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躁うつ病 ~うつ病の2つの状態を持つ心を「認知行動療法」で認める~

うつ病と言えば心の風邪ともいわれる精神的な疾患の一種であり、ストレス社会とも呼ばれる現代においては特に珍しい病ではなくなってきています。

ひと口にうつ病とまとめられることの多い病気ですが、詳しく見ると症状によって2つのタイプに分類されることをご存知でしょうか。

ここでは、うつ病の2つの状態を持つ躁うつ病(双極性障害)について、また躁うつ病、うつ病など精神疾患に有効な認知行動療法について詳しく解説します。

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うつ病と躁うつ病

1つ目はひどく気分が落ち込んだ状態が長く続き、それまで好きだった趣味や楽しいことすら取り組む気力がなくなってしまう一般的なうつ病です。

こちらのタイプが一般的で患者数も多く、社会での認知度も広まっています。

2つ目は「躁うつ病」と呼ばれる症状で、落ち込んでいたと思ったら次の日には非常に明るく、むしろ明るすぎて手が付けられなくなるほどの躁状態に陥るなど、うつ状態と躁状態の2つの状態を繰り返すという症状です。

一般的なうつ病とは異なり、一見すると非常に元気な人に見えるため、うつ病の一種だと認知されず都合の良い時だけ落ち込んでみせる怠け癖だと誤解されることが多く、患者が孤立感や苦しみを深めてしまうことも珍しくありません。

躁うつ病は「双極性障害」とも呼ばれ、一人の患者が2つの状態の心を併せもってしまうことで発症します。

自分の意志では2つの状態を自由に切り替えることはできず、どちらかが心を占領してしまうと、その状態に過剰に突っ走ってしまうことになります。

例えば、一度うつ状態になれば、世の中のなにもかもが嫌になったり自分には生きる価値がないなど、全てを悲観的に考えすぎて落ち込み、無気力状態になってしまいます。

ところが、翌日には意志とは関係なく心が躁状態へと切り替わり、訳もなく幸せで楽しい気分になって周囲にも過剰に干渉したりおしゃべりになったりします。

このような心の切り替わりが数日あるいは数週間ごとに起こり、めまぐるしく行き来することで心がますます疲弊してしまい、自分だけでなく周囲の人々にも悪影響を振りまいてしまうようになるのです。

一般的なうつ病より対応が難しいとされることも多く、もし躁うつ病と診断されれば早めの治療が必要になります。

 

2つの状態を繰り返す躁うつ病の治療法

気分の高揚と落ち込みという2つの状態を繰り返す躁うつ病は、決して治らない病気ではありません。

近年では治療薬の開発や治療法の発展も進んでおり、一生病気に悩まされ続けるのではなく、うまく病気と付き合いながら症状を軽減させることも十分可能なのです。

躁うつ病の治療法としてはいくつか考えられますが、診断された場合にまず医師がすすめるのが医薬品を用いた投薬治療です。

心の安定に効果のある医薬品を継続して使用していくことで、少しずつ心が高揚したり落ち込んだりというギャップの幅を小さくしていくことができます。

心にある2つの状態の差をなくしていくことで安定させ、一般の人と同じようなレベルまで落ち着かせることになります。

使用される医薬品としては「精神安定剤」「向精神薬」などと呼ばれるものが多く、心が一気に高揚してしまうのを抑えて落ち着かせたり、落ち込んだ気分を向上させる作用をもっています。

詳しく言うと、脳の中に張り巡らされた神経細胞に存在する神経伝達物質の量を正常に近づけることで、気分の高ぶりや落ち込みを抑えることになります。

これらの医薬品は服用すればすぐに効果が得られるというものではなく、医師が決めた量を毎日継続して服用し続けなければ十分な効果を得ることはできません。

医薬品の種類によっては体質に合わないものもあり、効果や副作用の大きさには個人差があります。

このため自分の判断で服用する量を変えたり勝手に止めたりせず、必ず専門のクリニックを受診して医師の指示に従って使用することが大切です。

 

躁うつ病の原因とは?

躁うつ病を引き起こしてしまう直接的な原因は、脳内の神経伝達物質の分泌異常にあります。

ただ、このような異常を引き起こしてしまう更なる原因が他にあることも多いのです。

例えば、毎日職場で仕事内容や人間関係で過剰なストレスを受け続けていた場合、ストレスによって「自律神経」や「ホルモンバランス」などが乱れ、身体の様々な部分に不調が現れることが知られています。

この状態が酷く且つ長く続くことで徐々に脳内の神経伝達物質にまで影響を及ぼし、最終的に躁うつ病を発症してしまうことがあるのです。

つまり、躁うつ病になるのは決して体質や自分の行動のせいだけとは限らず、周囲の環境にも大きく影響を与えられていると言えるのです。

病気を適切に治療していくためには、自分自身と周囲の環境を切り離すことなく一緒に検証し、医薬品だけに頼るのではなく心理的な面や社会的な面から同時に治療を進めていく必要があります。

 

躁うつ病の治療法、認知行動療法とは?

医薬品以外の治療法として非常に重要になってくるのが、「認知行動療法」というものです。

これはその名前の通り、自分の心の状態や周囲の環境、その関係やそれが及ぼす影響などを正しく認知するとで修正を行い、心の状態を落ち着かせてコントロールできるようにしようという方法になります。

人間であれば、誰でも大なり小なり認知する力に偏りが存在します。

例えるなら、ある食べ物を見た時に美味しそうだと感じる人もいれば、不味そうで見たくもないと感じる人もいます。

単に好みの違いのようにも見えますが、実はそれも認知の異なりによるものなのです。

同じ一つの物事を取ってもどのように感じるかは個人差が大きいということになり、決してそれが悪いことや間違っているという意味ではありません。

認知の異なりはその人の性格や魅力にも繋がっており、人間の数だけ認知の方法も存在すると言えます。

ただ、中にはこのような認知の異なりや偏りが非常に大きく、過度に落ち込んだり高揚するのを止められなくなる人もいます。

躁うつ病になりやすい認知の傾向として、例えば職場や学校で目上の人から怒られてしまった時の考え方が挙げられます。

怒られた際、自分はなんてダメな人間なんだと落ち込む人や、反省はするものの長々とは引きずらない人、怒られることで次は絶対に失敗しないように向上意識を持つ人などがいます。

心理的な面から見た場合、心の安定を得やすいのは当然引きずらない人やポジティブ思考の人です。

これに対して、落ち込む人は他のことに対してもやる気を失うなどの悪循環に陥りがちです。

認知行動療法は、このように心理的にネガティブな影響を及ぼす認知の傾向を発見し、それをダメージが少ないように修正していくことを主な目的としています。

 

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認知行動療法の根幹、自動思考とは?

認知行動療法を行う場合、まずはその人の「自動思考」というものを判別していきます。

自動思考とは、特定の状況になった時に特に意識せず自動的に浮かんでくる考えのことを指し、ポジティブ思考やネガティブ思考などと呼ばれる考え方も自動思考の一つになります。

この自動思考によって心理的に不安定になってしまうような傾向がないかをチェックし、もし見つかればそれを修正していきます。

修正した考え方を毎日の生活の中で実践するよう心がけ、うまくいけば、今後もそのまま継続して自分本来の考え方として定着させます。

うまく実践できなかった場合はその理由を考え、さらにその原因を修正して新たに実践していくことになります。

こうすることで躁うつ病になっている自分の状態を客観的に見ることができ、高揚と落ち込みという2つの状態の心が存在することを自覚できるのです。

自覚できれば、それぞれの状態に合わせた考え方を行えるようになり、気分の安定や自動思考の改善にも役立ちます。

ただ、専門知識のない一般の患者が自分で自分の自動思考を判別するのは非常に難しいため、知識や経験が豊富な専門の医師やカウンセラーなどと一緒に治療を進めていく必要があります。

思考傾向のチェックや修正、実践や定着はすぐに結果が出るものではなく、ある程度の効果を得られるまでには時間がかかります。

医師任せでは意味がなく、患者が自分で積極的に努力していく必要もあるので大変ではありますが、思考の傾向という躁うつ病に直結する根幹を治療するのに非常に有効な方法になっています。

 

認知行動療法の2つのメリット

認知行動療法を行う場合、根本的な原因となる考え方を修正できるという点の他にも様々なメリットがあります。

<メリット1>

1つ目は、医薬品に頼ることなく、それと同等の効果を得られるということが挙げられます。

しっかりとした訓練を受けた専門家のもとで実践していけば、精神安定剤などの医薬品に勝るとも劣らない成果を上げられます。

医薬品は高い効果を得られる代わりに依存性や副作用などのデメリットもあり、長期服用を不安視する患者も多くいます。

この点、認知行動療法であればうまく効果を得られれば医薬品の量を最低限に抑えることもでき、身体への負担も小さくて済みます。

医薬品とは作用やメカニズムが異なることもあるので完全に医薬品をなくすというのは難しいですが、うまく組み合わせて使うことで高い相乗効果を得ることもできます。

<メリット2>

2つ目は、躁うつ病の再発予防効果が高いという点です。

この療法は患者の思考傾向などをチェックし、心理面に悪影響を与えそうな部分を修正していきます。

この修正がうまくいけば、療法を終えた後でもその効果は消えることなく患者に根付いていきます。

この点が服用を止めれば効果もストップしてしまう医薬品を用いた治療との最大の違いであり、再発の予防としても大きな効果を得られるのです。

医薬品はあくまでも薬の成分によって脳内の神経伝達物質を安定させ、気分を落ち着かせているに過ぎません。

症状が改善したからと言って薬を止めたり量を減らしてしまえば、ふとしたきっかけで再発してしまうことも十分考えられるのです。

将来的な躁うつ病の再発予防に取り組みたい場合は、投薬治療だけでなく根本的な思考の改善を図れる認知行動療法を実践するのが最適なのです。

 

広がりを見せる認知行動療法

躁うつ病の治療として、認知や自動思考の傾向を修正していくのは非常に有効な手段です。

できれば躁うつ病と診断された患者は積極的に実践していきたいところですが、実際には効果を得られるまでに時間がかかることや治療にある程度のお金がかかること、治療を実施している専門家や医療機関がまだまだ少ないことなど問題点もあります。

これらの問題点はすぐに解決できないことも多く、認知行動療法が投薬治療ほど普及していない原因にもなっています。

ただ、認知行動療法の有益性は広く認識されつつあるので、こういった問題点も将来的には徐々に改善していくと見込まれています。

実際に都市部を中心としてこの療法を取り入れた医療機関やクリニックも少しずつ増加傾向にあり、特別な訓練を受けた精神科医が実践する場合は保険適用となるため費用も安く済ませられるケースもあります。

現在では心療内科などにかかる患者数が増えていることもあり、じっくりと時間のかかる認知行動療法を行う余裕がない医療機関も多いのですが、以前と比べれば認知行動療法を受けやすい環境になってきています。

 

認知行動療法を行っている医療機関の探し方

実際にこの療法を試してみたい場合は、まず躁うつ病を治療してもらっている主治医に相談するようにしましょう。

主治医が実践していれば理想的ですが、対応していない場合は適切な専門医やカウンセラーなどを紹介してもらうこともできます。

本格的で効果の高い療法を行ってもらうためには専門医を探した方が良いですが、近所になかったり費用が心配という場合は、簡略的な療法を実践してもらえないか主治医に頼んでみましょう。

例えば、躁うつ病の診察中に毎回短時間でも良いので簡単な自動思考チェックや修正をしてもらう、という内容であれば主治医の負担も少ないので了解してもらえる可能性は高いです。

余りに短時間では適切な治療にならないので、患者が多く忙しいクリニックなどでは難しいこともあります。

その場合は、比較的余裕があってじっくり患者の話を聞いてくれるようなクリニックを探すことも大切です。

インターネットで探せばクリニックごとの特徴や評判なども簡単に調べることができるので、時間や費用の節約のためにもできるだけ事前調査を行ってから新しいクリニックへ行くようにしましょう。

 

まとめ

専門家のもとで理想的な認知行動療法を行うことができれば理想的ですが、それが難しい場合は上記の方法や本などを使って実践してみることもできます。

患者によっては短時間や自分で行う認知行動療法でも十分効果を得られる人もいるので、最初から諦めるのではなく、とにかく試してみることが大切です。

うつ病や躁うつ病を克服するのは非常に困難を伴いますが、決して治療できない病気ではないので希望をもって取り組みましょう。

 

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木村 哲也

木村 哲也

株式会社イコールヒューマン代表取締役。生活習慣病の権威者である崇高クリニックの荒木裕院長と提携し、主に生活習慣病に関わる様々な情報を広く分かり易く提供中。

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