすいので心配ならば専門医による判断を仰ぐのが一番安心です。

なおこの病気の治療法については、網目状下肢静脈瘤と同じく硬化療法が採られる場合もありますが、注射などが難しいほど細い静脈の場合、硬化療法はとれません。

クモの巣状に浮き出た静脈を目立たなくする「IPL治療」も採択されます。

IPL治療とは血管拡張症のために開発された治療法ですが、下肢静脈瘤へも効果的と考えられています。

 

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まとめ

下肢静脈瘤は命にかかわる病気ではありませんが、自然治癒することはありません。

見た目も気持ち悪く非常に気になりますし、足が重だるくなったり足がつりやすくなります。

立ち仕事で立ちっぱなし、デスクワークで座りっぱなしの人は下肢静脈瘤のリスクが高いので普段から対策することをお勧めします。

 

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ライター紹介 ライター一覧

木村 哲也

木村 哲也

株式会社イコールヒューマン代表取締役。生活習慣病の権威者である崇高クリニックの荒木裕院長と提携し、主に生活習慣病に関わる様々な情報を広く分かり易く提供中。

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