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早期発見ならほぼ完治できる「皮膚がん」

 2017/05/04 疾病・症状
この記事は約 10 分で読めます。 5,749 Views

癌の中で、日本ではまだあまり馴染みのないのが「皮膚がん」です。

がん患者の80%が皮膚がんとも言われるオーストラリアに比べると日本ではまだ少ないのですが、近年では高齢化社会の影響を受けて皮膚がんの患者数は増加傾向にあると言われます。

ここでは皮膚がんについて、症状や原因、治療法などを解説します。

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皮膚がんとは

皮膚がんとは、皮膚組織にできた悪性腫瘍の総称です。

発生部位によっていくつかの種類があり、その原因や治療法は様々です。

皮膚がんは日本ではまだあまり馴染みのない病気ですが、オーストラリアやニュージーランドなどの南半球の国々では皮膚がんの患者が圧倒的に多いです。

また肌が白いと紫外線に弱いため、白色人種の罹患率が高い傾向にあります。

男女比に関しては、がんの種類によって多少の差はありますが、トータルで見るとそれほど患者数に違いはありません。

がん患者の80%が皮膚がんとも言われるオーストラリアに比べると、まだまだ患者数の少ない日本ですが、環境汚染によって紫外線の量が増えてきている事、また高齢化社会の影響を受けて患者数は多くなってきています。

60代以上の高齢者に皮膚がんが多いのは、加齢とともにシミが増えるのと同じように、長年浴び続けて蓄積された紫外線の影響が大きいと言われます。

また皮膚への外傷や刺激なども、年齢とともに積み重なっていくため、高齢者の皮膚はがん化しやすいと考えられているのです。

日本では、年間1,500~2,000人程度が新たに罹患していますが、死亡者数は罹患者数の約10分の1程度です。

皮膚がんの死亡率が高くないのは、異常が目に見えやすいので、胃や大腸、肝臓などの臓器に比べると早期発見しやすい事、またがんを切除しやすく治療法がシンプルといった点が挙げられます。

基本的に皮膚がんは一部の種類を除いて、治療がしやすく予後が良いものが多いです。

皮膚がんは早期発見する事で完治する可能性も十分にあるため、何かしら皮膚に異常を見つけたら、放置する事なく専門医に診察を受ける事が大切です。

 

皮膚がんの種類

皮膚がんは発生部位によって様々な種類が存在します。

その中でも特に日本で患者数が多いのが、「基底細胞がん」です。

そもそも「皮膚」は目に見える表皮だけではなく、その下の真皮や皮下組織まで含みます。

さらに表皮は角質層・顆粒層・有棘層・基底層という4つの層に分かれるのですが、「基底細胞がん」は表皮の最も下にある基底層の細胞が悪性化したものです。

この基底細胞がんに次いで日本人に多いのが、「有棘細胞がん」です。

名前のとおり、表皮の中間にある有棘層の細胞が悪性化したものです。

種類によっては基底細胞がんより転移しやすいと考えられています。

そして日本では罹患者数は多くないものの、最も悪性度が高い皮膚がんが「悪性黒色腫(メラノーマ)」と呼ばれるものです。

皮膚の色を決定する「メラノサイト」が悪性化したもので、全身のどこの皮膚にも発生する可能性があります。

特に日本人は足裏に悪性黒色腫を発症する事が多く、これは毎日体重を支え、足裏に刺激を与え続けている事が原因とも考えられています。

この3種類の皮膚がん以外に、表皮角化細胞ががん化した「ボーエン病」は有棘細胞がんの早期と考えられています。

がん細胞の増殖は表皮内に留まり、転移する可能性は低いです。

また「日光角化症」とは、紫外線を浴び続けたことで発症する皮膚疾患で、有棘細胞がんの前癌病変と言われています。

この日光角化症が進行すると有棘細胞がんへと進んでいきます。

さらに、「パージェット病」も皮膚がんの1つで「腺がん」に分類されています。

乳房にできるものとそうでないものとに大別され、後者の多くは外陰部に発生します。

パージェット病の原因はまだハッキリと解明されていませんが、汗を産生するアポクリン腺に由来する細胞ががん化したものと考えられています。

 

皮膚がんの症状

皮膚がんの症状ですが、それぞれの種類によって異なります。

・基底細胞がん

まず、皮膚がんの中でもっとも頻度の高いタイプである「基底細胞がん」は、濃い茶色、または黒色の軽い盛り上がりから始まるため、ほくろと間違える人も多いです。

これが数年かけて徐々に大きくなっていき、中が陥没して潰瘍になったり、出血したりします。

転移するケースは非常に稀で、切除によって完治できる可能性の高い皮膚がんと言えます。

・有棘細胞がん

続いて「有棘細胞がん」の症状は、いびつな形、さらに紅色をした皮膚の盛り上がりが特徴的です。

大きくなるとカリフラワーのような形になり、触ると崩れたり、出血を伴う事もあります。

この基底細胞がんと有棘細胞がんは、皮膚の表面である表皮に発生するのですが、この段階で発見できると「0期」で早期発見となります。

放置しておくと、表皮の下である真皮や皮下組織にまで広がっていきますが、ここまで来ると見た目からも異常を発見しやすくなります。

それでも放置してしまうと、筋肉や骨、リンパ節にまで浸潤し、全身にがん細胞が運ばれて遠隔転移してしまいます。

・悪性黒色腫(メラノーマ)

「悪性黒色腫(メラノーマ)」は、とにかく進行が早いのが特徴です。

そもそも悪性黒色腫は4つの型に分かれており、足裏や手のひら、爪などに発生する「末端黒子型黒色腫」が日本人では一番多いです。

また全身どこでも発生する「結節型黒色腫」は、最初から急激に成長し、早期にリンパ節転移することもある最も悪性度の高い病気です。

顔や首、手などの日光に当たる部位に出来やすい悪性黒子型黒色腫や、ホクロの母斑細胞から発生する表在拡大型黒色腫などもあるのですが、いずれも最初はほくろのような形で出現します。

ただし短期間で大きくなっていき、直径7mmを超えると転移している可能性が高いと言われています。

 

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皮膚がんの原因


皮膚がんの最大の原因は「紫外線」によるものです。

紫外線によるダメージが、長い年月をかけて、皮膚に蓄積して起こるのです。

皮膚がんが増加しているのは、オゾン層の破壊により紫外線が強くなってきている事が要因として挙げられ、基底細胞がん・有棘細胞がん・悪性黒色腫(メラノーマ)の全てに関わっています。

紫外線が皮膚がんを誘発するのは、「紫外線によってDNAが破壊されるから」という考えが主流です。

有色人種よりも白色人種のほうが罹患しやすいのですが、これは生まれ持ったメラニン色素の量が少ないからです。

そもそも有色人種にユーメラニンというメラニン色素が多いのですが、これは紫外線によって発生する活性酸素を除去し、皮膚の細胞を守る働きがあります。

これに対して白色人種はユーメラニンの量が少ないため、紫外線によって「活性酸素」が発生しやすくなってしまうのです。

皮膚がんの種類別に原因を考察すると、まず「基底細胞がん」は紫外線のほかに、やけどや外傷の傷痕、放射線の照射などが挙げられます。

また色素性乾皮症という疾患を持っている人は、元々皮膚が紫外線に弱いために発症しやすいとも言われています。

「有棘細胞がん」も紫外線が最大の原因で、半数以上の人が、太陽の光が当たる頭や顔に発症しています。

さらに子宮頸がんの原因となる「ヒトパピローマウイルス」というウイルスも関わっている事がわかってきました。

悪性黒色腫の原因は、やはり紫外線が一つとして考えられており、他には慢性的な刺激、外傷の傷痕などが関係しているとされています。

特に足の裏は見えにくい場所にあり、尚且つ、常に負担を感じている部位でもあります。

「悪性黒色腫」の初期はほくろと間違いやすいのですが、通常のほくろを刺激しても特に問題はなく、ほくろを取ったことが原因でがんになることはありません。

ただほくろだと思っていたものが悪性黒色腫だった場合は、刺激したり切除することで転移する可能性があります。

 

皮膚がんの検査

皮膚がんの検査ですが、まず気になる腫瘍の「視診・触診」が行われます。

皮膚の状態を、腫瘍の色や大きさ、形などの特徴を観察し、異常なのものかを判断します。

明らかに悪いものでは無さそうなら、それ以上詳しい検査が行われる事もなく、患者が気になる様子なら切除を進めます。

ただ皮膚がんの場合、ほくろやイボと見極めがつきにくいものもあります。

その場合は、「ダーモスコピー検査」という方法で検査をするのが一般的です。

強い光を照射しながら、拡大鏡でホクロの内部を観察していく方法なのですが、ダーモスコピーを用いると、病変の形や内部の状態が詳細に観察できるため、その病変が正常な細胞であるか、またはがん細胞であるかという診断が出来ます。

この検査により、がんの疑いがあると判断された場合には、ホクロのような病変の一部を採取し、顕微鏡で確認を行う「皮膚生検」が行われます。

皮膚生検に関しては、腫瘍全てを取ってから調べる全切除生検を行うこともあれば、腫瘍の一部だけを取って調べる部分生検が選択される事もあります。

ただし悪性黒色腫の場合は、部分生検する事でがん細胞が刺激され、局所再発やリンパ節転移、遠隔転移の危険性が高まると考えられてきました。

最近は部分生検しても、局所再発率や生存率に影響しないと考えられるようになりましたが、病理診断時に腫瘍全体が観察できる全切除生検の利点を考慮すると、全切除生検を選択する病院が多いです。

このような工程を踏んで、もしがんである可能性が高い、若しくは、がんと確定診断がついた場合には、超音波検査やX線検査、CT検査、MRI検査などの画像検査も行われます。

これらの検査では、現状のがんの大きさや広がり、転移の有無などを調べていきます。

 

皮膚がんの治療法

皮膚がんの治療法ですが、その種類によって少しずつ異なります。

まずは「手術」によって、がんの病変部位を切除することが基本となっています。

一つずつ見ると、

・基底細胞がん

基底細胞がんの場合は、転移の可能性もほとんどないため、腫瘍から5mm程度大きめに切除するだけで完治が望めます。

・有棘細胞がん

有棘細胞がんは、がんの範囲より5~20mm大きめに切除し、同時にリンパ節の切除も行う事があります。

高齢であったり、持病を抱えている人で手術が難しいという場合は、がんを小さくして症状を緩和させる目的で放射線治療が行われるケースもあります。

特に有棘細胞がんの場合は、放射線が非常に効きやすいという特徴があります。

・悪性黒色腫(メラノーマ)

悪性黒色腫もまずは手術が行われます。

がん細胞を刺激しないよう、がんの範囲よりも5cm程度大きく切除します。

放射線治療による効果は薄いものの、他の臓器に遠隔転移している場合は、痛みなどの症状を和らげる目的で選択されます。

そしてがん治療といえば、化学療法が有名です。

基底細胞がんに関しては、手術のみで完治するのがほとんどなので、化学療法はあまり行われません。

一方の有棘細胞がんと悪性黒色腫は悪性度が高いため、化学療法も行われます。

その他には、液体窒素を用いた凍結療法や、軟膏タイプの抗がん剤を使用する抗がん薬外用療法などもあり、患者の状態に合わせて治療法は選択されます。

基本的に皮膚がんの治療は、出来た物を全て取ってしまうというのが前提になっています。

そのため手術が可能な段階であれば、手術を選択する事がほとんどです。

手術によって皮膚が大きく欠損した場合は、太ももの付け根などの皮膚を移植する手術が行われる事もあります。

ただし、がんが大きくなってしまうと、手術によってリスクが高くなる事もあり、まずは抗がん剤や放射線の照射によってがんを小さくし、それから手術を検討する事もあります。

 

まとめ

皮膚がんは、異常が目に見えやすいこともあり早期発見しやすく、また治療しやすく予後が良いものが多いです。

ただ、ほくろや湿疹と間違えたり見過ごされてしまう場合もあります。

何かしら皮膚に異常を見つけたら、安易に放置するのではなく専門医に相談することも大切です。

 

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薮内直純

薮内直純

株式会社イコールヒューマン。生活習慣病専門ライター。医療や医薬品に関する誤解を解き明かしながら、真実を追求した記事を提供中。

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