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広がっていくのはなぜ…?癌の転移のメカニズム

 2018/06/10 生活習慣病
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医師からの癌の転移の宣告は患者さんにとってもその家族や周囲の人たちにとっても耐え難い苦痛であることは間違いないでしょう。

治療したはずの癌の転移がなぜ起こるのか、どのようにして癌は広がっていくのか、そのメカニズムは未だに明確になっていない部分もあります。

がん細胞はどうして増殖を続けるのか、それを止める方法はないのか癌の転移の経路や転移の種類、それぞれの場合の治療方針などについてもご紹介しています。

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癌細胞は異常に増殖する

がんは発症すると治りにくい恐ろしい病気ですが、その恐ろしさの原因は異常な自己増殖にあります。

私たち人間のからだは細胞でできていますが、正常であればその細胞は必要に応じて増えたり、必要がなければ増えるのを止めたり、角質のように古くなれば勝手に剥がれたりしています。

細胞は、私たちの身体の正常な状態を維持するために、ちょうどバランス良く調整をするようにできているのです。

ところががん化した細胞は正常細胞とは全く違います。

こうしたバランスを保っている身体に備わった監視の目をすり抜け、勝手に増殖したり別の場所に移動したりして、さらにそこでもさらに増殖を続けます。

まるで無秩序にやりたい放題です。

こうした細胞ができてしまうのは、何かのタイミングで遺伝子に傷がついてしまうからです。

傷がついたからといってすぐにがん化するわけではありませんが、2個~10個の傷がつくことによって何年もの長い時間をかけてゆっくりとがん細胞になっていきます。

そして遺伝子に傷がついた異常な細胞は、通常の細胞が守っているコントロールの力が及ばないことになり、勝手に増殖を繰り返すようになるのです。

こうした異常な細胞が紛れ込んでいても、健康なときならリンパの働きがこうした細胞を排除してくれます。

ところが細胞の増殖のスピードが早すぎると、リンパの機能が追いつかなくなってしまいます。

つまり健康状態がおもわしくないとき、免疫機能が落ちているときなどは、がん細胞の侵食を見逃してしまうことが多くなります。

またがん細胞が元気すぎて、どんどん増殖するときも、リンパのチェック機能が間に合わなくなってしまいます。

さらに癌細胞の怖い特色は、薬に強い耐性があるということです。

もともと増殖プログラムに異常が発生している細胞なので、抗がん剤などの薬が効きにくいのです。

そして抗がん剤投与のあとも生き残っているがん細胞が少しでもあると、自ら増殖プログラムを変容させて抗がん剤で自分が死なないようにしてしまうという賢い変身をします。

一度がんになってしまうと、それほどずる賢く、しつこい細胞に変わって私たちを苦しめるのががん細胞なのです。

そしてもう一つのカギはたんぱく質です。

身体が成長すると、新陳代謝が必要な上皮や、血液中の細胞以外はほとんど増殖しなくなりますが、それはたんぱく質がブレーキ係として働いてくれているおかげです。

ところががん細胞は細胞増殖因子を自ら大量に生産・分泌して、増殖プログラムに備わったブレーキを無理やり外してしまいます。

こうして異常な増殖を続けるがん細胞は、どんどん自分を大きくして、他の場所まで侵食していくようになってしまうのです。

癌の転移はこうして始まるのですが、やはり普段から食生活や運動、質の高い睡眠などの生活習慣の改善が、がん予防にも転移予防にも大切だということが言えそうです。

 

癌の問題は「増え続けること」と「体内で飛び散ること」

がんは発がん物質の影響などで遺伝子に傷がつき、異常細胞に変わってしまった正常でない細胞が増殖してできた集まりです。

しかし傷がついたくらいの異常細胞は、身体が健康であればリンパ球が排除してくれます。

普段はこうやって、がん細胞ができずに済んでいるのです。

ところが異常細胞がどんどんできてリンパ球の排除能力が追いつかなくなってしまうと、細胞は次第にがん化していき、身体の中で勝手に増殖を始めます。

異常に増殖したがん細胞は限度なく膨れ上がり、やがて周囲の正常な組織や臓器が圧迫されて、壊れたりつぶれたりするようになります。

もう一つ困ったことに、がん細胞にはとにかくエネルギーがあるのです。

がん細胞は正常細胞よりもずっと生命力が旺盛で、栄養分と酸素をとにかく大量に消費しながら増殖を続けていくのです。

その分栄養や酸素をがん細胞に横取りされた周囲の正常細胞は、栄養が摂れなくなって弱ってしまいます。

破壊と増殖を繰り返す、まさにデストロイヤーです。

また組織の一部はリンパの流れや血管に入り込んで、他の場所へと移動してそこに根付き、そこでもまた同じように増殖と破壊を繰り返します。

さらに怖いのは、細胞の一部が剥がれて、あちこちにパラパラと飛び散ってしまうことです。

これを「播種(はしゅ)」といいます。

まるでタネを畑に撒いたかのように、身体の中や腹腔、胸腔、などに落ちて広がります。

そして広がり落ちた細胞は、血管やリンパに乗って体中に広がります。

そうすると広がったがん細胞はまた違う場所で増殖を始め、身体のあちこちに癌の転移が進んでいくことになります。

体中に癌の転移が広がると、根治は難しく治療にも時間がかかります。

病巣を切り取る手術だけでは、治療ができませんので、抗がん剤の投与などが検討されると思います。

また、がんの怖いところは初期症状がほとんどないことです。

どこかがおかしいな、と気づいて病院を受診したときには、すでに病状がかなり進行している場合も少なくありません。

そうなる前に、定期的にがん検診を受けるようにしましょう。

 

癌細胞の塊から剥がれた細胞が、血管・リンパ管を通して身体を巡る

上でも説明したように、増殖したがん細胞が剥がれ落ちて体内のあちこちに撒かれる播種は、腹腔や胸腔などの膜を突き破って出たがん細胞が、体腔内でフラフラしながら他の膜に移植されて転移します。

がん細胞が勝手にバラバラになって、身体の中に体調不良が起き、転移した先ではまた大きながん細胞となって、別の場所に新しいがん組織を作り、正常な細胞を蝕んでいきます。

こうした癌の転移のループを、なんとかして止める手立てはないものなのでしょうか。

がんは一か所に固まってある間なら、場所にもよりますが手術で取り除くことができます。

しかし転移が始まってしまい、しかもそれが全身に広がったとなると止めることは本当に難しく、根治の可能性も低くなります。

やはり早期発見が全てと、現段階では言えるのかもしれません。

このがん細胞がバラバラになる仕組みというのは、実は人間がもともと持っているものだといわれています。

「上皮間葉転換」という仕組みで、この仕組と癌の転移のメカニズムが似ているのではないかと考える学者も増えています。

「上皮間葉転換」は受精卵から細胞が分裂を繰り返して、人の身体になっていく過程のことです。

その中では身体の各部分の素となる細胞が、ちゃんと本来あるべき場所に移動していきます。

胎児の細胞も、がん細胞と同じように、性質をその都度ふさわしく変化させています。

マウスを使った実験では、上皮間葉転換による癌の転移が確認されています。

この上皮間葉転換がどのようにして起こるのかというと、細胞に何かがスイッチを入れるからだといいます。

スイッチとなるのは体内にある化学物質で、この物質が受容体である細胞のたんぱく質と結合するとスイッチが入ります。

ただし物質があっても受容体となるたんぱく質がなければ、スイッチが入ることはありません。

このことを応用して、癌の転移を抑える新しい治療薬が生まれる可能性もあるということで、がんへの色々な面からのアプローチが可能になるのは希望が持てそうです。

 

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局所、領域、遠隔…転移の種類

癌の転移には「局所転移」「領域転移」「遠隔転移」の種類があります。

「局所転移」はがんが最初に発生した場所と同じ場所か、ごく近い場所に転移することを言います。

肝臓などは臓器の中でも最も大きな臓器で、同じ肝臓の中で何度か転移や再発を繰り返すこともあります。

また最初にがんができた原発巣の場所のすぐ近くに隣接するリンパ節などに癌の転移が起きた場合も、局所転移といいます。

乳がんの場合は「局所再発」といい、がんができて手術をした側の乳房や胸壁、周囲のリンパ節や皮膚にがんが再発することをいいます。

治療の方針としては、根治を目指し手術や放射線治療を行います。

また手術のあとに、薬物治療を行う場合もあります。

ただし再発までの期間が短いなど悪性度が高く、癌の転移の場所も広がっている場合は先に薬剤治療の方を行い、効果があれば手術や放射線治療を行います。

全般的に局所転移の場合は治療の効果も上がりやすく、予後も比較的良好だとされています。

「領域転移」とは、腫瘍が最初にできた場所の近くのリンパ節や組織で癌の転移が見つかったときに言います。

がんがどの程度広がっているか、どの程度進行しているかなどを検査することもあり、その上で治療方針を医師と本人との話し合いのもとで決めることが多いようです。

「遠隔転移」は最初にできたがんが進行して、血管やリンパにまで浸潤を起こしているようなときに、血管やリンパの流れに乗って癌の転移が起こることがあります。

この状態を遠隔転移といい、肝臓、肺、脳、骨のがんなどが比較的多いと言われています

遠隔転移があったときは全身に癌の転移があると考えられますので、身体への負担が大きい外科手術は行いません。

抗がん剤による化学療法を行いながら、緩和ケアに切り替えていく形になります。

乳がんで遠隔転移が見つかった場合にはがんを完全に治すことは難しいため、基本的には全身に効果がある薬物療法を行います。

また骨や肺、脳などに転移した場合には、それぞれに乳がんの治療と平行して特異的な治療を行う場合もあります。

 

リンパ行性、血行性、播種…転移の経路

癌の転移の種類とは別に、「リンパ行性転移」「血行性転移」「播種性転移」「クルッケンベルグ転移」、「接触性転移」という癌の転移の経路によった分け方があります。

「リンパ行性転移」とは、原発巣のがんが周囲のリンパ管に入り、リンパの流れに乗って途中のリンパ節に辿り着いて、そこで増殖するという転移です。

リンパ節転移には一定の規則性があり、近くのリンパ節から原発巣からは遠いリンパ節まで癌の転移が広がっていきます。

治療の方針は転移が広い範囲にわたっている場合は化学療法を行いますが、限られたリンパ節でとどまっている場合には放射線治療を行う場合もあります。

「血行性転移」とは、原発巣のがんが血液の中に入り込み血流に乗って肝、肺、骨などの遠い臓器に転移します。

治療は抗がん剤を投与することが一般的です。

抗がん剤はほとんどが水溶性なので、血液中にあるがんにはかなりの効果が期待できるとされています。

全身転移を意味することが多いですが、大腸がんの肝臓や肺へのがんの転移は、切除手術で完治することもあります。

「播種性転移」とは播種が原因で転移することをいいます。

胃がんなどで癌細胞が胃壁からこぼれ落ちると、癌性腹膜炎を起こし腹水がたまります。

肛門から指を挿入して行う直腸指診で診断できます。

肺がんでは胸腔内にこぼれて、癌性胸膜炎となり胸水がたまります。

「クルッケンベルグ転移」は、腹膜播種を伴わない卵巣転移のことです。

経路としては血行性転移やリンパ行性転移の可能性が考えられますが、はっきりとしたことはわかっていません。

「接触性転移」は、少し意外な転移です。

上唇と下唇が食事のときなどに接触すると、これを繰り返すことでがん細胞が着床する可能性があると考えられています。

この転移は推察の域を出ていません。

転移は非常にショックなことですし、いずれも辛い症状が続きますが、治療の方法はあります。

医師とよく治療方針を相談して、納得のいく治療を受けるようにして下さい。

 

まとめ

がんがこれほどまでに無秩序にただ強力なパワーをもって増殖を続け、他の臓器やリンパ、血管などへと広がっていくことを想像すると打ちのめされるような気持ちになることもあります。

しかし、がんがみつかったら徹底的に治療する、もしも治療後の癌の転移があったら落ち着いて医師や医療チーム、家族などの話しや提案を受け止めるなど前向きに治療方針を決めて治療を続けることが大切です。

転移があっても諦めてしまうのではなく、どこまでも自分らしいがんとの共存方法を考えてみるのも一つの方法かもしれません。

 

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ライター紹介 ライター一覧

木村 哲也

木村 哲也

株式会社イコールヒューマン代表取締役。生活習慣病の権威者である崇高クリニックの荒木裕院長と提携し、主に生活習慣病に関わる様々な情報を広く分かり易く提供中。

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