ヘモグロビンA1cの表記方法が「HbA1c」「A1C」の2種類あるのはなぜ?
ヘモグロビンA1cは糖尿病の検査方法の名前ですが、その数値にはHbA1c(JDS)やHbA1c(NGSP)、A1Cなどいくつかの表記があるので、混乱してしまう方もいるかもしれません。
現在ではHbA1c(JDS)が一般的ですが、複数ある理由は過去に世界と日本で検査の方法が異なっていた経緯があり、それぞれに数値の差があったためです。
ヘモグロビンA1cの一般的な目標数値としては6.0%未満ですが、個人によって数値は異なります。
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ヘモグロビンA1cの数値を見て分かること
糖尿病とは血糖値、つまり血液の中にある糖の量が異常になる病気です。
検査方法はいくつかありますが、どの方法も血液の中にある糖の量を調べることが目的で、ヘモグロビンA1c検査もそのひとつです。
<糖とヘモグロビン>
糖にはさまざまな種類がありますが、その中で血液をとおして全身に送られる糖は「グルコース」という名前で別名を「ブドウ糖」といいます。
このブドウ糖が全身をめぐるために重要な関係を持っているのが「ヘモグロビン」です。
ヘモグロビンはタンパク質の種類で、全身に酸素を運ぶ役割をもっています。
ヘモグロビンは寿命が約120日となっていますが、その間にブドウ糖と結合すると離れることはありません。
そのため、ヘモグロビンと結合したブドウ糖の量を調べることで血液の中の糖濃度の参考値を調べることができます。
すべてのヘモグロビンが糖と結合するわけではないので、ブドウ糖と結合しているヘモグロビンの量を全体のヘモグロビンの量で割ることで、濃度となるヘモグロビンA1cの%を算出することが可能です。
<ヘモグロビンA1cの検査が必要なとき>
体内の糖の量は常に変動しています。
特に食事の後は血糖値が高くなります。
また、その日の食事や日々の運動量によっても数値は変動するため、糖尿病の検査をするときには朝食を抜いて検査する、あるいは食事の時間は考えずに一般的な数値で計測を行うという方法があります。
しかし、これらではその数値結果により糖尿病の可能性が考えられても、検査のときにたまたま血糖値が高くなっていた可能性も考えられるため糖尿病と断定できないこともあり、その際に厳密な検査をするときにこのヘモグロビンA1c検査をすることがあります。
<ヘモグロビンA1cは過去1〜2ヶ月分の平均値>
血液内の糖の量を調べた場合には、純粋にその検査時点での血糖値しか分かりません。
しかしヘモグロビンA1cの検査の場合、時間をかけてブドウ糖とヘモグロビンが結合した量を調べるため、検査時点のリアルタイムな結果ではなく過去1〜2か月間の血液の状況が確認できます。
この検査ではリアルタイムな体の状況を確認することができないため、経過の確認や血糖値の検査結果と合わせて糖尿病と診断しなければいけません。
<ヘモグロビンA1c検査が苦手な部分>
ヘモグロビンA1c検査は、その検査単体で血糖の状況すべてが分かる検査ではありません。
血糖値変化は個人個人で異なり、食後に急激な高血糖になる方もいますが、短時間の血糖値が分からないためヘモグロビンA1c検査では調べることが難しいです。
また1〜2か月前の血糖状況を把握するため、短期間で血糖値を適正値に改善できた方の場合も、それがわかりません。
また現在発症している他の症状や服用している薬によっては、血糖値の状態がよくてもそれがヘモグロビンA1c検査に反映されないことがあります。
ヘモグロビンA1cの2つの基準
ヘモグロビンA1cの目安を見る際に、(JDS)や(NGSP)という表記があり、2種類の表記でそれぞれ数値が異なっています。
この理由は基準となる数値が日本と海外で異なっている部分にありました。
2018年現在では海外の基準に合わせた表記になっています。
<従来日本で使用されていた値>
日本や海外でヘモグロビンA1cの基準が違ってはいたものの、単位としては同じHbA1cという表記でした。
統一をしようとしてもそのままの表記では誤解を生むため、日本の基準であった検査方法での数値は従来、日本糖尿病学会で使用していたHbA1c(JDS)と記載されています。
このJDSとは日本糖尿病学会の英語表記である「Japan Diabetes Society」の頭文字をとったものです。
<現在の基準の値>
日本ではなく海外で使用されていた数値はHbA1c(NGSP)と表記されます。
NGSPは「National Glycohemoglobin Standardization Program」の頭文字で、アメリカの国立研究所がかかわっているヘモグロビンA1cや糖尿病のコントールを標準化することが目的の団体です。
<A1Cのみの表記について>
現在の日本ではA1Cという表記は見ることは基本的にありませんが、2010年ごろはA1Cという表記がみられることがありました。
当時の日本では、まだHbA1cという表記しかなかったため、海外の基準値を表記する方法がなく、区別をつけるためにHbA1c(JDS)やHbA1c(NGSP)という表記を使用し始めたのですが、実際の臨床の報告書などで文字数の制限の関係上、HbA1c(JDS)やHbA1c(NGSP)を表記することができないという状況が発生したのです。
その場合にはHbA1c(JDS)HbA1c、HbA1c(NGSP)はA1Cという表記をするようにしたのです。
つまり、基本的にはHbA1c(JDS)かHbA1c(NGSP)のどちらかなのですが、研究結果の報告書によってはHbA1cかA1Cになっている場合があるということです。
<基準が変わったことによる変化>
基本的に統一される前はアメリカ、日本、スウェーデンなど各国によって検査をする物質自体は変わらないものの、その検査方法は異なっていました。
方法が違うことにより、同じ検査対象を計測しても差が発生することがわかりました。
しかし、現在では一定の計算式で過去のHbA1c(JDS)と統一後のHbA1c(NGSP)に変換をすることが可能です。
測定の方法は異なるものの、一体に検査をしている物質は変わらないためどちらの単位の測定方法であってもその数値そのものに変化があったというわけではありません。
実際に統一の話があった際に%で示すHbA1c(NGSP)ではなく、mmol/molという表記にすれば差が発生しないため、これを基準値にしようという候補もありました。
決して糖尿病と判断する目安の基準が変更されたということではありません。
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ヘモグロビンA1cの目標値
糖尿病になってしまった場合には、血糖値をうまくコントロールすることが治療で大切です。
そのため通院して検査をする上で、ヘモグロビンA1cの数値目標を定めます。
この目標値は個別の状況によって数値は変動するものの、一般的な目安が定められています。
<血糖コントロール数値>
段階ごとでの目標数値は以下のとおりです。
妊娠をしている場合は、下記には当てはまりません。
・血糖正常化の目標:6.0%未満
血糖が正常にある状態として望ましい数値です。
正しい食事や運動などで治療をしていく上で達成可能な場合の目標となります。
治療に薬を服用している場合でも、低血糖といったような副作用が出なければ同様に6.0%未満が目標です。
・合併症予防のための目標:7.0%未満
糖尿病は血糖値が高くなることで、神経症状や心臓病などの合併症が発生する可能性があります。
こうした合併症を防ぐ目標値です。
・治療強化が困難な場合:8.0%未満
薬による治療は副作用を考えると危険なことから、これ以上治療を加えることが難しい場合の目標値です。
<個別に設定目標は異なる>
あくまで上記の数値はおおまかで一般的なものとなっており、治療を進めている人によって数値は変動します。
例えば年齢や糖尿病を発症してから何年間であるのか、臓器に何らかの病気をもっているかなどがあります。
<血糖値は日々変動する>
ヘモグロビンA1cは過去1〜2ヶ月の数値となりますので、定期的に数値を計測することで状況の目安とはなりますが、この数値だけを考えていればよいわけではありません。
その他に知っておくべき値として、空腹時血糖値や食後血糖値があります。
<糖尿病発症とヘモグロビンA1c>
糖尿病が悪化し合併症が発生すると生活に大きな影響が出てしまいます。
特に合併症は1度起きてしまうと治療が困難な場合も多く、いかに合併症を発症させずに血糖をコントロールするかということが大切です。
そのため日本糖尿病学会では、糖尿病を発症してしまった方が健康な生活を送るために血糖を維持することが重要とし、その目標値を合併症が発生しない7.0%未満と設定しています。
<今後の数値変動の可能性>
現在、日本では健康な生活を送るための指標が7%未満、正常化が6%未満とされていますが、アメリカの内科学会ではこの数値をもう少し緩和するべきという表明をしています。
この理由としては、薬などの治療をおこなう際に副作用のリスクがあるためです。
目標値は成人であれば7〜8%に設定し、6.5%まで達成したのであれば6%未満を目指すのではなく、現状維持を目的とするべきとしています。
日本ではまだこの緩和数値の目安は採用されていませんが、数値緩和の理由の根底としてはあくまで個人によって治療方法や目標が異なるという点にあります。
血糖値をコントロールすることは重要で、そのコントロールが運動や食事でするのが望ましいことには変わりありません。
ヘモグロビンA1cの管理方法
ヘモグロビンA1cを管理するということは血糖値を管理することであり、糖尿病予防では基本となりますが生活習慣を見直さないと適正な血糖値にすることは難しいです。
<食事>
暴飲暴食など食生活が乱れると、それだけ体の中に糖を取り込んでしまいます。
糖質(炭水化物)を摂り過ぎないことが何よりも重要です。
「食事のバランス」ではなく「栄養のバランス」を考えた食事が重要です。
また肥満と糖尿病には大いに関係があることから、標準体重は参考にできるでしょう。
標準体重は身長(m)×身長(m)×22です。
この22は体の大きさを表す指数であるBMIの標準的な数値です。
170cmの人であれば、標準体重は63.58kgです。
1.7(m)×1.7(m)×22(BMI指数)=63.58(kg)
<運動>
糖尿病のためにも、健康のためにも運動は必要です。
糖尿病の血糖コントロールに重要な運動として有酸素運動と筋力トレーニングがあります。
筋力トレーニングは短い時間で体の筋肉を意識しておこなうトレーニングで、有酸素運動は反対に軽い運動を長時間行うトレーニングです。
運動頻度としてはできれば毎日やるのが望ましいですが少なくとも週3回以上はおこないましょう。
特に食後に血糖値が高くなる方は食後1時間ごろに運動を行うことが効果的です。
<家事をする>
家事などで体を動かすということも有効です。
例えば目安として下記があります。
・食器洗い:20〜30kcal
・料理:60〜100kcal
・掃除機をかける:30〜50kcal
いつも家族の誰かに家事を任せているという方は、自分から積極的に家事をしましょう。
<薬でのコントロール>
上記のような食事や運動などだけでは糖のコントロールが難しいと思われる方や、ヘモグロビンA1cがかなり高い数値になっている方は薬を処方して治療を進めることもあります。
薬の種類はさまざまで、食事から糖になるまでの動きを遅らせる薬、糖を体から出すことを目的とした薬などがあります。
<コントロールの注意点>
ヘモグロビンA1cの管理方法はさまざまですが、その他に合併症が出ている方、低血糖の症状がでるという方は避けるべき管理方法もありますので、既に糖尿病が発症している方や何らかの治療を受けている方は医師と相談をしながら管理するようにしましょう。
まとめ
ヘモグロビンA1cとは、糖尿病であるかどうかを判断し、糖尿病の経過確認のためにおこなう検査方法で、1〜2か月前の血糖状況を把握することができます。
表記としてHbA1c(JDS)やHbA1c(NGSP)、A1Cなどがありますが、これは数年前に世界の基準に合わせたことによる違いで、現在はHbA1c(NGSP)が一般的に使用されています。
ヘモグロビンA1cコントロールする方法として食事制限や運動がありますが、状況によっては薬の処方が必要です。
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