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菜食主義・ベジタリアン・マクロビオティックは本当に健康的?

 2016/12/12 生活習慣病
この記事は約 10 分で読めます。 5,439 Views

「菜食主義」「ベジタリアン」「マクロビオティック」と聞けば、健康的な食生活をしている人あるいは健康志向の強い人というイメージがあるかもしれません。

国内外を問わず、誰もが知っている著名人の中でも実践している人は多いです。

また、著名人や身近な人が菜食主義だと知ることで、自身も興味を覚え傾倒していく場合もあるでしょう。

ただ、一言で「菜食主義」といっても実際は一様ではありません。

ここでは、菜食主義とはどのようなものか、栄養学的に本当に健康的なのか、世界中でこれまでにどのような研究が行われてきたのか、といったことをご紹介します。

特に「極端な菜食主義」については、一般的にはあまり知られていない「見過せない事実」もあるでしょう。

ぜひ参考にしてみてください。

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初期人類

菜食主義は社会的風潮であって、生理学的=健康の為の考えではありません。

解剖学的・生理学的に云うと、人類の消化器系はどちらかと云えば肉食用に出来ていて、やや草食も可能であるように造られています。

さらに言えば、地球上の全ての人類の食事調査から、過去から現在に至るまで少なくても動物性脂肪と動物性タンパクを好んで食べ、完全な菜食などありえません。

古代人類学研究によると、人類が地球上に出現したのは300~400万年前と考えられています。

400万年以前から現在に至る間の99%の長い年月を我々人類は主として狩猟で動物を捕まえてそれらを食し、動物が捕まえられない時には草類をたべて過ごしてきました。

アウストロピテシンシスの時代から農業を始めるまでの間、人類は徐々に効率の良い道具を作り出し、農作物の収穫量を増やしたり動物類を捕まえ易くしたりして発展してきました。

ホモエレクタスの時代になると益々大型動物を追い求めるようになり、ホモサピエンスや後期石器時代になるとその傾向は一層顕著になりました。

食べる狩猟獣の種類が定住生活の形態を決定づけました。

人口増加やそれによる狩猟動物の減少が、人類発祥の地であるアフリカを離れる引き金となり、狩猟動物を求めて遥か遠方のアジア・アメリカ・ヨーロッパ・オーストラリアに人々が住むことになったのです。

1万年前狩猟できる動物の数が減少して行き、その一方で人口が増えていったため、まず動物を飼育して数を増やすために農業を始めたのです。

 

宗教とダイエット

人々が農業の為に定住生活をする様になるにつれ、肉食を禁ずるという事が
幾つかの宗教教団(ヒンドゥー教)で教義の一部として取り入れられる様になりました。

たとえば古典的なヒンドゥー教やジャイナ教では厳密な菜食ですが、人類学者マービン・ハリスが云う様に、初期の頃のヒンドゥー教はむしろ肉食だったのです。

後になり肉食禁止がバラモン教から、ヒンドゥー教全体に広がって行きました。

この様な食肉禁止は、人口増加した為に動物の数が減少した為ではないかとマービン・ハリスは述べています。

牛は価値の高い役畜であり、ミルクや料理用燃料として糞が役に立ち、非常に栄養価の高い食料としての供給源なのです。

実用的な理由からある種の動物を食べる事が禁じられているのは、実用的な観点からであり、食肉禁止が宗教教義として定義づけられている為、人々に受け入れられるのだろうとマービン・ハリスは推測しています。

今日ある種の菜食主義を唱えているのは、一部の仏教やセブンアドベンチスト教・ローマキャソリック教のトラピスト修道士達です。

宗教的な観点にもとづく菜食主義は、自然との調和をはかる事や精神的なことなどでしょう。

 

現代の菜食主義

1960年代になり急速に広がった菜食主義の始まりは西洋社会からです。
はじめのうちは宗教とは関係がありませんでした。

新しく菜食主義を唱えだした人達は、飼育動物・環境問題・飢饉のことから、心血管障害・癌などの原因と云われているコレステロール・脂肪まで幅広い分野に至るまでの問題を菜食主義と結びつける様になったのです。

菜食の仕方にもかなりのバリエーションがあります。

最極端な菜食主義者は、動物性のものは一切たべず、穀類・野菜・果物のみを食べます。
彼らの主義主張は食べ物だけに留まらず、日常生活にまで及びます。

動物から得られるものを材料とする衣服類、羊毛・絹・皮革・毛皮・真珠などは一切身に着けません。
また、動物油脂で出来た石鹸や動物の毛を使ったブラシも使いません。

そこまで極端でない菜食主義の人には、動物製品として牛乳だけは飲む「ラクトベジタリアン」や、卵だけは食べるという「オボベジタリアン」、鳥類ならOKという「ポロベジタリアン」、魚だけを食べる「ペストベジタリアン」など様々な菜食主義者が混在しています。

 

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極端な菜食主義と健康

極端な菜食主義者の代表的な一つが、禅の修行僧が行う精進料理です。

この様な菜食主義が西洋社会で流行りだしたのは、1960年代になってからですが、菜食主義者が癌で死亡して以後、廃れてきています。

日本では遅れて流行りだした訳です。

菜食主義は、仏教や中国の陰陽説に基づいた生活感に端を発しています。

菜食主義(マクロビオティック)の素となっている考えは、病気は陰陽のバランスが崩れた時に起き、バランスが整えば健康になれると云うことです。

10種類ある事細かく決められた食事法に従わなければならず、最も厳しい食事メニューは、ブラウンライス・塩・お茶のみで過ごすことです。

この最も厳しい段階にまで来れば、病気から完全に解放され精神的にも安定するそうです。

1967年クリスターギュが著書「死のダイエット」のなかで、マクロビオティックの最終ステージに到達した若いカップルの悲劇を描いています。

男性の方は殆ど死にかけ、女性は死亡してしまったのです。

彼女の死亡診断書には、死因として総体的なビタミン・タンパクの不足による衰弱死と書かれていました。

殆どのベジタリアンは、主要な栄養素の欠乏、特に「ビタミンB12」が決定的に不足しています。

「ビタミンB12」は動物性食品にしか含まれず、野菜・穀類にはほぼゼロです。

ビタミンB12不足による症状を覆い隠してしまう「葉酸」が、野菜類にはたくさん含まれています。

農作物を育てるために以前は、人糞を腐敗・発酵させた物を肥料として使っていました。

人糞の中には、腸内細菌が作り出すビタミンB12が含まれ、それを作物が吸い上げることにより、多少なりともビタミンB12も有ったのですが、現在では人口肥料を使用しているため全く含まれていません。

ベジタリアンの人達は、ビタミンB12の供給源として「スプルリナ」を食しますが、スピルリナに含まれるビタミンB12の類似体は、かえってビタミンB12本来の働きを阻害するので実はもっと悪いです。

ビタミンB12の欠乏により、「巨赤芽球性貧血」を生じ生命が危険にさらされます。

1970年代半ばにイギリスに移住してきたヒンドゥー教インド人の間に、巨赤芽球性貧血が頻発しました。

興味深いのは、彼らは祖国インドに住んでいる間およびイギリスに移住してしばらくの間は巨赤芽球性貧血の症状が見られませんでしたが、長く住んで居る間に発症するのです。

彼らの食事はインドでもイギリスでも同じですが、違いは農作物の栽培法・加工法・包装などによるだろうと考えられます。

インドでは経費の掛かる農薬の使用は最小限に抑えられ、多くの農作物は虫喰い状態で、その卵や幼虫も付着しています。

これらがビタミンB12の供給源となっているのでしょう。

典型的な菜食主義では、ビタミンB12の不足に加え、必須タンパクを取ることが出来ず、また必要カロリーも満たす事が出来ません。
さらに「カルシウム」や「リボフラビン」も少ししか有りません。

緑黄色野菜にはカルシウムは豊富に含まれているかも知れませんが、食物繊維の為に吸収されにくいです。
また同様の理由で、亜鉛・リン・鉄など他のミネラル類も吸収されにくいです。

カルシウムはホウレン草やスィスチャードなどの緑黄色野菜に多く含まれますが、葉っぱに含まれるシュウ酸の為に、消化過程でシュウ酸カルシウムとなりそのまま糞便とともに排泄されてしまいます。

また、全粒粉パンの様な食品を多く食べると、大量に含まれるフィチン酸により、カルシウムの吸収が阻害されます。

同様に亜鉛の吸収も、野菜に多く含まれるフィチン酸やシュウ酸塩により妨げられます。

生理が正常にある為には、エストロゲンホルモンが必要です。

栄養が生理機能に与える影響は大きく、菜食主義の女性とそうでない女性を比較すると、生理不順は前者では26.5%、後者では4.9%となっています。

生理機能は明らかにタンパク・コレステロールの摂取量に左右されることがわかっています。

 

菜食と慢性疾患

アンセル・キーはダイエット特に、脂肪と心臓疾患や大腸癌との関係を示唆する報告をしています。

キーをはじめとしアンダーソン、グランド、コナー、ストーンなどがキーの見解に賛同しています。

これ等の人達が導き出した結論に対しては多くの反論があり、マン、エンストローム、クラウバー、ガードナー、イング等は研究結果からキーの説は間違っていると結論づけています。

確実な科学的証拠があるにもかかわらず、一般の人達は脂肪やコレステロールが豊富な卵や赤身肉を食べると心疾患や大腸癌になると信じ込んでしまったのです。

モルモン教徒は大いに赤身肉を食べますが、一般のアメリカ人に比べ全ての癌でその発症頻度は22%も低く、大腸癌では34%も少ないです(リオン等、1976年)。

また、プエルトリコ人は大量の豚の脂を食べますが、大腸がんや乳癌になる人は極めて少ないです。

西オーストラリアの調査・研究で、一般に云われている様な「高コレステロール血症は心臓発作に繋がる」と云う考えに「反した結果」が得られています。

母親と子供を三つのグループに別け、高コレステロール食・中コレステロール食・低コレステロール食を食べてもらいました。

3つのグループで毎日食べるタンパク・脂肪・炭水化物の量に差はありません。

血液コレステロールの量に違いはありませんが、心疾患に関してはどのグループにも同じ様に見られたと云う事です。

さらに「フランス人の逆説(French Paradox)」等と云われる、人々を混乱させる様な事実が明らかになりました。

それは、パスタ等のそれほどカロリーの高くない小麦粉製品やポテトなどを食べる「アメリカ人に肥満や心疾患が多く」、カロリーの高い動物脂肪の豊富なチーズやワインを食べる「フランス人に肥満や心疾患が少ない」事です。

フランス南西部のガスコニー地方の人達の食習慣が、10年間にわたり調べられました。

この地域は、コレステロールたっぷりのフォアグラの一大生産地で有名です。

ガスコニーの人達は、ガチョウやアヒルの皮にたっぷりとアヒルの脂肪を乗せたスナックを食べ、フォアグラは一般的なフランス人の2倍、アメリカ人の50倍食べるそうです。

ですが、フランスの中でも、最も心臓病による死亡が少ないのです。

ガスコニー地方では中年男性の年間の心臓疾患による死亡は10万人中80人ですが、フランスの他の地域では10万人に対し145人であり、アメリカ人では315人に上っています(オニール、1991年)。

 

まとめ

「菜食主義」「ベジタリアン」「マクロビオティック」という言葉は、すなわち「健康的」としてメディアで扱われますし、様々な広告で謳われます。

また多くの著名人が菜食主義であることも、その健康的なイメージをより強くしているのでしょう。

どのような食事をするかは人それぞれです。

ただ、「著名人の○○さんが菜食主義だから」「雑誌に書いてあったから」などと安易に実践するのではなく、菜食主義が本当はどのようなものか、ここでご紹介した様々な事実を知り理解したうえで考えてみることをお勧めします。

気になる人はぜひ参考にしてみてください。

 

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ライター紹介 ライター一覧

荒木 裕

荒木 裕

崇高クリニック院長。
1962年 京都大学医学部卒
1967年 京都大学医学部大学院卒
1968年 大阪北野病院勤務
1971年 アメリカハーバード大学付属 小児病院脳神経外科研修医
1973年 アメリカハーバード大学医学部 臨床栄養学部助教授
1976年 アメリカ国立公衆衛生研究所(NIH)客員研究員
1977年 アメリカサウスカロライナ大学 医学部勤務
1983年 崇高クリニック開設

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