原因は炭水化物(糖質)!!食後に眠くなってしまう理由
毎日の食生活で気軽に口にしている「炭水化物」には、多くの「糖質」が含まれていることをご存知でしょうか。
炭水化物に多く含まれる糖質は、実は私たちの体にさまざまな影響をもたらすことがわかっています。
「昼食後に眠くなって仕事にならない」という原因は、炭水化物や糖質の摂取によるものです。
今回は、炭水化物と糖質の基礎知識、糖質の摂取と眠気が襲うメカニズム、血糖値が急上昇するメニューや血糖値を上げない食事の摂り方をわかりやすくご紹介します。
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炭水化物と糖質の関係
近年、巷で話題になっている「糖質」というキーワード。
そもそも炭水化物や糖質とは何を指すのか、炭水化物と糖質はどのような関係があるのか順に解説いたします。
・そもそも炭水化物とは
「炭水化物」という単語を小学校の授業で習ったことを思い出す人も多いかもしれません。
炭水化物は、たんぱく質・脂肪と並ぶ3大栄養素のうちのひとつで、私たちの体内に入るとブドウ糖に分解されてエネルギー源として利用されています。
炭水化物は、米や小麦粉、そばなどの穀物類の他、いも類、干しブドウ、はちみつなどにも多く含まれています。
炭水化物の摂り過ぎが肥満や糖尿病などの原因になることから、近年では炭水化物の摂取量を見直す動きが盛んになってきました。
・話題になっている糖質とは
「糖質」とは文字通り糖を主な成分とする物質のことで、多くの場合に炭水化物と同等の意味で使われています。
糖質は脂質やたんぱく質と並んで呼ばれる名称で、1923年の国際化学会議で決定されました。
糖質には最小の単位である「単糖」、単糖が2~10個結合した「少糖」、多くの単糖が結合した「多糖」があります。
私たちの体内では、単糖は「グルコース(ブドウ糖)」「フルクトース(果糖)」「ガラクトース」、少糖は「スクロース(ショ糖)」「マルトース(麦芽糖)」「ラクトース(乳糖)」、多糖は「デンプン」が使われています。
・炭水化物と糖質の関係
それぞれの意味をご説明しましたが、「炭水化物と糖質は同じもの?」と混乱する人も多いかもしれません。
厳密に言うと、炭水化物は「糖質と食物繊維を合計したもの」になります。
平成27年の「食品表示法」の改正により、市販の食品はパッケージなどに栄養成分の表記をすることが義務付けられました。
記載されている炭水化物の項目は、糖質と食物繊維の量を合計した数値になっています。
商品によっては炭水化物の内訳を詳しく記載しているものもあり、さらに糖質の内訳として「糖類」という表記がされる場合もあるので、ぜひ注意してご覧になってみてください。
・糖質と糖類の違いは?
ここで、さらに混乱しやすい糖質と糖類の違いについてもご説明します。
糖類とは糖質に含まれる栄養素で、先にご紹介した単糖と、単糖が2つ結合した「二糖類」を指します。
一般に「糖」と聞いて思い浮かべる砂糖は糖類に含まれており、砂糖の他にブドウ糖や果糖、ハチミツなども糖類の仲間です。
商品に「糖類ゼロ」と書かれていれば、これらが含まれていないという意味になります。
糖質や糖類、さらには糖分などの似た言葉はあいまいな表現が多く、時には同等の意味で使われることもあります。
食後に眠くなるメカニズム
続いて、今回のテーマである食後の眠気と糖質についてご説明します。
・多くの人が眠気を感じる
20~59歳の仕事をしている男女に聞いたアンケート調査(※)によると、「食後に眠気を感じることがある」と答えた人は全体の25.6%、「たまに感じる」という人は41.3%という数値が出ています。
双方を合計すると、半数以上の人が食後に眠気を感じた経験があるという結果になります。
また、眠気を催すのはいつの食事のときかを尋ねたところ、53.3%の人が「昼食後」と回答しました。
これらの結果から、実に多くの人が昼食後に眠気を感じていることがわかります。
※インテージ調べ
https://www.intage.co.jp/gallery/nemuke/
・食後に眠くなる理由
それでは、食後に眠気が襲ってくるのはなぜでしょうか。
私たちが食事をすると、炭水化物に含まれる糖質がブドウ糖などに分解され、小腸で吸収された後に血液に送られます。
食後に血液内のブドウ糖の量(血糖値)が上がるのはこのためです。
血糖値の上昇に伴って、体内では膵臓から血糖値を下げるホルモンの「インスリン」が分泌されます。
その後、血液中のブドウ糖は各所の細胞や筋肉などに送り込まれ、エネルギーとして活用されるという働きが毎日行なわれています。
血糖値を下げる役割を持つインスリンが分泌されると、体内は急激に血糖値が低下します。
血糖値が急激に下がると、眠気が襲うだけでなく、吐き気や頭痛、体の震え、イライラなどの症状が出ることもあり、重症のときは意識が遠のくケースもみられます。
さらに詳しく解説すると、1900年代の終盤に日本人の研究者が発見した「オレキシン」と呼ばれる物質も食後の眠気に関わっています。
脳内の「食欲中枢」で見つかったオレキシンは、食欲や睡眠を抑制する物質であることが判明しています。
空腹で血糖値が低いときにはオレキシンが活性化し、満腹になって血糖値が高くなったときにはオレキシンの活動が収まって眠くなるという仕組みです。
加えて、体内の「交感神経」「副交感神経」も食事と睡眠に関連しています。
私たちの体には脳と体の各所を繋ぐ神経が張り巡らされており、神経は脳と脊髄を指す「中枢神経」と中枢神経から体の各所に広がる「末梢神経」に分かれます。
上記の交感神経や副交感神経は「自律神経」として末梢神経に属し、心臓や胃など臓器の働きを支配しています。
私たちが食事をすると、体内はリラックスして副交感神経が優位に働きます。
副交感神経が活発になると胃腸は消化作業で忙しくなりますが、その他の部分はリラックスしているために眠くなるのです。
・その他の病気の心配
食後に眠くなるのは、血糖値の変化やホルモン、自律神経の関わりがあることがわかりましたが、まれに病気が原因になっているケースもあります。
近年よく耳にする「睡眠時無呼吸症候群」を患っている場合、夜間に充分な睡眠が取れないため日中に眠気が出ることがあります。
また、「ナルコレプシー」という病気は仕事中や作業中に突然眠ってしまう症状が特徴で、ご紹介したオレキシンが関わっていると考えられています。
その他、食後に眠くなるのは普段服用している薬の副作用の影響もあるので、眠気が度重なるときには一度医師に相談してみてください。
・食後に眠くなった時には
食事の後に眠くなり、作業がはかどらないときには次の方法を試してみましょう。
冷たい水で顔を洗うのは、交感神経を優位にさせるために眠気覚ましには有効です。
時間が許すのであれば、15分ほど仮眠を取るのもひとつの方法です。
近年では、食後の運動も眠気覚ましに効果があることがわかっています。
少々速足のウォーキングで20分ほど近くを歩いたり、階段の上り下りをしたりすると血糖値が上がりにくくなって眠気が抑えられます。
ただし、目を覚まそうとして食後にコーヒーや清涼飲料水を摂取してしまうと、さらに体内に糖質が吸収され、インスリンが分泌されて同じ繰り返しになるため避けましょう。
なお、食後の眠気を抑えるには、血糖値が上がりにくい食事を摂取するという意識も必要です。
以下の項目では、血糖値を急激に上げないメニューや食事の方法についてご紹介します。
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血糖値が跳ね上がりやすいメニュー
ここまで、食事を摂ると眠くなる理由をご説明してきました。
多くの場合、食事によって上昇した血糖値をインスリンの働きで急激に下げるために眠気が起こります。
したがって、眠気を最小限に抑えるには血糖値が上がりやすい食事を控えることをおすすめします。
・血糖値が上がりやすいメニュー
一般に、社員食堂や近隣のレストラン、自宅などでランチを食べるときには手軽なメニューを選びがちです。
カレーやラーメン、パスタ、そば、おにぎり、牛丼、寿司、サンドイッチなどは炭水化物がメインになるので、糖質が多く含まれています。
・GI値とGL値
近年、話題になっている糖質制限や糖質ダイエットでは「GI値」という単語がよく登場します。
GI値とは「グリセミック・インデックス」の略で、食品を摂取した後の血糖値の上がり具合を示した値を指します。
具体的には、ブドウ糖を摂ったときを基準の100とし、炭水化物が50g含まれる食品を摂った際に血糖値の上昇する具合を比較したものです。
GI値が70以上のものは「高GI」として血糖値が上がりやすい食品とみなし、「低GI」は血糖値が上がりにくい食品とみなします。
一方の「GL値」は「グリセミック・ロード(負荷)」という意味があり、最近では欧米で多く使用されている基準になります。
GL値は、100gの食品に含まれる糖質の量に、ご紹介したGI値を掛けて100で割るという方法で算出します。
GI値が高い食品でも、炭水化物の割合が低ければGL値も低くなります。
反対に、小麦粉を使ったパン類やコーンフレークなどのGL値が高い食品は炭水化物の量が多いことになるので、糖質の摂取を意識している人は注意が必要です。
血糖値を急上昇させない食べ方
最後に、血糖値を急激に上昇させない食事の方法をご紹介します。
・炭水化物(糖質)を避ける
単純といえば単純ですが、先程ご紹介した「血糖値が上がりやすいメニュー」を摂らないようにするのが一番です。
カレーやラーメン、パスタ、そば、おにぎり、牛丼、寿司、サンドイッチなどは避けましょう。
・よく噛んでゆっくりと
昔から食事のときはよく噛んで食べるようにと言われるのには理由があります。
食事を始めてから脳内の「満腹中枢」が働くまでの時間は、約20分と言われます。
焦って早く食べてしまうと、満腹中枢が「お腹がいっぱい」と反応する前に必要以上の量を摂取してしまうため、早食いの人ほど肥満の傾向にあることがわかっています。
ゆっくり噛んで食事をすると消化もゆっくりになって糖質の吸収が穏やかになります。
また、厚生労働省では「噛ミング30(カミングサンマル)」として、ひと口30回噛んで食事をするよう提唱しています。
よく噛むことは肥満の防止になるだけでなく、唾液がよく出て虫歯の予防にも繋がり、味覚が発達して食事の味もおいしく感じるようになります。
さらに、噛む力と糖尿病の関連も京都大学の研究から判明しています。
滋賀県長浜市の40~74歳の男女6,827人を対象に調査した結果、噛む力が強い人ほど糖尿病になるリスクが少ないことが明らかになりました。
ゆっくり噛むと食事時間を長く必要とするため、この研究では食事の時間と糖尿病の発症リスクにも関連が出ています。
よく噛む癖をつけるには、調理の際に食材を大きめに切ったり、歯ごたえのある食材を選んだりする方法もあります。
また、料理を薄味に仕上げると、味をしっかり感じ取ろうとしてよく噛むようになります。
・酢などの効果を利用する方法
最近では、酢を利用すると血糖値の急激な上昇が押えられるということも話題になっています。
昭和女子大学などの研究チームは、対象者に酢を含む飲料や酢を使った料理を摂取してもらい血糖値の上昇を調べたところ、酢を摂取しない食事のときと比べて上昇率が穏やかになることが判明しました。
まとめ
今回は食後に眠くなる理由をテーマに取り上げ、炭水化物と糖質の基礎知識や食後に眠気を感じるメカニズム、血糖値が急上昇してしまうメニュー、血糖値を急激に上げない食事の摂り方をご紹介しました。
食後の眠気は、食事内の炭水化物(糖質)が影響していることがおわかりいただけたでしょうか。
数々の研究により、血糖値の急上昇を抑える方法が解明しています。
食後の眠気を抑えるには、ご紹介した内容を参考に自分に合った方法を選んで実践してみてください。
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