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糖尿病性神経障害の検査と治療法|そのしびれや痛みは糖尿病が原因

 2018/10/28 生活習慣病
この記事は約 11 分で読めます。 1,641 Views

糖尿病は合併症が多い病気としても知られており、糖尿病それ自体の症状以上に合併症の症状のほうが体への負担が大きくなることも少なくありません。

糖尿病の合併症はその症状や生じる部位もさまざまですが、大きく3つに分類することができ、そのうちのひとつを「糖尿病性神経障害」と呼びます。

この合併症では体全体にある神経に障害が生じ、重症化すると命にかかわる場合もあります。

ここでは、この糖尿病性神経障害の症状や検査方法、治療法などについて解説します。

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糖尿病性神経障害ってどんなもの?

糖尿病によって引き起こされる合併症は上述した糖尿病神経障害「糖尿病性網膜症」、「糖尿病性腎症」の3つが特に多く、これらは糖尿病の「3大合併症」と呼ばれています。

また、このうち糖尿病性神経障害はその症状によって以下の3種類に分類することができます。

・多発性神経障害

糖尿病性神経障害の中でも特に多いのが「多発性神経障害」です。

人間の体には隈なく感覚神経や運動神経が巡っており、これによってものに触れたときの感覚や痛みなどを感じることができるようになっています。

糖尿病の合併症として多発性神経障害が生じると、これらの感覚神経や運動神経の働きは鈍くなってしまい場合によってはしびれや痛みなどを感じることもあります。

また、多発性神経障害の症状は末端の神経から表れ始めるという特徴もあり、手足の感覚に違和感を感じるようになったら注意が必要です。

・自律神経障害

人間の体内にある神経には上述した感覚神経や運動神経だけでなく自律神経と呼ばれるものも存在します。

この自律神経は発汗による体温の調整や血圧の維持においてなくてはならない存在となっており、日常生活を問題なくおくる上でも大変重要な神経といえます。

自律神経障害が生じてしまうとこれらの発汗や血圧の調整などの機能がうまく働かなくなり、通常の日常生活をおくるのも困難になってしまいます。

また、血圧系などの持病を持っていると自律神経障害によってその症状がさらに悪化してしまう場合もあります。

・単一性神経障害

糖尿病によってさまざまな合併症が生じると体内にある細い血管の内部に血栓がつまってしまい、その箇所だけ血流が滞ってしまうことがあります。

このような状態になると、その血管のさらに先にある器官や筋肉の神経に障害が生じることがあり、このことを「単一性神経障害」と呼びます。

単一性神経障害が生じてしまった器官や筋肉ではその働きがスムーズにいかなくなり、顔面麻痺や片方のまぶただけが動かないなどといった症状が表れます。

 

糖尿病性神経障害の主な症状と進行

糖尿病性神経障害の主な症状としては以下のようなものが挙げられます。

・異常感覚

糖尿病性神経障害はその名称からも分かるとおり神経に生じる障害であることから、その症状としては過度な「冷え」や「しびれ」などが挙げられます。

これらの症状は特に障害が起きやすい手足の末端神経から表れることが多く、さらに悪化すると神経麻痺や「壊疽(えそ)」などの重大な症状が表れることもあります。

とりわけ壊疽の状態になってしまった部位は回復が見込めないと切断を余儀なくされることもあり、特に神経障害が生じやすい足先に異常を感じたらすぐに医師に相談する必要があります。

・発汗異常、高血圧、高血糖

特に自律神経障害になってしまうと自律神経が制御していた発汗機能には大きな乱れが生じ、特に運動をしていないにもかかわらず大量の汗をかくといった発汗異常の症状が表れることがあります。

また、自律神経に障害が生じている状態では発汗だけでなく血圧の制御や血糖値の制御にかかわる機能にも乱れが生じるため、健康診断で高血圧や高血糖と診断されやすくなります。

また、自律神経障害が生じることによって血糖値の制御機能が働かなくなると低血糖の状態になっても体が反応せず血糖値を上げるためのホルモンが分泌されなくなります。

この状態を「無自覚性低血糖」と呼び、最悪の場合命にかかわることもあるため自律神経障害になってしまった場合は注意が必要です。

・麻痺

上述したとおり糖尿病性神経障害になると感覚神経や運動神経が機能しなくなり、場合によっては体の一部が麻痺してしまうこともあります。

このような症状が悪化すると、本来は大きな痛みを伴う心筋梗塞や狭心症などになっているにもかかわらず本人も気が付かないということもあるため、適切な治療を行うことができず場合によっては突然死を招くこともあります。

・うつ病

糖尿病と関連付けて語られることは少ないですが、うつ病もまた糖尿病の発症と共に表れやすい症状のひとつです。

糖尿病になり神経に障害が発生すると大きな痛みが生じることや血圧、血糖値の大きな変化によって日常生活にはさまざまな制限が設けられることとなってしまいます。

このことによって患者さんは精神的に落ち込み、うつ病を発症してしまうというとも言われます。

闘病を続ける上で前向きな気持ちを維持することは非常に重要であることから、このような精神面に表れる症状も見逃すことはできません。

 

糖尿病性神経障害の検査方法

糖尿病性神経障害は自然に治ることはないため、少しでもその症状が表れ始めたらすぐに病院へ行き医師に相談する必要があります。

また、病院では以下の方法によって糖尿病性神経障害であるか否かの検査を行います。

・アキレス腱反射

アキレス腱反射とは、ハンマー型の検査機を使用してアキレス腱を叩き正常な反応が出るかどうかを確認する検査です。

この検査では運動神経と感覚神経が正常に機能しているか否かを判断でき、特に糖尿病性神経障害では足先から異常感覚などの症状が表れることも多いためより効果的な検査方法といえます。

ただし、この検査方法だけでは仮に運動神経、感覚神経に障害が生じていることが分かっても、それが糖尿病によるものであるかどうかは判断できないため糖尿病性神経障害の疑いがある場合はその他の検査と並行して行われます。

・モノフィラメント検査

モノフィラメント検査とは、足の裏にフィラメントと呼ばれる糸のようなものを触れさせ、それによって運動神経や感覚神経が正常に機能しているかどうかを確認する検査です。

この検査も糖尿病性神経障害による異常感覚などの症状が生じやすい足先の神経の機能を調べられるという点で大きなメリットがあります。

また、このモノフィラメント検査に関しても、その結果だけで神経の異常が糖尿病によるものだと断定することはできず、その他の検査と並行して行われます。

・振動覚検査

振動覚検査では振動させた音叉をくるぶしに当て、音叉の振動を感じているかどうかを確認します。

この検査もまた異常感覚が生じやすい足先を対象として行うという点で糖尿病性神経障害の検査に適しています。

またその結果だけで糖尿病性神経障害と判断できないため、その他の検査と共に行うという点は上述した2種類の検査方法と同様です。

・心拍変動検査

心拍数は息を吸ったときと吐いたときで変化しますが、自律神経が機能していないとこのような変化は起きません。

心拍変動検査とは心電図検査の一種であり、このような心拍数の変化と自律神経の異常を発見する上で重要な検査方法です。

この検査方法は自律神経を対象としている点で上述した3種類の検査方法とは異なりますが、やはりこの検査だけで自律神経の異常が糖尿病によるものと断定することはできないため、その他の検査と共に行われます。

・神経伝導検査

神経伝導検査では皮膚の上から神経に電気で刺激を与え、それが伝達される速度を計測します。

この検査は明確な症状のない糖尿病性神経障害に対して有効ですが、電気による刺激を与える際に若干の痛みを伴います。

 

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糖尿病から糖尿病性神経障害につながる原因

糖尿病が進行し糖尿病性神経障害を引き起こす原因を知るためには、糖尿病と糖尿病性神経障害がどのようなメカニズムによって起こっているのかを理解する必要があります。

まず糖尿病とは体内に余分なブドウ糖が余るようになる状態のことを指しますが、このような状態になると余分なブドウ糖はやがて細胞の活動メカニズムにも悪影響を及ぼすようになります。

その結果、細胞の中でも特に神経細胞内に「ソルビトール」と呼ばれる物質が蓄積していくこととなり、この物質が神経の働きを阻害するようになるのです。

また、高血糖の状態が続くと細い血管内では血流が悪くなり神経細胞が必要としている酸素や栄養分も行きわたらなくなります。

その結果、神経細胞の働きはさらに阻害され、やがて異常感覚などの症状として表れるようになります。

このような血流の悪化と酸素や栄養分の供給が十分に行われなくなることによって生じる神経障害は上述した単一性神経障害に該当し、糖尿病性神経障害の典型的な症状といえます。

一方、このような糖尿病性神経障害の症状はより細い神経に表れやすいという特徴もあります。

そのため人間の体の中にある神経の中でも特に細い末梢神経には糖尿病性神経障害の症状が表れやすくなっています。

末梢神経は人間の体全体に隈なく存在し、運動神経、感覚神経、自律神経によって構成されています。

そのため糖尿病性神経障害の症状はこれら3種類の神経に表れやすいという特徴があり、そこに障害が生じることによって異常感覚や麻痺、血圧値・血糖値の異常などの症状が表れやすくなるのです。

以上のことから糖尿病特有のブドウ糖が体内に余る状態では神経細胞に異常がおよびやすく、またその異常は末梢神経に表れやすいことから糖尿病性神経障害特有の症状へとつながりやすくなっているといえます。

 

糖尿病性神経障害の主な治療法

検査によって糖尿病性神経障害であることが判明したら、以下のような治療を行うこととなります。

・血糖コントロール

糖尿病性神経障害はその原因となっている糖尿病が悪化すると同様に悪化していくことから、まずは血糖コントロールを行い糖尿病のさらなる悪化を防ぐ必要があります。

そのためには歩行などの運動療法が有効とされており、医師の指導のもと簡単なウォーキングをするなどして血糖値をコントロールしていきましょう。

ただし糖尿病が重症化している場合、急激な血圧の上昇などは危険を伴う場合もあるため、その頻度などに関しても医師の指示に従う必要があります。

また、糖尿病性神経障害は上述したように神経細胞内に蓄積したソルビトールという物質の存在と血流が滞ることによって神経細胞へ酸素や栄養分が十分に供給されないことが大きな原因となります。

そのため、神経細胞に蓄積したソルビトールの除去と血流の正常化を目的として血糖値をコントロールすることもまた主な治療法のひとつとなります。

・薬物療法

薬物を投与することによって症状の改善を図る方法は糖尿病性神経障害の基本的な治療のひとつです。

この方法は2種類に分類することができます。

ひとつは「原因療法」に分類される薬物療法で、この治療では上述した神経細胞に蓄積したソルビトールを除去するために「アルドース還元酵素阻害薬」と呼ばれる薬を投与します。

これにより糖尿病性神経障害の原因を除去することができるため、その症状も改善が可能となります。

これに対し、もうひとつの薬物療法を「対症療法」と呼びます。

この治療法では糖尿病性神経障害によって表れた症状に応じた薬を投与することが基本となっており、例えば血流の悪化が見られる場合は「血流改善薬」、うつ病の症状がみられる場合は「抗うつ剤」といったように臨機応変に投与する薬を変えていきます。

ただし、対症療法では一時的な症状の緩和は可能であるものの薬の効果が切れるとすぐに症状が再発する場合や、投与する薬そのものによる副作用が生じる場合もあるため、それらを考慮した上で投与を決断しなければならないこともあります。

 

まとめ

糖尿病性神経障害が発覚するケースには、既に糖尿病であることを自覚していた人が糖尿病性神経障害を発症するケースと、糖尿病であることを自覚しておらずある日手足のしびれや痛みが気になり病院で検査を受けた結果、糖尿病性神経障害を伴う糖尿病であるとの診断を受けるケースがあります。

このうち後者は全く治療を行っていない状態から糖尿病と糖尿病性神経障害の治療を始めなければならないという点でデメリットがあるため、健康診断などで高血糖を指摘されたことがある方などは特に糖尿病には気をつけ、糖尿病性神経障害が生じる前の段階から糖尿病治療を始められるようにしておくことが重要です。

 

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薮内直純

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株式会社イコールヒューマン。生活習慣病専門ライター。医療や医薬品に関する誤解を解き明かしながら、真実を追求した記事を提供中。

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