あなたも無縁ではいられない?!統合失調症の症状と周辺環境を知る
統合失調症については、精神的な病気だと知ってはいるが詳しくは知らない、あるいは自分とは無縁な病気と考える人が多いのが実情です。
確かに、誰でもかかる病気ではありませんが、それでも100人に1人の割合で発症します。
ということは、自分自身が統合失調症にならなくても、周囲にこの病気で悩む人がいないとも限りません。
もしかしたら、家族・親族・友人の中に発病した人がいないでしょうか。
そんな方がいた場合を考えて、少しでも統合失調症が何なのかを理解し、支援していくことが人間としての務めです。
そういう意味で、統合失調症の症状と周辺環境を知ることはとても大切なので、詳しく解説していきます。
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Contents
統合失調症の原因、なりやすいタイプとは?
統合失調症とは、何らかの原因により思考や感情をまとめ上げる(統合する)ことができなくなる病気を言います。
何らかの原因と言いましたが、正確にはそれが解明されたわけではありません。
神経伝達物質の異常ややる気や意欲と関連した部分の障害、情報処理の機能の低下、認知機能の働きの減退などさまざまな問題が指摘されますが、まだこれといった確かな要因はわかっていません。
統合失調症にかかりやすい人のタイプも探求されています。
それには、遺伝的な性質がある、ストレスに弱いタイプの場合、環境の変化が激しかった場合、脳の発達障害がある、といったようにさまざまなものがありますが、こちらも断定されているわけではありません。
統合失調症の症状とは?
統合失調症の症状の現れ方には、2種類あります。
「陽性症状」と「陰性症状」です。
それぞれ詳しく解説します。
統合失調症の陽性症状
まず「陽性症状」は、幻覚、妄想、思考障害、行動の異常などの形で表に表れます。
<幻覚>
これは、実際には起きていないことを感じてしまう症状を言います。
たとえば、
ほかの人には聞こえない音や声を聞いてしまう「幻聴」。
現実には存在しないものを見てしまう「幻視」。
感じるはずのないものがあると感じる「体感幻覚」。
においなどしないのにそれを感じてしまう「幻臭」などがあります。
このうち、幻聴では、他人が悪口を言っているとか自分の噂をしているとか、自分にとって何かよからぬ内容の話を聞いてしまうことが多いようです。
そうかと思えば、厳しく命令をする声を聞いてしまう場合もあります。
それは必ずしもいいことではなく、自分が損をするようなことになります。
人によっては、その声に反応してしまい、自傷行為に走る場合もあります。
<妄想>
現実にはありえないようなことをそのまま信じ込んでしまうような状態を言います。
周囲のものがそんなことはないと否定しても、なかなか受け入れてくれません。
具体的な例を挙げると、だれかに見張られているとか、みんなが悪口を言っているとか、だれそれに騙されたなど、実際にはないことを頭に描いて、こだわり続ける状態に陥ってしまうのです。
これは「被害妄想」と言い換えることもできます。
また、自分はスターである、テレビで自分のことが取り上げられているなど、「誇大妄想」的なものもあります。
<思考障害>
思考が混乱してしまう状態を言います。
ひとつの話題を取り上げて話をしていたかと思うと、まったく関係のない話に転じてしまうなど、一貫性がありません。
前後矛盾した会話も多くなり、相手が話についていけないことも多くなります。
<行動の異常>
突然大声で叫んでいたかと思うと、まったく周囲の状況に反応しなくなったりするなど、おかしな言動をします。
意味もなく体を動かしたり、相手もいないのに1人で長々と話をしたり、大げさな身振りを示したり、外から見ると理解に苦しむような態度を示します。
統合失調症の陰性症状
陰性症状のほうも見てみましょう。
<感情の平板化>
統合失調症の方は、喜び、怒り、悲しみ、楽しみなど普通の人が日常感じる感情が感じられなくなることがあります。
そのために表情が乏しくなり、どんなことにも心の表現をしなくなります。
自分自身の感情だけではなく、他人の心の動きにも鈍感になり、共感を示すことが少なくなります。
<やる気の欠如>
何事にも意欲がわかず、積極的に取り組もうとしません。
仕事や学業などには関心を示さず、日常やるべきことも放置したままになってきます。
入浴や着替え、場合によれば食事でさえ、家族に言われないと自ら行おうとしなくなることがあります。
<思考力の低下>
物事を筋道立てて考える力が足りなくなります。
そのために、会話も途切れがちになったり、難しい内容を理解できなくなったりと、会話自体が成立しないこともあります。
<引きこもり>
社会との接触を嫌がるようになります。
そのため、1日中引きこもって、自分の中に閉じこもります。
ひどい場合は、何もせずにその日暮らしで日々を過ごしていくことになります。
そこまでいかなくても、テレビを見続けていたり、パソコンやスマホにかじりついたり、ゲームをして時間をつぶしたりなど、外出以外の行動に明け暮れるようになります。
軽度の統合失調症の場合は、買い物に出たり、友人とメールのやり取りなど最小限の活動をすることはあります。
統合失調症の症状の現れ方とは?
では、これらの症状は、どのような経過を辿って現れてくるのでしょうか。
統合失調症の発症の仕方は、「前兆期」、「急性期」、「休息期」、「回復期」という4つのステージがあります。
・前兆期
統合失調症の前ぶれのサインが出てくるようになり、
眠りにくくなったり、物音に敏感に反応したり、精神的に不安定になったりしてきます。
けれども、これらの症状が統合失調症によるものなのか他の病気によるものなのかは、この段階では判断がしづらいので、本人も家族も見逃してしまうことが多いです。
もし、この時点で治療を始められれば、回復への道のりも早くなります。
・急性期
この時点で、上述した陽性症状が表に出てくるようになり、
幻覚、妄想、思考障害、行動の異常が見られます。
これらが強く現れるので、不安や緊張は一挙に強まり、心の中も乱れ、周囲との疎通も図りにくくなります。
・休息期
病院での治療の成果が出て、陽性症状が一段落した状態で、
ここから、陰性症状が徐々に現出してきます。
何事にも意欲を示さないようになり、感情の起伏が乏しくなり、自分から行動を起こさなくなります。
そのために、長時間眠ってばかりいるなど、積極性がなくなります。
引きこもってしまう場合もよくあります。
ただ、だからといって、家族は無理に行動を起こさせないようにしましょう。
この時期にも、本人なりの心の悩みがあります。
この過程を経て、初めて回復期に向かうので、周囲の人間もあせってはいけません。
ここで薬の服用をやめてしまう人がいますが、それでは前へ進めなくなります。
医師やカウンセラーと緊密な連絡を取りながら、粘り強く治療を続けましょう。
ところで、なぜ急性期を過ぎてからこのような状態になるのか、詳しいことはわかっていません。
最悪の状態を脱して、心が一段落し、新たな葛藤が生まれるとも考えられますが、原因については不明です。
・回復期
陰性症状も落ち着き、徐々にやる気を見せ始めます。
周囲とのコミュニケーションも図れるようになります。
ただ、この時期に認知機能障害が現れることがあり、記憶力や判断力が減退することがあります。
順調に進めば、統合失調症はこのような過程を経て、回復していきます。
ところが実際には、周囲の環境やストレスの在り方などにより、急性期に戻ってしまう場合もあります。
すなわち再発です。
そうなっても、決してあきらめずに回復までの道のりをゆっくりと登って行かなければなりません。
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統合失調症の薬物療法について
統合失調症の治療ですが、まずは薬物療法が主になります。
具体的には、抗精神病薬という薬が使われます。
これには、大きく分けて2種類あります。
「第一世代の従来型の抗精神病薬」と「第二世代の新規の抗精神病薬」です。
従来型抗精神病薬は陽性症状に対する効果が大きくなっています。
ただ残念ながら、陰性や認知機能障害にはあまり効きません。
新規抗精神病薬は、陽性陰性の両方に効果があるばかりか、認知機能障害の改善にも力を発揮します。
また副作用も少ないです。
統合失調症の薬は、できれば「1種類にまとめるのがよい」とされています。
たくさんの種類を大量に服用しても、効果よりも副作用が強く出てしまい、かえって体や精神に不調をきたすからです。
副作用の主なものは、手足が震える、体が硬くなる、パーキンソン病のような病状を呈するなどです。
女性の場合は、プロラクチンというホルモンが増え、生理が止まったり、乳房が張ったり、乳汁が分泌したりします。
そのほか、眠気や口の渇きを伴うこともあります。
ですから、統合失調薬はせいぜい2種類ぐらいにまで抑えることになっています。
また、この薬は剤型が何種かあります。
最も一般的なのが、錠剤、カプセル剤、粉薬などです。
水なしでも服用できる水薬やシロップ剤、舌下錠などもあります。
注射剤もありますが、こちらは効果がかなり長続きするので、毎日服用する手間が省けます。
いずれにせよ、処方される薬によって、剤型の種類も変わってくるので、一番自分に合ったものを選んでもらうように医師に相談してください。
統合失調症の薬に合わせて、「調整薬」というものが処方されることがあります。
不安や緊張が大きいときには「抗不安薬」、眠れないときには「睡眠導入剤」、うつ状態が続くときには「抗うつ剤」などとなっています。
これらの薬は、医師の指導に従って、決められた用量を服用してください。
統合失調症の薬は、再発防止の意味もあります。
いったん状態が回復しても、いきなり薬をやめてしまうと、ぶり返す恐れが強くなります。
病気がよくなったのだから、もういいでしょうという人も多いですが、服用の中止あるいは服用量の減少は慎重な判断が求められます。
医師にとっても難しい部分ですが、勝手に自分で決めて量を減らしてはいけません。
統合失調症のその他の治療法について
薬に続いて、統合失調症の別の治療法についても解説します。
統合失調症の患者さんには、「心理社会的療法」というものも行います。
これは薬物療法と同時に行わなければ効果を発揮しません。
具体的な内容を見てみましょう。
心理教育
統合失調症がどんな病気なのか理解しなくては、治療が進みません。
その知識を与え、薬物療法の意義やリハビリの重要性などを頭に入れてもらいます。
それによって、本人の治療への意欲を掻き立てます。
心理教育は、家族に対しても行われます。
家族も統合失調症という病気を理解し、正しい対処法や患者への接し方を学ぶ必要があるからです。
また、統合失調症の患者を身内に持つことでの悩みや社会からの偏見にどう対応したらいいのか、その相談にも専門家が応じます。
精神療法
患者さんの抱える不安や緊張に対して、医師が理解を示し、薬物治療の有用性などを説く「精神療法」も重要になってきます。
これには、患者本人と医師との信頼関係が確立されていないといけません。
それができて初めて、医師は患者の気持ちに共感でき、患者本人も医師の説得を聞き入れるようになります。
1度や2度の受診ですぐにそのような関係にはなれないので、根気よく面談を重ねていきます。
認知行動療法
「認知行動療法」というものも行われます。
統合失調症になった方は、誤った妄想や概念にとらわれていて、現実をなかなか受け入れることができません。
かといって、医師がその考えをいきなり否定したのでは、ますますそのような状態がひどくなり、本人が抜け出せなくなってしまいます。
したがって、最初はさまざまな角度から、その妄想を検討しなおします。
果たしてその幻想が本当に真実なのかどうかを徐々に認識してもらえるようになれば、治癒への第一歩となります。
その後、可能な範囲において、妄想と距離を置けるように指導をしていきます。
幻聴については、その声に振り回されないような方法を考えます。
集団精神療法
統合失調法の患者さんは孤独になりがちということがあります。
そのような事態を避けるために、「集団精神療法」という手段を取ります。
これは、同じような症状で悩む人が集まって、病気につい話し合い、冷静な目で見つめなおす方法です。
この病気の持つ特徴を共有し合うことで、理解が新たに深まると同時に克服法も見つかる可能性があります。
1人では困難な治療も、複数集まれば、いい知恵が探し出せる場合があります。
リハビリテーション
「リハビリテーション」プログラムも大切です。
統合失調症になると、引きこもりになったり、認知機能が低下したりなどして、社会との接触が断たれてしまいます。
そんな人たちがもう一度「社会復帰するための治療」が必要になってくるのです。
そのための手段として、「社会生活技能訓練(SST)」や「作業療法」があります。
社会生活技能訓練(SST)では、実際の演習などを通して、相手との疎通の取り方や自己表現の仕方などを学んでいきます。
また、統合失調症特有の妄想や思い込みなどにこだわりすぎないように、思考範囲を広げる訓練をして、対処できるようにします。
ひとつひとつの訓練はかなり具体的なプログラムになっていて、こなしていくのは大変ですが、社会復帰にとても役立つトレーニング方法となっています。
作業療法も兼ねて実施することがあります。
作業療法士の指導の下、さまざまな軽作業を身に着けていくのです。
それによって、労働の楽しさや充実感を味わっていきます。
この経験をしていくことによって、社会復帰への道が近づきます。
まとめ
統合失調症は誰でもかかる病気ではありません。
ですが、社会環境や周囲の環境が複雑になるにつれ、人生の転機など何かをきっかけとして、いつ発症するとも限りません。
今や珍しい病気ではなく、また無縁ではいられなくなってきています。
まずは統合失調症の症状を理解し、周辺環境を理解することが大切です。
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