300万人が発症の糖尿病網膜症…早めの対策が予防の鍵
糖尿病の合併症にはどのような病気があるのでしょうか。
代表的な合併症には神経障害や目の障害、腎臓の障害などがあり、いずれも高血糖が血管を傷めつけることが原因となり生じます。
「まだ糖尿病の薬は飲んでいないから、合併症なんて関係ない」と考えている人もいるかもしれません。
しかし、本当に糖尿病の初期は合併症と関係ないのでしょうか。
失明に至ることもある糖尿病網膜症は、どのように進行して視覚障害に至り予防するにはどうしたらよいのか、糖尿病網膜症の定期検査の内容や治療方法についても併せて解説します。
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Contents
糖尿病網膜症の現状
日本では約300万人が糖尿病網膜症を発症しており、この糖尿病網膜症が原因で年間約3,000人が失明しています。
視覚障害で身体障害者手帳の発行を受けている人は約40万人おり、毎年新たに約3,000人が糖尿病網膜症を原因とした失明で身体障害者手帳の交付を受けているのです。
眼科の治療技術が大きく進歩したことにより糖尿病網膜症で失明する割合は減りつつあります。
しかし、日本では糖尿病患者自体が急増しているため糖尿病網膜症患者は増加しており、中途失明に至る人数がまだ多いのが現状です。
<糖尿病になってから糖尿病網膜症の発症までの期間>
糖尿病になってから糖尿病網膜症を発症するまでの期間は1~20年以上と幅広く、糖尿病になってから15年で約40%の人が糖尿病網膜症を発症するといわれています。
別の研究では糖尿病になってから約8年で約28%の人が糖尿病網膜症になるというデータもあり、これらの研究の概算から1年に約3~4%ずつの糖尿病患者が糖尿病網膜症を発症すると考えられます。
さらに2型糖尿病の場合は糖尿病と診断されるまでに発症から数年経過している場合が多いため、診断時にはすでに網膜症を発症しているというケースも少なくありません。
<早めの血糖コントロールが重要>
糖尿病網膜症は高血糖の状態が続けば続くほど進行してしまいます。
早めに糖尿病を発見し血糖コントロールをしっかり行えば、糖尿病網膜症の進行を最小限にくい止めることができます。
まだ「単純網膜症」の初期段階であれば、血糖のコントロールを良好に保つことで糖尿病網膜症の進行を抑制することも可能で出血が消失することもあります。
アメリカの研究で、糖尿病を発症したごく初期から細やかにインスリンを使用する「強化インスリン治療」により低い血糖値を20年にわたって維持した患者と、10年は通常のインスリン治療を行い10年後から強化インスリン療法に変えて血糖コントロールを行った患者とを比較したケースがあります。
どちらも後半の10年間は強化インスリン治療で同等に血糖をコントロールできたにもかかわらず、最初の10年間通常の治療がされた後者の患者は強化インスリン治療に変えてからも約7年間は糖尿病網膜症の進行が加速していました。
この研究から、糖尿病初期の血糖コントロールが悪いとその影響は血糖コントロールが良くなったあともかなり長く続くことが分かります。
糖尿病を発症したらできるだけ早い段階で診断を受け、継続して血糖コントロールすることが視力を守るために重要だといえます。
糖尿病網膜症の変化の現れ方
糖尿病網膜症の進行について
糖尿病の合併症の多くは高血糖によって血管が傷めつけられることが原因となり生じます。
高血糖は末梢の微小血管への影響が顕著で、微小血管が張り巡らされている網膜は高血糖の状態が続くと徐々に糖尿病性網膜症が進行し、視覚障害に至ります。
<単純網膜症>
高血糖により網膜の血管がもろくなり破れて出血するので、眼底写真で見ると小さな点状の出血がみられます。
血液中の蛋白質や脂肪が染み出してできた「硬性白斑」というシミのような色の変化や「毛細血管瘤」という細小血管のこぶも確認されます。
この段階で発見して血糖コントロールをよくすると自然に吸収されることもありますが、痛みや視力の低下などの自覚症状が全くないので眼科で検査をしない限り異常を発見することはできません。
<増殖前網膜症>
さらに血管が目詰まりをおこすと血流が悪いところが「軟性白斑」になります。
網膜の酸素欠乏を解消するために新たな血液のルートとなる「新生血管」を作ろうとして静脈が異常なほど腫れあがることや、細小血管の形が不規則になることが原因です。
この新生血管の兆候がある網膜の部位をレーザー光凝固術で処置することが失明予防にとって重要なポイントです。
<増殖網膜症>
新生血管は網膜だけではなく血管を必要としない眼球内部のゼリー状の部分まで侵出します。
新生血管はもろいため破れたり血液成分が漏れ出したりしてしまいます。
また網膜の表面を覆ってしまい、硝子体と網膜が癒着することから網膜剥離が起きやすくなってしまうのです。
細かい検査をくりかえしながら網膜全体にレーザー光凝固術を行い新生血管の活動を抑えていく治療になります。
<網膜出血、硝子体出血、網膜剥離>
新生血管が破れ網膜や硝子体内に出血が広がることにより、瞳孔から入ってくる光が網膜まで届かなくなります。
そのため視野の欠けや視力の低下が生じます。
網膜剥離は網膜と硝子体が癒着し硝子体に引っ張られた網膜が剥がれてしまうことにより起こります。
治療をしても網膜が元通りには機能せず、視覚障害が残ることもあります。
黄斑症は糖尿病網膜症と無関係に視力が低下する
網膜症は視覚に異常が出るまで自覚症状がほとんどありませんが、他にも視力が低下する糖尿病合併症に「黄斑症」があります。
黄斑は網膜の中央にあり障害されると視力の低下をきたします。
糖尿病による血管障害で黄斑がむくむことが原因ですが、網膜症に対して行ったレーザー光凝固術が原因で黄斑浮腫が起きることもあります。
治療法がまだ確立しておらず、黄斑部へのレーザー光凝固術や目に薬を注射する治療などが試されています。
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糖尿病網膜症の予防
<糖尿病網膜症の発症予防>
糖尿病網膜症は糖尿病になってからの期間が長いほど発症しやすいといわれています。
まず、糖尿病にならない生活習慣を心がけることが何より大切です。
糖尿病の疑いがある場合には速やかに精密検査を受けましょう。
薬物療法に入る前の期間であっても、しっかり血糖コントロールをすることで糖尿病網膜症の進行を抑えることができます。
ただし血糖コントロールが悪い人の血糖値を治療などで急に下げてしまうと、一時的に糖尿病網膜症が悪化してしまうことがあるといわれています。
このようなリスクを避けるためにも糖尿病治療では同時に網膜など目の状態も診てもらうことが望ましいといえます。
他にも高血圧や腎機能の低下が糖尿病網膜症を悪化させる因子となります。
特に高血圧は糖尿病性高血圧に悪影響を及ぼすだけでなく、高血圧単独でも「高血圧性網膜症」を引き起こすことがあるので注意が必要です。
糖尿病性腎症の初期にみられる「微量アルブミン尿」も糖尿病網膜症を進行させてしまう作用があります。
いずれもある種の降圧剤(ACE阻害薬またはARB)が有効といわれています。
また、脂質代謝の治療薬で中性脂肪を下げる薬(フィブラート系)に網膜症の重症化を抑える働きがあるともいわれています。
糖尿病網膜症に限らず糖尿病の合併症は多岐にわたり相互に関連しています。
糖尿病の主治医と相談しながら定期的にそれぞれの専門医で合併症を起こしていないかの検査を受けていくことが大切です。
<糖尿病網膜症の重症化予防>
糖尿病網膜症の重症化予防のためには血糖コントロールなど糖尿病の治療を徹底して行うことと、糖尿病網膜症の早期発見および適切な処置を速やかに行っていくことが大切です。
網膜症で視覚障害が起きる際には網膜出血と網膜剥離がきっかけになりますが、どちらも網膜に脆弱な新生血管が増殖していくことが原因により起こります。
糖尿病網膜症の処置はこの新生血管が悪さをしないように抑えることが中心で、レーザー光凝固術で新生血管ができるのを予防したり既にできている新生血管を固めたりします。
早い段階であればレーザー光凝固術の処置は最小限の範囲で済みます。
糖尿病になってしまったら定期的に眼科でも検査して必要な処置を行うことが糖尿病網膜症の重症化予防になるのです。
増殖網膜症で硝子体出血や網膜剥離が起きている場合は「硝子体手術」で治療することになります。
糖尿病網膜症の合併症
糖尿病になり高血糖の状況が長く続くことで糖尿病網膜症以外の目の病気になりやすくなります。
新生血管が引き起こす病気には糖尿病網膜症の他に血管新生緑内障と網膜剥離がありますが、この2つも新生血管が原因となって起こります。
網膜の新生血管が硝子体に入り込み「増殖組織」といわれる線維性の膜を作ります。
こうして硝子体と網膜が癒着し、硝子体の振動が網膜を引っ張るようにして網膜剥離が起こります。
角膜や水晶体、硝子体など血管のない組織は目の中の毛様体で作られる「房水」から栄養をもらっています。
房水は役目を果たすとシュレム管に集まって静脈へと流れ出し、常に入れ替わっています。
この房水の出口が狭くなったり目詰まりしていたりすると房水を排出できずに眼圧が上がってしまいます。
血管新生緑内障では新生血管が目の表面側に伸びて房水の出口をふさいでしまい、眼圧が上がると共に視神経が損傷を受けて死滅するために視野が狭くなってしまいます。
新生血管の増殖による合併症の他に高血糖で体内の糖分が増えたことによる白内障があります。
水晶体に蓄積した糖分は老化を早めるので白内障の進行を促し、そのため通常よりも早い年齢で白内障の手術を受けなければならなくなってしまうのです。
糖尿病網膜症を早期発見するためには
糖尿病網膜症の最も多い失明の原因は「眼科を受診しないこと」
世界でも糖尿病網膜症で視覚障害になる人の増加が問題になっています。
アメリカの眼科医の研究で、世界では糖尿病網膜症による視力障害は20年間で64%増えており、この多くが眼科を受診せず適切な治療が行われないことが悪化の原因となっているとされています。
つまり糖尿病網膜症の最も多い失明の原因は「眼科を受診しないこと」であり、糖尿病の初期から眼科でも定期検診を受け適切な治療を受けていれば、視力障害や中途失明にならなくて済んだ人がたくさんいるといえます。
日本でも長らく糖尿病網膜症は中途失明原因の1位でしたが、最近では治療法が確立したことにより適切な時期に治療を行えば失明を回避することができるようになりました。
同時に重症の網膜症を合併している患者の割合も減少傾向にあるともいわれています。
糖尿病も糖尿病網膜症も、初期の段階では自覚症状がほとんどありません。
まず糖尿病を早期に発見することが何より重要ですが、適切な血糖コントロールと糖尿病合併症の定期的な検査も重要です。
先に述べたアメリカの眼科医の研究でも「糖尿病と診断された人々は、少なくとも1年に1回は目の検診を受けるべき」とした上で、患者の血糖コントロールのより効果的な改善と適切な時期に糖尿病網膜症の治療を受けることができるようにする体制として、糖尿病医療に携わる主治医や眼科医、看護師、栄養士などの密接な連携が必要であることも強調しています。
日本では「糖尿病眼手帳」や「糖尿病連携手帳」があり、これらの手帳に糖尿病網膜症についても記入することができるので、糖尿病網膜症の状態を糖尿病の主治医と眼科医、その他の医療スタッフが情報を共有できます。
内科と眼科で異なる医療機関にかかっている場合などに便利です。
糖尿病網膜症で失明することがないように主治医とよく相談して定期的に眼科も受診しましょう。
年1度の頻度で眼科受診を
糖尿病の初期から網膜など目の定期的な検診をします。
定期検査ではまず眼の奥の状態を調べる「眼底検査」や眼底組織の断面の状態を調べる「OCT検査」で網膜の観察をし、網膜症の診断を行います。
これらの検査で網膜症が疑われる場合は、さらに網膜・脈絡膜の血管に細くなっているところや詰まっているところはないか、もろくなった血管が破れたりしていないかなどを確認する蛍光眼底撮影を行います。
糖尿病による視力低下のもうひとつの原因である糖尿病黄斑浮腫の診断も随時行っていきます。
まとめ
糖尿病網膜症は、高血糖の状況が続いた際に生じる微小血管障害による糖尿病合併症のひとつです。眼の奥にある網膜という部分で起きる細小血管症が目詰まりを起こしたり、新生血管ができたりすることが原因となります。糖尿病網膜症が進行すると、眼底出血や網膜剥離を伴って視覚障害になったり失明したりします。糖尿病網膜症の重症化防止のためには、適切な血糖コントロールと糖尿病初期から年に1回の眼科での定期検査が必要です。糖尿病網膜症を早期発見できれば、レーザー光凝固術などの処置で進行を抑えることができるのです。
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