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癌の再発が起こるのは「がん幹細胞」の所為!?

 2018/05/31 生活習慣病
この記事は約 11 分で読めます。 1,702 Views

「がん幹細胞」ということばはご存知でしょうか?

身体の中にできたがんの組織の中にあって、その組織自体を支配しているような恐ろしい力をもった細胞です。

治ったはずのがんが再発するのは、この「がん幹細胞」の能力のせいだと聞いたら、どんなイメージを持つでしょうか?

普通のがん細胞との違いは?
どうしてがんの再発に影響するの?
そもそも癌の再発って、どのくらい起きるものなの?

そんな疑問について、あれこれ調べてみたいと思います。

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治療後に癌が再発するケースも少なくない

早期発見、早期治療で癌は治せる、と盛んに言われ、”癌になったらもう助からない”という時代ではなくなりました。

もし癌が発見されたとしても、現代では状態に合わせてさまざまな治療をすることが可能になり、根治をめざすこともできます。

ただ、そんな時代になっても、癌の再発は相変わらず無くなりません。

治療が終わり「がんは完全に消えましたよ」と言われても、何年かするとまた新しいがんが出来て再発ですと言われるケースは決して少なくありません。

癌の再発というのは、消えたはずのがんがまたできていたり、最初とは別の場所に同じがんができたりすることです。

最初にできたがんを手術で取り除いたとします。

ところがそのときには全てきれいに切除できたように見え、もうどこにもがんがない状態だったはずなのに、数年するとまた新たにがんが見つかります。

これは手術のときに取り切れていなかった、その段階ではまだ全く目に見えなかったような小さながんが、数ヶ月から数年という時間とともに成長し、増殖していくからです。

抗がん剤での化学療法や放射線療法での治療も同じことが言えます。

そのときは治療の効果があがって縮小したはずのがんが、再び大きくなったり、別の場所に移動して出現したりします。

残っていたがんが血液やリンパに入り込んで、別の臓器や器官に引っ越し、新しい場所でまた大きくなったり増殖したりする転移先での再発もあります。

いったん根治したと言われたがんが、再び自分の体内で息を吹き返したというのは、患者さんにとってどれだけ大きなショックとなるかは、当事者以外では計り知ることができません。

しかし、がんの種類によって再発の確率や転移の起こる場所は想定することができ、治療後も長年にわたって経過観察を続けていくのは普通のことです。

5年生存率、10年生存率ということばがごく普通に使われることでもわかるように、癌治療後の再発は珍しいことではありません。

そして再発を認めたときには、すでに他の場所への転移も広がっている場合もあり、根治を目指す治療ではなく、緩和ケアの対象となってしまうこともあるのです。

がん患者さんは癌を克服して治療を終えたあとでも、何年もの間再発の恐怖と闘い続けなければならないというのが、現在のがん治療の現実です。

 

再発するのは「がん幹細胞」があるから

ここまでもお伝えしたとおり、再発を完全に防ぐことは非常に困難なのが、現在のがん治療です。

がんの種類とステージによっては、再発する率が9割というものもあるのです。

ところがここ数年、がんの再発と防止について新しい考え方が生まれ、世界中で研究が進められています。

それは「がん幹細胞」が再発の元凶となっているのではないか、というものです。

私たちの身体を構成しているさまざまな細胞の中には、自己を複製する能力とさまざまな細胞へと分化する能力を、両方兼ね備えたものがあります。

これが「幹細胞」と呼ばれる、特別な細胞です。

この幹細胞はがん組織の中にも存在し、がん幹細胞と呼ばれています。

がん幹細胞はがんの塊の中にわずか数パーセントしか存在していませんが、まだこれを確実に消滅させる方法は見つかっていません。

他のがん細胞と違って、抗がん剤が非常に効きにくいという特徴を持っているのです。

抗がん剤を投与すると、普通のがん細胞はどんどん死滅して消えていくのですが、がん幹細胞はダメージをあまり受けずにそのまま残ってしまいます。

そして残ったがん幹細胞が、また新しいがん細胞を作り続けます。

そのためがんがどんどん増殖して、やがて再発へと繋がるのではないかと考えられるようになりました。

これが「がん幹細胞説」で、この説は有力視され世界中でがん幹細胞を死滅させるための研究が進んでいます。

がん再発のメカニズムは、複雑な仕組みが幾重にも張り巡らされた迷宮のようなもので、”これが原因”といい切れるものはまだありません。

しかし世界中でさまざまな研究が進められている中でも、がん幹細胞が関連しているというこの説はがん治療における画期的な発見となっています。

もちろんがんが再発する課程には、がんの種類やステージ、治療の内容、患者さんの体質など個々の違いが大きく関係していますので一概には言えませんが、がん幹細胞を効率よく攻撃する方法が見つかれば再発の確率はかなり低くなることが期待できるかもしれません。

がん幹細胞の性質についての研究は世界中で行われていますし、すでに一部の臨床実験も開始されています。

がんの再発を予防できる治療薬の誕生に大きな期待が寄せられています。

 

がん幹細胞とがん細胞は別物

「がん幹細胞」という名称だけを聞くと、がん細胞と何が違うのかと思う人もいるかもしれませんが、ここまでご紹介してきたように、この2つは全く違うものです。

がん幹細胞が分裂してできるのががん細胞で、がん組織はがん幹細胞と通常のがん細胞からできていることはほぼ間違いないと考えられています。

がん幹細胞は自分と同じものを複製する能力とともに、抗がん剤や放射線治療の攻撃を受けて死滅したがん細胞と同じ細胞を、複製することができる能力を持っています。

普通のがん細胞にはそのような力はありませんので、がん組織の中に約1パーセントかもしくはそれ以下と、ほんの少ししかないのにも関わらず、その組織の影の支配者のような権力をもっているのが幹細胞です。

働き蜂と女王蜂に例えられることもあるほど、その違いは明白です。

がん幹細胞と普通のがん細胞の最大の違いは、抗がん剤や放射線で死滅させられるかどうかです。

無防備ながん細胞は攻撃されるとどんどん死んでしまうのですが、自分の身を何重もの鎧で守っているがん幹細胞の方は簡単には攻撃に屈しません。

そうして他のがん細胞が全ていなくなってしまったあとも、自分だけは生き延びてまた新しいがん細胞を作ります。

このがん幹細胞の存在を確認できるまでは解決の糸口を見つけるのに難航していたがん再発の問題にも、新しい切り口からのアプローチが試みられるようになっています。

ただしこのがん幹細胞の堅牢な守りを崩して攻撃する方法は、まだ確立されていません。

がん幹細胞の詳細なデータを得るための解析等のためには、がん組織の中から幹細胞のみを取り出すことが必要ですが、そもそもの存在比率が極端に低いため、今のところはまだその方法が見つかっていないという事情があります。

他の方法を応用して得たデータで、白血病の研究においてはかなり研究が進んでいますが、固形がんについてはまだまだデータも不十分で、実験や研究はこれからという段階にいます。

こうしたさまざまな困難が山積しているがん幹細胞の研究ですが、多くのがん患者さんやその家族、友人をこれまで苦しめられてきたがん再発や転移の恐怖から救い出してくれる、希望の光であることには期待しても良いのではないでしょうか。

 

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がん幹細胞の仕組み

がん幹細胞は、がん組織のかたまりの中にわずか数パーセントしか入っていない特別な細胞なのですが、がんの治療にとってはまさにカギを握る注目の存在です。

がん幹細胞には、他の大半を形成するがん細胞とは違う、次のような特徴があります。

・その細胞(ここではがん細胞)の元となる、遺伝子が変異した最初の細胞である

・分裂して自分と同じ細胞を作り出すことができ、それは永続的に続く

・いろいろな細胞に分化することができる

・分裂が遅く、従来の抗がん剤では効果が届きにくい

・冬眠状態のように休んでいる期間と分裂を繰り返す活性気があり、冬眠状態では抗がん剤は効かない

・細胞のアポトーシス(自死)を防御する機能がある

つまりがん幹細胞は、そのがん組織の元々の親玉であり、分裂して次々と新しい分身であるがん細胞をいつまでも作り続けることができる、ほぼ無敵の存在だということです。

抗がん剤で仲間の細胞を全て打ち砕かれたとしても、また新しい仲間を次々と生み出すことができるというのですから、こんなに恐ろしいものはありません。

これまではがんというのはあるとき正常な細胞の遺伝子に傷がつき、がん細胞へと変化するのだと考えられてきました。

そしてその細胞自体が分裂を繰り返し、大きながん組織を作ると思われていたのです。

ところが実はがんの元となる幹細胞があり、それが新しいがん細胞をどんどん生み出しているというのが、近年話題となっているがん幹細胞の仮説です。

しかもこのがん幹細胞はいつも活動しているわけではなく、じっと眠っている時期が長いため、いつ分裂を始めるのかがわかりづらく、攻撃したい側からするとそのタイミングが難しいという厄介な側面も持っています。

また分裂の速度自体も遅く、もともと分裂が早い細胞を標的として作られたこれまでの抗がん剤では、がん幹細胞には効果が弱いということもあります。

このように抗がん剤が効かない細胞であるということが、がん再発を防げないひとつの理由だとして、がん幹細胞を攻撃することができる抗がん剤の研究開発も急がれています。

さらにアポトーシス(細胞の自爆死)を防御する力が強く、総じて自分を守る能力に優れている細胞だということができます。

こうしたがん幹細胞のしくみが解き明かされていくことで、がん治療の可能性が大きく広がっていくことは間違いないでしょう。

 

これからのがん治療の変化

国民の3人に2人は癌になり、2人に1人は癌で死亡すると言われている現代の日本では、どのように癌の治療と向き合っていくかということは、人生の大きな課題の一つと言えるのではないでしょうか?

癌を発症した年齢、癌の種類や抱えている事情などで、その内容は一人ひとり大きく違ってきます。

癌はすでに治る病気になったと言われる現代、三大療法はやはり根治を目指した手術や放射線療法、化学療法になるでしょうが、心配なのは再発です。

消化器系の癌では治療後に再発する割合は、なんと9割にもなるといいます。

しかしがんの治療法も日進月歩で、今回ご紹介したようにがん再発の原因を探し、新しい治療法の確立のために努力を重ねている医師は数多くいます。

2017年、がん幹細胞に関する新しいニュースがありました。

岡山大学の研究グループによって、癌組織の主体となる細胞、「CAF」をもがん幹細胞は作り出すことができるとわかったことが明らかにされたそうです。

CAFはがん細胞の成長を促す物質を生み出す、増殖のカギを握ると言われている物質ですが、これまではがん幹細胞との関連性は考えられておらず、どのように作られるかのメカニズムについても、詳細は不明だったということです。

これでますますがん幹細胞の研究が前に進みそうです。

このように海外でも国内でも研究や実験、臨床を重ねながら、より良い治療をするために日々患者さんと向き合っている医師も大勢います。

私たち患者の側も、自分の治療は自分で選択する時代です。

手術はどうしても必要でしょうか?

もし再発したら治療には何を望むでしょうか?

治療方針や期待できる効果、メリットやデメリット、何なら我慢できて何を我慢できますか?

化学療法はどんなものを受けたらよいでしょう。

自分の希望はしっかりと医師に伝え、そのためには自分でももっと癌について学び、知ることが大切になります。

がんの治療を医師任せにする時代は終わりました。

納得がいかないときはセカンドオピニオン、サードオピニオンも遠慮せずに受けるべきではないでしょうか。

大切な自分や家族の命や未来を、自分の意志で守っていきましょう。

 

まとめ

癌の発症も、消えたはずの癌の再発も、決して自分とは関係ない他人事ではありません。

現実問題として、新しい研究結果が発表され、多くの人に有効な治療法や薬があっても、国に認可や承認を受けられるまでには何年もの時間がかかります。

未来に希望を持ちつつ、今現時点で受けられる最適な癌治療についても調べておくことは大切です。

 

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株式会社イコールヒューマン。生活習慣病専門ライター。医療や医薬品に関する誤解を解き明かしながら、真実を追求した記事を提供中。

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