ケガだけじゃない!膀胱がんが労災認定されたケース
仕事が原因で起こる怪我や病気を労災と言います。
労災が原因で働けなくなったときは、医療補助などの名目により厚生労働省から保険料の給付を受けることができます。
労災が認定されるケースとして思い浮かべられる原因といえば、通勤時の交通事故や業務中の怪我や紫外線や極端な温度変化、もしくは粉塵や感染よる疾病などが挙げられますが、中には「膀胱がん」が労災認定されたケースがあるのです。
今回の記事では、膀胱がんとは何か、さらには膀胱がんが労災認定された一例をご紹介します。
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膀胱がんの発生要因と考えられること
膀胱は腎臓で作られて腎盂や尿管を経由して運ばれてきた尿を一時的に貯蔵しておくための器官です。
ちょうど袋のようになっており尿を漏れないように溜める働き、そしてある程度尿が溜まれば排出する働きがあります。
膀胱内部は尿路上皮(以前の呼び方は移行上皮)という粘膜で覆われています。
膀胱がんのほとんどはこの尿路上皮ががん化することで発生します。
発生率は年間10万人中およそ20人といわれており、60歳以上の男性に多く見られます。
また、喫煙者は非喫煙者に比べて2倍~3倍程度、男性は女性より3~4倍程度、発生率が高いと言われています。
膀胱がんの原因ははっきりとはわかってはいませんが、加齢や喫煙の他にもゴムやアニリン色素といった特殊な化学薬品を扱う会社で働く人の発生率が高くなっています。
また、長期間膀胱結石がある、膀胱周辺血管に寄生するビルハルツ住血吸虫症に観戦するなどと膀胱に慢性的に刺激があると発生することもあります。
初期症状では血尿が多く、尿検査でがんが発見されるケースもしばしば見られます。
血尿は痛みを伴わない事が多いのですが、異変に気がつきやすいため膀胱がんが判明しやすいのです。
中には残尿感や排尿時の痛みから膀胱がんが判明するケースもあります。
労災と認定された膀胱がん
仕事で使用している化学物質が膀胱がんの原因と認定されて、労災になったケースをご紹介します。
○福井市のケース
福井市の衣料の染料や顔料の元になる物質を製造していた化学工場で、40~70代の男性従業員7名が膀胱がんを発症しました。
作業に使われていた「オルト・トルイジン」が膀胱がん発症の原因と認められ、2016年12月に労災認定が行われました。
労災認定を受けた7人のうち5人は10年以上も作業に従事していたとのことです。
○徳島市のケース
徳島市にある化学メーカーの工場で、元従業員の70台男性が2016年に膀胱がんを発症して手術を受け労災を申請していました。
この従業員は化学物質オルト・トルイジンの製造を10年ほど担当しており、厚生労働省の検討会による調査でオルト・トルイジンを原因とする膀胱がんであることが判明しました。
2018年8月に、この従業員に対してオルト・トルイジンによる膀胱炎の労災認定が行いました。
どちらのケースも、染料や顔料の原料となる「オルト・トルイジン」が製造されていたために膀胱がんとオルト・トルイジンは関連性があると考えられており、厚生労働省は10年以上に渡ってオルト・トルイジンが体内に吸収されると膀胱がんの発症リスクが高まると発表しています。
○膀胱がんとオルト・トルイジンの関係
オルト・トルイジンはガス状・液体状で扱われることが多く、経気道または経皮吸収にて体内に取り込まれます。
この中でガス状のオルト・トルイジンは気中の濃度が低くマスク等で保護されていたことから、経気道での吸収は微量であり液体状のオルト・トルイジンが体に付着する、あるいは一部の作業においては直接手で行われていたことから経皮吸収で体内に取り込まれた可能性が高いと見られています。
オルト・トルイジンによる膀胱がん発生メカニズムには、酵素に寄る代謝活性化が関係するという研究結果が出ています。
体内に取り込まれたオルト・トルイジンは腎臓の濾過機能により尿と一緒に膀胱に溜まり、膀胱内組織のDNAを損傷し、結果、膀胱がんを引き起こすことにつながるのです。
厚生労働省の調査結果では、化学工場での作業者は防毒マスクと薬品用のゴム手袋をしていても尿からオルト・トルイジンが検出されていますが、ゴム手袋を2重にして仕事をしていた作業者からはオルト・トルイジンは検出されていません。
このことから、皮膚付着がわずかであっても、オルト・トルイジンは体内に吸収されてしまうといえます。
膀胱がんを発症し労災認定された社員のいる化学工場では、オルト・トルイジンを含む有機溶剤でゴム手袋を洗浄し、繰り返し使っていたことが判明しており、オルト・トルイジンに汚染されたゴム手袋を装着し作業していたために長期間にわたって皮膚から体内に吸収されたと考えられています。
また夏は半袖になり、化学防護性のない服装で作業していました。
さらには、オルト・トルイジンを含む有機溶剤で作業着が濡れることもしばしばあったが、作業着が濡れてもシャワーなどで体を洗い流さないケースや、直接指でオルト・トルイジンに触れていたケースなどもあり、オルト・トルイジンの扱いがずさんだったようです。
○オルト・トルイジンを特定化学物質に指定
これらの実例から、厚生労働省は2016年にオルト・トルイジンを特定化学物質に指定して省令を改正し、保護具の着用や身体が汚染されたときの洗浄、特殊健康診断の対象とすることなどを義務付けました。
オルト・トルイジンを扱う工場はもちろんのこと、さらには研究所や大学でも、この。オルト・トルイジンを扱うときは、この省令の指導に基づいて行う必要があります。
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膀胱がんに関係すると考えられる化学物質
膀胱がんの発症に関係すると考えられている物質に「芳香族アミン」というベンゼン環にアミノ基を持った化学物質が挙げられます。
芳香族アミンは体内の肝臓で代謝されて酸化し、ヒドロキシルアミンになります。
これは最終的にはナイトレニウムイオンを発生させます。
これがDNAの塩基と反応し、DNAを変化させてしまうのです。
人間にはDNAを修復する機能がありますが、変化したDNAを完全に修復できなければ遺伝子のエラーが起こり、その遺伝子からがん化した細胞が生成されてしまうのです。
腎臓でろ過された芳香族アミン物質は高濃度の状態で膀胱内に集められるため、膀胱がんの発症につながりやすいのです。
1890年代のドイツによる報告を始め他国でも芳香族アミンによる膀胱がんの発生が報告されてきました。
日本でも1960年ごろに発生が報告され、「β-ナフチルアミン」「ベンジジン」「アミノビフェニ」「ニトロビフェニル」の4つの芳香族アミン物質が膀胱がんの原因として認められました。
その後、労働安全衛生法にて1972年にはこれら4つの芳香族アミン物質を輸入・製造・使用することが禁止されています。
上記の4つ以外に、膀胱がんに関係する芳香族アミンとして、以下の物質が含まれます。
1、オルト・トルイジン
無色~薄い黄色の液体で、空気や光に触れるとすると赤茶色になる。
洋服などを染める染料や顔料の元であるエポキシ樹脂硬化剤原料として用いられる。
IARC(国際がん研究機関) 及び日本産業衛生学会はグループ1「ヒトに対して発がん性がある」と、ACGIH(米国産業衛生専門家会議)は発がん性区分A3「動物に対して発がん性がある」としている。
2、オルト・アニシジン
赤色~ 黄色の液体で、最終的な染料を合成する過程で製造される染料中間体。
IARC(国際がん研究機関)及び 日本産業衛生学会ではグループ2B「ヒトに対する発がん性が疑われる」とされ、ACGIH(米国産業衛生専門家会議) では発がん性区分A3「動物に対して発がん性がある」とされている。
3、2.4・キシリジン
澄明で淡黄色の液体で、オルト・アニシジンと同様に染料や顔料を製造する際に製造される中間体。
ACGIH(米国産業衛生専門家会議) において、発がん性区分A3「動物に対して発がん性がある」とされている。
4、パラ・トルイジン
無色の薄片で、顔料中間体や農薬を合成する際の原料として用いられる。
ACGIH(米国産業衛生専門家会議) において、発がん性区分A3「動物に対して発がん性がある」とされている。
5.アニリン
無色の液体で、ウレタン中間体を合成する際の原料や、医薬品や農薬を合成する際に原料として用いられる。
ACGIH(米国産業衛生専門家会議) において、発がん性区分A3「動物に対して発がん性がある」とされている。
膀胱がんの進行
膀胱がんは進行度合いにより、筋層非浸潤性がん・筋層浸潤性がん・転移性がんに分けられます。
初期段階では膀胱の表面上のみにがんが発生しますが、進行すると他の臓器にも転移します。
○筋層非浸潤性がん
膀胱の内腔に発生し、乳頭状(カリフラワーのような形)になっているがんで、がんの進行が膀胱壁まで進行していない状態です。
膀胱がんの約70%がこの筋層非浸潤性がんと診断されています。
生命に関わるほど重症のがんではなく、がん細胞だけを取り除く手術によって完全に取り除けます。
しかし、筋層非浸潤性がんには再発しやすいという特徴があり、膀胱がんが再発したときはより症状が重くなっていることもあります。
除去後に薬物療法を続けていくと再発率を下げられるため、再発のリスクが高いケースでは薬物療法を長く続けます。
○筋層浸潤性がん
膀胱の壁にまで発生しているがんです。
がんの進行が早く、早い時期にリンパや他臓器に移転する可能性があります。
専用の内視鏡でがんを摘出する方法もありますが、膀胱全体にがんが広がっているケースでは膀胱全摘出手術を行います。
膀胱全摘出に加えて男性は精嚢摘出、女性は子宮や卵巣、膣の一部摘出を行うケースもあり、精嚢摘出が行われた後は射精を行うことができなくなります。
膀胱を全摘出したときは膀胱の代わりになる新しい袋を作るか、人工膀胱によって体外に設置した袋に尿を溜めます。
他の臓器にがんが転移していないときは腸を使って代用となる膀胱を作ることもできます。
この場合は尿道から尿を自分で排出することが可能です。
人工膀胱では体外に設置したパウチに絶えず尿が溜まっていき、ある程度溜まったら排出して捨てるといった処理を行います。
○転移性がん
膀胱がんのがん細胞が、他臓器に転移した状態です。
移転しやすい場所としては、リンパ節、肺、骨、肝臓などが挙げられます。
すでに他臓器に転移した場合は、全身化学療法を行います。
がんを抑制できるケースでは放射線治療も取り入れるケースも見られます。
また、延命が期待できるときはがん細胞のある臓器を摘出することがあります。
○膀胱がんの診断方法
膀胱がんがあるかどうかの診断は、尿検査、内視鏡検査、エコー検査、CT検査、MRI検査などの結果から行われます。
膀胱がんの疑いがあった場合はCT検査やMRI検査でさらに精密に調べます。
転移が疑われるときは胸腹部CT検査、骨シンチグラフィによって転移の有無も検査します。
進行が進んだ状態で発見された膀胱がんは治療が難しいケースも多く、また治療しても他の臓器に転移していることもありますが、逆に早めに発見できれば内視鏡での摘出治療や抗がん剤での治療によって治癒することも十分に可能になるのです。
○膀胱がんの症状
膀胱がんの初期症状で多いのは血尿です。
赤色や褐色の尿が出るため早い段階で尿や膀胱に異常があることに気づくでしょう。
血尿があっても痛みを感じることはほとんどありませんが、尿道や膀胱の出口にがんが発生した場合は痛みや残尿感といった症状が見られます。
膀胱がんが進むと尿管がふさがるために尿が出なくなり、肝臓が腫れる、尿管が広がる、腎臓機能の低下といった症状が現れます。
さらに症状が進行すると痛みや排便異常、腸や子宮からの出血が見られます。
血尿が出たからといって必ずしも膀胱がんになったとは限りませんが、体の何らかの異常が発生していることが考えられます。
一時的なものとは思わず、すみやかに検査を受けた方が良いでしょう。
放っておくと痛みが発生する恐れがあり、気がついたときは膀胱がんが進行している可能性があるのです。
まとめ
オルト・トルイジンなどの芳香族アミンによって膀胱がんが引き起こされることが厚生労働省の調査で判明しています。
仕事でこのような化学物質を日常的に扱っていることが原因で膀胱がんになったときは労災認定を受けられます。
膀胱がんはがんの一種であり、進行が進むと他の臓器に転移し、手術や化学療法、放射線治療では治癒できなくなってしまいます。
血尿や特殊健康診断で異常が認められた場合は、すみやかに医療機関で精密な検査を受けましょう。
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