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抗うつ薬の効果の有無、抗うつ薬を使ったうつ病の治療について

 2017/01/16 生活習慣病
この記事は約 11 分で読めます。 3,386 Views

うつ病の治療というと、真っ先に思い浮かぶのは抗うつ薬による治療でしょう。

ただ実際のところ、抗うつ薬の効果はどの程度あるものでしょうか?

また、抗うつ薬の副作用など、どのような使用上の注意点があるでしょうか?

このような、抗うつ薬の効果や、抗うつ薬を使ったうつ病の治療について解説します。

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抗うつ薬は「気持ち・心」に効く薬なの?

抗うつ薬は、病院でうつ病と診断された時に処方される薬で、うつ病による様々な症状を和らげるために利用される必要不可欠な治療薬です。

抗うつ薬の本来の目的は、脳内機能が神経生理学的に異常となった状態を改善させ、調整させるのが役割です。

様々な出来事が要因となって気分が激しく落ち込み、重度の場合には「死にたい」と自殺にまで及ぶこともあるうつ病は、その人の精神が弱いからではありません。

このような、激しい落ち込みにまで発展する直接的な原因は、神経生理学的にバランスを崩してしまった脳機能にあるのです。

それを改善させて正常に戻すために利用されるのが抗うつ薬なのです。

抗うつ薬は、気持ち・心などの実態のないものに直接働きかけるのではなく、脳の伝達神経に作用するのです。

 

抗うつ薬は即効性のある治癒率の高い薬なのか?

では、抗うつ薬の効果の有無についてはどうなのでしょうか?

一般的には「うつ病の治療=抗うつ薬」というイメージがあると思います。

ところが、実際にはうつ病改善に即効性があるわけではなく、治療法として最も有効だとも言えないのです。

「うつ病の約8割は薬剤療法では無意味だ」という考え方を持つ精神科医師がいます。

その医師によると、うつ病に対する抗うつ薬の効果の有無については、患者さんが期待するほど高い効果は得られないと断言しています。

これまで行ってきた、うつ病と抗うつ薬に関係する研究では、抗うつ薬の効果の有無を数値化し、その結果をまとめたところ、抗うつ薬のNNT(=Number Needed to Treat:プラセボ効果以外の薬自体の効果で、何人に1人の割合で治療が行えるかという指針)は5~8程度という結果が出ました。

これは、すなわち「抗うつ薬によって症状が改善する確率は5人~8人に1人」ということを表します。

ちなみに「プラセボ効果」とは、抗うつ薬だと思い込んで服用したものがたとえブドウ糖などでも、強い思い込みによってその症状が改善されることを言います。

NNTの結果からも分かるように、抗うつ薬はうつ病患者に処方しても5人~8人に1人しか効果が出ないということになり、過半数以上のうつ病患者には効果が無いとも言えるのです。

 

医師も警告、抗うつ薬を使用する際の「心構え」とは?

この医師によると、抗うつ薬に対する認識を改めることが大切だとしています。

「この薬を飲めばうつ病が治る」と信じて服用した場合、自身で実感できる症状の改善がみられなかった場合には、「うつ病を治す頼みの綱が切れた」ことになるため、期待を裏切られた感覚になり余計にうつ病が重症化してしまう可能性があります。

これでは、抗うつ薬を使うことは逆効果になります。

このような状態に陥らないためにも、服用する前から「うつ病が改善しないのが当然」、「効果が出れば儲けものだ」くらいに捉えるようにし、決して強い期待を抱かないようにするのが良いでしょう。

また、抗うつ薬は薬ですから当然副作用が起こります。

特に脳内の機能に働きかける作用があるため、比較的副作用も実感しやすいものが多いです。

 

種類別にみた抗うつ薬の効能・副作用とは?

抗うつ薬には、大きく分けて5つの種類に分類することができます。

①SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)

主にセロトニン(体内に特に重要な役割を果たしている神経伝達物質)の量を調整する「セロトニントランスポーター」に作用し、神経細胞同士の間でセロトニンの量を調整する働きをします。

これにより強い不安症状を抑制させる効果が得られることから、抑うつ状態・強い不安症状の患者に処方されることが多いです。

副作用は、抗うつ薬の中でも比較的少ないとされていますが、初めて服用することで吐き気・むかつき・便秘・下痢・眠気などを引き起こすことがあります。

ただし、1週間~2週間程服用することで副作用は徐々に軽減していきます。

  • ジェイゾロフト:体重増加が少なく効果は緩やかです。
  • レクサプロ:副作用が少なく、カプセルタイプなので量の調整が細かくできます。
  • パキシル:幅広い症状に対応でき、やめると離脱症状が出やすいです。
  • ルボックス・デプメロール:副作用が少なく効果は緩やかです。

②SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤)

主に、セロトニンとノルアドレナリン(ストレスを感じた時など、興奮状態になった時に分泌されるホルモンで、過度に分泌されると体に支障をきたします)の再取り込みを阻害する作用があり、セロトニンとノルアドレナリンの分泌量を調整します。

  • サインバルタ:意欲改善作用に優れており、痛み止め効果もあります。

カプセルタイプなので量の調整が細かくできます。

  • トレドミン:副作用が比較的少なく、効果は緩やかです。

③NaSSA(ノルアドレナリン作動性、特異的セロトニン作動性抗うつ薬)

主に、SSRIやSNRI以外の作用に用いられる抗うつ薬で、効果としては①・②と同等とされています。

  • リフレックス・レメロン:睡眠障害や食欲低下などの症状に効果を発揮し、その効果も比較的早く現れます。

副作用には眠気や体重増加などがあり、価格は抗うつ薬の中で最も高いです。

④三環系

うつ病を改善させる効果を持っていますが、アセチルコリンと呼ばれる神経伝達物質の働きを抑制する効果もあるため、副作用として便秘・尿が出にくい・口が渇くなど、抗コリン作用による症状が起こることがあります。

  • アナフラニール・トフラニール・トリプタノール・ノリトレン:効果が強く副作用も多く出ます。

価格は安価となっています。

  • アモキサン・ドグマチール:食欲が出やすくなり、体重の増加が見込めます。

吐き気の副作用は少ないですが、女性は生理不順を起こしやすいです。

⑤四環系

三環系の副作用である抗コリン作用を軽減させることを目的に開発されたものです。

抗うつ薬が開発されたのは、古い順に三環系・四環系・SSRI・SNRI・NaSSAとなり、三環系・四環系は比較的安価で、他の3つの新薬は高価となっています。

  • テトラミド・デジレル・レスリン:睡眠障害の改善に有効性が高いです。

そのため、睡眠障害の無い患者さんに使用しても効果は低いです。

 

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抗うつ薬を服用する際の5つの注意点

抗うつ薬を服用する際の注意点としては、

(1)薬の種類にもよりますが、効果が感じられるまで約4週間~6週間かかります。

(2)患者さんによっては、抗うつ薬の効果よりも副作用が先に出ることもあります。

(3)急に服用をやめると、強い副作用が出る場合もあり危険です。

(4)アルコールとの服用や喫煙は効果を弱める可能性が高いため、避けるようにしましょう。

(5)自己判断による服用は治療期間を長期化する可能性があるため、医師の指示に従い正しく飲むようにしましょう。

抗うつ薬と言っても、症状によりこれだけの種類があるため、患者さん一人一人のうつ病の症状に合わせて最適なものを選択していくことになります。

抗うつ薬は、即効性があるものではないため継続的に服用する必要があります。

抗うつ薬を飲むようになったら、うつ病の症状が治まったからと言って途中で服用をやめてしまうと、抗うつ薬によって脳機能が調整されていたのがまた乱れてしまい、再発するリスクが高まってしまいます。

初めて服用する場合には、半年を目安に服用します。

その間、うつ病が再発してしまった場合には、更に長期間飲み続ける必要があります。

 

うつ病の薬を使った治療はどのように行われるのか?

うつ病の薬を使った治療方法としては、そのほとんどがいくつかの種類を同時に服用しながら、長いスパンで治療を行っていきます。

具体的には、「抗うつ薬+抗不安剤+睡眠剤」の3つを同時に服用することになります。

「抗うつ薬」により、脳内のセロトニンの量を調整させて、抑うつ気分や不安・焦りなどの不安定な気持ちを抑えて物事への興味や好奇心を抱かせるよう働きかけます。

「抗不安剤」により、あらゆることに不安になる気持ちを鎮める作用があります。

特に、強い不安感や焦燥感を持ったうつ病患者に対して処方されます。

「睡眠剤」により、深い眠りに導く効果があります。

特に、不安や焦りなどで気持ちが高ぶりなかなか眠ることができない場合や、眠ってもまたすぐに目が覚めてしまう場合に処方されます。

抗うつ薬による治療の大きなポイントは、うつ病特有の激しい気分の落ち込みという精神状態を改善することですが、脳神経に働きかける治療であるため、その治療はなかなかスムーズに進むことは困難なのが現状です。

抗うつ薬を服用したからと言って必ず改善するわけではなく、患者さんによっては副作用を感じる場合もあります。

また、うつ病の原因は患者さんそれぞれ違っており、また風邪やインフルエンザのように同じ症状が現れるわけでもありません。

従って、細かなカウンセリングを行い、患者さん一人一人の症状に合わせて抗うつ薬を選ぶ必要があります。

 

周囲の人たちが知っておくべきこと

うつ病は、重症化すると家族などの身近な人に攻撃的になり、「自分なんてどうせ生きていてもしょうがない」と、自殺を考えるようにまでになります。

また、うつ病に対する周囲の理解が得られないことが多く、理解してほしいのに理解してもらえないと更に症状が悪化することも少なくありません。

しかし、抗うつ薬を服用しても、鎮痛剤とは違うため効果に即効性はありません。

不安感や焦燥感が強いと「早く治したい」という気持ちが、症状に追い打ちをかけるようになってしまいがちです。

そのため、家族など周りの人達がうつ病に理解を示して治療に協力的になることで、患者さんも落ち着きを取り戻し、ゆっくりと治療を進めていくことができるでしょう。

 

薬物療法以外の治療方法について

うつ病には、投薬による治療の他に「精神療法」や「心理療法」という治療方法もあります。

この治療法は、経験を積んだプロの心理カウンセラーの指導により、ゆっくりと時間をかけてうつ病を改善させていくという方法です。

現在のうつ病治療では、「認知行動療法」と呼ばれるものがポピュラーとなっており、うつ病治療の先進国とされるアメリカやイギリスでは、投薬療法と同じくらいの認知度があります。

マイナス思考になりがちな精神状態を、「カウンセリング」によって徐々にプラス思考へと変えていきます。

自分で自分のマイナス思考を変えていくため、改善すれば再発を防ぐ効果も得られる場合もあります。

ただし、カウンセラーとの治療は予約が必要な場合がほとんどで、また治療する時間も限られています。

そのため、再発した場合にすぐにカウンセラーの治療が受けられるわけではないのです。

こうした場合に、抗うつ薬の服用と周囲の人の助けがとても有効に働く場合が多いのです。

 

うつ病を早く治す方法とは?

抗うつ薬での治療では「ゆっくり・焦らず・自分から」がとても大切になってきます。

治療期間を短くするとなると、どうしても抗うつ薬の量を増やしたりしなければならず、その分副作用も強く出てしまう可能性があります。

また、量を増やしたからと言って、うつ病が治るとは断言できません。

早く治すことよりも、再発を防ぐため時間をかけて改善させていく治療法を選択することが、うつ病を最も早く治すことにもつながります。

ストレス社会と言われる現代では、うつ病の治療期間も昔に比べ長くなっているとも言われています。

一般的には、抗うつ薬の投与を始めて3ヶ月~6ヶ月程で改善されていきます。

しかし、最近では良くなってもまたストレスを受けることで再発するケースが多くなっており、2年以上も治療を行っている患者さんも多いです。

完治というゴールが見えないのもうつ病という病気の特徴でもあり、医師の診断で治療終了と言われるまで続ける必要があるのです。

「自分は大丈夫!」と勝手に服用をやめてしまうと、めまいや吐き気などの副作用が起こることもあり、とても危険です。

抗うつ薬を使用する時期というのは、患者さんと医師との関係を良好にするためにもとても大切な時期であると言えます。

治療計画を立てる場合には、医師は患者さんやその家族からうつ病の症状や家庭でも状態、生い立ちなど、あらゆる情報を得る必要があり、その情報をもとにその方に合った治療計画を立てていきます。

この治療計画を成功させるためには、患者さんがきちんと抗うつ薬を服用することが大切で、医師も患者さんがきちんと服用していることを前提にして治療計画を進めていきます。

従って、もし途中でやめてしまったらその計画はいつまで経っても成功することはないのです。

 

まとめ

抗うつ薬は、服用すれば症状が必ず改善するものではなく、その効果は決して高いとは言い切れません。

しかし、医療は日々進化しており、近年では副作用が少なく効果が早期に現れる新薬も登場しています。

しかし、うつ病の治療にはゆっくり時間をかけ、医師の指示に従って焦らず進めていくのが最も早い治療につながっていきます。

 

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薮内直純

薮内直純

株式会社イコールヒューマン。生活習慣病専門ライター。医療や医薬品に関する誤解を解き明かしながら、真実を追求した記事を提供中。

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