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糖尿病の治療における食事・運動以外のアプローチ!「手術」での改善

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糖尿病の予防と治療の重要な柱が食事療法、運動療法、薬物療法だということは広く知られています。

実は最近になって糖尿病治療の選択肢が増えました。

それが糖尿病の手術療法です。

これまで糖尿病の治療で外科に行くということは合併症が進行していないか確認するためか、合併症が進んでしまってから処置を受けるために行くことがほとんどでした。

これから新しい治療法「糖尿病の手術療法」の方法とその仕組み、治療の中での位置づけについてご紹介します。

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糖尿病治療のスタンダードなアプローチ

現在「糖尿病が強く疑われる」人は1千万人以上おり、「糖尿病の可能性を否定できない」糖尿病予備軍の人も1千万人いると言われています。(2016年 厚生労働省 国民健康・栄養調査)

つまり、糖尿病が強く疑われる人と糖尿病予備軍の人は合わせて2千万人に上るということです。

なぜ糖尿病はこんなに増えてしまったのでしょう。

高齢化も大きな要因ですが、それ以外にも運動不足や食生活の乱れなどで肥満が増えていることが原因としてあげられます。

肥満は糖尿病の主要な原因です。

さらに、既に糖尿病が強く疑われる人も糖尿病予備軍といわれた人も体重を2、3キログラム減少させるだけで糖尿病を70~80%予防できるというデータがあります。

そのため糖尿病の予防や治療では、食事や運動の生活習慣の改善が重要とされます。

では実際に糖尿病患者さんと糖尿病予備軍とされる方たちにはどのような指導や治療がなされるのでしょうか。

まず食事療法についてですが、血糖値を上げてしまう糖質を徹底的に避けて必要な栄養素をしっかり摂る正しい糖質制限が重要です。

肉や魚介類、卵や大豆加工食品を中心に摂り、ご飯やパン、麺類、果物、野菜を避けます。

特に根菜は糖質が多いので避けましょう。

もちろんお菓子や甘い飲み物、糖質の多い調味料もNGです。

ついなんでも制限しがちですが塩分を制限する必要はなく、必須アミノ酸、必須脂肪酸は体内で作り出すことができないので食事から摂る必要があります。

次に運動についてです。

運動には血液中の糖を消費してくれること、脂肪を減らして筋肉を増やすことですい臓から分泌されるインスリンが働きやすい環境を作ることの2つの良好な血糖コントロールをするための要素があります。

運動の種類としては無酸素運動である筋力トレーニングと有酸素運動であるウォーキングやジョギング、自転車、水泳などを組み合わせて行うことが有効です。

筋トレは体に無理のないよう最初は1セット10回以下から徐々に増やし、最終的には1セット20~30回の筋力トレーニングを1日に2~3回行えるようになるのが理想です。

有酸素運動は1回に20~40分間を週に3回以上行うとよいでしょう。

運動療法を続けていると時に関節を痛めてしまうことがありますので、ストレッチなどのウオーミングアップは欠かさないようにしましょう。

食事と運動を中心とした生活習慣の改善だけでは血糖値のコントロールがうまくいかなかった場合に薬物療法が始まります。

薬物療法には「経口血糖降下薬」と「インスリン注射」があり、最初は内服薬で様子を見て必要時にインスリン注射に移行していく場合が多く見られます。

内服薬はインスリンの分泌を促すもの、インスリンが働きやすくするもの、体の中で糖が生成されにくくするものがあります。

ただし、薬の成分にうまく体が反応してくれなければ効かないこともあります。

インスリン注射は定期的に体の中にインスリンを入れる治療です。

内服薬に比べればダイレクトに効き目が表れますが、体の中のインスリン抵抗性が高まってしまっていれば効き目が弱くなってしまいます。

最近では、睡眠不足やストレスが糖尿病に影響を与えていることも分かってきています。

いくら強力な薬の力を借りても食事と運動、そして生活のリズム全体が乱れている状況では糖尿病はどんどん悪化してしまいます。

 

手術でも糖尿病は改善できる!?

前述した治療の他に手術で糖尿病を治療する方法が見つかり注目を集めています。

以前からアメリカでは肥満を解消するためのさまざまな手術が行われてきました。

この肥満解消のための手術をする中で糖尿病の予防や悪化の重要な鍵となる「インスリン」の動きに関わる新たな発見がありました。

実際に行われる糖尿病の手術の内容は一体どのようなものなのでしょうか。

簡単に言えば、胃を小さくしたり小腸を短くしたりする手術と、胃を小さくして小腸と結び食物を送るようにする胃バイパス手術があります。

手術はお腹を切り開く手術ではなく「腹腔鏡」という管状の器具を使って行われます。

お腹の数か所に開けた穴から器具を挿入し医師が映像を見ながら進める手術ですので、開腹の手術に比べて患者さんの体にかかる負担は少なくて済みます。

まず胃の大半を切り取り縫い合わせ10分の1くらいまで小さくします。

これで胃に入る容量が少なくなるため、すぐに満腹になり食べる量を減らさざるを得なくなるのです。

次に小腸を1mほど切り取りつなぎ合わせます。

食べ物を吸収する小腸が短くすることで栄養の吸収を抑えるのです。

さらに、小さくした胃を十二指腸や空腸を経由せず直接小腸につなぐ胃バイパス術も食べ物の吸収を抑えるために行います。

この手術をすると小腸に十分消化されていない食物が流れ込むことになります。

この際に起こる体の反応が糖尿病の行方の鍵である「インスリン」の動きに関わる新たな発見だったのです。

食べ物が小腸を通る時、消化管ホルモンの「GLP-1」が分泌されます。

実はこのGLP-1は、すい臓のインスリン分泌を促すホルモンでもあるのです。

十分消化されていない食べ物が小腸に流れ込むことによって腸は強く刺激されます。

その結果GLP-1の分泌が大幅に増え、インスリンが大量に誘導され血糖値を下げることが分かりました。

極度の肥満で飲み薬やインスリン注射ではなかなか血糖値がコントロールできない患者さんがいますが、血糖値が高い状態が続けば合併症がどんどん進んでしまいますので薬が効かないということは大変困ったことなのです。

そのような患者さんの中にもこの外科手術で血糖値が正常に近くなる人もいます。

もちろん良いことばかりではありませんので、手術の意義やさまざまな副作用までよく説明を受け納得してから手術をするかどうかを決めることになります。

 

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手術による糖尿病治療のリスク

糖尿病治療のための手術にはリスクがあるのでしょうか。

もともと手術というものは病気を治すためとはいえ皮膚や粘膜を傷つけて行われるものです。

当然体には大きな負担がかかります。

つまり、糖尿病治療のための手術にも、他の手術同様にいくつかの術後合併症を起こすリスクがあります。

術後合併症の原因は以下のとおりです。

○他の手術でも起こりうるもの

・肺炎や呼吸不全など麻酔をしたことによるもの

・心筋梗塞や肺血栓など止血剤の副作用によるもの

・縫合不全や内臓出血

○消化器官の形を変えたために起こるもの

・逆流性食道炎や腸閉塞

・栄養吸収障害

糖尿病治療のための手術後に起こるリスクには食事や水分が関わることもあります。

手術の翌日には水を飲み始め2〜3日後からお粥を食べ始めます。

大きな不具合がなければ手術後1週間ほどで退院できます。

この時点で他の手術でも起きうるような術後合併症はほぼ起きる心配がなくなります。

退院後もしばらくは水分の量や食事を徐々に固形の食事に慣らしていくためのメニューについての細かな指示があります。

手術による糖尿病治療では胃や小腸など食べたものを消化吸収する過程の前半を担う器官を大きく切り貼りしますので、手術後水や食事の摂取に大きな影響があるのです。

水分は主に小腸で吸収されるため、小腸を1mも短くする糖尿病の手術をした後はしっかりこまめに水分補給をしなければなりません。

1日に2リットルの水分を摂るように指示されますが、胃が小さくなっているために一度に飲める量が限られます。

人によっては一度にコップ1杯分の水分をとることにも苦労する場合があります。

十分な水分が取れないと人の体はすぐに脱水症をおこしてしまい、命に関わる状況になるため病院で点滴をしてもらわなければならなくなります。

食事についても同様で手術後2週間で豆腐などの半固形物、そして1か月を過ぎてから固形物を食べるよう指導されます。

しかし糖尿病の手術療法によって胃は狭く浅くなっているため、よく噛まずに塊のまま飲み込んでしまうと胃に納まりきらず苦しくなってしまうという事態が生じてしまうのです。

太めの麺類など長いものではよく噛まないで食べてしまうと胃にうまく納まらなくて大変な思いをします。

1年程度かけてようやく食べ方のコツをつかみ胃の状態も落ち着いて何でも食べることができるようになります。

その他にも、手術により胃の形が変わってしまったために胃酸が食道にあがってきてしまう逆流性食道炎や、食物がうまくこなれないまま大腸に流れ込むために起こる下痢や便秘、栄養素を十分に吸収できないために起こる貧血や脱毛などの症状が出る人もいます。

 

手術による糖尿病治療のこれから

日本では今でも外科の医師が診察するときには既に糖尿病が進行し、足の壊死や心筋梗塞などの合併症が起きている段階のことが多いです。

しかし少しずつですが、日本でも外科の手術で高度肥満に伴う糖尿病を治療するという選択肢ができ手術を行う人も増えてきています。

手術の結果体重が減ってそのままリバウンドなしに減量した体重を維持することでインスリンがより効くようになるという好循環があります。

脂肪細胞はインスリンを効きにくくする物質を出していますので、やせて脂肪細胞が減ることでインスリンの効きがよくなり糖尿病がすっかり治ったと等しいような状態まで改善をする場合さえあります。

ただ糖尿病の体質そのものは変わりませんので、再び生活習慣が乱れて食べ過ぎたり運動不足になったりして体重が増えていくと、また糖尿病が復活してしまうということにもなります。

糖尿病の状態がどうか糖尿病の合併症はどうかなどは医師が経過を観察していく必要があります。

また、手術後の合併症の消化器症状と糖尿病の血糖コントロールを含めた全身管理なども外科の医師だけでは困難です。

内科医と外科医が手術の後も連携して患者さんをフォローアップしていく必要があります。

アメリカでは糖尿病治療のための手術療法は何十万件も行われています。

手術後の長期の経過も分かっており多くの患者さんの血糖値のコントロールがうまくいき糖尿病進行を抑えることができることが示されています。

しかし欧米人に比べて日本人を含むアジア人はインスリンの機能が働きにくい体質です。

そのためアジア人にはやせていても糖尿病になる人が少なくないのです。

日本での糖尿病の手術療法はまだ歴史が浅いので今後数十年単位でみて、この糖尿病の手術療法後、血糖コントロールが良い状態が続くのかどうか、他に弊害がないかどうかなど日本人のデータの集積を行い分析を進めていく必要があります。

糖尿病は罹患している患者さんが多いだけに治療方法の研究が日進月歩で進んでいます。

新しい薬も登場してきていますしインスリンの注射療法もより使いやすく持続して穏やかに効くものが開発されています。

外科手術も治療法の1つとなり個々の患者さんの状態に応じた最善の治療方法を選択するために行われることも増えるでしょう。

そのために現在糖尿病の治療全体の中での手術療法の位置づけや手術療法を選択した際の内科と外科の連携などの細かなルール作りも求められているのです。

 

まとめ

糖尿病の治療法の新たな選択肢「手術療法」は胃を小さくすることで食べることのできる量を減らし、小腸を短くすることで食べたものから吸収できる量を減らす方法です。

さらに小腸に十分こなれていない食物が流れ込んだ刺激でインスリンの分泌が盛んになるという効果もあります。

生活習慣を改善する食事療法、運動療法がベースであることに変わりはありませんが、この糖尿病の手術療法は薬物療法がうまくいかなかったときの新たな選択肢になります。

 

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薮内直純

薮内直純

株式会社イコールヒューマン。生活習慣病専門ライター。医療や医薬品に関する誤解を解き明かしながら、真実を追求した記事を提供中。

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