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人間ドック・検査で「糖尿病予備軍」と発覚!健康のための特定保健指導の知識

血液中のブドウ糖の量(血糖値)が一定の割合を超えた状態を糖尿病と言いますが、糖尿病の最も怖い点は深刻な合併症を発症するリスクがあるというところです。

高血糖の状態が長く続くと脳出血や脳梗塞、心筋梗塞などの心疾患、腎不全、脚の切断、失明といった様々な合併症を引き起こすことがあり重篤な状態に陥る可能性もあります。

血糖値が高いくらいで大騒ぎすることじゃないと考えるのは間違いであり、糖尿病になる手前の「糖尿病予備軍」の時点で積極的な生活習慣の改善が必要となります。

今回の記事では「糖尿病予備軍」の方の特徴、合併症の種類、また現在国を挙げて行われている糖尿病の特定保健指導について詳しくご紹介していきます。

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糖尿病予備軍とは?

<糖尿病予備軍はどんな状態?>

糖尿病予備軍とは糖尿病と確定診断される高血糖値ではないものの、正常な血糖値よりも数値が高く今後糖尿病へと移行する可能性の高い状態のことを指します。

糖尿病は突然発症する病気ではなく、生活習慣の悪さなどが重なり何年もかけて徐々に血糖値が高くなり、やがて発症するという病気です。

この糖尿病になる前の段階、ゆっくりと血糖値が高くなっている状態が糖尿病予備軍です。

血糖値の数値をチェックする代表的な検査として「空腹時血糖値検査」があります。

空腹時血糖値が100~109mg/dLの場合は「正常高値」と呼ばれ、将来的に糖尿病を発症する可能性が高いと診断されます。

また、110~125mg/dLの場合は「境界型」(または「糖尿病型」)と呼ばれ、糖尿病の疑いがあると診断されます。

「境界型」(「糖尿病型」)の人は正常な人より5~20倍も糖尿病を発症しやすいというデータが出ており、早めの生活習慣改善が求められます。

<糖尿病予備軍は健康に問題ない?>

糖尿病予備軍の方はまだ糖尿病とは診断されていない状態です。

そのため「糖尿病ではないのだから、食生活の見直しや運動不足解消は必要ない」と思ってしまう方もいます。

しかしこのように考えるのは間違いです。

上述したように、糖尿病予備軍というのは「糖尿病になる可能性が高い方」「糖尿病の疑いがある方」のことを指します。

よってこのような方々は生活習慣を見直して高血糖を改善しなければ糖尿病になる可能性が高くなるのです。

糖尿病は進行性の病気ですから、一度患ってしまうと合併症を発症するリスクが徐々に高まります。

糖尿病の合併症には様々なものがあり深刻な状態に陥れば命の危険もあります。

たとえ糖尿病にならなくても、ずっと糖尿病予備軍の状態で生活することには様々なリスクがあるということも知っておいたほうがよいでしょう。

例えば、血糖値が高い状態が続くと体内の血管に大きな負担を与え、心臓や脳などの血管に関わる重大な病気につながる恐れがあります。

具体的には動脈硬化・脳梗塞・心筋梗塞などです。

糖尿病予備軍の方は正常な方に比べて2.2~3.5倍も心臓や血管の病気になりやすいといわれているため注意が必要です。

 

糖尿病予備軍になった背景を考察

<糖尿病予備軍によくある心あたり>

糖尿病予備軍の特徴は自覚症状がほとんどないということです。

普段から糖質の多い食生活や運動不足が続いていて、気がついたら糖尿病予備軍になっていたというケースはよくあります。

糖尿病予備軍になりやすい方、またすでになっている方にはいくつかの特徴があります。

以下のポイントに当てはまる方は糖尿病予備軍の可能性があるので要注意です。

・食生活

普段から食べる量が多い、炭水化物をよく食べる、甘いものをよく食べる、おやつをよく食べる、特定の時間帯に一気に大量に食べる、夜食が多い、食事時間が不規則、アルコールや糖分の多い飲料水をよく飲む

・身体面・精神面

肥満体型である、運動不足が続いている、過労が続いている、ストレスが溜まっている、ゆっくり休めない、睡眠が十分にとれない、親族に糖尿病の人がいる、妊娠中に血糖値が高くなったことがある

食習慣や日々の生活のあり方を変えることで糖尿病予備軍になる可能性を下げることができ、糖尿病を発症するリスクを抑えることができます。

<糖尿病予備軍によくある悩み>

糖尿病予備軍の方が取るべき対策としてまず挙げられるのが食生活の改善です。

できるだけ高血糖にならない食生活を送ることが重要になりますが、この点でなかなか苦労することも多いようです。

高血糖にならない食生活の基本は「糖質(炭水化物)を徹底的に避ける」ことです。

ご飯・パン・麺類・粉類など炭水化物は私たちが普段から当たり前に摂取しているものですが、この炭水化物の摂取量は体内の血糖値と密接に関わり合っています。

炭水化物大好き、甘いもの大好き、おやつ大好き…このような人ほど糖尿病予備軍から抜け出すための食事制限で悩むことが多いようです。

正しい食事制限とは何かということを知り、それを日々実践していくことはとても大変なことです。

糖尿病予備軍の特徴として、運動不足や疲労、ストレスといった身体的・精神的な要因を抱えていることも多くあげられます。

しかし日々の生活スタイルや仕事上の都合で、なかなかこれらの要因を改善できないという方も目立ちます。

このような場合、できるだけストレスや疲労の蓄積が重ならない生活環境を作り上げることが大切になるでしょう。

ストレスや生活そのものの乱れは、暴飲暴食やアルコールの過剰摂取などにもつながるため注意が必要になります。

 

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よく聞く本当にあった糖尿病の怖い話

<目が見えなくなる>

糖尿病の合併症のひとつに「糖尿病網膜症」があります。

糖尿病網膜症は糖尿病が原因となって視力が低下する病気です。

この病気の恐ろしさは自覚症状がないまま症状が進み、やがて失明に至る危険性があることです。

ある日を境に、急に「視界がぼやけて霞んで見える」「眼の中に煙が立ち込めているようだ」といった状態に陥り、これらの目の異常について糖尿病が原因であると気づかずに眼科を受診する方も多くみられます。

実際このような目の症状が出る場合には既に糖尿病はかなり進行している可能性が高いのです。

<脚が痺れたり壊死する>

「脚を失う」というと、事故によるものと考える方が多いと思います。

事故以外にも糖尿病が原因となって脚を失うケースもあることを知っている方は少ないのではないでしょうか。

糖尿病の合併症には神経障害や血管障害があります。

神経障害が起こると、脚が痺れる、あるいは脚の感覚が鈍くなることがあります。

また血管障害によって血行が悪くなり脚に十分な血液がいきわたらなくなると、脚の動脈硬化が起こります。

脚の動脈硬化が深刻化すると脚に血液がほとんど流れなくなり、脚の筋肉組織はやがて壊死してしまいます。

「糖尿病で脚の切断なんて…」と思う方もいるでしょうが、これは実際に起こりえることなのです。

<人工透析が必要になる>

糖尿病の合併症には「糖尿病性腎症」があります。

糖尿病性腎症は血糖値の高い状態が長期間続くことで、腎機能の低下を引き起こす病気です。

腎機能の低下からやがて腎不全になると、自力で腎臓が機能しなくなるため人工透析治療が必要になってきます。

糖尿病性腎症であるかどうかは尿検査を行うと判明します。

「あなたは人工透析が必要ですね」と突然宣告されないためにも早めの検査が重要になります。

糖尿病予備軍の方でも腎臓が悪化している場合があるため、手遅れにならないためにも一度病院での診断・検査をおすすめします。

<糖尿病が原因で他の病気の手術ができなくなる>

病気治療で手術を行う際は体内の血糖値が正常にコントロールされている必要があります。

血糖値が高い場合、感染症になりやすかったり手術創の治りが悪くなるからです。

そのため血糖値が正常値ではない場合、それを理由に手術が受けられない(または延期される)ことが起こりえます。

深刻な病気で早期の手術が必要な場合、手術の中止や延期となると大変です。

糖尿病にはこうしたリスクもあるということを知り、できるだけ糖尿病にならない生活習慣を作り上げていくことが大切です。

 

糖尿病予備軍のための特定保健指導の知識

<糖尿病の特定保健指導の状況>

平成20年4月から、40歳~74歳の健康保険被保険者・被扶養者を対象にした「特定健康診査・特定保健指導」が開始しています。

特定健康診査・特定保健指導は40代の若いうちから生活習慣の改善を行い、糖尿病を含めたさまざまな生活習慣病の予防と病状の重症化(合併症の発症)を避けることを目的としています。

特定健診の結果を受けて糖尿病と診断された方、または糖尿病予備軍と診断された方に対し、生活習慣改善を目指した指導(特定保健指導)が実施されます。

特定健診は保険加入者に義務付けられたものではありませんが、生活習慣の見直しや糖尿病になるリスクを下げるためにも健診を受けることが推奨されます。

健診で高血糖が発覚した場合は、特定保健指導をしっかり受け自身の生活習慣の見直しを図っていきましょう。

<特定保健指導の効果>

特定健診・保健指導によってどの程度の効果があったか、厚生労働省は平成20年~23年のデータから中間報告を行っています。

この報告によると、腹囲・体重・血圧・脂質・血糖値について以下の改善がみられました。

〇腹囲

積極的支援では2~3cm程度の減少、動機付け支援では 1~2cm程度の減少。

〇体重

積極的支援では男性は約2.5%の減少、女性は約3.3%の減少。

動機付け支援では男性は約1.7%の減少、女性は約2.3%の減少。

〇血圧・脂質

積極的支援では中性脂肪においては約25~30mg/dLの減少、収縮期血圧においては約2~4mmHgの減少。

〇血糖値・HbA1c

積極的支援では男性の空腹時血糖値が約1.7mg/dL減少、女性の空腹時血糖値が約3.1mg/dL減少。

またHbA1cにおいても、積極的支援と動機付け支援の双方において減少傾向。

厚生労働省の中間報告によると、積極的支援を受けた方のうち男性の約20~30%、女性の約30~40%がメタボリックシンドロームであることが分かっています。

多くの方は積極的支援によって糖尿病予備軍から脱却しており、特定保健指導には大きな効果があったとみてよいでしょう。

<糖尿病の指導内容>

医療における糖尿病を改善するための指導内容、また糖尿病予備軍の方に対する指導内容というのは、血糖・血圧・体重などを適切な数値へ下げていくことがいちばんの目的です。

これらの目的は上述した特定保健指導の内容とほぼ一致しています。

メタボリックシンドロームの方、また糖尿病予備軍の方が特定保健指導を受けて得られる効果は、糖尿病患者の方にも当てはまります。

よって今後の糖尿病改善へ向けた取り組みという点で、特定保健指導で出た結果とデータは大いに参考になるでしょう。

実際に特定保健指導の結果を受けて、健康管理センターや各種医療関係者も糖尿病の指導内容の工夫や取り組み方の改善を検討しています。

どのような生活習慣の改善の仕方が望ましいか、どういう指導法がより適切か、また効果があるのかといったことは、今後も積極的な検討を重ねたうえでさらに充実させていくことが望ましいといえます。

医療関係者だけでなく患者側も、厚生労働省が公表した特定保健指導の中間報告や保健指導における学習教材集などをぜひ参考にしてみてください。

 

まとめ

日本における成人の数は約1億人ですが、そのうちの約1000万人が糖尿病予備軍であるといわれています。

ということは成人の10%が糖尿病を発症するリスクを抱えているということです。

糖尿病の怖い点は自覚症状がほとんどないまま病状が徐々に悪化してしまうという点です。

気が付いたら合併症の発症寸前だった、もしくはすでに合併症を発症していた、ということもよく起こります。

糖尿病そのものは命に関わる病気ではありませんが、糖尿病に伴う合併症によって命の危険を含め深刻な状況に陥る可能性があります。

そのため糖尿病および糖尿病予備軍にならないよう日々の生活習慣の見直しに対して強い意識を持ち、同時に糖尿病に対する正しい知識を深めることが大切なのです。

 

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薮内直純

薮内直純

株式会社イコールヒューマン。生活習慣病専門ライター。医療や医薬品に関する誤解を解き明かしながら、真実を追求した記事を提供中。

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