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喫煙が最大のリスクになる!喉頭がん

 2017/05/01 疾病・症状
この記事は約 11 分で読めます。 1,997 Views

タバコと聞けば「肺がん」を思い浮かべる人が大半ですが、肺がん以上にがんになるリスクが高いのが「喉頭がん」です。

喫煙者が「喉頭がん」になるリスクは、非喫煙者の20倍とのデータもあります。

近年は、音楽プロデューサーのつんく♂さんが喉頭がんになったことで認知度が上がったようです。

喉頭がんはどのような症状が出るのか、どのように辛いのか、どのような治療を行っているのか、治るのかなどを解説します。

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喉頭がんとタバコ

タバコを吸って「肺がん」になるリスクは、吸わない人と比べると男性は4.5倍、女性は4.2倍というデータがあります。

一方で「喉頭がん」は、タバコを吸う人はタバコを吸わない人の「約20倍のリスクがある」と発表されています。

タバコを吸うと、肺を通る前に喉頭を通るのですから、考えてみれば当たり前の話なのかもしれませんが、喉頭がんのことは意外と軽視・無視されているのではないでしょうか。

それは、知り合いや身の回りの人や有名人で肺がんになったと言う話はしばしば聞くけれど、喉頭がんになったという話はあまり聞かないからでしょう。

確かに、喉頭がんは肺がんや胃がんと比べると患者数は少なく、10万人あたり3~4人というデータがあります。

この数値は例えば、ドーム球場でプロ野球の試合が行われた時に、ほぼ満員の客席に自分1人しか喉頭がんの人はいない、という計算になります。

また、胃がん検診や肺がん検診、乳がん検診、子宮がん検診はあっても、喉頭がん検診はないということも認知度が低い一因でしょう。

近年は、音楽プロデューサーのつんく♂さんが喉頭がんになって、そのことをカミングアウトされたことで、少しは認知度も上がったようです。

生命保険会社のテレビCMでも、嵐の櫻井翔さんと「生きることを選んだ」と筆談されています。

つんく♂さんはタバコは吸っていなかったそうですが、喉頭がんになった人の90%は喫煙者だと言われています。

また、タバコを吸う人がいなくなれば、喉頭がんの95%はなくなるだろうとも言われています。

喉頭がんになるとどのような症状が出るのか、どのようにつらいのか、どのような治療を行っているのか、治るのかなど、喉頭がんのことをもう少し知って、タバコを止めるきっかけにしたいものです。

 

喉頭がんとは

喉頭は、咽頭と主に人ののどを構成する大切な器官です。

喉頭は、甲状軟骨(いわゆる「のど仏」)に囲まれた箱のような部分を言います。

下の付け根から気管につながり、肺へと続いています。

喉頭の後ろ側は食道で、内側は粘膜でおおわれています。

喉頭には、発声、誤嚥防止、気道の確保という3つの働きがあります。

喉頭には左右1対の声帯があって、肺からの呼気で声帯が震えて声が出ます。

人が食べ物を飲みこむときは、「喉頭蓋」がフタをして喉頭や声帯を閉じます。

こうしてフタをすることによって、食べた物はスムーズに食道へと送られていきます。

このフタがきちんとできなかった場合は、食べた物は肺へ入ってしまいます。

これを「誤嚥(ごえん)」と言うのですが、誤嚥が起きると激しくむせるだけではありません。

誤嚥性肺炎という肺炎を引き起こすことがあります。

高齢者の死亡原因の多くは、この誤嚥性肺炎です。

喉頭は、誤嚥を防いで誤嚥性肺炎を予防するという働きがあります。

そして、喉頭は空気の通り道でもあります。

酸素を肺まで送り届ける際の通路です。

このような働きがある喉頭にできた悪性腫瘍が、喉頭がんです。

喉頭がんは、声門がん、声門上がん、声門下がんの3つに分けられます。

声帯がある部分が声門で、それより上が声門上、下が声門下です。

喉頭がんの60~80%は声門がん、30~35%が声門上がんです。

声門下がんはかなり稀です。

喉頭がんは、がん全体の0.61%ほどと患者数が少なく、10万人当たり3~4人の発症率です。

50歳から80歳代くらいに急増し、男女比は、男性:女性=10:1と圧倒的に男性に多いです。

咽頭がんかな?と思ったらどこの診療科に行けばいいのか、それは「耳鼻咽喉科」になります。

まずは近くの耳鼻咽喉科を受診して、紹介状を書いてもらって喉頭がんへの対応が可能な病院を受診すると良いでしょう。

 

喉頭がんの原因

喉頭がんの原因は、タバコ、アルコール、アスベストなどの職業的な被爆、声の酷使、熱すぎる食べ物を飲食する習慣がある、遺伝などがあげられています。

しかし、喉頭がんの原因の90%はタバコだと言われています。

起床後30分以内に喫煙する人は、タバコを吸わない人の約32.5倍、喉頭がんになるリスクが上がると言う報告もあります。

また、20年以上、鼻咽喉科で多くの喉頭がんの患者さんを診療している医師の中には、「タバコを吸わない患者さんはまだ一人も経験していない」と言っている耳鼻咽喉科医も多いです。

タバコが喉頭がんの原因となっていることは、明らかなことです。

そして、タバコも吸うしアルコールも飲みます、となると、さらに喉頭がんを発症するリスクがアップします。

熱い食べ物も原因としてあげられていますので、熱燗で熱いおでんを食べながらタバコを吸ってなどとなると、ますますリスクが高まります。

声の酷使も原因としてあげられています。

カラオケボックスで大声で歌いながら、タバコを吸って熱い物を喉に流し込むように食べることが日常的になっているような人は、要注意です。

タバコは主流煙よりも「副流煙」の方が、3~5倍の発がん性物質を含むと言われます。

狭い部屋で大勢でタバコを吸うと、主流煙も副流煙も吸い込むことになるので、多くの発がん性物質が喉頭を通って体の中に入って来ます。

また、近年は「3次喫煙」と言う問題も判ってきました。

これは、カーテンやカーペット、壁紙などにタバコの有害物質が吸い込まれて、残留した有害物質が人の細胞を傷つけている、ということが判明したのです。

カーテンやカーペットに染み込んだニコチンが時間の経過とともに徐々に放出されて、空気中の亜硫酸と反応して、ニトロソアミンという発がん性物質になるということが報告されています。

「この部屋、タバコ臭いな」と思った場合は、カーテンやカーペットなどから、ニトロソアミンが放出されているからかもしれません。

「今日はまだ1本も吸ってないよ」と言うようなときでも、タバコの臭いを感じたりするのは、このためでしょう。

タバコを吸う人がいなくなれば、喉頭がんの95%はなくなると言われています。

 

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咽頭がんの初期症状

喉頭がんの初期症状は、がんのできる場所によって少しずつ違います。

つまり、声門がんか声門上がんか、声門下がんかで症状が変わってきます。

まず喉頭がんの60~80%を占める「声門がん」の症状ですが、「声がかれる」、「声が出にくい」、という症状が最も多い訴えです。

医学用語では、声がかれることを「嗄声(させい)」と言います。

低いガラガラ声になったり、雑音が入ったようなザラザラ声になったりします。

また話をしている時に、息が漏れるという訴えもあります。

ひどくなると、声門ががんで塞がれて狭くなるために、息苦しくなったり、血痰が出たりします。

「声門上がん」の場合は、のどがチクチクする、のどにエヘン虫が住み着いていると言った訴えが多いです。

また、飲み物がしみる、食べ物を飲みこむときに喉が痛い、のどが痛くて耳にまでその痛みが広がっている、という症状を訴えることもあります。

首のリンパ腺が腫れるということもあります。

声門上がんは、非常にまれですが、「声門下がん」の場合は、かなり進行するまで症状は出ません。

つんく♂さんの場合は、7~8年前から声帯の左側に違和感があって、声全体がハスキーボイスになって、声が出にくかったそうです。

声が出にくくなった場合、多くの人が「風邪かな?」と思うことが多いようです。

また喋り過ぎてポリープができたかな?カラオケで歌い過ぎてポリープになったかな?と自己診断をする人もいるようです。

ポリープなら、しばらくは喋り過ぎたり大きな声を出さなかったらそのうち治るだろう、と放置してしまうというケースもあるようです。

また、「タバコを吸い過ぎたら、そりゃあ声も枯れてくるよな」と、思いつつも禁煙することもなく、タバコを吸い続ける人もいるから厄介です。

しかし、声の変化が1か月以上元に戻らないような場合は、喉頭がんの可能性が強いと考えられます。

耳鼻咽喉科を受診してください。

 

喉頭がんの治療法

喉頭がんは、放射線がよく効くがんの1つです。

喉頭がんの治療は、がんのステージが1期の場合は放射線療法で85~95%の割合で治すことができます。

ステージ2の場合も、放射線が選択されることが大半です。

放射線照射は、通常は通院で行います。
そのため仕事をしている人でも、仕事を続けながら治療を受けられます。

治療期間は6~7週間、週5回ということが多いです。

ステージ3やステージ4の場合は、放射線の効果が低くなります。
最初から手術が選択されるケースが大半になります。

ステージ3やステージ4で放射線や化学療法が選択される場合は、リンパ節転移や遠隔転移に対しての治療や、痛みのコントロールを目的としたケースが多いです。

手術は、部分切除と全摘出術があります。

がんが小さい場合はレーザーを使って部分切除にすることもできますが、どこの病院でも可能というわけではありません。

全摘出すると、声は失われます。

近年では、声を出す機能を温存するために「喉頭亜全摘術」という方法を行う病院もあります。

「喉頭亜全摘術」は、がんと声帯の4分の3を切除して、喉頭の上下の骨は残しておくという方法です。

この方法が可能かどうか、メリットデメリットの説明を十分に受けた上で選択肢として考えることもできます。

部分切除や亜全摘を行った場合は、術後の食事には注意や工夫が必要になることがあります。

例えば、むせて食べにくくなったり、誤嚥をしてしまうことが多くなったりする可能性が高くなります。

また、手術の際に「頸部リンパ郭清術」を同時に行うケースもあります。

頸部リンパ節に転移している時は、片側か両側の耳の後ろから鎖骨までの範囲のリンパ節を含んだ部分を切除します。

リンパ節は、頸の脂肪組織の中に含まれるので、脂肪組織を切除するのですが、重要な血管や神経を傷つけないように切除できるのが理想です。

しかし、リンパ節の大きさやがんの浸潤の程度によっては、神経や血管を残せないこともあります。

 

喉頭がんのステージと生存率

喉頭がんはステージ1であれば、90%以上の人が治癒しています。

5年生存率を見てみましょう。

公益財団法人がん研究振興財団の「がんの統計2015」によると、全国がんセンター協議会加盟施設における喉頭がんの5年生存率は、ステージ1の場合は97.9%です。

ステージ2の5年生存率は、85.7%です。

ステージ3の場合でも、5年生存率は81.9%と、8割を超えています。

しかし、ステージ4となると、5年生存率は5割を切ってしまい、46.6%まで落ちています。

しかし、ここで、数字だけを見て一喜一憂しないよう注意が必要です。

喉頭がんは、50~80歳代で急増するために、喉頭がんを発症した年齢が既に75歳以上であることが大半です。

また、喉頭がん以外にも糖尿病や高血圧や心臓病などを抱えているケースも多く、喉頭がんを発症していなくても5年生存することが難しかったと言う患者さんも少なくはありません。

あくまでも数字の上でのことですので、色々な背景が影響しています。

喉頭がんが再発する場合、多くは治療後1~2年の間です。

したがって、治療後1~2年は1~2か月の1回くらいの割合で通院して、検査や診察を受けてその後の経過をフォローアップすることが重要です。

5年生存率と言うように、5年経過すれば安心できるかもしれません。

しかし、「5年過ぎたんだからもう安心だし、タバコを1本だけ吸ってみようかな」などとは思わないようにしましょう。

タバコのニコチンの依存性は、ヘロインやコカインよりも強いと言うことが判っています。

禁断症状はヘロインやコカインと比べるとずっと弱いのですが、「ちょっと1本」がずっと1本になってしまった、と言う人も時々いますので、5年経っても10年経っても禁煙を続けてください。

また、周りの愛煙家も「もういいだろう」などと、タバコを勧めたりしないようにしましょう。

しかし、肺がんや胃がんと比べても治療成績はずっと良い予後の良好ながんと言えます。

 

まとめ

喉頭がんは早い段階であれば、90%以上の人が治癒しており、予後も良好だと言われます。

喉頭がんは意外と軽視されがちながんですが、特にタバコを吸う人は、肺がんよりも喉頭がんこそリスクが高く注意すべきです。

また、「副流煙」や「3次喫煙」という問題もあり、タバコを吸わない人も他人事と思わないようにしましょう。

 

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ライター紹介 ライター一覧

木村 哲也

木村 哲也

株式会社イコールヒューマン代表取締役。生活習慣病の権威者である崇高クリニックの荒木裕院長と提携し、主に生活習慣病に関わる様々な情報を広く分かり易く提供中。

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