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糖尿病の合併症「糖尿病性腎症」とは

生活習慣病
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血管の病気というとどのようなものを思い浮かべるでしょうか。

一般的には脳血管疾患や心筋梗塞、動脈瘤など大きな血管の病気を思い浮かべる方が多いかもしれません。

糖尿病の合併症の特徴は細い血管を痛めつけることです。

糖尿病が引き起こす細小血管合併症の中でも、糖尿病性腎症は腎臓の機能を壊し透析をしなければ生きていけない状態にする怖い合併症です。

では腎臓はどんな働きをしていて糖尿病性腎症とはどのような病気なのでしょうか。

そこで今回は腎不全になるとどうなってしまうのか、予防方法や治療も併せてご紹介します。

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糖尿病と糖尿病性腎症

糖尿病は血液中の糖分を各臓器が取り込むインスリンというホルモンが足りなくなったり、うまく働かなくなったりして生じる病気のことです。

この糖尿病を治療せずに血糖値が高い状況が続くと、体の中の毛細血管に障害が起きてしまいます。

これが三大細小血管合併症と呼ばれる「神経症」「網膜症」「腎症」です。

腎臓の中には血液中の老廃物や塩分をろ過して尿として排出し、きれいな血液を体に戻す機能を持つ「糸球体」があります。

この糸球体はとても細い血管の集まりなので高血糖の影響を受けやすく、血糖のコントロールが悪い状態が長期間続くと障害が出てくるのです。

糸球体同士がくっついて腎臓のろ過機能の目が粗くなります。

そのため、まずタンパクをさらに小さくした微量アルブミン尿が出てしまうようになり、次いでタンパクも尿に出るようになるのが特徴です。

この状態のことを「糖尿病性腎症」と言い、糖尿病で血糖値が高い状態が続くようになってから10年ほどで糖尿病性腎症になると言われています。

さらに合併症が進行した状態が、糸球体全体がつぶれてしまったようになった腎不全です。

腎不全になった腎臓は血液をろ過して老廃物などを尿に排泄することができなくなるので放置すれば死に至ります。

こうなると血液を一度体の外に出して機械にろ過してもらう「人工透析」を受けなければなりません。

この糖尿病性腎症は新たに透析を始める患者さんの原因疾患の第1位の病気です。

<糖尿病性腎症の症状>

糖尿病性腎症は腎臓の機能が低下して尿にタンパクが出るだけの状態なので初期には痛みやだるさなどの自覚症状はありません。

そのため尿検査をして尿の中にタンパクが混じっているかどうかを調べるしかないのです。

最近は極少量のアルブミンを調べることができる検査もあり、より早期に糖尿病性腎症の兆候を発見できるようになりました。

糖尿病性腎症が進んでくると尿と一緒に大量のタンパクが排出されるので、むくみや疲れやすさの自覚症状が現れます。

さらに腎臓の機能が低下してくると体の中の老廃物を出せなくなってしまうので食欲がなくなり、だるさが強くひどいむくみが出るようになるのです。

ここまでくると「腎不全」や「尿毒症」という状態となり、透析をして治療しなければなりません。

<糖尿病性腎症の病期>

糖尿病性腎症には5つの段階があり「腎症前期」は観察すると病変が見られる段階です。

「早期腎症」になると糸球体のろ過する膜が厚くなりアルブミンが漏れ出します。

「顕性腎症」に進むと糸球体に結節などもできタンパク尿が確認されて「腎不全期」となり、あっという間に「透析療法期」に至ってしまうのです。

 

腎臓の働きと仕組み

腎臓は普段意識をすることが少ない臓器です。

位置や役割を意識したことがある人は少ないのではないでしょうか。

腎臓は体のどこにあってどんな働きをしている臓器なのか見ていきましょう。

<腎臓はどこにある>

腎臓は背骨の両脇にある左右対称の2つで1組の臓器です。

左右それぞれの腎臓は体の中心にある動脈と静脈に腎動脈と腎静脈がつながり、さらに膀胱に向けて尿管が伸びています。

そらまめのような形が特徴的で大きさは握りこぶしくらいです。

<腎臓ではどんな作業が行われているのか>

腎臓は腹大動脈から腎動脈経由で流れ込んだ血液の老廃物や塩分をろ過して、きれいになった血液を腎静脈経由で下大静脈に戻しています。

このとき取り除いた老廃物や塩分は尿として尿管に流して膀胱に溜めているのです。

この「ろ過」の作業を行うために腎臓の中にある毛細血管のかたまりである糸球体を包むように尿細管があり、さらに尿細管は何度も曲がりくねって尿管につながるという仕組みになっています。

尿細管では身体に必要なミネラルや水分の「再吸収」が行われ、体液のイオンバランスを調整しているのです。

この糸球体と尿細管の組み合わせを「ネフロン」といいますが、腎臓の中にはこのネフロンが100万個ずつ存在します。

腎臓はこのような繊細で複雑な仕組みで血液をきれいにして成分バランスを整えながら尿を作っている器官です。

<腎臓の役割>

腎臓は血液をろ過して尿を作りながら血液の成分バランスを整える他にもいろいろな役割を果たしています。

腎臓の働きが悪くなると血圧が上がったり、血圧が高くなると腎臓に負担がかかったりと腎臓と血圧は深い関係です。

腎臓には塩分と水分の排出量をコントロールすることで血圧を調整する機能があるうえ、血圧を維持する「アンジオテンシンⅡ」というホルモンの素になる「レニン」という酵素も分泌しています。

高血圧は慢性腎臓病の大きな要因のひとつです。

この腎機能の低下と高血圧の悪循環に陥るとなかなか抜け出すことができません。

糖尿病と高血圧と言った慢性腎臓病が進行するリスクが重なるとさらに悪化してしまいます。

腎臓の機能を守るためには、まず血圧をしっかりコントロールすることが大切です。

その他、腎臓は血液を作るよう指令を出す「エリスロポエチン」というホルモンや、カルシウムを体内に取り込むのに必要なビタミンDなどをも作っています。

このように腎臓はたくさんの役割を担っているので、腎不全になると透析をしなければならなくなるだけでなく、腎性貧血や骨粗鬆症にもなりやすくなってしまうのです。

 

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糖尿病性腎症の治療

糖尿病性腎症は新たに透析を始める患者さんの原因疾患の第1位です。

しかし、糖尿病性腎症の早期から適切な血糖コントロールが行われていれば透析をしなくても済みます。

それでは糖尿病性腎症の治療とはどのように行われるものなのでしょうか。

糖尿病性腎症の段階別の治療内容についてご説明します。

糖尿病性腎症の治療で最も大切なのは血糖のコントロールです。

まず第一に、食事に気をつけて体をしっかり動かすことです。

そして、必要に応じて速やかに経口血糖降下剤やインスリンなどを正しく使うことで血糖を良い状態に保つことができます。

実は糖尿病性腎症といわれても初期の「微量アルブミン尿」が確認されてすぐの時期であれば、血糖コントロールを厳密に行うことだけで尿検査が正常に戻ることも多いのです。

この際に気を付けたいのは、糖尿病だけでなく高血圧や高コレステロール血症も慢性腎臓病の原因になるのでそれぞれしっかり治療する必要があるということだと言えます。

タンパク尿が確認されるようになってから治療を行う場合には、糖尿病性腎症の進行度合に応じて抗血小板剤やACE阻害剤、利尿剤、経口吸着剤などの薬が必要です。

さらに糖尿病性腎症が進行して腎臓がほとんど機能しなくなってしまう腎不全になると、体に老廃物や水分が溜まってむくみが強くなってしまうと尿毒症を起こしてしまうこともあるのです。

尿毒症とはだるさや吐き気、食欲不振、頭痛のほかにも、呼吸困難感、出血症状、けいれんなどを伴うとても危険な状態となってしまいます。

そのため腎不全になってしまった場合には、腕の血管と機械をつないで体の外で血液をきれいにする血液透析や腹腔内に透析液を一定時間入れておき、血液の老廃物や水を移動させる腹膜透析が必要になるのです。

一般的に、透析治療ではタンパク質の制限に加えて水分や塩分の制限、野菜や果物に含まれるカリウムの制限も厳密に行われます。

<糖尿病性腎症の治療を始めるタイミング>

糖尿病性腎症の方の尿検査でタンパクが確認されるようになってしまうと、わずか数年で腎不全まで進行してしまうとも言われています。

もちろん進行を食い止めるための治療は行いますが糖尿病性腎症の治療は早く始めるほど有効です。

タンパクよりも早期に糖尿病性腎症の兆候を発見できるアルブミンが尿中にわずかにでも確認されたら、すぐに治療を始める必要があります。

 

腎不全とは

腎臓が全く働かなくなってしまう「腎不全」とはどのような病気なのでしょうか。

腎炎や糖尿病性腎症を含む慢性腎臓病など負担がかかると、血液をろ過する「糸球体」の目が詰まってしまうのが特徴です。

糸球体が目詰まりを起こすと老廃物が排泄できなくなり、体に必要な成分が溢れて排出されます。

この糸球体のろ過機能が正常な腎臓の30%以下しか働かなくなった状態が「腎不全」です。

慢性の腎不全になると腎機能が回復することはありません。

腎不全になると時間の経過と共に体の中に有害な物や不必要なものがどんどん溜まっていきます。

酸が体にたまると体が酸性になり尿毒症性物質がつくられて、脳や体がうまく機能しなくなる尿毒症症状が出現してしまうのです。

尿毒症症状は頭がぼんやりしたり、イライラしたりする神経症状、かゆみや黒ずみなどの皮膚症状、臓器を含む全身のむくみ、吐き気や口臭などが該当します。

さらに腎臓が製造している血液を作る指令を出すホルモン「エリスロポエチン」とビタミンDの分泌も低下して貧血になり、骨がもろくなってしまうのです。

水分も老廃物もうまく排泄できないため体内の電解質の調整ができなくなります。

カリウムが尿から排泄されないため血中のカリウム濃度が高くなります。

高カリウム血症になってしまうと筋肉の収縮がうまく行えなくなるので心臓のポンプ機能に影響し、うまく収縮できない心臓は不整脈を起こし、ひどくなると心停止を起こすこともあるでしょう。

<腎不全に進行させないためには>

腎不全はその症状も命に関わるものが多く治療を透析に頼らざるを得ない病気です。

透析は拘束時間が長い治療なので生活の質を著しく下げてしまいます。

そのため、なんとしても腎不全を防ぎたいと思うのが人は多いのではないでしょうか。

アメリカでは「微量アルブミン尿」の検査が一般的に行われていて、糖尿病から腎症に移行する患者が減少傾向にあります。

この「アルブミン」がごくごくわずか尿に出た段階で糖尿病性腎症の治療を開始することが重要なのです。

<腎不全が合併した糖尿病>

糖尿病がある方が腎不全になってしまうと糖尿病と腎臓病に配慮した食事を摂らなければならないので食事療法が難しくなります。

腎臓が機能しないことで血糖値も不安定になりやすく、さらに心臓疾患や脳血管疾患を併発するリスクも高くなってしまうので、腎不全が合併した糖尿病は管理が難しいのです。

 

糖尿病性腎症の予防

糖尿病は自覚症状がほとんどないまま進行します。

自覚症状がなくても健診を受け糖代謝異常があったら受診して、食事や運動に気を付け適宜治療を受けて血糖コントロールを良くすることが何より大切です。

糖尿病と同様に腎臓の病気も自覚症状はほとんどありません。

高血糖はもちろん高血圧、高コレステロールなど腎臓に負担をかけている可能性がある場合には積極的に尿中のアルブミンなどで腎臓の状態のチェックをしてもらうことが大切です。

最近では、糖尿病性腎症などの慢性腎臓病があると心臓や血管の病気になりやすく、心臓や血管の病気があると腎機能が低下しやすいという悪循環も指摘されています。

慢性腎臓病と心臓や血管の病気には「高血圧や慢性の炎症」や「交感神経の亢進」「血液量を調整する仕組みの異常」などの共通の原因があることもわかっているのです。

<末期腎症にならないために大切なこと>

糖尿病の合併症は血糖値を適切にコントロールすることで防ぐことができます。

それに加えて糖尿病性腎症では、微量アルブミン尿の時期に早期発見し食事療法に蛋白制限を加え、血糖コントロールや血圧の管理を徹底することで進行を予防させることが可能です。

治療の中には腎不全がある程度進んでしまうとできないものもあるので、早期発見、早期治療が何より大事だということを覚えておきましょう。

また、糖尿病の正しいコントロールを続けるようにすることが大切です。

 

まとめ

糖尿病性腎症は高血糖の状態が続くと腎臓の中の糸球体にあるごく細い血管がダメージを受けて起こる病気です。

腎臓は体の中の老廃物や塩分などの不要になったものを尿にして排泄する役割をしているので、腎臓が機能しなくなる「腎不全」になると命に関わります。

血管を外部の機械につないで腎臓の代わりをしてもらう透析を行わなければなりません。

糖尿病性腎症は尿にタンパクが含まれることで発見できますが、最近ではアルブミンというより細かいタンパクの粒子も検出できるようになり早期発見が可能です。

早期に発見し血糖コントロールを適切にしていくことで糖尿病性腎症の進行を食い止めることができます。

 

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木村 哲也

木村 哲也

株式会社イコールヒューマン代表取締役。生活習慣病の権威者である崇高クリニックの荒木裕院長と提携し、主に生活習慣病に関わる様々な情報を広く分かり易く提供中。

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